小林内閣府特命担当大臣記者会見要旨 令和4年7月29日

(令和4年7月29日(金) 11:04~11:28  於:中央合同庁舎8号館1階S103会見室)

1.発言要旨

 
 科学技術政策担当大臣としてご報告をさせていただきます。
 7月28日に原子力委員会におきまして「令和3年度版原子力白書」を取りまとめ、本日の閣議にて資料配布をいたしました。白書では、原子力委員会が策定した「原子力利用に関する基本的考え方」の内容を踏まえまして、原子力政策に関する現状や取組等を説明しております。特に本年は「2050年カーボンニュートラル及び経済成長の実現に向けた原子力利用」をテーマとする特集を組みまして、原子力委員会としての見解を取りまとめております。この白書などを通じまして、国民の方々へ原子力利用に関する取組についてしっかり説明してまいります。
 以上です。

2.質疑応答

(問)先日、いわゆるデュアルユースに関して大臣から質問があって、それに対して学術会議から回答がありました。大臣としてはどういう背景があって今回の質問をしたのか、また今回の回答に対する受け止めを教えてください。
(答)日本学術会議とのやりとりについてご質問をいただきました。
 背景といたしましては、先週、22日金曜日、日本学術会議から研究インテグリティの論点整理とアカデミアの方向けの会長メッセージが公表されまして、梶田会長から私に対しましてご報告いただいたところです。その際に、そのメッセージというか報告がアカデミア向けのものと伺ったものですから、私からは、いわゆるデュアルユースの扱いを含めて、国民の皆様に対して分かりやすい簡潔な形で整理いただけないかということでお願いさせていただきましたところ、週が明けて今週の月曜日25日に梶田会長から回答をいただいたところでございます。これが背景というか、経緯でございます。
 この回答につきましては、先端科学技術の特性や、いわゆるデュアルユースといった技術の急激な進歩に伴って、避けて通れない課題に正面から向き合って、大学などによる先端科学技術の研究の実施に当たっての姿勢や方針を分かりやすく示したものであって、我が国の先端科学技術の研究力や国際競争力の維持や更なる向上、さらには私が別途、担当大臣として取り組んでおります経済安全保障の推進にもつながるものとして、私自身前向きに評価させていただいております。
 そもそも私が今申し上げた経緯の中で、私の依頼に応えて、こうした回答というものを作成いただいたことには感謝しております。また、日本学術会議のこうした取組が大学を含めた研究の現場におきまして広く知られるものとなるように、日本学術会議の皆様におかれましては大学などとしっかりとコミュニケーションを取っていただいて、大学などの理解を得られるように努めていただきたいと考えているところであります。
(問)今、大臣がお話になったところをもう少し細かく伺いたいと思うんですけれども。軍民のデュアルユースに対する否定的な立場を示してきた方たちというのも、もしかしたらいたかも分からないんですが、この軍民のデュアルユースに対する必要性が昨今高まっている国際的な背景といいますか、ここをもう少し大臣のお考えを教えていただけないでしょうか。
(答)いわゆるデュアルユース、これは両義性であり、あるいは多義性と言いますけれども、これは経済安全保障の法案の国会審議の中でも何度も答えさせていただいたんですけれども、今まさに世の中を大きく変えていこうとしている、あるいはこれからの世の中を支えていく先端技術、人工知能、量子、バイオ、マテリアル、あるいは半導体もそうだと思います。こうした技術というのは、今回、私が頂いた日本学術会議の回答にもあったとおり、安全保障分野も含めて、用途の多義性・両義性の問題というのが常に内在しておりまして、従来のようにデュアルユースなのか、あるいはそうでないのかというものを単純に二分することは困難になってきているんだろうと、そういう時代に突入しているんだろうと思っています。
 今回、学術会議の論点整理、頂いた回答でも、少し引用させていただきますけれども、「先端科学技術、新興科学技術には、用途の多様性ないし両義性の問題が常に内在しており、従来のようにデュアルユースとそうでないものとに単純に二分することはもはや困難で、研究対象となる科学技術をその潜在的な転用可能性をもって峻別し、その扱いを一律に判断することは現実的ではない」とされております。また、その上で「より広範な観点から、研究者及び大学等研究機関が、研究の進展に応じて、適切に管理することが重要」としております。
 私自身のまず評価としては、先ほど申し上げたとおり、この回答は、デュアルユースを含めて技術の急激な進歩に伴って避けて通れない課題に正面から向き合ったもので、前向きに評価させていただいています。
 今、こうした新興技術・先端技術というのは、各国がまさに競って、この技術の獲得、産学官が連携して莫大な公的資金も投じてやっているところでございます。なぜそうかというと、この記者会見の場でも皆様方にお話しさせていただきましたが、やはり科学技術力、あるいはイノベーション力が国力の源泉となっている、そういう世の中を迎えているからこそ、各国がそうした政策なり対応を取っているものと理解しております。
