新藤内閣府特命担当大臣記者会見要旨 令和5年12月22日

(令和5年12月22日(金) 17:58~18:20  於:中央合同庁舎第8号館1階S108会見室)

1.発言要旨

 私からいくつか報告がございます。まず、先日15日(金)の会見において公表いたしました「新たな経済に向けた給付金・定額減税一体措置」につきまして、一連の給付を速やかに実施するため、先ほどの閣議において約1.1兆円の予備費の使用が決定されました。
 既に制度概要や「ファストパス」の事例等は自治体へ周知しているところでありまして、引き続き、各自治体が簡素迅速に給付を実現できるよう、政府としてもきめ細かくサポートしていきたいと考えております。
 次でございます。本日の臨時閣議で、「こども未来戦略」と「全世代型社会保障構築を目指す改革の道筋(改革工程)」を閣議決定いたしました。「こども未来戦略」と「全世代型社会保障の改革工程」については、その狙いをポイントとしてまとめましたのでご報告したいと思います。
 まず1ページ目でございますが、少子化対策と全世代型社会保障の意義ということでございます。少子高齢化・人口減少は我が国が直面する最大の危機。若年人口が急激に減少する2030年代に入るまでが、この少子化のトレンドを反転させるラストチャンスだと思っているわけであります。
 その意味において、少子化対策の目的は個人と社会全体の幸せをあわせて実現すること、そして若い世代の誰もが、結婚やこどもを産み育てたいという希望がかなえられる社会、将来に明るい希望をもてる社会を実現。結果として、少子化のトレンドを反転させるということを考えております。
 そして、ここにありますようないくつかのことをまとめました。大事なことは、今回の工程表は、たくさんの項目にそれぞれの施策がずっと掲げられているわけでありますが、何のために行うのか。社会保障、そして全世代型社会保障、また、こども未来戦略、これに対する意義や役割をしっかりとご理解いただいた上で、この政策を進めていきたいと考えているわけであります。
 2ページ目でございます。今回のこども未来戦略の「加速化プラン」でございますが、これは総額3.6兆円に及ぶ、前例のない規模の政策強化を図るということでございます。それは、GDPに対するこども一人当たりの家族関係支出が11%から16%に向上いたします。結果としてOECDトップのスウェーデンに達する水準になるということでございます。さらには、国のこども家庭庁の予算は5割増しになりまして、2022年の4.7兆円から2028年には7兆円強に増加するということになります。
 そして、それぞれの予算につきましては、子育てに係る経済的支援の強化、所得控除に向けた取組について1.7兆円。それから、全てのこども・子育て世帯を対象とする支援の拡充に1.3兆円。共働き・共育ての推進は0.6兆円と。こういったものが主なものとして入ってまいります。
 それから、もう一つは、安定した財源という意味におきましては、既定予算の最大限の活用を行う。それから、従来続けてきた歳出改革を引き続き徹底して行っていく。そして、それによって得られる公費の節減の効果と社会保険負担の軽減の効果を活用するということでございまして、既定予算の最大限活用に1.5兆円、歳出改革による公費の削減で1.1兆円、さらには、歳出改革と賃上げによる社会保険負担軽減効果の範囲内における支援金制度の構築、ここで1兆円程度となりました。
 これらを実際に進めるために、それにはDXや新技術の社会実装の徹底をするということ、それからEBPMの徹底・実践による政策の検証を行った上で、国民一人一人への最適な社会保障サービスの提供の実現、そして歳出の効率化と生産性と向上を図ると。これはいみじくも今、私たちが経済財政諮問会議において、これから国の政策経済運営に対して進めていくポイントと同じと言いましょうか、この全体の流れの中で、特に社会保障についてはそういったことを実現させていこうということで打ち立てたものでございます。
 私からは以上です。

2.質疑応答

