小林内閣府特命担当大臣記者会見要旨 令和4年6月14日

(令和4年6月14日(火) 10:57~11:15  於:中央合同庁舎8号館1階S103会見室)

1.発言要旨


 科学技術政策担当大臣として報告します。
 6月12日からフランクフルトにて開催されておりますG7科学大臣会合に、私に代わり大野副大臣が参加をしました。
 本年のG7科学大臣会合では、科学と研究における自由、インテグリティ、そしてセキュリティの推進と保護、また気候変動に関する研究、新型コロナウイルス感染症の罹患後の症状に関する研究などについて議論をし、その成果として大臣コミュニケが発出されました。
 また、この大臣会合では、冒頭、ウクライナのシュカーレット教育科学大臣より演説がございまして、今回の戦争終結後を見据えた教育研究環境の再構築の重要性について述べられました。
 その上で、G7としてロシアによるウクライナ侵略を厳しく非難し、ロシア政府が参画しております、G7の政府が支出している研究協力を必要に応じて制限することですとか、ウクライナの研究者を支援すること、こうしたこととともに地球規模課題解決のために研究と科学において協力することで結束することが確認されました。
 今年の科学大臣会合の議論も踏まえまして、来年のG7科学技術大臣会合につきまして、日本が議長国として国際社会に責務を果たしていけるよう検討してまいります。
 G7科学大臣会合の結果の詳細は、科学技術・イノベーション事務局までお問い合わせいただければと思います。
 2点目でございます。本日の閣議におきまして、「令和4年版科学技術・イノベーション白書」を閣議決定しました。成長戦略の柱である科学技術立国を実現するためには、多様なデータから我が国の研究力を分析した上で、効果的に人材育成、研究環境の整備、また研究開発、その成果の社会実装などに取り組んでいく必要がございます。今回の白書では、それらに関連する取組について、国民の皆様にわかりやすく紹介しております。科学技術・イノベーションの重要性を国民に理解していただくため、科学技術政策担当大臣として今後も積極的な情報発信に努めてまいります。
 以上です。

