小林内閣府特命担当大臣記者会見要旨 令和4年5月24日

(令和4年5月24日(火) 9:50~10:03  於:中央合同庁舎8号館1階S103会見室)

1.発言要旨


 科学技術政策担当大臣として1点ご報告いたします。
 昨日、5月23日午前中に、慶應義塾大学の慶應量子コンピューティングセンターを視察してまいりました。このセンターでは、慶應義塾大学の伊藤塾長などから、商用量子コンピューター、「IBM Qシステム」というものでございますけれども、これを活用した量子コンピューター向けのソフトウエア開発や各種研究・実証といった様々な研究活動につきまして説明を受けた後に、意見交換を行わせていただきました。
 このセンターの活動で特に印象的だと感じたのは、ものづくりから金融分野に至るまで企業が人材を派遣されて、また出口を意識した目的志向の研究を行っている点、これが非常に印象的でございました。
 また、2点目としましては、基礎研究や最先端の研究環境を核として産学連携の場となっておりまして、若い研究者の方々も積極的に貢献されている点が印象的でございました。
 また、量子だけではなくて、半導体ですとかスーパーコンピューター、AI、こうした様々な関連分野とも連携して相乗効果を得ようと取り組んでいる点が、これも印象的でございました。
 量子につきましては、各国がしのぎを削っている中で、我が国としても、これまでの量子戦略をバージョンアップする形で、産学官連携や社会実装を見据えた「量子未来社会ビジョン」をこの4月に策定し、まさに今、この実行が求められていると考えています。
 今回の視察におきまして、現場の関係者の量子分野に対する高い熱量を改めて私自身感じましたし、産学連携の好事例を拝見することができました。今回の視察も参考にさせていただきながら、量子戦略をしっかりと実行に移していきたいと考えております。
 以上です。

