新藤内閣府特命担当大臣記者会見要旨 令和5年9月14日

(令和5年9月14日(木) 11:22~12:02  於:中央合同庁舎第8号館1階S108会見室)

1.発言要旨

 この度、「経済再生担当」、「新しい資本主義担当」、「スタートアップ担当」、「感染症危機管理担当」、「全世代型社会保障改革担当」大臣を拝命いたしました。併せて、内閣府特命担当大臣として、経済財政政策を担当する新藤義孝であります。
 我が国は、経済が緩やかに回復している一方で、物価上昇の影響や海外景気の下振れリスクには十分な注意が必要だと思っています。そうした中にありまして、あらゆる政策手段を総動員して経済財政運営に万全を期していくこと、これが私に与えられた使命であるというふうに考えております。
 まずは、物価高から国民生活を守り、賃上げと投資の拡大の流れをより力強いものにすることによって、思い切った内容の経済対策を検討していきたいと考えています。
 その上で、「骨太方針2023」に基づき、未来への投資の拡大と構造的賃上げの実現に向けた新しい資本主義の取組を加速させ、「成長と分配の好循環」の実現を目指してまいります。そして、財政健全化に向けた取組を進めてまいりたいと、このように考えています。
 新しい資本主義とは、様々な社会的課題を成長のエンジンに変える、そして官民連携のもとで持続可能で力強い成長を実現するものと考えています。これによって「成長と分配の好循環」を実現していきたいと考えます。本年6月に閣議決定いたしました「新しい資本主義のグランドデザイン及び実行計画」の改訂版に掲げた様々な取組を実現してまいりたいと思います。
 人への投資、構造的賃上げと労働市場改革を進めます。また、社会的課題の解決に向けたスタートアップの育成や国内投資促進を進めまして、「成長と分配の好循環を実現したいと思います。
 スタートアップにつきましては、社会的課題を成長のエンジンに転換し、持続可能な経済社会を実現する、「新しい資本主義」の考え方を体現するものであります。
 実行計画に掲げた取組を着実に実行し、スタートアップを生み育てる環境の整備を進めていきたいと思っています。
 感染症危機管理対応につきましては、本年9月1日に内閣感染症危機管理統括庁が発足したところであります。感染症危機への対応に係る司令塔組織として、次の感染症危機に迅速かつ的確に対応するべく、政府行動計画の見直し等を行いたいと思います。これまでの政府行動計画は、平成21年の新型インフル対応の経験を基に作成されております。改定は平成29年が最後でございました。この3年半の新型コロナウイルス感染症については、有事の対応として政府行動計画をベースに基本的対処方針を策定し、事態の推移に応じて当該方針を改定することで対応を行ってきたわけであります。
 私とすれば、次の感染症危機に備え、改めて新型コロナ対応の経験を振り返りつつ、政府行動計画を見直すとともに、国及び関係機関における訓練の実施など、平時からの備えを着実に備えていきたいと考えています。
 次に、全世代型社会保障の構築についてであります。昨年末の全世代型社会保障構築会議における報告書に基づき、こどもから子育て世代、お年寄りまで全ての世代で安心できる全世代型社会保障の構築に向けた取り組みを政府として着実に進めてまいります。
 特に、こども・子育て支援については、今年6月に閣議決定された「こども未来戦略方針」の内容の具体化を進め、年末に向けて「こども未来戦略」を策定し、次元の異なる少子化対策を実現するために、関係省庁と連携しながら取り組んでまいりたいと思います。
 次に、CPTPPでございます。CPTPPは、TPPから米国が離脱した後に我が国がリーダーシップを発揮してまいりました。自由貿易、開かれた競争的市場、ルールに基づく貿易システム及び経済統合を促進していく上で、大きな意義を有するものだと考えております。これを着実に実施するとともに、そのハイレベルを維持した拡大にも取り組んでまいります。
 英国の新規加入については、我が国が作業部会の議長国を務めてまいりましたが、本年7月に関係各国が署名した加入議定書について、国会提出の準備を速やかに進めたいと思います。また、新規の加入要請についても、関係国と密接に連携して対応してまいります。
 その他、今後、様々な重要な担務を担うことになると思います。昨日総理が発言されましたように、新しい体制で思い切った内容の経済対策をまずはつくり、そして早急に実行していくこと、これが最優先の課題だと考えております。私としては、国民の御期待に応え、まずは足下の物価高から国民生活を守り、そして構造的な賃上げと投資拡大の流れを力強いものとしていくために全力を尽くしてまいりたいと考えておりますので、どうぞよろしくお願いいたします。
 私からは以上であります。

2.質疑応答