(問))本日、来年度当初予算案が閣議決定されました。一般会計の総額が112兆円と、今年度よりは下回りましたが、2年連続で110兆円台となりました。骨太の方針ではコロナ禍を脱して歳出構造を平時に戻していくとしています。今回の当初予算案は平時と言えるのか、あと、今後、財政健全化にどのように取り組んでいかれるのか、大臣の見解を伺いたいと思います。
(答)財政を健全に運営していくことは基本であります。そのためにも、やはり安定した経済成長が重要ということでございまして、両方を実現させていかなければならないと思っているわけであります。
 そして、我が国が「新しいステージ」に移行する転換点にあって、来年度の予算、今回出しました案というのは、現下の経済状況に対応するとともに、それから先送りできない課題、時代の変化に応じたこういった課題に対して挑戦し、変化の流れをつかみ取る予算になっていると考えております。
 そして、予算の内容においては、物価に負けない賃上げの実現に向けた予算面での対応を最大限図ると。また、ただいまご説明いたしました、こども・子育て政策、外交安全保障、デジタル化、そういった我が国が直面する構造的な課題の克服に向けた取組に重点的に予算を割り振っているということがございます。
 さらに、骨太方針に基づきまして、歳出改革の取組を継続し、特定目的予備費の減額など、歳出構造の更なる平時化を進める中で、新規国債発行額の減額も実現するなど、メリハリの効いた予算になったのではないかなと考えております。
 令和5年度の補正予算と併せまして必要な政策を実行することにより、日本経済をより一段高い成長経路に乗せていく中で歳出改革努力を継続し、経済成長と財政健全化の両立を図っていきたいと考えています。
(問)2024年度の予算案の位置づけについてお尋ねいたします。予算編成の基本方針によると、24年度予算は2023年度補正予算と一体として編成されたとのことですが、当初予算に対する御評価を伺えますでしょうか。
 先般の経済対策と補正予算について、新藤大臣は「第一弾」というふうな言い方をされていて、その後の予算編成に触れて「二の矢、三の矢を打ちたい」というふうな話もされていたと思うのですが、そういった連なりのあるものだというふうな御認識でしょうか。お願いします。
(答)総合経済対策と、その裏付けになる補正予算、これは正に30年ぶりの変革のチャンスをつかみ取るためのスタートダッシュを図るためのものであるということで、これまでも何度も説明いたしました。
 来年度の当初予算におきましては、総合経済対策の取組をさらに前に進めるために、そのための施策を盛り込みました。例えば賃上げにつきましては、診療報酬、介護報酬、障害福祉サービスなどの報酬改定において、現場で働く方々の処遇改善、令和6年度にベア2.5%を実現するということに向かっての対策。それから、保育士等の処遇改善や公立小中学校の教職員給与の改善、いわゆるエッセンシャルワーカーに対しても、春闘の及ばない公定価格でありますが、そこについても賃上げのモメンタムをきちんと打ち込んでいくということを考えております。
 それから、今年度5.2%、公共工事の設計労務単価を引き上げておりますが、これに加えて、賃金上昇の実勢を反映して、来年2月にも設計労務単価の改定を更にしたいと考えておりますし、また、トラックドライバーの賃上げは、法律に基づく「標準的な運賃」をさらに引き上げる予定でございますが、そういった施策を盛り込みました。
 また、供給力の強化、それから潜在成長率引上げのための国内投資拡大も経済対策の中の大きな柱でございましたが、今回の予算案において、GX経済移行債を発行して、官民のGX投資を支援する、それから光ファイバーや5G基地局などの整備といったDXの投資、そしてAIや量子分野などへの研究開発の推進、科学技術・イノベーションへの投資が対前年度150億円プラスで、1兆4,000億円の科学技術振興費が入っているわけでありますが、そういったものを盛り込みました。
 また、少子化対策といたしましては、「こども未来戦略」に基づく施策をスピード感を持って実行する。そして、児童手当の抜本拡充とともに、本来、再来年の2月からの支給でございましたが、来年の12月から初回支給にして、また更に支給を細かくできるようにいたしました。それから、幼児教育や保育の質の向上として、配置基準の改善と更なる処遇改善といったものを盛り込んでおります。
