新藤内閣府特命担当大臣記者会見要旨 令和6年2月13日

(令和6年2月13日(火) 9:54~10:11  於:中央合同庁舎第8号館1階S108会見室)

1.発言要旨

 (冒頭発言なし)

2.質疑応答

(問)賃上げに関連してなのですが、週末にご出演したテレビ番組のほうとも関連してお伺いいたします。賃上げに関して具体的な施策を政府がいろいろと講じているのも承知しているのですが、番組の中で大臣や経団連の十倉会長もおっしゃっていたように、賃上げや価格の転嫁に関して、社会通念だとかソーシャルノルムを変えてくのが重要なのではないかというようなご発言がありました。
 それが多分、政府としての問題意識でもあると思うのですが、人々の意識を変えていくためにどのようなことに取り組んでいくべきとお考えか、また、それに関して大臣のメッセージみたいなものがあればお伺いいたします。お願いいたします。
(答)今般の春闘、またそれに関連して、日本全体が、物価上昇を超える賃金上昇率をいかに達成するかというのは至上命題だと思っています。
 そして、私たちの国は今、最大の転換のチャンスを迎えていますが、これを確実な流れとして次の経済に移行するためには、まずここから始めなければならないとの強い思いで、総理を先頭にして我々はこの実現に向けてあらゆる施策を動員していこうと思っています。
 個別の施策一つ一つのことを連関させることは当然なのですが、併せて、物価が上昇したらそれを超える賃金上昇が起きるということは、その賃金を支払え業績向上、業績拡大がなければ、経営者は賃上げに踏み切れないわけです。ですから、物価が上がっているから、価格が上がっているので、それを製品価格、また下請取引価格の物件費と労務費に転嫁させると。その前提として、その企業は業績が拡大する。なぜならば、自分の売上げは、販売価格が上がれば売上げ価格は上がるわけですから、そこを実現できているかということが問題で、そうだとすると、大企業、大手の企業と、下請け契約や関連の取引をしているところの受発注の価格が上がらないことには賃上げもできないのではないかという問題意識がございます。
 そこで、経団連もそこを一生懸命にやっていただくことになっておりますし、そういう意味でも、私たちもそこで精一杯のお手伝いをしたいと。だから、公取がガイドラインをつくってみたり、価格交渉シートまでつくって、是非活用していただきたいということをお願いしているわけです。
 そして、何よりも大事なことは、社会全体が経済の成長に合わせて自分たちの所得も変わっていく、そして取引価格も変わっていく、ここを通念として持つことによって全体の経済が回る、それが実現できるのではないかと。
 これまで私たちの国は30年間にわたって、結局、物価が突発的に上がっても、それはコストプッシュであって、全体の価格は上がらない、賃金も上がらない、業績も横ばい。その中で、できるだけ切り詰めて、何とかこの会社を維持しながら給料を払っていこうという、そこから、いつの間にかそれが固定観念になっていないかというところ、ここを是非、しっかり訴えていきたいと思っております。
(問)関連しまして、同じく日曜日のテレビ出演の件で。新藤大臣は、日本の設備の使用年数が長くて、更新に向けた投資が必要だと討論の中でおっしゃっていました。一方で、足元のGDPを見ますと設備投資は2期連続のマイナスとなっておりまして、また、企業が設備投資にお金をかけても、インフレによって、実質で見るとあまり満足な投資ができていないのではないかという、そういった指摘もあります。そういった中で、政府として、設備投資を伸ばしていくためにはどのような対応が必要と考えていらっしゃるでしょうか。お願いいたします。
(答)今はまず、設備投資の計画自体は非常に高い伸びを示しています。ただ、実態が追いついていないという現状があります。ですから、いよいよもって経済を拡大させていくためには、現状の設備ではなくて、それを超える生産性を持たないと経済の拡大に追いついていかないという状況が見えてくるわけです。
 しかも、日本は長い間のデフレの中で設備投資を抑制的に行ってまいりました。結果として、G7の中でずっと低いほうに、設備の使用年数が長いという状態に陥っていると。ということは、これは国の産業界として、設備を更新しないことには、今後の世界の競争の中で、生産性の向上競争の中では設備が古くては勝ちようがないという状態に陥っているわけです。
 ですから、計画を立てて実行できる、それは将来の業績拡大が見込めるかどうかという、そういう状態を、予見性を高めていくことが設備投資を後押しすることにもなると思いますし、我々とすれば、そういった設備投資に対する様々な税制や補助金、こういったものを手厚く今回の経済対策で手当てしたということでございます。
(問)私もご出演された番組の中でのことなのですが。少し先ほどの質問と重なる部分はあるのですが、大臣は、中小企業の賃上げが特に重要ということで、価格を適正なものとするということだったのですが、先ほどございました公取委との連携ですとか、中小企業の賃上げというのがなぜ重要なのか、改めて教えていただけますでしょうか。
(答)まず春闘でよい結果を出すことが重要なのですが、経団連にしても所属されている企業というのは大企業で、数とすれば非常に少ない状態です。