(問)マクロ経済運営についてお尋ねします。賃金と物価の好循環や潜在成長力の引上げなど諸課題が山積しておりますが、大臣のマクロ経済運営上の課題認識と、解決に向けた具体的な取組方針について伺わせてください。
(答)高水準の賃上げ、それから企業の高い投資意欲といった前向きな動きを継続・拡大させる。そして、バブル崩壊以降30年続いてきたいわゆる減量経済、コストカット経済から攻めの経済へと転換することが必要だと思います。デフレからの脱却、民需主導の経済成長につなげていくことが重要だと考えているわけであります。
 そのためには、まずは、足下の物価高から国民生活を守るとともに構造的な賃上げと投資の拡大の流れをより力強いものにするため、思い切った内容の経済対策、まずはこれを取りまとめたいと考えています。
(問)経済対策についてお伺いいたします。昨日、総理が会見で、月内に閣僚に指示をして来月にも取りまとめるというようなスケジュール感を示しまして、補正予算の編成にも言及されたと思います。この経済対策についての規模感みたいなものは、どの段階で出していくのか、その辺がもし分かれば教えていただけますでしょうか。
(答)昨日、総理から御発言のありました今回の新たな経済対策では、何度も申しますが、物価高から国民生活を守る。そして、物価高に負けない構造的な賃上げと投資拡大の流れを強化する。更には、デジタル技術や、そして規制改革、そして様々な制度、こういったものを活用して人手不足の課題に対応し、人口減少を乗り越えるための社会的な変革が必要だと考えております。そして更に、災害対策を含めて国民の安心・安全を確保する、こういう考え方にたって施策も盛り込まなければいけないと思います。
 そして、現在、GDPギャップのマイナスは解消に向かいつつあるわけでありますが、しかし、一方で我が国全体の供給力は伸び悩んでおります。構造的な賃上げの環境整備と供給力強化につながる投資拡大への支援が重要であると、このよう考えているわけです。そして、この規模につきましては、これはただ今申し上げましたような経済対策の趣旨にのっとり、関係省庁からの提案も踏まえて効果的な施策を吟味した、その結果として決まってくるものであり、現状においてあらかじめの想定があるわけではありません。
 そして、今後、この月内には具体的な柱建ての御指示が総理からございます。これを踏まえて、与党とも連携いたしまして、来月中も目途に経済対策の取りまとめを目指していきたいと考えております。
 加えて、物価や経済動向を分析し、必要な経済対策、思い切った内容が取れるように、スタートダッシュできるように頑張っていきたいと考えています。
(問)もう1点だけ。総理のほうから、昨日の会見の中で新藤大臣につきまして「ベテランで調整能力に定評がある」というような言及もありましたが、御自身の調整能力ということについては、どのようにお考えになっていて、どのように政策を進めていくか教えていただけますか。
(答)過分なお言葉を頂戴しておりますが、私はそれほどのものがあるとは自分では思っておりませんが、これまでもずっと心がけてまいりましたのは、大事なことは、政府の各施策、それから様々な取組が今、全省庁を挙げて行われています。これをいかに横串を刺して連携させるか。そして、それによって相乗効果を出したり、それから様々なものを組み合わせることによって新しい経済効果が生まれる。それから、新しい資本主義というのは、従来の需要と供給のバランスに加えて、やはり社会的な課題、それから、まだ仕事になっていないが解決しなければいけない、そういうものがございます。こうしたものを、デジタルを使ったり、それから横串、また規制改革、こういったものを施すことによって新しい産業にできないかと。そして、全体として、私たちはこの国が少子高齢化、人口減少の中で労働力を維持できないまま、どうやって成長させていくか。とても難しい課題があるわけですが、こうしたものに総合的な対策を打たなければいけないと。
 調整力という意味におきましては、私のところは、各省が事業でやっているところを調整しながら組み合わせていく、そして大きな方向性のもとでそれぞれの省庁にご協力いただく、そのための役割を果たせという意味において、これまで私は自民党の政調代理、また代行として政策全般についてのそういった連絡調整を行ってまいりましたから、この経験を踏まえてしっかり仕事をするようにと、こういう御下命をいただいたと理解しています。
(問)私から少子化対策の関係でお伺いします。先ほど大臣から、年末に向けて少子化戦略、これの取りまとめというお話がありました。特に、いわゆる3か年の計画においては財源の議論というのがこれから本格化してくると思うのですが、現時点で財源をどのように手当てされるか、大臣のお考えをお聞かせください。