 令和6年度の当初予算は、日本経済を新たなステージに押し上げるための、さらにその意向を後押しするための施策を盛り込んだと考えております。そして、政府経済見通しでもお示ししておりますが、来年度にかけての民間主導の経済成長が広がっていき、2024年度の実質成長率1.3%程度、名目GDP600兆円を超える経済の姿を見込み、そして「成長と分配の好循環」の実現を目指していきたいと考えています。
(問)先ほど大臣もおっしゃられた令和6年度の経済見通しが先日、発表され、定額減税などによって所得が増加するという姿が示されています。この可処分所得の増加が、貯金に回るのではなくて消費につながっていくということが国内の需要を高めることに重要なのではないかと思うのですが、そういったことをどうつなげていくか、どう取り組んでいくかというお考えをお伺いさせてください。
(答)来年度、物価高を上回る賃上げが実現できるかどうか、とても重要なことだと思います。そして、先般、11月15日に政労使の意見交換を行いましたが、総理より、足下の物価動向を見据えて、来年の春闘では今年を上回る水準の賃上げのご協力を要請しております。
 政府としても、賃上げ促進税制の強化、それから中小企業の省力化投資への支援、価格転嫁対策の強化など、賃上げ環境の整備に取り組んでいきたいと考えています。
 併せて、そうした賃上げを促進するとともに可処分所得を上昇させて、賃上げと併せて物価上昇を上回る状況を確かなものにしたいということ、このために定額減税や給付金のことを進めるわけであります。そして、この取組を踏まえた上で、政府の経済見通しは、来年度は所得の増加率が物価上昇率を上回ることを見込んだということでございます。
 そして、所得の増加が着実に消費に結びつくには、賃上げの流れが一過性ではなくて今後も継続していくという認識を皆さんに持っていただいて、そして国民の皆様が将来に対する不安を軽減し、明るい希望が見えてくるといったことがとても重要だと思っています。
 ですから、構造的な賃上げを実現するためには、三位一体の労働市場改革、それから賃上げの原資となる企業の稼ぐ力を強化するための国内投資の拡大、そして、潜在成長率の引上げに取り組んで、日本経済を力強く民需主導の自立型成長経済にしたい。そのためのフロンティアの開拓やデジタル技術の社会実装を織り込んだ。
 何度も繰り返しになりますが、加えて、将来不安の軽減、それから安心をきちんと確保いただくためにも、少子化対策、それから教育や全世代型社会保障の構築を経済対策とパッケージにして総合的に取り組んで好循環を生み出していきたいと私たちは考えているわけであります。
 力強い経済の再生に向けて新しい光が差し込んで、そして今、これからそれが本格的に定着できるかどうか、非常に重要な転換点だと思っておりますので、様々な政策を総動員して、しっかりと対策を打っていきたいと思いますし、そのことは分かりやすく国民の皆様にもお伝えしていきたいと考えています。
(問)本日、こども未来戦略と社会保障分野の改革工程、あと、政府の予算案も閣議決定されました。戦略には様々な少子化対策が盛り込まれて、期待がある一方で、来年度分の関連財源として、予算案のほうに少子化のつなぎ国債となる部分で2,000億円を超える国債の発行も示されました。少子化対策とはいえ、将来へのツケの先送りという批判の声というのでしょうか、見方もあるかと思うのですが、その点について大臣の所感をお願いいたします。
(答)こども未来戦略「加速化プラン」の完了の2028年度までに3.6兆円の安定財源を構築するということを今、説明いたしました。
そして、安定財源を確保する2028年度までのこの間に財源不足が生じないように、必要に応じて、つなぎとしてこども・子育て支援特例公債を特別会計の負担で発行することにしております。財源が不足した場合に、それを保険料やその他のものでということになれば、これはまた国民の不安が増すわけです。