 これも国会審議で申し上げましたけれども、我が国として、そうしたいわゆるデュアルユース技術、両義性・多義性を持つ新興技術・先端技術に産学官が連携して取り組むこと。もし取り組まないとすれば、ただでさえ今、科学技術力が国際的に見て相対的に低下しつつある中において、この国際競争から取り残されることは間違いないと思います。今回、日本学術会議とも、こうした認識というものは共有できていると私自身受け止めているところであります。
(問)今回の研究インテグリティの論点整理の件で、学術会議側は、2017年の声明と立場は変えていない、矛盾していないと説明していたんですけれど、大臣はこの2017年の声明と今回の論点整理を比べてじゃないですけど、どういうふうに受け止めているかというのを教えてください。
(答)2017年の声明と、今回の回答というよりは、むしろ学術会議の皆さんが論点整理として出された研究インテグリティの話の関係というか、それについてご質問いただきました。
 そもそも2017年の軍事的安全保障研究に関する声明、日本学術会議が出した声明におきましては、軍事的安全保障研究とみなされる可能性のある研究につきましては、大学などの研究機関において、その適切性を技術的、そして倫理的に審査する制度を設けること、こうしたことなどを求めていたというものと理解しています。
 今回の日学の研究インテグリティに関する論点整理につきましては、最近、研究活動のオープン化が進み、あるいは国際化が進む中で、また、国際的な様々な情勢が変化してきている、そういう中で新たに浮上してきた課題である研究インテグリティ、これにつきましては我が国だけではなくて、先般、私は諸事情により出席できなくて、大野副大臣に代理で出ていただきましたG7の科学大臣会合でも、まさに中核のテーマの一つとして議論をされたものでございます。国際社会がみんな向き合っている問題ですけれども、この研究インテグリティについて、日本学術会議科学者委員会の学術体制分科会というところにおいて議論がなされて、研究者と、大学などの研究機関が研究の進展に応じて適切に管理することが重要との考え方が示されたものと理解しています。
 この両者の関係につきましては、今週水曜日の幹事会の後に梶田会長を始め日学の幹部の先生方が記者会見されておられましたけれども、その場で梶田会長から、「時代の変化、そして我々(日学)自身の検討の深化、それによって改めて論点整理をまとめた」とのご発言がございましたけれども、そのとおりだと思っていまして、私としても科学技術をめぐる環境の変化により検討が深化したということではないかと受け止めています。
 いずれにしても、先ほど来申し上げていますとおり、今回の論点整理につきましては、こうした様々な先端科学技術が出てきて、そうした中で避けられない課題に対して、日本のアカデミアを代表する機関である日本学術会議が正面から向き合って、大学などにおける先端科学技術の研究の実施に当たっての姿勢や方針を示したものであって、それが先端科学技術の、我が国の研究力の向上に、また現場の研究力の向上につながる、その可能性があるものとして前向きに評価をさせていただきたいと捉えています。
(問)国際宇宙ステーション関係ですが、ロシアのロスコスモスのボリソフ社長が、2024年より後のステーション計画の離脱をするとプーチン大統領に伝えました。その受け止めを教えてください。
 また、ロシアの宇宙の開発担当者が、新基地の建設まではISSとの関係を続けるという話をしたという海外の報道もあるんですが、裏返すと2024年より後も協力関係を続けるというふうに解釈することもできるかと思うんですが、離脱の時期をどのように捉えているのか、お考えがあれば教えてください。
(答)今、ISSをめぐるロシアの動向についてのご質問でございましたけれども、確かに今月の下旬、ロスコスモスのボリソフ総裁がプーチン大統領と面会した際に、2024年以降のISSから脱退する旨、表明したという報道があって、その後、ロシア大統領府のウェブサイトでも同じような趣旨が発表されているということは承知しています。一方で、アメリカのNASAによりますと、脱退についてロシアからまだ正式な通知は受けていないということでもございます。
 少なくとも現時点では、ロシアを含むISS参加の5極の連携によってISSは安全に運用されております。ロシアをめぐる諸情勢というのは、今、流動的でもございます。今、離脱の時期についてというご質問がありましたけれども、こうした点について私から予断を持ってお答えすることは控えたいと思いますけれども、これまでも申し上げているとおり、ISSというのは日本にとって非常に貴重な場でもあって、少なくとも今みんなで約束している2024年までは、ISSの安全運用を図ることを含めて適切に対応していきたいと考えています。
(問)学術会議の話に戻るんですけれども、学術会議がこれまでもデュアルユースを否定していなかったとしても、2017年の声明では、大臣が先ほどおっしゃったように、入口から慎重な判断を求めていて、デュアルユースにつながるような研究を避けていた研究機関もあるかと思います。今回、より深化させたという見解を出したことで、学術会議側に求めたいことはありますでしょうか。
(答)まず、2017年の声明と今回の例えば私が受けた回答との関係で言えば、まさに日学としては梶田会長が会見でおっしゃったとおり、時代が変化した、それに伴って日学自身の検討が深まった、深化したというご発言がありました。ですから私も、そこは梶田会長の言葉をそのとおり受け止めさせていただいております。
