小林内閣府特命担当大臣記者会見要旨 令和4年6月3日

(令和4年6月3日(金) 10:57~11:18  於:中央合同庁舎8号館1階S103会見室)

1.発言要旨


 科学技術政策担当大臣として報告いたします。
 昨日、第61回総合科学技術・イノベーション会議(CSTI)を開催いたしました。会議では、統合イノベーション戦略2022の答申、そして世界に伍するスタートアップ・エコシステムの形成、またSociety5.0の実現に向けた教育・人材育成に関する政策パッケージ、これら3件について決定をするとともに、既に統合イノベーション会議で決定されておりますAI戦略2022、そして量子未来社会ビジョンについて報告をいたしました。
 また、理化学研究所の五神真理事長と慶應義塾大学の伊藤公平塾長から、量子技術の最新動向や、また「量子未来社会ビジョン」のポイントに関するプレゼンテーションと量子コンピュータのモックアップ、実物大の模型ですね、これを用いたデモンストレーションが行われました。
 会議の中では、岸田総理から私を含む関係大臣に対しまして、「量子未来社会ビジョン」の実現に向けた有志国との連携、官民挙げた重点投資の促進、また未来社会のゲームチェンジャーとなる新興技術を育てるためのスタートアップへの資金面での支援、そして教育・人材育成に関する政策パッケージに沿った取組を着実に進めること、これらなどにつきまして指示が出されました。
 また、統合イノベーション戦略2022につきましては、本日閣議決定したところでございまして、総理の指示の下、関係大臣と連携して、この戦略の具体化に早急に取り組んでいきます。
 併せて、本日、SBIR制度について、スタートアップなどの研究開発と、その事業化を一貫して支援するため、スタートアップなどへの支出目標額を定める方針や制度の運用を改善する指針の改訂を閣議決定しておりますので、ご報告いたします。
 詳細はCSTIの事務局までお問い合わせください。
 そして、2点目、これも科学技術担当大臣としての報告です。
 日本学術会議を含むG7各国のアカデミーにより構成される「Gサイエンス学術会議」が5月31日にドイツで開催され、G7サミットに向けて共同声明が取りまとめられ、公表されました。
 今回、併せて4つの共同声明が公表されており、国際社会が取り組むべき喫緊の課題である気候変動、脱炭素化やパンデミックなどの地球規模の課題について、科学的な知見に基づく政策提言がなされていると承知しています。
 来年3月を予定していますが、Gサイエンス学術会議では日本が議長国となります。国際社会における日本のプレゼンスを高めるためにも、学術会議には時宜にかなった課題を設定し、各国アカデミーと連携を深めつつ、その英知を集め、骨太の共同声明を取りまとめて、G7サミット、そして科学技術大臣会合にインプットいただくことを期待しております。
 詳細は日本学術会議事務局までお問い合わせいただければと思います。
 以上です。

