新藤内閣府特命担当大臣記者会見要旨 令和5年10月30日

(令和5年10月30日(月) 19:17~19:28  於:中央合同庁舎第8号館1階S108会見室)

1.発言要旨

 それでは、本日、月例経済報告等に関する関係閣僚会議を開催いたしました。その概要を報告いたします。
 今月は「景気は、緩やかに回復している。」と判断を維持しています。これは雇用・所得環境が改善する中で、個人消費や設備投資の持ち直しが続いていることなどを受けたものであります。
 先行きについては、緩やかな回復が続くことが期待されます。ただし、海外のリスク要因に注意が必要です。特に今月は中東地域をめぐる情勢を追記しており、中東情勢が更に深刻化、長期化した場合、原油価格の更なる上昇につながり、我が国の物価、経済に影響を及ぼし得るため十分な注意が必要と報告いたしました。
 加えて、私から関係閣僚会議で説明した内容のうち、人手不足の現状と課題について申し上げます。
 非製造業を中心に幅広い業種で人手不足感が拡大している一方で、企業の人手不足対応の中身を見ると、省力化投資の割合が低く、人手不足が深刻な業種ほどその割合が低くなっていることが見て取れます。
 人手不足の業種においては人材の獲得も重要ですが、省力化・省人化投資により、少ない人手で大きな価値を生み出せる構造に転換する必要があると分析しております。
 こうした構造転換の実現には、投資だけではなく企業における業務改革と質の高い人材が鍵であり、正に省力化・省人化された職場で能力を発揮できる人材が必要となることから、そのためのリ・スキリングが重要になると考えております。
 今回の総合経済対策はこうした構造転換を後押し、加速するものとして行う必要があり、これを通じて投資の拡大と構造的な賃上げが実現していくことを期待しております。
 このほか、会議の詳細につきましては後ほど事務方から報告させていただきます。私からは以上であります。

