山際内閣府特命担当大臣記者会見要旨 令和4年10月11日

(令和4年10月11日(火) 10:35~10:57  於:中央合同庁舎8号館1階S108会見室)

1.発言要旨

 10月8日土曜日、シンガポールで開催されました、TPP協定の最高意思決定機関であるTPP委員会に出席いたしました。今回の会合は、閣僚級会合としては、2019年1月に日本で開催された第1回会合以来、実に3年半以上ぶりの対面開催となりました。またこの機会を活用し、議長国シンガポール、カナダ、ニュージーランド、ブルネイ、豪州といった国々の閣僚とも、2国間会談を行いました。
 まず9月30日に、マレーシアが批准に必要な国内手続きを終了して、来月11月29日に正式に締約国となることが紹介されました。心から歓迎したいと思います。
 また、会合においては、本年の議長国であるシンガポール主導のもとで、各小委員会の取り組みなど、本年の活動を総括するとともに、コロナによる世界経済の不確実性からの経済回復において、CPTPPのような、先進的でハイスタンダードな協定が重要な貢献を行う旨、改めて認識を共有し、今後、参加国間で、さらなる連携および協力を行っていく旨を確認いたしました。
 具体的には、コロナ危機からの経済回復においても、サプライチェーンの強靭化に向けて、協定に基づきサプライチェーン・レビューを実施することについて合意いたしました。加えて、協定を引き続き推進していくに当たり、デジタル経済やグリーン経済といった新たな課題においても、協力を継続していくことについて、見解を一致いたしました。特に、昨年、議長国を務めた日本主導のもと設置された、電子商取引委員会の第1回会合が、本年オンライン形式で開催され、協力が強化されていることを喜ばしく思っております。
 昨年6月の第4回TPP委員会において、英国の加入手続きの開始を決定いたしました。以来、本年7月には東京で英国の加入作業部会会合を開催する等、我が国は加入作業部会議長として、英国の加入プロセスが円滑に進むよう取り組んでまいりました。
 今回の会合においては、作業部会の議長である日本の努力に対する謝意とねぎらいの言葉が、全ての参加国からありました。
 そして、今後の取り組みの方針については、協定のハイスタンダードをしっかりと維持しつつ、英国の新政権発足を踏まえ、現在のモメンタムを逃すことなく、できるだけ早期の合意を目指して、交渉を一層加速化していくことの重要性について、各国より提起があり、本年内にも基本的な合意を見ることを目指すべきとの声もありました。
 こうした議論を受け、自分より今回の会合の場で、CPTPPとして、英国の加入プロセスに全力をあげることで、意見の一致を見ました。
 作業部会の議長国として、各国の意見を重く受け止め、今週はシドニーで交渉官会合も実施されており、引き続き関係各国と協力しつつ、最善の結果が得られるよう、しっかりと取り組んでいく所存です。
 昨年には、中国、台湾、エクアドルから、本年にはコスタリカより、加入要請が提出されました。今回会合では、私のほうから、こうした加入要請を提出したエコノミーが、CPTPPの高いレベルを完全に満たすことができるかどうかについて、しっかりと見極めつつ、参加国がコンセンサスで対応していくことの重要性を訴え、閣僚が一同に会したこの機会に改めて、確認を行うことができました。引き続き各国との間で緊密に連携をし、対応をしていきたいと考えております。
 もう1点、スタートアップ関係者との意見交換につきまして、10月9日日曜日には、シンガポールでスタートアップ担当大臣として、スタートアップ関係者との意見交換を行いました。今般の出張も踏まえ、本年末のスタートアップ育成5か年計画の策定に向けた検討を進めてまいります。
 私からは冒頭以上です。

2.質疑応答

(問)TPP委員会について、今お話もあったと思うんですが、改めて英国の加入について、年内の合意を得ることにモメンタムが強まっているというのも会見でもおっしゃっていたと思うんですけれども、今後の加入交渉の進め方、見通しについて改めてお伺いしたいのと、今回のTPP委員会では、中国とか台湾とか、そういう新たな加入申請エコノミーについては、議論がなかったとおっしゃっていたと思うんですが、今後こういう新たな申請エコノミーについて、どのように交渉を進めていくのかお聞かせください。