(答)少子化対策につきましては、6月13日にこども未来戦略方針を閣議決定しています。ご指摘のように、3年間を集中取組期間として「加速化プラン」をまとめたわけであります。
 ここに示しましたとおり、まずは徹底した歳出改革等を行うということです。これは全世代型社会保障を構築する観点からの歳出改革の徹底と、そして既定予算を更に使い勝手をよくしたり、運用改善も含めた最大限の活用、こういったものをしていきたいと。これを先行する中で、公費の節減等の効果、それから社会保障負担の軽減効果が見込まれるのではないかと。こういったものを活用しながら、国民の皆様には実質的な追加負担が生じないような工夫をしながら、しかし、しっかりとした安定財源を確保して進めていくということでございます。
 この大前提は、経済活性化、経済成長、これがしっかりと拡大していくことが重要だと思います。ですから、経済対策も含めて、この少子化対策を進めていく上においても、更に経済の拡大をしていかなければならないと。また、少子化対策そのものが新たな経済のエンジンになる、こういったものも考えるべきだろうと思っています。
 そして、そういう中で、新たな枠組みとしての支援金制度ですとか、そういったものも今、検討しております。これにつきましては、年末に向けて、どういった制度をつくっていくか具体的な検討を進めていきたい、このように考えています。
(問)今回の新藤先生の直接の御担当と違う質問で申し訳ないのですが、ウクライナ状勢をどう見るか伺ってもよろしいでしょうか。世界経済、日本経済に甚大な影響のあるイシューですし、あと、日本としては防衛増強、あと憲法改正などにもつながるイシューだと思うのですが、ウクライナの早期停戦みたいなものがあり得るか、あり得ないか。御所見を、今お話しできる範囲で構いませんので、よろしくお願いいたします。
(答)このウクライナの問題は、世界が確実に変わったということを改めて強烈に認識させることになったと思います。安全保障のこれまでの理念は完全に崩れ去ったというふうに思っています。それから、もう一つは、ロシアがウクライナに侵略すること、この2国間の問題が世界経済にとてつもない影響を与えているという問題があると思っています。
 ですから、私はかねてより、ロシアの理不尽なこういう侵略行為、これは一刻も早くやめるべきだと思っておりますし、それは日本が国際社会において強く訴えているところであります。そういう中で、ウクライナのこれから、まずは早期の停戦、こうした戦争状態を終結させることが重要だと思いますし、これに加えて、やはりウクライナの復興支援、それから、そういう中で日本がどんな役割を果たしていくかということを考えることになると思います。
 私の所管外でございますから、そういった方向の中で、私どもで行えること、担えることはしっかりとその中に組み込んでいきたいなと思っております。
(問)財政健全化についてお伺いできればと思います。コロナ以降、コロナ対策や物価高対策で歳出が大いに増えていると思います。今後も直近の経済対策や少子化対策で大きな歳出が見込まれますが、ある意味、垂れ流しのような状態にもなっていると思うのですが、大臣御自身は、この財政健全化についてどのようにお考えでしょうか。
(答)財政を健全に運営していくことは国の基本だと思っています。しかし、一方で、それには経済成長が必要ですし、その意味において、やはり必要なものはきちんと投資していかなければいけないと、財政を投入しなければいけないわけです。そういう中で、我が国とすれば、この2025年度のPB黒字化を目標として掲げております。こういう成長軌道にきちんと乗せていく中で、PB黒字化を含める財政健全化が達成できるのではないかと。
 そのためには、まずはやはり成長です。それから、新たな産業を着実に根付かせていく。こういったことが必要だと。ですから、私は経済成長、そして積極財政と財政健全化これは両立させていかなければいけないものだと思っています。
(問)就任会見なので、少し変わった質問をさせていただこうと思うのですが。先ほど他の記者からもありましたが、総理から調整力だとかそういったところに言及されるお話がありました。新藤さん御自身が、総理から内閣府の経済再生相という職務を任された理由というのをどのように分析されているのかと、あと、大臣として特に力を入れていきたい分野、自分の色を出していきたいような分野というのがありましたら、それについてお願いいたします。
(答)まず、私をどうして任命し、どこを評価していただいたのかは総理に聞いていただくしかないので、私から何か申し上げることではないと思いますが。あえて申し上げれば、私、自民党の政調、また、その前、もともと岸田総理とは若手議員のころには、岸田さんが商工部会長でした。今は経産と言いますが、通産省時代の商工部会長だったんです。私はその下での商工部会長代理でございます。以来、ずっと一緒にいろいろな経済政策に御一緒させていただきました。
