新藤内閣府特命担当大臣記者会見要旨 令和5年12月11日

(令和5年12月11日(月) 19:09~19:29  於:中央合同庁舎第8号館1階S108会見室)

1.発言要旨

 お集まりいただきましてありがとうございます。まず、こども未来戦略会議の概要について、御報告を申し上げます。
 本日は「こども未来戦略」の素案をお示しし、議論を行いました。この素案は、前回10月2日のこども未来戦略会議で、総理より、「加速化プラン」に掲げる各種施策について、関係する会議体での議論を深め、成案を得るように指示を受けたものを踏まえまして、各省庁における検討の結果を取りまとめたものでございます。
 「戦略」素案のポイントは、児童手当の抜本的な拡充やこども誰でも通園制度など、「加速化プラン」の各施策について、具体的な実施時期や法律上の位置づけ、要件などを記載いたしました。
 また、高等教育費の支援の拡充や、貧困や虐待防止など多様なニーズへの支援の強化といった、新たな施策を盛り込んだこと。
 そして、少子化対策を支える安定的な財源の具体的な内訳と、その金額や支援金制度の骨格等を含め、安定財源確保の枠組みを具体化したことでございます。
 今回、総額で3.6兆円に及ぶ、前例のない規模での政策強化の全体像を明らかにいたしました。
 この財源の具体的な内訳、金額でございますが、まず既定予算の最大限の活用等で1.5兆円程度、歳出改革による公費の節減で1.1兆円程度、新たな支援金制度による1.0兆円程度の確保を図るという案が示されました。
 これにより、我が国のこども1人当たりの家族関係支出は、現在の11%から16%程度になると見込まれております。OECDトップのスウェーデンの水準が15.4%でございますが、今回の対策によって我々は16%程度になると見込んでいるわけでありますから、画期的な前進が図られるのではないかと思います。
 本日頂いた主なご意見につきまして、概要を申し上げます。
 まず、「戦略」案の施策の進め方に関しては、少子化対策の各施策について、エビデンスに基づき検証し、真に効果のある施策に重点化していくべき。
 対策の全体パッケージをわかりやすく、平易なメッセージで、国民に分かりやすく伝えること、ご理解いただけるように伝えることが重要であるというご意見がありました。
 また、新たな導入でございます支援金制度に関しては、単なる拠出としてではなく、新しい分かち合い、連帯の仕組みと捉えることが重要である。
 また、こども・子育て支援は、日本経済の成長と持続可能性のためにも不可欠であって、その費用は、その恩恵を受ける企業を含む国民全体によって大切な投資の意味を持つというご意見がございました。
 支援金の徴収を医療保険者が担うことは、これまでも世代を超えた支えあいとして発展してきた経緯があることからも、一定の合理性があるのではないか、こういうご意見もありました。
 さらに、歳出改革に必要な社会保障の改革工程に関しては、社会保障を持続可能なものにするための改革は、国民の将来不安の解消に不可欠ではないか、こういう趣旨のご発言がございました。
 最後に、総理から締めくくり発言といたしまして、制度や施策を策定・実施するだけではなく、その意義や目指す姿を国民一人ひとりに分かりやすいメッセージで伝えるとともに、社会全体でこども・子育て世帯を応援する機運を高めていくことが必要であること。  
 こうした社会の意識改革を車の両輪として進めるべく、加藤大臣を中心に、政府を挙げて取り組むことについて指示がございました。
 本日の議論と今後の与党との調整を踏まえまして、今月内に開催する次回のこども未来戦略会議において「戦略」として取りまとめていく。要するに、こども未来戦略の案を取るというかたちで取りまとめていきたいと考えております。
 詳細につきましては、この後の事務方ブリーフィングでご質問いただければと思います。