 雇用者全体の7割が中小企業ですから、組合にも参加していない、春闘の影響を直接被ることのない、そういった方々も含めて、日本中のあらゆる階層で物価高に見合った賃金水準、可処分所得の向上、そして売上げの拡大が見通せる、そういった形をつくりたいと願っているわけです。
 その上で、長年続いているのは、大企業とすれば、できるだけ発注価格を下げて切り詰めた中で利益を確保したい。そして、消費者に対しても、製品の値上げのない中でそういった仕事をしていこうと。こういう中で、結局切り詰められるのは下請け、孫請け、そういう中小企業・小規模零細に至るまでのそこに一番のしわ寄せが起きていると。
 逆に今回は、大企業が賃上げするならば、それに匹敵する部分が製品価格にも反映されて、また受発注価格にも反映されて、結果、中小企業の受注価格が上がる。これによって初めて安心して自社の社員に対する賃上げができると、こういう構造が出来上がってくるので、そこのところを是非、重視していきたいと思っているのです。
 あろうことか、これは幾つかの声でございますので、データとして明らかになっているわけではありませんが、あえて私は番組でも申し上げましたのは、こういう状況にあっても、まだ大企業から価格を下げてくれと、値下げしてくれという圧力があるのだというのは、私が地元を含めて様々な企業の方々とお会いするときに、そういう声が聞こえます。
 これはやはり大事なことで、それぞれ事情があると思いますが、結果、大企業だけ賃上げがなされても、その賃上げの分を下請け価格の発注価格を圧縮することで原資をということになってしまえば、これでは全体的な社会通念になり得ませんよね。
 だから、そこは、私たちは誰かを悪者にするではなくて、実態としてみんなで安定的な物価成長の下で経済は伸びていく、その大前提はそれを上回る賃上げ率があって、可処分所得は常に維持されますよという状態をつくること、それには、やはり投資、新しい分野への挑戦、そしてスタートアップ、様々な経済的な刺激が必要だと。
 だから、私が今、それを全て一つのところに、総理からの御指示というのは、そういった政策を一つのところに集約させると。そして結果的に、詰まるところ、それは子育て、それから社会保障、ここがしっかりしていなければ経済基盤はできませんから、そういったことにつながっていくと。
 この全体の枠組みというのを、是非皆様に伝わるように、岸田内閣が何をやろうとしているのか、日本は今、どう変わらなければいけないのかということを、それぞれの立場の方々に伝えられるようにしたいなと思っているわけです。
(問)日曜日のテレビ番組で大臣が「日本の65歳は世界一元気である」というご発言をなさったのが、インターネット、SNS上で少しネガティブに取られているような節もあるのです。それに関して真意がいま一つ伝わっていなかったのかなという懸念もあろうかと思いますが、これについて、改めて、どのような思いでそういったご発言になったのか教えていただけますでしょうか。
(答)日本の76歳の健康寿命、疾病状況というのは、世界の65歳に匹敵する。日本の76歳は世界の65歳並みに若いということなのです。そして、我が国の人口構造は少子高齢化で、これから高齢者がまた更に増えていくわけですよね。それで、この生産年齢人口が2030年代で急激に減少していくというネガティブな状況がございます。
 しかし、25歳から74歳までに10年、その人口の枠を変えると、ここは2040年代までは、まだ横ばいなのです。しかも、65歳以上の方々は非常に健康を保持していて、かつ就労意欲がまだまだあると。しかし、一律定年とか、役職定年とか、定年制によって自分の満足できる場所、意欲があって能力があるのに働く場所がないという問題が起きます。一方で、世の中をあげて人手不足です。
 だから、こういった要素をつなぎ合わせていけば、健康で、そして元気で活躍できる生涯現役社会というのは、日本においては世界の国よりも非常につくりやすい状態になっていて。でも、それは若い頃と同じような、フルタイムで時間を毎日というものではないということかもしれません。
 ですから、女性の就業も含めて、正規職員という在り方も違うやり方があっていいではないかと。それから、定年制の問題も、どのように取り扱えるかといったことも考えようではないか。それから、地方創生の観点も含めて、元気で活躍していた人たちがいったん定年を迎えた。では、その次の活躍先として、そういった能力を必要としている場所というのは地方にもあるかもしれないと。それから、今回、法律になりますが、2拠点生活というものも、もう既に始まっています。
 ですから、私たちは、こうした新しいステージというのは、経済だけではなくて、暮らし方とか働き方、社会の在り方自体も新しくできるのではないかという意味において、世界にも類を見ないほど高齢化のスピードが進み、かつ高齢者が一段として増えていく、そういう国はあまりないのです。他の国は、もちろん高齢化が進むのですが、移民であったり人口流動性が高いので、若い世代は常に入ってくると。違うけれども、私たちはこの特性を踏まえて、日本なりの新しい成長スタイルをつくれるのではないかと。これは大いに可能性のあることで、ネガティブな要素は一つもないのではないかと思っています。

(以上)