(答)これは冒頭ご説明したとおり、今回は閣僚が一同に会するという滅多にない機会だったことですから、今のモメンタム、非常に英国加入に向けて各国がそれを進めようという、そういう意識が高まっているということを生かして、このCPTPPのさらなる発展に資するべく、英国のプロセス、これがハイレベルのものになることを確保しながら、プロセスを加速化していくこと、これで一致いたしました。
 協議の具体的な見通しについては、これは交渉事ですから、予断を持って応対することは難しいのですが、先ほど冒頭に申し上げたある国からは、今年中に何らかの結論が出るような方向でというような、そういった趣旨のご発言もございました。
 こういった各国からのご意見というものを重たく受け止めつつ、加入作業部会議長として、最善の結果が得られるように取り組んでいくと、このように申し上げたいと思います。
 それと、その他のエコノミー、中国、台湾、エクアドル、コスタリカというお話をさせていただきましたけれども、これもこの冒頭に申し上げたとおりなんですが、原則としてCPTPPの高いレベル、これを完全に満たすことができるかどうかについて、これはしっかり見極めることが必要だと。
 さらに、バイでやるものではなくて、マルチの枠組みですから、参加国全体が、コンセンサスを作って対応していくということが非常に重要であるということを、これまでもずっとそういう主張もし、そういうコンセンサスで進んできたのですが、閣僚が一堂に会するということなので、改めてそのコンセンサスの重要性というものをしっかりとみんなで確認したということです。
 なので、まずは我々としては、英国の加入作業というものに全力を傾注して、それがある意味、次に入ろうとしているエコノミーに対する、どういうプロセスで進めばいいかという非常によいモデルになるものですから、そのよいモデルを見ていただきながら、今申し上げた原則に従って、先に進めていくものだとご理解いただければと思います。
(問)もう1点、今回のTPP委員会に合わせて、多くの国と2国間の会談を行ったとおっしゃっていたと思うのですが、どのようなお話をされて、今後の政策にどう生かしていくのかという点。また、シンガポールのスタートアップ関係者との意見交換もされたということですが、5か年計画に生かすということなんですが、具体的にどういうお話をして、どういうところを取り込んでいこうと思われたのか、ちょっとお聞かせください。
(答)2国間での閣僚間の話、内容に関してまでつまびらかにするわけにはいきませんが、全体として言えば、やはり去年と今年との最大の違い、あるいは3年前と今との最大の違いは、コロナウイルス感染症が世界中を覆ってしまったという事実と、そしてロシアによるウクライナ侵略というものが大きく環境を変えているという、この二つがあります。それから、各国マクロ経済を担当する大臣同士で集まっていますから、当然マクロの世界経済として、同じ危機感というものを共有しているものだと思います。ですからそれをお互いに共有するということは当然各国の大臣とバイで会談するときには、全てやらせていただきました。
 その上で、そういう状況であるからこそ、CPTPPのような、自由で開かれたルール、しかも非常に自由度の高い、そういうルールというものを世界に広げていくということが必要であると、こういう価値観を共有する、これを再確認するという作業をさせていただきました。
 その上で、具体的な話は、英国の加入手続きを加速させるために頑張ろうという話であったり、あるいはその次に控えているエコノミーに対して、我々としてはどう対応すべきかというようなことであったりという話をさせてもらいました。
 それから、スタートアップのほうについては、これは前々からそれは分かっていたのですが、今回実際にシンガポールの場を使って、特にアジアのマーケットを狙いに行っている、そういうスタートアップが、日本のスタートアップが幾つもあります。
 そういう方々と意見交換をしたり、あるいはそういったスタートアップに対して、資金を提供する立場のベンチャーキャピタルの皆さま方と意見交換をしたり、あるいはそういった方々が出会う場を提供している、そういう場所を訪れて意見交換をしたりということをやりました。
