新藤内閣府特命担当大臣記者会見要旨 令和6年3月22日

(令和6年3月22日(金) 18:32~18:41  於:中央合同庁舎第8号館1階S108会見室)

1.発言要旨

 「月例経済報告等に関する関係閣僚会議」の概要を報告いたします。
 今月は「景気は、このところ足踏みもみられるが、緩やかに回復している」と、先月の判断を維持しています。これは、設備投資については、持ち直しの動きがみられる一方、GDPの約55%を占める個人消費、そして賃金の伸びが物価上昇に追いついておらず、力強さを欠いていることなどを踏まえたものであります。
 先行きにつきましては、実に33年ぶりに5%を超えた春闘の賃上げなど、雇用・所得環境が改善するもとで、緩やかな回復が続くことを期待しております。
 ただし、中国経済の先行き懸念など、海外経済の下振れが我が国の景気を下押しするリスクとなっています。
 加えて、私から、閣僚会議で説明した内容のうち、賃金について申し上げます。
 今年の春闘賃上げ率の第1回集計では、定期昇給を含むベースで5%超と、30年ぶりの賃上げとなった昨年を大きく上回る結果となりました。
 本日公表された第2回集計結果においても、定期昇給を含むベースで5.25%、ベアで3.64%と力強い結果となっています。
 また、春闘における賃上げは、5月頃から、働く方々の実際の賃金に表れ始め、6月半ばまでに約3分の2の企業で反映されるというのがこれまでのパターンでございます。
 このため、今後、春闘の結果を反映し、一般労働者の給与の伸びが高まっていくことが見込まれております。
 物価上昇を上回る賃金上昇を実現するためには、賃上げが、雇用の7割を占める中小企業に波及し、すそ野の広い賃上げを実現していくことが重要です。
 そのためには、重層的な取引の先端に至るまで、サプライチェーン全体で、労務費の適切な価格転嫁と適切な製品価格の設定が行われること、「良いモノには値が付く」ということを新たな社会通念として定着させることが極めて重要ではないかと考えているわけであります。
 この他、会議の詳細につきましては、後ほど事務方から説明をさせていただきます。
 私からは以上です。

2.質疑応答

(問)今、ご報告のあった3月の月例経済報告では、政策態度の文言が修正されました。主には、日銀の金融政策見直しの話があったのに加え、「政府と日本銀行は、引き続き緊密に連携し、経済・物価動向に応じて機動的な政策運営を行っていく」といった文言に変更されました。この修正理由と、ここに込められたメッセージについて、大臣のお考えをお聞かせ願えますでしょうか。
(答)今月の月例経済報告の政策態度の記述の変更といたしましては、ただ今ご指摘いただきましたが、一つは先日の日銀による金融政策の変更を受けて、これを引用する形で言及している。これまでもそうしておりました。
 そして、先日の金融政策決定会合において、日本銀行は様々な指標や、また賃上げの動き等を踏まえて最適な判断をされたと私は受け止めております。
 また、デフレ脱却を確実なものとし、新たな成長型経済への移行に向け、政府と日銀が引き続き緊密に連携し、経済・物価動向に応じて、機動的な政策運営を行うことの重要性をかねてより私どもは考えておりますが、これを記載したわけであります。
 政府といたしましては、何よりもデフレに後戻りしない、そういう状況をつくること、そして、そのためには実体経済を強くしていく必要があると考えているわけであります。
 春闘の力強い賃上げの流れを、中小企業や全国津々浦々の皆様のところへ波及させ、物価上昇を上回る賃上げや価格転嫁、これが社会通念となるように、中小企業の省力化投資支援、価格転嫁の促進、三位一体の労働市場改革や国内投資の拡大など、これまで既に経済政策で打ち出していたこういったものを、あらゆる政策を総動員して取り組んでいきたいと考えているわけです。
(問)関連しまして、基本的な政策態度のところなのですが、前月、2月月例では記載されていました「大胆な金融政策、機動的な財政政策、民間投資を喚起する成長戦略」という、いわゆるアベノミクス、三本の矢と呼ばれる文言が今回から削除されています。異次元緩和を終了したタイミングでこちらが削除されたのは、何かのメッセージがあるのではないかと勘ぐってしまうのですが、これが削除された理由、意味合いについて教えてください。
(答)岸田内閣においては、従来よりも、アベノミクスをはじめとしたこれまでの経済政策、対策の成果の上に新しい資本主義の取組を進めると申し上げてきております。
 今月の政策態度においても、あらゆる政策手段を総動員して、デフレ脱却と新たなステージへの移行を目指す、ここが強調しているところでございまして、これも従来からずっと申し上げていることであります。ですので、この方針を改めて明確にしたものでありまして、特に大きな意味というものがあるわけではございません。
(問)デフレ脱却の件なのですが、日銀によるマイナス金利政策の解除や最近の物価上昇などを踏まえて、デフレ脱却宣言を出すのではないかというような関心が高まっていますが、脱却に向けての現在の大臣のご認識について教えてください。よろしくお願いします。
(答)私たちは、このデフレの脱却というのは、ある一時点の点を示すものではなくて、全体の経済の流れを社会的な事象として、捉えていくとこれまでも説明を申し上げております。
 そして、「デフレ脱却」とは、「物価が持続的に下落する状況を脱し、再びそうした状況に戻る見込みがないこと」、その状態をつくり出したい。その判断は、金融政策の変更そのものと連動するわけではありません。ですから、私どもとすれば、デフレ下で定着をしてしまった、「賃金も物価も変わらない」と、なかなかそういったものが伸びないという中で、結局コストカットをする、そういった縮小傾向の形ができてしまっておりました。そういった社会通念を変えて、熱量あふれる経済の新たなステージに向かって進んでいきたいと考えているわけであります。
 ですので、今の時点で、このタイミングのデフレかインフレかではなくて、そうした全体の社会的な経済動向として、そういった状況に再び戻ることのないような、そういう力強い自律型経済をつくるように頑張っていきたいと思っております。
 また、デフレの脱却の判断につきましては、いわゆる消費者物価、GDPデフレーター、GDPギャップだとか、ユニット・レーバー・コストといった指標に加え、賃金の上昇、企業の価格転嫁の動向、物価上昇の広がりや予想物価上昇率など、様々な指標の動きを丁寧に見ながら適切に判断していきたいと考えております。

(以上)