2.質疑応答

(問)月例の閣僚会議では、資料で参考として労働力の増加余地について分析しております。月例の資料でこういった分析をするのは珍しいのではないかとも思いますが、こうした分析をした背景と理由について教えてください
(答)私ども、今日は様々な報告をいたしましたが、日本経済の現状を分析し、また月例の報告をする中で、これから政府が打ち出していく経済対策に一体それがどうつながっていくのかという観点から説明を少し加えさせていただいております。
 その意味におきましても、今回の参考資料で、人手不足の深刻化が我が国経済の大きな課題である、そして、その認識のもとで今後労働力が増加する余地がどの程度あるのか、こういったものも試算してお出ししたわけでございます。
 また、現在、新たに就業、または仕事時間の増加を希望しており、実際に働くことができる人口は約530万人ということが推計されます。人手不足の中でこうした方々が持てる力を十分に発揮することのできる環境整備が喫緊の課題であると考えます。
 仕事時間の増加を希望し、実際に増やせる人に対しては、「年収の壁」対策に加え、副業・兼業や転職を後押しすることなど、希望に応じて働ける環境を整備することが重要だと思います。
 また、仕事を探している人、働く希望があるが今は求職活動をしていない、こういう方につきましては、仕事内容や勤務条件等のミスマッチが課題であるケースが多いわけで、これに対しての効果的なマッチングやリ・スキリングの支援、また多様で柔軟な働き方の促進などが重要だと考えています。
 そして、このように働く意思と能力を持つ方々が持てる力を十分に発揮できるようにすることが重要であって、現在策定中の経済対策においては、こうした構造的賃上げを可能にするためにも、リ・スキリング、職務給の導入や労働移動の円滑化としての官民の求職、求人情報の共有化など、多様な働き方を推進する施策を盛り込むべく、今、検討を進めているということでございます。
(問)景気判断については、月例で緩やかに回復しているというのを維持されました。一方で先日、IMF(国際通貨基金)がドル換算の名目GDPで、本年2023年に3位だった我が国が4位のドイツに抜かれると見通しを示したことについて、お伺いできればと思っております。
 ドイツは我が国に比べて物価上昇率が高いことや、ユーロに対して円安が進んでいることなどが主な要因かとは思いますけれども、そもそもドイツは人口が我が国の3分の2程度であるほか、本年はマイナス成長の見通しでもあります。ショッキングをもって受け止める人も多かったと思います。
 取材では多くのエコノミストは、過去の政策等を踏まえ、一時的な政策変更で変わるようなトレンドではないとの見方が相次いだほか、数年でインドやイギリス、フランスにも抜かれると予測する方もいました。
 日本は戦後、焼け野原から復興して、旧西ドイツを抜き、世界2位の経済大国となった、そういった自信をもとに50年以上歩んできたと思います。足元で政府は総合経済対策に取り組んではおりますが、少し目線を中長期的な方向にしていただいて、今回の件の大臣の率直な受け止めと、もし今後10年、20年という先を見据えた大きなくくりで、日本経済の課題や対応策など、お考えになることがあればお伺いできればと思います。
(答)今、ご指摘のとおり、IMFの世界経済見通しにおいて、2023年名目GDPが日本はドイツに次いで世界第4位になる見込みだということでございます。
 この中には、実質成長率の見通しが、直近のドイツはマイナス0.5、しかし日本はプラス2.0と上回っているところもあるわけであります。しかし一方で、ドイツの物価上昇率が日本を上回っており、また、為替レートがドルに対してユーロ高、円安の傾向にある。こういったことでドルベースのGDP増減というのは為替レートの動向に大きく影響を受けることには留意をしなければならない。
 しかし一方で、ご指摘ありましたように、そういう数字ではなくて、やはり肌感覚として日本経済がこれから力強さをどう取り戻していくか。そして、私ども、総理から何度も申し上げておりますが、新しい経済のステージに持っていかなくてはならない。人口減少、少子高齢化、そして地方の過疎化が進み、様々な社会課題がございます。でも、それらを克服しながら、そうした状況でも成長していく国をつくらなければいけないし、今、その最大のチャンスが来ていると私は考えているわけであります。
 ですから、我が国の潜在成長率を高めるという意味において、供給力の強化と、生産性の向上を図る必要がありますし、更にやはり新しい技術を社会実装させていく、その中で課題を解決するとともに新たな産業やサービスをつくる。その地域で社会的課題の解決のために活躍できる、従事できる人々を増やし、その地域での生活が維持できるといったことも必要だと思います。
 一方で、大きな、宇宙だとか海洋だとか、様々な量子やAIも含めてフロンティアの部分に挑戦をして、現実にそれを社会実装させていくことが重要だと思います。それは中長期において時間はかかるにしても、それが実験のためや、実証で終わらないで、今やっていることは事業化を前提にして、その事業が社会に実装するまでやり抜く、こういう段取りが必要ではないかなと思っております。それを可能にするのは何と言っても政策連携なんです。
 一つの仕事を、例えば全自動のレベル4で自動運転を実現しました。そこで終わっては意味がないので、その自動運転で例えば物流の大動脈をつくって、その自動運転はやっぱりEVだったりFCVの商用トラックを開発する必要があるわけです。
 自動運転で持っていった品物を、その後、誰が運ぶんですかと。最終的には分配する時に、今度は次の新しい技術があっていいと思う。そこの地域にいる中小企業の流通の皆さんがいます。でも、その人たちが一気通貫で受発注ができるような、そういうDXを織り込んであげると。例えば自動運転の拠点には充電ステーションをつくるとか、幾つもの仕事を組み合わせて、そして新たな大きな効果を出していく。日本にはそういうことができる技術があるし、これまでも長い間の積み重ねで、組み合わせればうまくいくものがたくさんございます。そういったものを私はやる必要があると思います。
 またもう一つは、省人化、省力化投資の抜本強化は必要です。先ほど月例経済報告でも言いましたが、人手不足感の強い業種ほど省力化が進んでいない、省力化の投資がまだ足りないという結果も出てまいりました。
 さらには労働制約を開放するという意味において、高齢者や女性の皆さんがもっと働きやすい仕組みというのはあると思う。若い人にやる気を出してもらうためだけじゃなくて、特に一律の役職定年で、やる気があってできる方でも自分の能力をそこで使い切ることができないとか、そういうところも含めて全体的に私たちは経済を変えていかなきゃならない。また、そういうもろもろのものを総合的に今回の経済対策には盛り込みたいと思っているわけです。

(以上)