 その中で、日頃から言っているように、人と資金と場とが必要なんですね。それがシンガポールにおいても、きちんと成立していて、そして回り始めているというのは実感として持ちました。特に、我々はこれから5年でスタートアップを10倍にしていこうという、野心的な計画を練り込んでいく中で、言ってみれば利活用できるものは全て利活用させていただきたいという思いです。
 そういう意味で言うと、グローバルマーケットという中でも、アジアのマーケットというのは、普通に考えれば、成長が見込める非常に有望なマーケットでありますので、アジアのマーケットを見越して、アジアのマーケットを視野に入れて、どう日本のスタートアップを盛り上げていくかということを、シンガポールあたりのやっていることの知恵をもらいながら、我々としても工夫をしていく必要があると、このようなことは実感として持ちました。
 それらを持ち帰って、これから具体的な施策にどう落とし込んでいくかということをしっかりとやりたいと思っています。
(問)今日から水際が緩和されることを受けて、2点伺えればと思います。今日から水際が緩和されて、入国者数の制限が撤廃されたり、外国人の個人旅行が解禁されたりとなっていくと思います。円安の中でのこの緩和になりますが、インバウンドについてどのように期待されているでしょうか。
(答)これは総理からも皆さんに対して発信をさせていただいておりますし、今回の今練り込んでいる経済対策の中にも、インバウンドを盛り上げていくためにどうすればいいかということはメニューとして挙げていかなくてはいけないと思っております。
 一方で、当然円安のメリットは、インバウンドの場合は直接効いてきます。しかし、何も我々から提供するサービスを変えずに、ただ海外の観光客の方に入ってきていただいて、今までと同じようにお金を使って、円安のメリットの分だけ売り上げが増えましたということではなくて、やはりせっかくこれからインバウンドを盛り上げようということであるならば、その提供するサービスの質をどう高めるかということが、経済を活性化させていく上でも、あるいはそこに従事されている皆さんの給与、賃金を上げていく上でも必須であると、こういう考えに基づいて、今その付加価値をどう上げるかということ。
 しかもそれも、岸田政権が言っているように、官民でやっていこうということを我々標榜していますから、民間任せにするのではなくて、ある程度我々もそこにコミットして、何ができるかというようなことを経済対策の中で盛り込もうということで今議論しております。
 ですからそういった、ただコロナ前に戻すということではなくて、進化させる、それを促すような施策を同時にやりつつ、このインバウンドのある意味利益というところを最大化させるように、官民挙げてやっていかなくてはいけないと思っていますし、それを我々としてはやることで経済が活性化されることを期待しています。
(問)ありがとうございます。円安に関連してもう1点。今日発表された8月の経常収支についてなんですけれども、経常黒字が去年から96%減って、8月としては最小となったということですが、これについてはどのように受け止めていらっしゃるでしょうか。
(答)これ、全部詳しく私のほうで分析しているわけではないのですが、それこそ報道ベースで言えば、やはりエネルギーの価格が高騰しているということが、相当大きく効いているということだと思います。
 ですから、それも含めて、経済対策の中で、当然エネルギー高騰対策というものを挙げておりますが、それも、ただ高くなっているものに対して、何かサポートをしますということではなくて、そもそも一次エネルギーとしての化石燃料を、どれだけ購入する量を減らせるかという工夫を合わせてやらなくてはいけないですね。そこの部分を、経済対策の中にはきちんと知恵として盛り込もうと、今やっております。
 ですから、今すぐにそれは効果が出ないかもしれませんけれども、1年2年先には、確実に一次エネルギーの使用量そのものを減らすという方向に進む、そういう種を今回の経済対策の中では盛り込もうと思っておりますので、その合わせ技で進んでいくしかないと思うんですね。
 しかし足元でできているデータは、それはデータとして今の状況というものを表している数字として出てきていると思いますから、そのことは私たちとしてはきちんとそれを受け止めて、じゃあ何をやるべきかというところを、次につなげたいと思います。
