新藤内閣府特命担当大臣記者会見要旨 令和5年9月26日

(令和5年9月26日(火) 11:18~11:39  於:中央合同庁舎第8号館1階S108会見室)

1.発言要旨

 本日の閣議におきまして、総理より、総合経済対策の策定について、お手元の資料のとおり、御指示をいただきました。
 我が国経済は、コロナ禍での三年間を乗り越え、経済状況は改善しつつあり、3.58%という30年ぶりの高水準の賃上げや、名目100兆円の設備投資、さらにはGDPギャップの解消が進み、税収も増加しております。
 他方で、物価高が国民生活に大きな影響を与えており、個人消費等も力強さに欠ける不安定な状況にあることもございます。
 こうした中、日本経済がコストカット型経済から活発な設備投資や賃上げ、そして、人への投資による経済の好循環が実現する新たなステージへ移行させるため、今後3年間を「変革期間」として集中的に取り組んでまいります。
 そのスタートダッシュとして、「総合経済対策」を策定したいと考えています。
 こうした観点から、総理からは5本の柱が示されております。第1の柱は、足元の急激な物価高から国民生活を守ること。第2の柱は、地方・中堅中小企業を含めた持続的賃上げ、所得向上と地方の成長を実現すること。第3の柱として、成長力の強化・高度化に資する国内投資を促進すること。第4の柱は、人口減少を乗り越えるための社会変革を起動・推進すること。そして第5の柱として、国土強靱化、防災・減災など国民の安全・安心を確保すること。
 このような経済対策の考え方や趣旨にふさわしい効果的な施策をしっかりと取りまとめていきたいと考えています。
 私としましては、今回の総合経済対策は、国民の皆様が将来に向けて明るい希望が実感できるような、政策パッケージにしたいと考えております。その際には、縦割りの弊害を排し、各省庁が所管する制度・施策に横串を刺し、連携し、相乗効果を生み出させるような施策、さらには実際に経済を動かすためにデジタル技術を中心とした「実装」フェーズを意識した施策、そして今後の明るい将来を切り開くため、海外展開や新しいフロンティアの需要を取り込むことができる施策といった観点に立って施策を取りまとめていただければなと望んでいるところでございます。
 各省庁には、こうした観点からの積極的な施策の展開を期待していきたいと思っています。
 今後、関係閣僚とよく相談し、また、与党とも十分に連携しながら、総合経済対策の取りまとめについて検討を進めてまいります。
 私からは以上です。

