新藤内閣府特命担当大臣記者会見要旨 令和6年2月27日

(令和6年2月27日(火) 18:22~18:33  於:中央合同庁舎第8号館1階S108会見室)

1.発言要旨

 本日は、今春の実行計画の改訂に向けて、短期の課題に加えて、我が国に物価上昇を上回る持続的な賃上げを定着させるための議論を行いました。
 足元では、経済の重要な指標である株価について、日経平均株価が史上最高値を更新し、4万円台も視野に入ってまいりました。
 私たちとすれば、デフレ心理とコストカットの「縮み志向経済」から完全に脱却し、物価が適度に上昇する中で、それを超えた賃上げが消費を後押しし、その結果、新たな投資を呼び込む好循環を実現する経済を目指していきたいと思っております。
 その際の鍵となりますのは、何といいましても「物価高に負けない賃上げ」であります。
 今年は、所得税・住民税の減税等に加え、「物価高を上回る可処分所得」を実現したいと思っています。この好循環を来年以降も続けていくためには、春季労使交渉の議論に加えて、労働生産性やマークアップ率の向上を通じた「付加価値の拡大」が不可欠と考えております。
 労働市場改革を進め、我が国企業が、能力ある若手や、労働意欲のあるシニア層に、労働機会を提供できるようにするとともに、非ホワイトカラーの職種についても、スキル標準の整備などを通じ、ノウハウのある労働者が高い賃金を得られる構造をつくり上げていきたいと考えます。
 非正規雇用労働者の就労意欲を高めるためにも、106万円、130万円の「年収の壁」に対する支援策の活用拡大も図ってまいります。
 「ジョブ型人事の導入促進」につきましては、企業の実態が千差万別であることに鑑みて、自社のスタイルに合った導入を各社が検討できるよう、導入している多数の企業にご協力いただき、導入のプロセスや内容について指針を取りまとめ、多様な情報提供を進めてまいります。
 企業側には、人手不足の中で、仕事をしたいシニア層に仕事の機会を提供するため、個々の企業の実態に応じて、役職定年や定年制の見直しなどをご検討いただきたいと思います。
 総理からは、今春の実行計画の改訂に向けて、委員の皆さまと私を含む関係大臣への協力要請がございました。
 以上です。