 それから、総理が政調会長時代に、3年間ほど私は代理におりました。その間に行いましたのは、あらゆる意味での成長戦略。それは、今でいうところのDXになりますが、キャッシュレスから、また当時はICTと言いましたが、そういうものを使った自動運転の仕組みだとかそういったものをやろうだとか、それから、私、国家戦略特区の担当大臣として法律をつくらせていただきましたが、規制改革をしながら経済に規制の穴を開けて、そして新たなものをつくっていこうと、こういったこともやってまいりました。それから、ソーシャルワークとか、こういうのも経済産業の副大臣の頃には、私が一番最初にソーシャルビジネスの研究会を立ち上げて、いわゆる第三セクターとか、社会的課題を解決する分野が、どうすれば産業化できるかというのは、もう15年ぐらい前からやっています。
 機会を得て様々な、GIGAスクールにしても、それから、今、医療DXにしても、私はずっと党のほうでその実務の取りまとめをやらせていただいておりますから、冒頭申しましたように、あらゆる意味で正しく縦割りになって、それぞれが責任を持って各省は仕事しているわけです。しかし、それを融合させたらどうなるのか。少し離れますが、宇宙政策と海洋政策を融合させることで新しいシステムができるのです。ですから、そういういろいろな分野で経済の仕組みをつくりたいと思っています。それは、我が国の最もウイークポイントである資源の問題だとか、こういったものにも、資源問題の解決にもつながってきます。
 ですから、調整能力というのは、先ほども言いましたように、横串を刺して連携し、総合的な政策として国民の前に示すこと、これが調整だと。要するに、自分の権限ではないし、各省大臣の権限があるわけですから、それをどう横断させるかというのは、これは誰かがやらなければいけないことで、総理がおやりになるわけですが、その下で実務を担いなさいということだと思っておりますし、これは、これまでずっと考えてみると、いかに横串を刺すかということで、地方創生をつくりましたし、その後のデジ田も今、委員長、党本部のほうではデジタル国家構想の推進委員長もやってきましたが、全て同じ理念なのです。
 ですから、総理とはずっと一緒にしてまいりましたから、そこの私の仕事を見て、今回は内閣に入って担務しろということになったのではないかなと思います。
(問)今の調整とも関わるところなのですが、前職が党の政務調査会長代行をされていたということで、昨日の呼び込み後のぶら下がりでも経済対策に関して、今、党でいろいろと議論が続いているというお話をされていましたが、今後、こういった経験を生かして、党とのやり取りというか、そこら辺の調整に関しては、どういうふうに手腕を発揮していきたいかというところを伺ってもよろしいでしょうか。
(答)私、たしか政調会で8年いると思うのです。ですから、ものすごく長いと思います。各部会長や、それから閣僚になられた方も含めて、しかも政調は全省庁の政策や法案がまいりますから、そういったものを審査しながら、一方で政調としてたくさんの、我々党として必要な方向性を打ち出して、それに基づいて政府の政策を立案していただくようなことを続けてまいりました。
 ですから、つかさつかさ、それぞれにところにかつて一緒に仕事をした方々がいらっしゃいますし、それは議員ではなくて、省庁においても、ここにまいりましても、私のところに常においでいただいていた、レクをしていた方が、今度は一緒に仲間として仕事をするようになります。ですから、そういった土地カンと、それから人カンというのでしょうか、こういったものを生かしてやれればなと。もちろん私一人でできるわけでもありませんし、大勢の皆さんの知恵をお借りしながら。
 要は、最終的に料理の具材は集まり、また料理自体は幾つもあるけど、それをどういう流れで仕上げていけば、またいつもと違う楽しみができるかとか、そういうことをコントロールしていくのがこの経済再生担当の仕事かなと思いますし、これから実務に入りますので、そういう中で、ぜひとも今の流れを着実に、しかも我が国に新しい経済を根付かせられるような、そういう取組をしていきたいと考えています。
(問)もう1点だけすみません。そういった党員としての政調での長い経験に照らして伺いたいのですが、一部報道で、木原元副長官が党のほうに移られて、党の幹事長、政調会長のダブル代理になるというふうな報道があります。こういったことによって、内閣と党の関係というのがどういうふうに変化するのか、そういったところを伺ってもよろしいでしょうか。
(答)木原誠二さんは、岸田政調会長時代の政調の副会長でした。私はそこで代理をやっていました。そして、かつ、木原さんは事務局長だったのです。ですから、あらゆる政策の取りまとめ、政調としての方針をまとめるときの事務取りまとめをやっていた方です。