(問)今年のノーベル経済学賞の関係で伺います。FRBの元議長バーナンキ氏ら3人に贈られたということで、バーナンキ氏は金融危機における銀行の役割ということで受賞されましたが、実務面でもリーマン危機を挟む期間、議長として、理論と実務の双方で存在感を発揮された方だと思います。
 これへの受け止めと、日本への影響では、インフレターゲットの提唱者としておられて、日本の金融政策にも影響を及ぼした方だとされています。大体その金融緩和政策というのは、今の金融政策に底通するものがあると思うのですが、この点を踏まえて大臣の受け止めをお願いできますでしょうか。
(答)まずは、お祝いを申し上げたいと思います。今のご質問の中にほとんど答えが入っていると思いますが、バーナンキ氏だけではなくて、ダグラス・ダイアモンド氏およびフィリップ・ディビッグ氏、このお三方が受賞されたわけですけれども、いずれも経済における銀行の役割、特に金融危機の際の銀行の役割について、理解を大きく前進させた功績だというふうに言われております。言われているというか、そう聞いております。
 もちろん、功績というのは、実務の部分もあれば、セオリーとして、これはこうあるべきなのではないかというものに基づいた実務だと思うんですね。それを学者の立場としてセオリーを提唱しただけではなくて、実際にそれをオペレーションしてきたということも含めて、受賞に至ったのではないかと、私自身は思っております。
 おっしゃるように、日本の金融政策等々にも影響を与えたものだと思いますけれども、何にしても、現下、今起きている危機に対して、我々としては知恵を絞りながら対処していかなくてはいけないわけですから、それも我々としては実務の部分に関して、しっかり参考にしながら、このバーナンキさんのやってこられたことだけではありませんけれども、様々な知恵というものを参考にしながら、オペレーションが行われいくべきだとそう思っております。
 繰り返しになりますけれども、祝意を表したいと思います。
(問)シンガポールの出張等お疲れさまです。その問題ではなく、大臣の足元の問題について引き続きお伺いしたいと思います。恐縮です。よろしくお願いします。
 先週の6日に、大臣の地元事務所があります川崎市のマンションの所有会社に払っている家賃が、相場を上回っているものだということで、公選法が禁じる選挙区内の寄付に当たるということで、市民らが横浜地検に告訴状を提出しました。これに関する大臣のコメントをまずお願いいたします。
(答)事実は事実として受け止めます。その中身についても、しっかり見ていかなくてはいけないことなので、今この場で何か詳細についてコメントすべきではないと思っております。
(問)続いてなんですけれども、旧統一教会に関する問題で質問します。
 自民党の自主点検の終了後に、先週ぐらい、たびたび外部や報道機関からの指摘を受ける形で、教団の関係者、教団の信者を会合に、大臣の街頭演説に、国政報告会に招待したり、あとそちらの教団からの招待があったり、教団トップとの面会があったりという、相互の深い関係が次々明らかになっている、大臣もお認めになっているという状況が続いています。これは党の自主点検や、弊社など各社からの質問に対してと内容が違っているんですけれども、これはそのとき虚偽の報告をされていたということなんでしょうか。内容が違っていることのご説明を改めてお願いいたします。有権者とか読者からの質問が多いため、繰り返しになり恐縮ですが、よろしくお願いします。
(答)これまで、私自身は申し上げているように、分かったことは全てご報告しますと。さらにこの事実をきちんと確認することをして、その上でご説明もしますということを繰り返しやってまいりましたので、その域からは何も外れていないと思います。
(問)すみません、繰り返しですが、分かったことということは、自主点検のときや弊社の質問のときには、教団の信者の方が選挙時から支援しているということは分からなかったという理解でいいんでしょうか。
(答)繰り返しになりますが、自民党に報告をする項目に関して、その項目に照らして、その時点できちんと分かっていることに関してきちんとご報告をする。その時点で分からなかったことが後から分かった場合には、分かったことを追加で報告をするということをやってきたということです。

(以上)