2.質疑応答

(問)私のほうからは少子化対策の財源について伺います。
 先ほど御説明いただきましたように、既定予算の活用で1.5兆円、公費削減効果で1.1兆円、支援金制度の構築で1兆円、計3.6兆円を2028年度までに確保すると。まず、なぜそのような金額になったのかを教えてください。
 さらに、財源の確保を巡っては実質的な負担が生じないようにするとされています。例えば支援金制度については、政府が関与できない民間企業による賃上げ、これについても盛り込んでおられます。その範囲で構築するということですけれども、本当に実質的な負担が生じないようにできるのか、大臣の御見解を伺います。
(答)まず、これまでも「こども未来戦略」、「加速化プラン」につきましては3兆円半ばということでおおむねの枠を設定しておりました。
 その根拠は我が国のこども1人当たりの家族関係支出を、OECD、世界のトップの水準に持っていって、そして、少なくともこどもを産み育てる際に、教育に関する、子育てに関する支出の負担の心配を払拭しようということ。それから、こどもを育てていくことがいずれ国の将来を支えることになり、それは若い世代の人たちも自分たちがこの年齢となって高齢者になった時にそれを支えてもらうという、国の連環の中でとても重要なことであると。
 特に人口減少・少子高齢化を迎えている我が国において、こうした全世代が連帯しながら、自分たちのために、そして自分たちの未来のために、そしてやがて生まれ来る次の人たちのために、こういう持続可能な社会保障制度をつくらなければいけないと。
 それは経済成長と連携しながら進めていくことであって、そこには歳出改革の努力とともに経済を力強いものにしていく取組が必要だということだと思います。
 賃上げに関するご質問がございましたが、まず、民間が行う「賃上げ」がもたらす効果ということに関しましては、賃上げが「加速化プラン」の財源になるものではございません。
 まずは、政府としては持続的で構造的な賃上げの実現を目指し、三位一体の労働市場改革、総合経済対策の実施などによって供給力の強化を図る、そのための環境整備をまず強力に進めているところであります。
 そして、賃上げを先行することで経済が活性化し、経済基盤が強化することで国民負担率の分母である国民所得を増やすことによって、国民負担に更なる軽減効果をもたらすということを私たちは期待しておりますし、それを実現したいと思っているわけであります。
 一方で「加速化プラン」の財源は正に既定予算の最大限の活用、1.5兆円程度です。それから、歳出改革による公費の節減が1.1兆円。更には歳出改革による社会保険負担の節減の範囲内における新たな支援金制度、1兆円程度、そういった枠を設定して、それによって確保を図るということでございますので、ここが一番肝になるところだと思うのですが、しっかりと国民の皆様にご理解いただけるように説明していきたいと思ってございます。
(問)今回のこども未来戦略案の中で、「日本には、子育てしづらい社会環境や子育てと両立がしにくい職場環境がある」というふうに国民が感じているとの記載がありました。少子化対策にはこうした職場環境の変化だとか社会全体の意識の変化が必要だと思うのですが、これに対して具体的にどのように取り組んでいくか、何かあればお考えをお伺いできればと思います。
(答)こども未来戦略で大事なことは社会全体が活性していくこと。それから、社会保障の役割、意義を全世代の皆さんに理解いただくことが重要です。それから、ちょうど結婚して家庭を持ち、その中でこどもができ、育てていく、そういう私たちの人生の様々な転換がございます。その中で社会全体としてこどもを産んでも育てやすい社会になっているという意識をつくることが重要だと思っています。
 今、あたかも子育てしづらい社会環境、職場環境、それのみが原因であるわけではないと思います。しかし、少なくとも行政としてご支援できる、そういうまず環境整備をできるという意味において、子育てをしやすい社会環境、それから両立しやすい職場環境を制度として整えていこうということを考えているわけであります。
 結局のところ、育児休業を取得しづらいという雰囲気がありませんかと。それから、育児休業取得への職場の理解というものが得られているかとか、さらには保育園の迎えや夕食、また入浴、就寝などの家庭内の育児負担が、ご夫婦で2人いらっしゃったとしても、それが一方に集中する、いわゆるワンオペになっていないか。
 それから、若い子育て世代の皆さんから時々聞きますのは、電車内でベビーカーを持ってスペースを取るとか、こどもが泣いてしまうと、それに対しての居づらい雰囲気が出るとか、そういったような声を聞きます。
 そういうところをできるだけ、まず、社会全体の環境と意識というものを変えていく中で、行政としてできるところはしっかりやろうと。
 「加速化プラン」というのは、その中の行政としてできることを正に加速して、この国の環境整備をしようということでございます。