2.質疑応答

(問)経済対策とGDPギャップの関連について1問お願いします。指示の中では、GDPギャップのマイナスが解消に向かう中、生産性の向上や供給力強化に資する投資を支援するというふうにあります。一方、そうした潜在成長を底上げするための支援でも、短期的には需要を併せて刺激する可能性もあります。過度に需要を刺激することはインフレを加速させるリスクというのもあると思うのですが、そのあたりの大臣の御所見を伺えますでしょうか。
(答)GDPギャップは2023年の4-6月期にはプラス0.1%。これは3年3四半期ぶりにプラスとなったわけであります。しかしながら、このプラス幅は小幅であるということに加えて、2023年の4-6月期の実質GDP成長率は外需の高い伸びに牽引されたものだと認識しております。
 そして、個人消費は、物価高の影響もあり未だコロナ前の水準にとどまり、足下ではマイナスに転じるなど、不安定要素もございます。さらには、欧米における金融引締めに伴う影響や中国経済の先行き懸念など、海外経済の下振れリスクも懸念される状況にある。
 ですから、GDPギャップのプラス傾向が安定的に続くかどうかは慎重な見極めが必要であります。経済の回復を着実なものにしていくためには、消費を中心とする民需の安定的な回復が必要であり、そのためには構造的賃上げの実現が重要であるとも考えているわけであります。
 そして、我が国の潜在成長率はG7諸国の中で最も低くとどまっており、新たな経済対策を講じる中で、生産性向上を含めて供給力を強化することが、中期的な物価安定の実現に資すると考えているわけであります。
 新たな経済対策は5つの柱を出しましたが、こうしたもので総合的に対策を打ちながら、経済の成長、そしてそれを分配できるような需要の喚起と供給力の強化をうまくバランスさせる、そういう政策を打っていきたい。経済を安定的に、そして持続可能なものにするためのこういう政策を打とうということでございます。
(問)私から2点ほど質問させていただければと思います。お配りいただいたペーパーの3のところで、足元の物価高に対する対策というのがあります。昨日の総理の会見では、たしか言及がなかったガソリン、電気・ガスのワードも入っていると思うのですが、大臣のほうとしまして、足元の物価高対策の重要性についてどのように御認識されているか、まず1点目をお伺いできますでしょうか。
(答)やはり賃金上昇が物価高の伸びを超えていないと。ですから、その中で国民生活を守るためには、やはり対応できる物価高についてはしっかりと継続して、国民生活を守るために必要な対策は打っていきたいと考えています。
(問)2点目ですが、同じくペーパーの8番目のところで、「経済財政政策担当大臣を中心に」というような文言も入っていまして。大臣は先ほど、縦割りを排して横串をということで、そのようなお役割を果たされていくのかなと思うのですが、書かれているように経済再生大臣を中心にというところで、大臣の役割について改めてお伺いできますでしょうか。
(答)就任のときから申し上げておりますが、私の役割は、各省が様々な施策を展開しております。そして、その総合的な力をもって日本経済を新しいステージに押し上げていかなくてはいけないと。そのために必要なことは、個々の施策を着実に進行させること。それに加えて、やはり、省庁は違うけれども政策を連携させることによって新しい効果が期待できたり、それが大きな産業に柱になる可能性があると思うのです。そのためのイノベーションだとか、それからDX、GX、これを有機的に連携させる必要があると。
 ですから、私は今回、経済対策は各省で取りまとめられるわけですが、その際に自分の役所の中での連携、それから他省庁との連携、こういったものもすることによって、いい効果が出るものは何かということを是非意識してもらいたいということはお伝えしております。
 それから、やはり経済財政政策担当として、国民に皆さんにきちんと明るいメッセージを届けていきたい。日本は苦しい中でも頑張って、国民の皆さんの努力によって経済は新しい方向に向かっているんだと。ですから、一体私たちの行っている政策によってどんな効果が生まれているのか、それから、今回の対策によってこれからどんなふうに良く変わっていくのか、そこのところをやはり説明する。私のほうが集約しながら方向性を示していくというのは、私に与えられた役割かなと思っているわけです。
(問)指示の中だと3番目のところです。先ほどの質問の1問目にもあったのですが、燃料油価格だとか電気・ガス料金の部分で、当面の対処はもう既に決められていますが、年明け以降の対応について、大臣として今、どのようにお考えになっているか。燃料油価格は補助によって価格自体がゆがんでいるという指摘もありますが、その点についてどのようにお考えか教えてください。
(答)まずは現在の物価、また経済状況に合わせて9月末までの対策を延長させていただきました。その後については、またその時々の経済状況や燃油価格の動向を見ながら適切に判断をしていきたいと思います。
 欧米においては、もうこの冬で対策を終わらせている国が多いです。私たちの国は、やはりコストプッシュの物価高については、まず対策を打って国民生活を守るんだということで続けてきました。ですから、これをよく慎重に見極めながら今後の対策を検討していきたいと考えています。
(問)足下で急激に円安が進んでおりまして、今日のレートでいうと対アメリカでは149円に迫るような状況になっていると思います。足元のこういった円安が日本経済にとって望ましい水準なのか、どうなのかというところをまず大臣にお伺いしたい。
 あと、物価高の要因の一つとして円安というのは非常に大きく出てきていると思うのですが、今回の物価高対策の中で、そういった円安に対する何か取組というものを入れられるお考えはあるのかどうか、その2点をお尋ねいたします。
(答)御案内のように、為替相場はファンダメンタルズを反映して安定的に推移することが重要だということであります。そして、足下の為替相場の動向について私の立場でコメントすることは差し控えさせていただきたいと思っています。
 一般論として、為替レートと経済・物価の関係について申し上げれば、円安は輸入物価の押し上げ要因になります。原材料コストの増加などを通じて企業活動に影響が生じるほか、輸入物価が国内物価にも波及する場合には、消費者にも影響が及びうる。