2.質疑応答

(問)今朝閣議決定した「統合イノベーション戦略2022」なんですけれども、なかなか大量な文書があると思うんですけれども、大臣の考える今回の戦略のポイントというか、売りというか、そこら辺についてまず教えてください。
(答)今朝閣議決定したこの戦略ですけれども、これは第6期の科学技術・イノベーション基本計画の2年目に当たるものでございまして、国内外の情勢変化も見据えて国際社会への貢献も行いつつ、Society5.0の実現に向けて、いかに勝ち筋を見いだしていくのか、そういう意識を持って今後国家的重要課題に臨んでいくことが重要だと考えています。
 この中で、かなり大量のものでございますが、ポイントとしては、昨日も総理を含めて会議で説明させていただきましたけれども、人材育成のところが一つの柱となっていると。2つ目は先端技術、これはこれから経済安全保障重要技術育成プログラムなどを本格化していきますけれども、先端技術への取組。また、イノベーションを牽引していく主体が、大企業もそうなんですけれども、やはりスタートアップ、ここが引っ張っていく世の中の流れがありますので、ここをどうしていくのか。この大きく3つの柱に力を入れていきたいと思っています。
 どれが重要で、ほかが重要でないというものではないので、この3つの柱、これは全力で取り組んでいかなければいけないと考えています。
(問)昨日、CSTI本会議で久々にデモが行われたかと思います。岸田総理が科学技術担当大臣だった頃もデモが行われていたかと思うんですけれども、大臣、実際にデモを行ってみて、その感想というか、今後やっていきたいとか、そこら辺の思いを教えてください。
(答)昨日、デモを行いまして、いろいろ時間の都合もあって限られた時間ではあったんですけれども、総理も含めて関係閣僚の前で、また報道もきていただいていますので、国民の皆様に対しまして、こうしたデモンストレーションをやるということは、私は非常に大きな意義があったと思っています。
 これから国民の皆様の理解を得ながら、官民一体となって国家戦略を掲げて実行していかなくてはいけないので、予算も必要になってきますし、国民的な理解を得る上でも、量子とか人工知能、言葉はかなり今ありふれてきていますけれども、実感を少しでも持っていただくことが重要だと考えておりまして、昨日も私、はたから、総理が小さなチップですとか、そういうのを手に取って拝見されている、説明を受けている姿を見ていましたけれども、総理も、直接伺えたわけではないですけれども、ああいうデモンストレーションに接して、一定の実感は持っていただいたのではないかと感じています。
 今後につきましては、総理が科学技術立国の実現を成長戦略の一丁目1番地に掲げている以上、トップリーダーである総理の前でこうしたデモンストレーション、またできれば国民の皆様にもっと伝わる形でこうしたデモンストレーションというものをやっていくことは重要なのかなと感じています。今後、どれだけまた総理の時間が取れるかという話もありますけれども、できるだけそういう機会は追求していきたいと思っています。
(問)先週の25日に、CSTIの菅先生が日本化学会の会長に就任されました。ご所感があればいただければと思います。
(答)日本化学会の会長にCSTIの菅議員が就任されたということは承知しています。この日本化学会というのは、かなり長い歴史があって、100年以上ですかね、そうした長い歴史を持った会でございますので、そこの会にCSTIの菅議員が就任されたということは喜ばしいと思っています。
 この日本化学会というのは、歴史があるとともに、将来の化学者を育成・支援すると同時に、化学分野におけるアカデミアと企業、産業界、あるいは政府、こうした交流の場としても、これまで積極的に貢献してくださったと認識をしています。
 菅先生はCSTIの議員ではありますけれども、自らスタートアップを起業された経験もあって、非常にディープテックの分野にも明るい先生でございますので、そうした方が日本化学会の会長に就任されて、今申し上げたアカデミアと産業界の架け橋となっていただく、そういうことを期待しているところであります。
(問)冒頭でお話があったGサイエンス学術会議の件なんですが、政策提言、脱炭素とかパンデミック対策について結構細かな言及があったかと思います。そうした政策提言に関する受け止めとお考えを聞かせてください。
(答)まず、これは今回、G7の各国を代表する学術界の皆さんが英知を結集して取りまとめられたものと認識しています。したがって、当然こうした提言を踏まえて、これから行われるG7サミット、こういったところにしっかりと反映されていくのだろうと認識しています。
 私は、例えば地球規模な社会的な課題の解決に向けまして、今後、アカデミアはもちろんですけれども、政府も含めて日本のプレゼンスを国際社会の中でどう高めていけるかというところに、私自身非常に強い問題意識があります。その中で、今回出された提言もさることながら、日本として意識していかなければいけないのは、来年の3月の日本で開催するGサイエンスに向けてどういうことを打ち出していくのかということだと考えています。絶好の機会でございますので、主体となるのは当然日本学術会議なんですけれども、政府の政策的な問題意識というのもできる限り共有をしながら、日本学術会議におかれては、各国のアカデミアの英知を結集していただいて、また来年行われるG7のサミット、また恐らくその前になるG7の科学技術大臣会合、こうしたところにしっかりとインプットいただけるような、そういう成果を出していただくことを期待しております。
(問)経済安全保障担当大臣としてお尋ねいたします。