2.質疑応答

(問)今の科学技術白書のことなんですけれども、日本の研究力がかなり低下しているというのが白書の中にも出てきているんですけれども、これをV字回復させるために大臣としてはどういう取組をこれから重要視したいのか、教えてください。
(答)我が国の研究水準の状況につきましては、これまでも何度か申し上げておりますけれども、論文数などの数自体は別に低下しているわけではございませんが、他国との比較において申し上げると、アメリカや中国をはじめとして他国の研究水準の向上というものが非常に著しいものがございますので、相対的には残念ながら低下していると捉えています。
 その要因としては様々あると思いますけれども、そもそも研究時間がなかなか確保できないとか、あるいは特に先頭を走っている海外の大学の事業規模が拡大していて、我が国の大学との事業規模の差が拡大している、そして若手の研究者の研究環境が十分でない、様々な要因があると考えています。
 V字回復、言うのは簡単ですけれども、そんなハードルは低いものではないということは認識しておりまして、様々やっていかなければいけないと思っています。特に研究のDXを進めていかなければならないと思っておりますし、研究の設備をできるだけ共用化していく、こういうことも必要だと思っています。
 この通常国会でも法律が成立しましたけれども、いわゆる10兆円の大学ファンド、これによって世界と勝負できる大学をとにかくつくっていくということとともに、裾野を広げていくという意味で総合振興パッケージもしっかりやっていかなくてはいけない。
 そして、国会の審議でも博士学生の研究環境の整備ということが度々論点として上げられましたけれども、当然これも重要なことでございます。また同時に、これは経済安全保障とも関連しますけれども、国際的な共同開発ですとか、またそれを進めていく過程で国際的な頭脳循環というものをつくっていかなくてはいけない。様々な複合的なアプローチというものが必要になってくるんだろうと考えています。
(問)健康危機管理庁の創設とか感染症対策の司令塔機能強化を、総理が近々指示するという報道がありますけれども、この健康危機管理庁と健康・医療戦略推進本部、この関係が今後どうなっていくのか。また、現在、SCARDAで感染症対策研究の支援の取組が進んでいますけれども、今、審査とか、課題決定とか、そういった進捗について教えてください。
(答)これについては、今月、ついこの間だと思いますけれども、総理から後藤厚生労働大臣に対して、健康危機管理庁の創設も含め、司令塔機能の強化につきまして具体的な検討を指示されたと認識しています。これからそこをどう仕組んでいくのかというところ次第なので、健康・医療の本部との関係についても、その中でしっかり整理していくということだと思っています。現時点では何か具体的にこうすべきだということが固まっているわけではありません。
 SCARDAの進捗につきましては、ご案内のとおり、このSCARDAを創設したのと同時に公募を開始しました。ワクチンのところと新規モダリティのところです。それぞれ公募の期限というもの、基本的には常時ということの方向性でやっていますけれども、取りあえず当面、公募対象の課題ごとに4月末と5月末というふうに分けさせていただいたんですけれども、現在、AMEDで課題の採択につきまして検討を進めているところです。ただ、一部の課題につきましては、もうそろそろ採択結果を公表すべく準備しているとAMEDからは聞いているところでございます。
 いずれにしても、感染症有事の際の対応、今回、新型コロナ対応という意味では、ワクチンの開発については大きく出遅れたという厳しい反省に立って、このSCARDAというものを運用していかなければならないと考えておりますので、そこは次の感染症、いつ来るか分かりませんけれども、しっかりとそこに対応できるように、今回の公募の採択を含めて、AMEDとも連携してやっていきたいと考えます。
(問)物価高に関してお伺いします。
 日本も現在、物価高と言われていまして、アメリカではインフレも一因としまして日本で円安も起きています。経済安全保障とか食料安全保障、エネルギー安全保障にも関わると思うんですけれども、今回の物価高や円安、日本経済への影響について大臣ご自身の認識と、政府としてどのように取り組む必要があると思うか、教えてください。
(答)この物価の水準につきましては様々な見方がありますので、私から具体的な評価、物価高が進んでいるのか、それはそうでもないのかというところについてのコメントは控えますけれども。当然、我が国の国内で見れば、私はスーパーへ行きますけれども、スーパーへ行くと確実に値段は上がっているという感覚はあるんです。だから、国民の生活に対して一定の影響はあると捉えておりますし、だからこそこの通常国会で、先般、補正予算を手当てさせていただいたということだと考えています。
 経済安全保障の観点からいうと、実際に物価が上がったというか、何らかの事象が起こってから、どうやって対応するかというところも、当然これからいろいろ考えていかなくてはいけないんですけれども、今、当面は、まず経済安保の政策を進めていく上では、この物価高が有事と言えるかどうかは別にして、平時からしっかりと有事を想定して、今、様々な事象が起きり得るということを念頭に置いて、平時から取組を進めていくということだと思っています。
 したがって、食料にしても、エネルギーにしても、国際的な需給が逼迫すれば値段が上がるということは当然だと思います。今回はウクライナ情勢なども影響している部分もあると思います。今後、例えばエネルギーについて言えば、我が国は今、海外から輸入しているものもあるわけですけれども、例えば世界の途上国、あるいは新興国のいわゆる購買力、バイイング・パワーというものも上がってくる中で、いざというときに日本がそこで国民の皆様の命や暮らしをしっかりと守り抜けるだけのエネルギーを本当に確保できるのか。仮にそこが買い負けるようなことがあるとすれば、どのように今から対応しておくのか。そこは想像力を働かせて、できる限りの備えをしていくということに尽きると考えます。
(問)G7の(科学)大臣宣言についてお聞きします。
 日本にとって今回の宣言がどんな意義があるかお聞かせください。
(答)今回の意義は、様々なパーツがありますけれども、1つ大きな意義があると私自身が感じるのは、G7というのはライクマインデッドカントリーズですから、基本的な価値を共有する国々の集まりだと認識しておりますので、その先進7カ国が一致をして、このコミュニケにおきましてもロシアによるウクライナの侵略に対して厳しく非難をし、ロシアに対してしっかりと一致して協調しながら歩調を合わせて対応を取っていくということを確認できたということは大きな意義があったと思います。
 また、当然、来年は我が国がG7の議長国になるわけですから、そことのリンクもある程度意識をしながら、今回のコミュニケや大臣会合の結果を踏まえた上で、これからテーマの設定ですとか、そういうところはやっていくということになります。そことのリンクをしっかりこれから考えて進めていくという意味では、今後、今回の会合に対して、今回は大野副大臣に出席いただきましたけれども、日本として考え方をインプットしてきたということは大きな意義があったと感じています。
(問)冒頭でロシアと政府が出資している研究について必要に応じて制限すると述べられたと思うんですけど、「ISS」ですとか「ITER」について、日本への影響というのはあるんでしょうか。
(答)これは、コミュニケのところで「as  appropriate」という形で英語でなっているんですけれども、適切な形で、必要に応じて、そこはG7で対応していくということですので、今ご指摘いただいたとおり、これからしっかりとどういう事業が対象になるのかというのは精査していく必要がありますけれども、大きなところでいえば「ITER」、また「ISS」というところが挙げられるかと思います。この取組につきましては、今後、我が国として、またG7、他の6カ国ともしっかりと連携をしながら対応を今後決めていくということです。
(問)先日発覚した福井大学の学術論文における査読の不正についてお伺いします。
 論文の信頼性を揺るがす不正行為だと思われますが、大臣の所感をお聞かせいただけますでしょうか。
 また、大臣は昨年12月に競争的研究費の指針の改訂にも取り組まれましたが、研究インテグリティの観点から、査読不正の問題に対してどのような対応ができるとお考えになりますでしょうか。
(答)今回、福井大学の研究者が自らの論文の査読に関与した疑いがあるという報道については承知をしておりますし、現在、それについて大学などにおいて調査がなされていると認識をしております。したがって、その調査の結果を踏まえて対応を決めていくということだと思いますけれども、仮にこうした報道されていたような行為が事実であったとすれば、今おっしゃったように、国民の科学技術に対する信頼というものを大きく揺るがす行為ですし、科学の発展を妨げることにつながるとも思います。それと、国内の話に限らず、日本の中でそういうある意味不正行為のようなことがこれからも続くとすれば、世界の国際社会における日本の学術界、科学技術のみならず学術界に対する信頼を揺るがしかねない行為だと思っておりますので、これが本当に事実だとすれば大変遺憾だと思うし、こうした行為というのは、私は許されないことなんだろうと考えます。
 この調査結果がいずれ判明するんでしょうから、その結果が出れば、その結果を踏まえた上で、研究者コミュニティ自身もそうですし、またそれぞれの学会ですとか企業においても、しっかりとした取組を期待したいと思います。
 こうしたいわゆる研究不正と呼ばれる……今回の件はまだ調査結果が出ていないので分からないんですけれども、これまでも様々出てきています。アカデミアにおける倫理の問題とか、そういうところについて、まだまだやるべきことがあると思います。
 先ほど冒頭、科学技術力をどうやってV字回復していくのかという話もありましたが、それはそれで非常に重要な話だと思いますけれど、こういう話はその話以前の問題ですので、本当に大切なところだと思いますから、私も今回の件については注視をしていきたいと考えています。

(以上)