 一方で、輸出企業や海外現地法人を持つ企業にとっては、円建ての収益が配当の増加、外国企業と比べた価格競争力の向上をもたらすなど、円安が経済・物価に与える影響は様々な面があると思っています。
 こういったものを総合的に見ながら、我々とすれば、まずは経済を安定的に、物価の適切な上昇と、そしてそれを上回る賃金の上昇、それによって、また供給力を増やしながら新たな投資を生み出していく。その「成長と分配の好循環」、これをきちんと回していくことが様々な対策に有効だと、このように考えているわけです。
(問)私から2点お伺いします。1点目は、今日の総理指示の第3段落といいますか、経済対策の柱の第1の物価高のところで、物価高対策のための重点支援地方交付金の追加について触れられています。これは既にある枠組みの増額ということを意味しているのかなと理解しているんですが、その理解でよいかということと、ここの狙いを改めて、まず一つ教えてください。
(答)過日、全国知事会の会長もおいでになりまして、やはり地方の経済はそれぞれいろいろな苦労があると。ですから、国の総合的な経済対策を打つ中で、やはり地方に使い勝手のよい対策も是非続けてもらいたいという御要請がありました。
 この内容についてはこれから作業するわけでございますが、適切に、地方も独自の工夫と、それからそれぞれの事業に応じた、そういった対策のお手伝いができるようなものも今後とも引き続いてやっていかなければならないだろうと思いますし、総合的に、全体的にそこは最終的に積み上げをしていきたいと考えています。
(問)第2の柱の持続的賃上げ云々のところで、コロナ・物価予備費の使途変更です。「賃上げ促進に機動的に対応できるものへと見直します」というふうに書かれているのですが、ここについて、例えば賃上げ促進に機動的に対応できるというのがどういったことを意味するのかとか、現時点で説明いただけることがあればお願いします。
(答)これは、これから検討することであります。予備費の場合は、やはり使途を特定して枠をつくっていますから、それが機動的に運用できるような、必要に応じた今回、対策を打つわけですから、そこで併せて見直しをしようということで、内容についてはこれから出来上がったところでご説明させていただきたいと思います。
(問)私からも2点お願いします。先ほど新藤大臣は官邸で閣議後、総理と執務室に残ってお話しされていたと思うのですが、できる範囲で、どういった指示やお話があったのかということを教えてください。それがまず1点目です。
(答)経済対策については、昨日、私のほうから自分たちの考え方を総理にご報告して、これを受けて総理から昨日、記者会見が行われました。それに尽きるわけであります。
 今日、私が官邸に閣議後に総理のお部屋に参りましたのは、今回、新内閣改造後の初めての経済財政諮問会議が開催されますので、その内容、どういう会議とするかということについてのご報告と相談を申し上げたということでございます。
 新たな体制になってからですから、やはり私たちの内閣の考え方、それから民間議員から現下の状況を踏まえた御提言を頂くということが柱になります。私とすれば、これは諮問会議が終わった後に、またそこは皆さんにご報告、ご説明したいと思いますが、経済財政諮問会議を更に積極的にいろいろな御意見が出るような、少し工夫も自分としてもしてみたいなと思っておりますので、そういったご説明をしてまいりました。
(問)もう1点、先ほどから質問が集中していて大変恐縮なのですが、物価高対策の部分で、「厳しい状況にある生活者・事業者の方々を引き続きしっかりと支えるための措置」というふうに書いてあるのですが、これはどういったことを想定されているのか。例えば低所得者向けの給付金とか、そういったことまで想定されているものなのか。現時点で教えていただけることがあればお願いします。
(答)これは正に、やはり物価の上昇率が賃金上昇を超えているわけです。そうすると生活必需、どうしても使わなくてはいけないものに対して家計に負担感が重くなるのは、やはり所得がなかなか上がらない、そういう状況のところにあるということでございまして、これまでもそれに対しての様々な対策を打ってきました。
 今の時点で具体的に何かというのはこれから積み上げていくものですから、後ほどにさせていただきたいというふうに思うのですが、いずれにしても、物価高から国民生活を守るために何が適切かという観点で、各省にきちんと積み上げをしてもらいたいと考えています。
(問)配布いただいた資料の柱立ての第2の賃上げとか減税に関したところについて伺いたいです。
 大臣は新しい資本主義の担当大臣でもおられて、ここが新しい資本主義と関係する部分かなというふうに見ているのですが。この中の「賃上げ税制の減税制度の強化を検討」というところで、現時点で総理からどういった指示があったかとか、大臣の中でこういうふうな強化という、具体的にはどういったイメージをお持ちかというところ、お考えがあれば伺えたらと思います。
(答)詳細については今後、作業しているところですからそれは差し控えますが、明日の新しい資本主義実現会議も新しい体制になって初めてのことでございます。その中では、経済対策の重要な部分である成長力の強化に対して、新しい資本主義実現会議で様々なご提案を頂いておりますので、その一環として、賃上げ税制の減税制度の強化だとか、それから戦略分野の国内投資促進、また特許などの所得に対する減税制度の創設、それからスタートアップ創出に向けたストックオプションの減税措置の充実の検討だとか、こういったものを議論していただきたいなと思っております。
 持続的賃上げや国内投資促進に向けた重点事項が議論されるのではないかなと考えています。
(問)今、新しい資本主義実現会議の話が出たと思います。先日、総理がニューヨークで海外からの投資を促進するために資産運用特区を創設という話を講演でされたと思うのですが、明日行われる新しい資本主義実現会議の中で、それに関する内容というのは盛り込まれる予定でしょうか。
(答)そこは今、まだ内容についてこれからやることですから。しかし、総理のほうからそういう新しい構想をお出しになりました。これは役所の中に様々担当がおりますから、しっかり対応していきたいと。このようなことで、具体的に、個別にどこまでの議論になるかは、先生方のお考えも含めて、やはり明日の会議で明らかになるということだと思います。

(以上)