2.質疑応答

(問)日米首脳会談で、先端技術とかムーンショット研究、がんムーンショットについても話題になったかと思いますけれども、大臣としては、今回の日米首脳会談を受けて、日米の科学技術や健康・医療分野での協力について、どのように今後進めていきたいとお考えでしょうか。
(答)昨日、いわゆるコアパートナーシップに基づきまして、日米の間での経済分野での協力をまとめましたファクトシートが発出されました。今後の日米間での科学技術協力全般につきましては、このファクトシートで取り上げられている先端技術につきまして、例えばAIにつきましてはデータの秘匿性を保つための研究開発を日米共同で進めていきたいと考えておりますし、また量子分野におきましては、国際シンポジウムを開催することも念頭において、専門家の交流を行って日米の知見を共有していきたいと考えています。
 がんムーンショットにつきましては、共同声明におきましても、がん治療に関する日米共同研究の更なる進展というものが歓迎されたところでございます。実際、そのファクトシートにおきましても、健康・医療分野ではがんムーンショットや、あるいは日米医学協力計画を通じた研究に関する日米協力、こうした点が盛り込まれているところでございます。
 このがんムーンショット、健康・医療のところについては、今月初めに私自身訪米しまして、NIHやNIAID、ファウチ所長などとも面会をさせていただきまして、がんムーンショットやワクチン研究開発についての日米協力の進展について意見交換をさせていただいたところでございます。健康・医療戦略を担当する大臣として、こうした自らのアメリカ側とのやりとり、また昨日の日米首脳会談の結果を踏まえまして、がんムーンショットを含めて、具体的な日米関係、日米協力が更に進展していくように取り組んでいきたいと思っています。
 がんムーンショットそのものにつきましては、既に日米共同による挑戦的な研究開発課題の公募を開始したところでございます。今後は、この事業を実施しているAMEDにおいて、日本側の課題審査でアメリカ側の研究者にレビュアーとして参画いただくといった協力を調整しているところだと承知しております。
(問)先日の日米首脳会談の件で教えてください。
 宇宙分野に関係してなんですが、月探査とか宇宙探査における日米協力を推進するということで考えが一致したかと思うんですが、その率直な受止めを教えてください。
 それから、宇宙協力に関する枠組協定についても言及があったかと思うんですが、内容について現時点で分かっていることがあれば教えてください。方向性でも結構です。
(答)日米首脳会談での宇宙に関する結果については、前回も申し上げたかもしれませんが、この宇宙空間の利活用というものが、科学上も、あるいは産業上も、あるいは安全保障上も極めて重要な空間に既になっている、これからますます今後重要性を増していくと思われる中で、特に民生の宇宙の利用について日米が協力していくということは非常に重要だと思っています。というのは様々な可能性が眠っているフロンティアだと認識しておりますし、まだルールも整備が十分にはされていない。そういう分野でございますから、志を共有する同盟国であるアメリカとしっかりと連携をしながら、その可能性を追求していく動きというのは、日本の未来を切り開いていく観点からは不可欠だと思っています。
 その意味で、昨日の共同声明、またファクトシートにおきまして日米の協力の具体的な事項が複数書き込まれたということは私自身歓迎しておりますし、これを更に私自身の宇宙政策担当大臣という立場で、また経済安全保障を担当する大臣として、しっかりと前に進めていきたいと考えています。
 2点目の枠組協定の話でございますけれども、これまで日米の間での宇宙の協力に関する協定というのは、国際宇宙ステーションを除けば基本的になかったわけです。したがって、個別の協力の案件ごとに覚書(MOU)を結んで協力を進めてきました。これからもそういうやり方はもちろんあり得るとは思うんですけれども、手続きが非常に煩雑であったりしますし、また特にこれからアルテミス計画のような大きなプロジェクトがあって、今後の宇宙の探査ですとか利用の在り方について日米がしっかりと連携して進めていかなければならない。そういう状況の中で、今回この枠組協定というのは、一般的な条項を規定するというものでございますけれども、この交渉を2022年には終わらせて、完結して、これは恐らく国会審議なども必要になってくると思いますので、2023年にはしっかりと締結すると。そういうスケジュール感でしっかりと進めていきたいと考えております。
(問)日米首脳会談で、米国側が新しい経済枠組というんですか、IPEFというのか、従来のFTA、EPAとは違う形での、FTAが結べない状況で違う形の枠組を打ち出しました。実効性に疑問があるとの声もありますが、その中でサプライチェーンであったり、サスティナビリティであったり、今までのEPA、FTAとは違う新しい要素が入って、いわゆる日本側の経済安全保障という概念もかなり色濃く反映されていると思います。こういった状況の変化、IPEFそのものの評価と、こういったサプライチェーンなどに意識を回さざるを得なくなった時代の変化について、大臣はどのようにご覧になっていますか。
(答)前半のIPEFそのものにつきましては、今回、多くの国の支持を得る形で、IPEFの枠組が表明されたということにつきましては、インド太平洋地域、ここは今後の世界の成長を引っ張っていくエリアだと思っていますが、このインド太平洋の共通の利益の実現に向けた第一歩だと受け止めています。当然、総理も発言されていますけれども、アメリカのこの地域におけるコミットメントを強化する動きとして、日本としては歓迎しているところであります。
 また、この共同声明にもあるんですけれども、IPEFの今回の動きというのは、まずは将来の交渉に向けた議論を始めるとされているので、インド太平洋における自由で公正な経済秩序の構築につなげていくために、日本政府としても関係国と協力していきたいと考えております。
 ただし、今おっしゃったように、総理も繰り返し発言されておりますけれども、日本政府としてはTPPの枠組にアメリカが復帰することがベストであると捉えています。
 2点目の経済安全保障との関係については、IPEFの枠組自体は、これから関係国と協議、議論しながら進めていくということでございますが、別途、日米の首脳会談において、まさにサプライチェーンですとか次世代半導体の話、あるいは重要技術の輸出管理での協力など、そこでの協力を追求していくことが触れられたところでございまして、今、インド太平洋地域におけるルールに基づく経済秩序の強化が重要だと考えております。
 またIPEFと日米の動きというのは、当然、日米もIPEFの中に入っているわけですから、オーバーラップしてくる部分はあるんですけれども、今申し上げたより具体的な部分については、日米でしっかりと先に走っていける、そういう同盟国同士でございますから、この日米間の連携というのをまずは強化していくということだと受け止めています。

(以上)