 ですから、今までは総理の副長官として官邸にいて政策調整。私も何度も緊密にやりました。今度は党に戻って、政調の中でそういう党内の政策の取りまとめと、それを省庁間でどのように反映させるかの調整を行うという意味では、かつて十二分に大活躍した人ですし、私も力量のほどはよく承知しておりますし、先ほど言いましたキャッシュレスの視察は一緒に海外にも出かけていって、そして今のデジ庁がやっている政策の何割かは、私たちがそういう自民党政調で海外に行って、新しいキャッシュレス経済をつくるために何をしたらいいかという提案が生かされて、今、デジ庁の仕事になっているわけです。
 大いに手腕を発揮していただいて、これは仕事をしっかりしてもらえるんじゃないかと期待したいと思います。
(問)新藤大臣はスタートアップ担当相も兼務されると思うのですが、新藤先生がお考えになるスタートアップ支援の重要性について教えていただけないでしょうか。
(答)新しい経済をつくる上で、その始まりとなるのがスタートアップだと思います。そして、全く新しい仕事を始めるのもスタートアップ。しかし、既存企業や既存組織の中からまた新たな仕事を発生させるのもスタートアップだという意味において、私たちはいわゆるスタートアップを進めるためのエコシステム、循環システムをつくりたいと思って、昨年11月には「スタートアップ育成5か年計画」をつくったわけです。
 この中で、今、8,000億円規模の投資です。これを5年後の2027年度には10兆円規模にしたいという目標を掲げました。これを実現させるための人材・ネットワークの構築だとか、それから、何よりも資金供給の強化、出口戦略の多様化、これが提言の中でも、5か年計画の中でも訴えましたけれども、それからオープンイノベーションの推進、こういったものを3つの柱、これを官民一体で進めていきたいと思います。
 そして、我が国におけるスタートアップ、これが世界のスタートアップに比べてどうかということを、私はきちんと比較検証していきたいと思います。ですから、これからの時代は、国内のみならず世界経済の中でどうやって日本が自分たちの場所をつくり、イニシアチブを発揮していくかということになると思いますので、今回、これからでございますが、様々な作業を行われると思いますが、スタートアップを更に魅力的で、かつ世界にも打ち出していけるような、そういうものにできるように様々検討していきたいと考えています。
(問)私が聞きたいのは移民政策についてお伺いしたいです。先ほども、人口減少であるとか、経済対策には人が増えないと成長がないというふうにおっしゃっていたと思うのですが、今、少子化を進めて、もちろん横串を刺して全てを連携させて経済対策に応用するというのはすごく大切な考え方だと思うのですが、人を増やすために海外から人を呼び込むですとか、今行っている短期的な労働力を補充するための海外からの人の輸入ではなくて、もっと違った、いわゆる世界的な意味で見た形の移民政策を導入するということに対して、どうお考えでしょうか。
(答)これは注意深く言葉を選ばなければいけないと思うのですが、我が国において、今、移民という具体的な政策を検討している段階ではないと思います。
 しかし、ご指摘のように、今後、労働力、要するに生産年齢人口が下がっていくわけですから、その中でいかに労働力を確保するかということは大きな課題です。一つには、まずは働き方改革によって質、量を充実させる。それから、特に労働市場において女性や、それから高齢者、こういった方々が可能な範囲で働けるチャンス、こういうものもつくっていけるのではないかと思います。
 それから、ソーシャルビジネスという意味においては、やはり過疎化の進む地方で、その生活を維持するために必要なサービスがあるわけです。これが、ここの分野においても、NPOの活動というのが、こういったものが仕事になってくることもあるのではないかという意味において、私はあらゆる手段、またあらゆる政策を、労働力を確保するということで使いたいと思います。
 それにしても、確実に残念ながら、なかなか生産年齢人口自体は増えようがありません。でも、実質的にはここのところで雇用者は増えているわけですから。なので、まだまだ工夫の余地があると思っています。