 期待することとしては、今回のメッセージの趣旨を、大学などの研究機関、現場のアカデミアの皆様方に理解していただく必要があると考えています。したがって、学術会議におかれましては、こうした大学などの研究機関としっかりとコミュニケーションを取っていただいて、現場の大学などアカデミアの皆さんの理解をしっかり得られるように努めていただきたいというのが、まず申し上げたいことです。
 日本学術会議が示した今回の内容というのは、すなわち先端的な科学技術の研究開発が重要であるということだと受け止めています。こうした趣旨というのは、政府としても、そこは共有しているところでございますので、そこについては政府としても大学を含めた研究機関、現場の皆さんに、そうした先端科学技術の研究開発の重要性というものを、そういう認識を現場の皆さんと政府としても共有したいと思っています。
 もちろん、いろいろ広報活動や周知活動をしていく中で、最終的には実際にそうした新興技術、先端技術に取り組むのか、あるいは取り組まないのかというのは各大学の判断にはなりますけれども、私自身、先ほども申し上げましたし、国会審議でも申し上げているとおり、科学技術というのは国力の源泉だと考えておりますので、こうしたデュアルユースを含めて先端科学技術の研究開発に我が国が産学官連携して取り組むことができないとすれば、それは我が国の国際社会における国力の低下につながると危機感を持っておりますので、政府としても、学術会議とそうした認識を共有しながら、日本の科学技術力の向上のために全力を尽くしていきたいと考えています。
(問)今、学術会議の在り方、政府の中で検討中かと思うんですけれども、今回の見解が何か影響することというのはあるんでしょうか。
(答)今回の見解と、今、私が担当として検討の中で進めています学術会議の今後の在り方との関係でご質問いただきました。日学の在り方の見直しにつきましては、そもそも組織形態から出発するのではなくて、これもこの場で何度かお話しさせていただいていますけど、学術会議が国民から理解されて信頼される存在であり続けるためには、どのような役割、そして機能が発揮されるべきか。繰り返しますけど、どのような役割・機能が発揮されるべきかという観点から、今年の1月にCSTIの有識者議員懇談会から報告書を受けて、これまであらゆる要素を総合的に考慮しながら丁寧に検討を進めているところであります。
 この検討に当たりましては、今申し上げたCSTIの報告書でも、政府と日本学術会議がコミュニケーションを図りながら未来志向で取り組んでいくことが期待されておりまして、私としても政府と学術会議が歩調を合わせて社会の大きな問題に取り組んでいくことも重要な論点となっていると捉えています。
 この観点からすると、今回の取組というのは、研究力の向上ですとか、国際的なプレゼンスの獲得ですとか、あるいは地球規模課題の解決とともに、冒頭申し上げたとおり、経済安全保障上も重要な先端科学技術といった重要政策課題についての国際競争力の維持・向上につながるものであると考えておりまして、今回、私の問い掛けに対しまして迅速に対応いただいたという点で、こうした対応の速さについては改革の方向性にも沿ったものと受け止めているところであります。
(問)今回、学術会議の会見の中で、防衛装備庁のファンドに関して、学術会議が示した考え方に従って改正が行われており評価しているといった内容の発言がありましたけれども、大臣としては、この発言に対してどのように受け止めているでしょうか。
(答)防衛装備庁のいわゆるファンドとの関係につきまして、日学の評価を含めて、その点についてご質問いただきました。先日、日学の幹事会後の会見におきまして、あそこに出席された幹部の方々から紹介された平成29年8月の「インパクト・レポート」などにおきましても、これはちょっと読み上げさせていただきますけれども、「インパクト・レポート」においては、安全保障技術研究推進制度、これはいわゆる防衛装備庁の制度ですね、この制度については制度運用が見直され、受託者による研究成果の公表は制限されないこと、特定秘密等を受託者に提供することはないこと、研究成果を特定秘密等に指定することはないことが明確になった旨の記載がございました。それが2017年、「インパクト・レポート」は2017年なんですけれども、2020年8月に、これも日学の文書ですけれども、正確な名称は「「軍事的安全保障研究に関する声明」への研究機関・学協会の対応と論点」という、そういう公開されている文書がございまして、この文章の中で、2017年の声明の示す危惧には一定の配慮がなされているようにも見える旨の記載がございます。
 私は、日本学術会議が示した、今、私が申し上げた、言及させていただいた内容につきまして、そもそも大学を始め研究機関の皆様方が、そうした関係者の方が本当に認識されているのか、そもそも認識されているのかどうかというところについては必ずしも明らかではないと感じておりまして、まずは今言及させていただいた点が、こうした現場の関係者の皆様方に、多くのアカデミアの皆様方に認識される必要があるんだろうと考えています。
 したがいまして、こうした点につきましても現場でご理解いただけるように、大学などの関係者の皆様方に対して、日本学術会議としてご理解いただけるよう努めていただくということを期待しているところであります。

(以上)