 ですから、「共働き・共育ての推進」としての男性の育児休業取得率の目標を現行から大幅に引き上げる。それから、出生後、両親ともに育児休業を取得した場合には、28日間を限度に育児休業中の手取り収入が変わらないように雇用保険の給付率を引き上げます。
 また、実質手取りで10割相当になるということ。現状ですと、今までは手取りで8割相当だったんですけれども、ここを実質の10割、実感としての10割にする、こういうことも入れました。
 それから、育児休業を支える代替職員の確保など、体制整備を行う中小企業に対する助成措置も取組を入れております。
 さらに、こども・子育てに優しい社会づくり、そういった意味での意識改革といたしまして、公共交通機関等における妊産婦や乳幼児連れの方を含め、配慮が必要な方に対する利用者の理解・協力を啓発する取組ですとか、国の施設で優先案内や専門レーンとしてこどもファスト・トラックも設置しております。
 また、子育て関連の制度・施策を実施することと併せまして、何度も申しますが、意義や目指す姿を国民のお一人おひとりに分かりやすいメッセージで伝えること。そして、社会全体でこどもや子育て世帯を応援する機運を高めていく、いわば国民運動のような、そういうものが必要ではないかと。
 こども施策の量と質の拡充、それから職場や社会の意識改革を車の両輪として、正にそこが異次元で行うというのは、給付の充実ではなくて、負担と給付をバランスを取りながら、全世代、将来のためも含めたこういった国民運動を行っていこうと。それが今回の私たちのこども未来戦略だと考えております。
(問)若干、こども未来戦略会議と離れてしまうんですけれども、低所得者向け世帯の寄付に関して、18歳以下のこども1人当たり5万円追加給付するという方向で検討との報道が一部されておりますが、改めてこのあたりも含めまして、減税ですとか中間にいる方々に対する支援の検討状況を教えてください。
(答)中間にある方への支援につきましては、現在、正に与党と最終調整中でございます。ですから、近々、成案が得られた段階でお示しができるのではないかと考えています。
 そして、この制度設計は分かりやすく事務負担が少ない、「簡素」、そして「迅速」。特に低所得者の方々の支援を迅速に。さらには、できるだけ公平で「適切」な制度にしようと。この3つの観点のバランスを取りたいと考えています。
 そして、検討中の措置として住民税非課税世帯への給付、それから均等割のみ課税される世帯への給付、この上乗せ給付を考えているわけであります。こどもの数を踏まえて定額減税や他の給付措置とのバランスを確保しつつ、適切な支援となるように様々な調整を行っているということでございます。
(問)先ほどの質問のところとちょっと重なるんですけれども、財源について教えてください。
 財源の基本骨格、支援金制度について、歳出改革と賃上げで、その範囲内でというような表記があるんですけれども。総理もこれまでの予算委員会だとかで、国民負担率を維持する、もしくは引き下げる方向だというような趣旨のことも発言されているのですが、大臣の先ほどの御説明で私も理解したつもりですけれども、歳出改革とか賃上げができなかった場合、つまり実質負担率が上がってしまったような場合は支援金をもらわないというような考えなのでしょうか。その点を大臣に御説明いただければ。
(答)支援金の根拠となる歳出改革については、ここ9年間の歳出改革の実績を踏まえて、その中で設定しております。
 そして、これも大事なところですが、今回に合わせて歳出改革を始めるのではなくて、これまでの9年間、歴年やってきた歳出改革の努力を続けながら、本来、歳出がなされれば、それに応分の社会保険料の負担があるわけでございます。
 でも、改革がなされて、そもそもの社会保険料の負担が下がる可能性のあるところをこれまでの負担の範囲内で、そこの部分の保険料としていただくというかたちですから、実質の負担が増えないようにということで支援金の制度を設計していると。
 ただ、とても大事なことは、所得が同じである限りは支援金の負担は変わらないです。でも、その方の所得が増えれば、当然その増えた分に応じて社会保険料の負担も上がりますから。ですから、マクロとしての実質の負担増がないようにということでずっと説明をしているのですが、やはり心配な方は、賃上げされたらその分が支援金や負担に持っていかれるのではないかというご心配があるので、そういう構造にはなっていないんだということをお願いしつつ、社会保険料の伸び、それから国民負担の伸び、要するに社会保障費や医療費の伸びをどのように適切にコントロールしていくかというのは非常に重要な問題で。これからどんどんとサービスを受ける方が増えていくことは必然ですから、それにおいても最大の努力をしながら、それと併せて、今回使うのは既定予算の最大限の活用。この既定予算の最大限の活用が安定的にできるかは、経済成長が実現するかと密接に関係します。
 ですから、こういったものを前提としながら、一つ一つの歳出改革努力、それから経済成長の努力、こういったものを行いながら安定財源として国民の皆様に使っていただけるようにしたいと考えているわけです。

(以上)