 そして、外国人の方々が我が国において仕事をしたい、そして能力のある方がきちんと私たちの国で活躍してくれること、これは、やはり我々は受け入れる方向にしていかなければならないという意味で、高度技能人材、こういったものは今、拡充していくわけであります。なので、合わせ技と言いましょうか、様々な工夫をしながら外国人の労働問題も、これも更に検討を加えて、何ができるのか、これをやっていったらいいと思いますし、その意味で、まずは選ばれる国にならなければいけないという意味において、実は日本語教育、これとても重要です。今般、それは文科省のほうで始まりますが、日本語の教育の認定校、それから認定教師、こういうものをつくりまして、いわゆる海外から我が国に来たときにストレスのないように、また、社会に溶け込んで活躍できるような、そういった要素も実は労働力の確保には影響してくるのです。そういったことを考えながらやっていこうと。
 そして最後に、一人当たりの生産性を上げることです。減ってしまった労働力、これを生産性を上げることで最終的にGDPにつなげていく、こういったことをしなければならないわけですから、直接的なお答えにならなくて恐縮ですが、外国人の問題も含めて、総合的な検討をすべきだと思っています。
(問)世界経済の下方リスクについてお伺いしたいと思います。特に足下では中国経済のリスク、不動産等々のリスクが指摘されていると思います。今、現状のこういったリスクについて、どうお考えかというのをお聞かせください。それから、中国に関しては経済的なつながりが深い日本経済にとっても影響は避けられないと思いますが、一方で、中国という意味では経済安保の観点等でデリスキングなども言われているかと思います。中国経済と日本はどう向き合っていくべきかという、基本的なところもお伺いできればと思います。
(答)まず、我が国経済の現状は、雇用・所得環境が改善する中で、個人消費や設備投資の持ち直しが続いていることから緩やかに回復していると認識しているということです。
 しかし、その中で、今ご質問のように、今後の世界経済のリスクとしては、やはり欧米における金融引締めの影響、それから巨大な市場である中国経済の先行きの懸念、こういった下振れリスクというものがあるのではないかと。これによって物価上昇の影響も発生しますので、こういったことをよくよく注意していかなくてはならないと。
 一方で、そういう中で世界は新しい仕事がどんどんと拡大していきますので、私たちは日本の国内の経済を立て直すとともに、その流れを世界経済の中に入れ込んでいく。それはTPPも含めて経済政策、また外交的なものも含めて、様々なことに取り組んでいかなくてはいけないのではないかと考えています。
(問)中国経済と経済安保等々の観点での関わり方のスタンスとして、少しお伺い。
(答)まず、是々非々というのがございます。中国は大切な隣国であって、これはこれから先、いつまでたっても隣国であることに変わりありませんから、ここと友好的な、そして安定的な環境をつくることは我が国にとって非常に重要だと思います。しかし、中国自体が、やはり価値観を共有し、世界のルールの中で大国としての秩序ある活動をしていただかなくてはなりません。こういったものについては、我々は言うべきことはしっかり言っていこうと思っています。その中で、是々非々であり、かつ、重要な影響を与えるものとして取組を考えていこうと。
 さらに、経済安全保障の観点からは、更にこれは深く大きな問題が出てくると思います。これはルールの中でお互いの透明性や信頼性を確保しなければ経済は成り立たないわけですから、そういう意味においての経済安全保障という観点から、中国だけではありません。それは世界のそういったリスクに対しては、日本はきちんと対処しながら、その上で経済を維持していくことが必要だと思います。
(問)大臣は先ほど冒頭で、デフレ脱却についての重要性を述べられました。昨日、総理もデフレからの脱却を確かなものにするということに言及されたのですが、改めまして、ただデフレ脱却宣言というのはまだできていないわけで、デフレ脱却宣言について、今どのような状況にあるのかということをお伺いしたいということと、あと、日銀が大規模金融緩和を続けていますが、デフレ脱却宣言がないと政策修正というものができないのかどうかということ、そこも併せてお伺いしたいと思います。
(答)私たちはデフレ脱却を目標として、安倍内閣、そして福田内閣、岸田内閣と、ずっと努力を続けてきているわけであります。そして、その意味において、現状、需給ギャップが解消される方向が見えてきて、そして個人消費、設備投資の持ち直し、こういった兆しが見えております。ですから、これを本格的なものにしていくこと、そのために必要な対策を打つこと、これが私の仕事であります。
 日銀の政策をどのようにするか、これは私がコメントすることは、今回は控えさせてもらいたいと、このように思うのですが、いずれにしても、いい兆しが見えている中で、それを本格的な軌道に乗せつつ、やはり賃上げのような、構造的な賃上げと言われますが、根本的な、次の時代、少子高齢化、人口減少時代に向けた経済というものをつくる必要があるだろうと、このように思っています。この努力を更に続けていくということに尽きると思います。

(以上)