2.質疑応答

(問)閣議後会見という形での質問が2つと、あとは新資本主義のことで1つお伺いします。
 まず冒頭ですが、デフレ脱却についてどう判断していくかという認識を伺いたいのですが。先般、いわゆるミニ白書が出されまして、昔から4条件とされているものの中で、需給ギャップとユニット・レーバー・コストで判断するのは慎重であるべきという記述が盛り込まれておりました。これについて我々はどう解釈すればいいのか、どのような指標を用いてデフレ脱却を判断されるのか、大臣の現在のご見解をお願いします。
(答)政府としては、「デフレ脱却」というのは、「物価が持続的に下落する状況を脱し、再びそうした状況に戻る見込みがないこと」と定義しております。
 今回公表した日本経済レポート、いわゆるミニ白書と呼んでいるものでありますが、これについてはご指摘の記述がありますが、この部分は、「経済全体の動向について、様々な角度から総合的に確認していくことが重要」ということを記した文脈の前段として触れたものであります。
 デフレ脱却の判断は、これまで私も何度か申し上げましたが、物価の基調や背景を総合的に考慮して判断していく、こういう問題だと思っておりますし、これはいわゆる消費者物価、それからGDPデフレーター、更にはGDPギャップ、ユニット・レーバー・コストといった指標に加え、賃金上昇、企業の価格転嫁の動向、それから物価上昇の広がり、更には予想物価上昇率などの幅広い角度から総合的に経済・物価動向を確認していきたいと考えているわけです。
(問)関連しましては、今朝、総務省のほうから全国の消費者物価指数が発表されまして、ぎりぎりと言っていいのでしょうか、コアで2.0%でした。それを巡っては、先週、日銀の植田総裁が「デフレではなくインフレの状態にあると考えている」とご発言されております。この発言についての大臣のご見解を伺えればと思います。
(答)私も、ちょうどそのときは同席しておりました。植田総裁から、今ご指摘のようなご発言がありました。私たちが目指しておりますのは、いわゆる30年間のデフレ感という中で定着した、賃金も物価も変わらないと、上がっていかないと、こういう社会的なみんなの通念というか、そういう感覚があったと思うのですが、それらを払拭して、今回、熱量溢れる新しい経済のステージへ移行させようということを申し上げております。
 ですから、一時的な点を捉えて、物価上昇率がプラスになったからデフレ脱却かということではなく、もう少し大きな幅の中で、経済の動向が、日本のステージが変わるのだということを目指していきたいと。そのためにも、総合的な観点から、そして幅広い角度から経済を分析しながらチェックして、そしてまた確認していきたいと考えているわけです。
(問)実現会議のほうで1点お伺いしたいのですが、景気の好循環に向けては、実質賃金のプラス化が欠かせないということで、我々も21か月連続でマイナスというのを報じているわけですが、今日の会議の資料などを見てみますと、そもそも実質賃金の指標について、帰属家賃を除くのはどうかというような論点が出されていました。
 こういったことについては、そもそも、もしそうであればそういった指標を我々が報じていけるような指標を出していただきたいぐらいなのですが、これについて何か大臣のお考え等があれば教えてください。
(答)本日お示しした基礎的な資料においては、賃上げ率と生鮮食品を除く総合、いわゆる消費者物価指数の推移をお示ししたわけであります。
 生鮮食品を除く総合、あるいは総合の指標については、従来より日本銀行や、それから私たち内閣府が経済の運営を検討するに当たっては用いております。ですから、今回は賃上げ率を議論する上で、参考としてこういう考え方も、こういう見方もありますということでお示しいたしました。
 今後も、厚生労働省が毎月勤労統計を含めて様々な資料を出しておりますが、こういったものも含めて経済運営を図っていくと、これに変わりはございません。
(問)会議のほうでお伺いしたいのですが、会議の論点の中で、非ホワイトカラーについて指摘がありました。今回の会議でも、総理の発言の中でも「こうしたノウハウのある労働者が高い賃金を得られる構造をつくり上げていく」という発言もあったと思うのですが、今回の非ホワイトカラーの考え方の意義と、また今後の方向性、これをお伺いできればと思います。
(答)今後、デジタル化が更に進展していく中で、一般のホワイトカラーへの労働需要が少なくなるおそれが時々指摘されます。正にデジタル技術者のリ・スキリングに加えて、高賃金の非ホワイトカラー職を確保していくことも重要だという意見も今日、出ております。
 非ホワイトカラー職の確保につきましては、何といっても物価に負けない賃金の支払い、これを労働者に対して行われる環境整備することが重要だと考えているわけであります。
 ですから、IT分野等と同様に、非ホワイトカラー職についても労働者のリ・スキリングを強化して、適切な賃金を支払う体制を是非整備したいと考えています。
 民間の業界団体等がスキルを定めて評価する、いわゆるスキル標準の策定には、検定の合格を目標とする民間の教育訓練講座について、受講費用の補助などの支援を拡充していきたいと考えておりますし、リ・スキリングそのものを更に強化していきたいと考えているわけです。
(問)本日の会議について1点お伺いさせてください。本日の会議資料で、「経営力のある企業により多くの労働者を雇用してもらうように支援する」と記載されています。経済団体のトップの方も「その企業の新陳代謝を止めないようにするべきだ」というふうにおっしゃっていて、これは経営力のない企業が淘汰されるということを認めるというか、ある程度そういうふうな流れをもう容認するということだと思うのですが、この辺について大臣のお考えをお伺いできればと思います。
(答)私たちが考えているのは、まずこの労働市場を流動化させて、三位一体の労働市場改革の中でそもそもの市場の円滑化というものをしていかなければならないと思います。それから、リ・スキリングを充実させる。その中には、経営環境の改善とか、経営計画だとか、そういった自分の企業をより強くしていくための努力に対しての支援というものも、これは私たちは入れているわけなのです。
 ですから、経営力のある企業を更に支援して、そこに多くの労働者を雇用してもらいたいと。ですから、経営力のある企業に多くの労働者をというのは、そういう企業をやはり応援していくための姿勢というものも我々は持っているとご理解いただきたいと思います。
 特に何か、今ある企業の選別をするとか、そういったことは考えておりません。

(以上)