 東芝の再建策に関連してなんですけれども、昨日、東芝が再建に関して10社からの応募があったと発表するなど、再建に向けた動きが進んでいます。外資も買収に意欲を示しているといった報道もあります。当然、東芝は経済安全保障上もかなり重要な企業だと思うんですけれども、質問なんですが、外為法なんかも今後関わってくるかもしれませんが、大臣ご自身として、買収に関して日本の官民ファンドが加わるのを再建の条件とすべきなのか、それとも外資単独でも、そこはあり得るのかどうなのか、その辺りの考えをお聞かせください。
(答)報道については承知していますが、特定の企業の、個別の企業の動きについて私からコメントすることは控えます。
 その上で申し上げますと、今ご指摘があったとおり、東芝という企業は、半導体、あるいは原子力、国家の安全保障に関わる技術を持った企業であります。したがって、今のご質問に直接答えることは控えますけれども、当然こうした東芝をめぐる一連の動きについては、政府として注視をしていくということだと考えています。
(問)大学ファンドに関してなんですけれども、先日、各大学にアンケートを採ったところ、現時点で5大学が申請を検討しているという回答がありました。一方で、一部の大学に優秀な人材や研究資金が集中して、多くのほかの大学の研究力が低下する恐れがあるといった懸念もあったんですけれど、こうした意見について大臣の受け止めを伺いたく思います。
(答)国公私立大学に対してアンケート調査を行われたという、その結果については報道で承知をしています。
 まず、私自身の受け止めですけど、大学ファンドそのものにつきましては、先ほども先端技術の話が少し出ましたけれども、今、各国がしのぎを削って産学官一体となって競争している中で、今、残念ながら日本の大学を含めたイノベーションの力というのは、相対的に国際社会の中では低下してきているという、そういう強い危機感を私は持っています。
 したがって、世界と勝負できる大学をどうやって育成していくのか、ここは極めて重要だと思っていて、これなくして日本の未来というのはないと私は思っています。この10兆円大学ファンド、いろんな声があることは承知していますけれども、世界と勝負できる大学を育成していかなければいけないという点については、私は多くの方のご理解をいただいていると考えています。
 同時に、今おっしゃったように、一部というか様々な懸念を含めたご指摘というのは認識しています。格差が広がるのではないかというところについては、当然、一部の大学だけを支援すればいいというのではなくて、世界と勝負できる大学には尖って走ってもらうと同時に、研究の裾野というものをしっかりと広げていかないと、この国の国力というのは、私はなかなか増えていかないと思っていますので、これまでも申し上げているとおり、総合振興パッケージで、しっかりとそこは両面支援をしていきたいと思います。
 総合振興パッケージも、あらゆる大学を支援するというよりも、そこの大学ファンドに申請していただく以外の大学の方については、地域の中核となる大学、あるいは限られた分野かもしれませんが、世界と勝負しようとする大学、とにかく上を向いて、前を向いてチャレンジしていく、そういう大学に対しては、しっかりと総合振興パッケージで支援をしていくということは、私は重要なことだと考えています。
 また、一定の3%の例えば基準という話とかありますけれども、そういうところに基準を設けると、稼げる研究ばかりに偏るのではないかというようなご指摘もあることを承知していますけれども、今回、大学ファンドの仕組みの中では、あくまで大学自身がしっかりと判断をして、中長期的な観点から新しい資金というものを基礎研究などにもしっかりと投じていくことで、大学が社会全体の成長や、あるいは変革をリードしていくことが私は目指すべき姿だと思っておりますので、必ずしも稼げる研究だけに偏るということは、私は現時点ではそうは思っていません。
 いずれにしても、今後、この約10兆円の大学ファンドの詳細な制度設計につきましては、文部科学省が主体的にこれから制度設計していくことになりますけれども、当然、私どもの立場としても、そこと連携して、この制度がより実効性が高まるように、そこは協力していきたいと考えています。
(問)昨日、CSTIの本会議が開催されて、量子の戦略で、量子コンピュータの国産1号機を今年度内に整備する方針ということですけれども、開発の現状と見通しについて何か話せることがあれば、お願いします。
(答)まず、理研が国産の量子コンピュータの開発を目指しているわけでございますけれども、そもそも量子技術につきましては、経済安全保障上極めて重要な技術であると位置づけておりまして、コンピュータに限らず高度な量子技術というものを自国で保有するということは非常に重要なことだと思っています。したがって、我が国として国産の量子コンピュータの実機を開発する意義というのは極めて大きいと思っています。
 したがって、国際競争が激しくなっていますけれども、有志国とも連携をしつつ、海外に比肩し得る量子技術、また量子コンピュータの国産化を目指していくということは重要だと思っておりまして、量子コンピュータについて言えば、従来型の既存のコンピュータとのハイブリッドというものも組み合わせながらやっていきたいと思っています。
 今後の見通しなんですけれども、平成30年度から文科省のいわゆるQ-LEAPで、理研が、今、研究開発を進めていますけれども、進捗自体は順調だと捉えています。したがって、今年度中には量子コンピュータのプロトタイプを開発して、作製して公開する見込みだと承知をしています。
 更に、来年度以降につきましては、この研究成果を活用しながら、商用の国産機のリリースも予定していると承知をしています。非常にスピードも速いですし、各国が国家のある意味威信をかけて勝負している分野でもありますので、我が国としても世界と勝負できるように、そこは力を尽くしていきたいと考えています。

(以上)