 ですから、財源不足が生じないように、この特例公債を特別会計の負担で発行する。それは、すなわち一時的な財源不足を賄うためのつなぎであって、特別会計の負担により発行しということは、特別会計の歳入の中で償還されるということになります。ですから、一般会計で発行する特例公債、いわゆる赤字国債とは性質が異なりますし、言わずもがなでございますが、この国債はPBにはカウントされない性質のものだと考えているわけであります。
 このこども・子育ての支援特例公債の償還期限、これも支援金制度が開始する2026年度から25年後の2051年度に設定しております。一般会計で発行する特例公債の償還期限は60年でございますが、それよりも短い設定として、次の世代に負担を極力先送りすることなく、今を生きる世代全体で連帯して負担を分かち合う、こういった設計にもさせていただいているということでございます。
(問)今日、未来戦略と歳出改革の改革工程が閣議決定されたと思います。総理のほうは、「社会全体で応援する機運を盛り上げていく必要がある」というような発言もありました。一方で、負担増になるのではないかというような国民の懸念の声も、支援金を含めてあると思います。ただ、未来戦略には2030年代が少子化反転のラストチャンスだということも書かれていて、非常に重要なところなのかなというふうに思います。こういったことを含めて、大臣はどのようにこの政策を実行していくか、大臣の思いのほどを教えていただけますでしょうか。
(答)改革工程、それからこども未来戦略でやるべきことは、きちんと項目を整理して、そしてそれをいつまでに、どういう状態でやるかということを今回、発表したわけです。そして、財源についても、安定した財源を確保して、それを段階的に進めていきますということを申し上げました。
 そして、支援金の制度のついても、これは何度も説明しておりますが、やはり、より丁寧な説明が必要になってくるだろうと思いますし、一番大切なことは、これが経済対策とセットにしていかなければならないと。ですから、経済が上向き、企業の業績が向上し所得が向上する。その中で、分母である国民所得が増えていくと。
 一方で、分子である子どもに対する政策だとか社会保障、こういったものの負担が、これはやはり必要なものときちんとつくっていかなければいけない。だとするならば、その負担をいかに抑制しつつ、そして国民の皆さんに納得いただける範囲でこれをお願いするかと。新たにつくる支援金については、新たな負担を生じさせないような工夫をするということでございますし、何よりも大事なことは、経済成長によって財政力を強化することによって、それらが担保されるということではないか。そのことを丁寧に国民の皆様に一つ一つお伝えしたいと思います。
 先ほど、ここの資料でも申し上げましたが、社会保障の概念、これはもともと変わっていないのです。社会の連帯であるということ、これはもう法律をつくったときからの、ずっと基本でございます。しかし、やはり社会保障は高齢者が受けるものであって現役世代は負担のみだと、こういう考えがあったことも事実であります。ですから、そこは、なぜ全世代かと言えば、それは子どもを育てたり、それから産んだり、それから子育てをしながら働いていく、そのことがきちんとみんなで納得して安心できなければ、その自分たちが高齢者になったときに支える人がいなくなる、支える経済がなくなると。
 それから、そもそも今、現存する、生きている私たちが、子どもたちも含めて高齢化したときに、次の世代がきちんと安定して活躍できる社会をつくらなければ、これは自分たちの未来もないのだと。ですから、自分と家族と将来、これに対して、きちんと給付と負担のバランスが取れた中で社会保障を全世代で対応していこうではないかと。これは新しい基軸です。しかも、それは今、少子高齢化・人口減少のこの日本だからこそ、やはり転換しなければいけないことなのだと。そして、本当に頑張って皆さん暮らしているわけですから、その暮らしやすさをできるだけ政府とすればお手伝いしながら、みんなでこの国を元気で明るいものにしていこうと。このことをきちんと総括的なパッケージにして伝える必要があるのではないかなと。
 この制度のここが拡充されました、今までの支給のお金が増えましたではなくて、それが何を意味するかということをきちんと説明していきたいと考えています。

(以上)