小林内閣府特命担当大臣記者会見要旨 令和4年5月20日

(令和4年5月20日(金) 9:34~9:56  於:中央合同庁舎8号館1階S103会見室)

1.発言要旨


 私から3点ご報告申し上げます。
 まず、宇宙政策担当大臣としての報告です。
 本日、宇宙開発戦略本部が開催され、宇宙基本計画工程表改訂に向けた重点事項を決定いたしました。総理からは特に次の2点について、宇宙政策担当大臣を中心に、関係閣僚が連携して取り組むよう発言がありました。
 まず、我が国のロケットの打上げ能力を抜本的に強化すること。具体的には、複数の人工衛星を同時に高い頻度で打ち上げることを可能とするH3ロケットの実用化や、政府による活用を通じて民間小型ロケットの事業化を促進するなど、必要な人工衛星を国内から打ち上げられる体制を整えること。
 さらに2020年代後半に米国人以外では初となる日本人宇宙飛行士の月面着陸の実現に向け、月面の有人探査等を目指すアルテミス計画を推進し、宇宙服なしで長期間搭乗できる月面探査ローバの研究開発を推進するなど、この計画に貢献すること。
 総理の発言を踏まえ、私自身先頭に立って宇宙政策をしっかり進めてまいります。
 2点目、健康・医療戦略担当の大臣として報告します。
 今週18日にグローバルヘルス戦略推進協議会を開催し、戦略の最終取りまとめを行いました。グローバルヘルスは、人々の健康のみならず、経済・社会・安全保障の観点からも重要であり、新型コロナウイルス感染症を受け、新たな戦略を策定すべく昨年より議論してまいりました。
 この戦略は、ポストコロナの時代にグローバルヘルスについてどのように我が国として戦略的に取り組んでいくかという方向性を記載しておりまして、公衆衛生危機への予防・備え・対応の強化、いわゆるPPRの強化、そしてユニバーサル・ヘルス・カバレッジの実現に向けて具体的な取組を進めていくことを主軸としております。
 今後、この取りまとめは5月下旬の健康・医療戦略推進本部で決定する予定でございます。そして、今年8月にはTICAD(アフリカ開発会議)が行われる予定で、また来年には日本が議長国となるG7、あるいはSDGサミット、こうした大変重要な国際イベントを控えておりますので、我が国の貢献を世界にも発信し、議論を主導していきたいと考えます。本件の詳細につきましては、事務局である健康・医療戦略推進事務局までお問い合わせください。
 3点目です。科学技術政策担当の大臣として報告します。
 本日午前11時半から、グロッシーIAEA事務局長と会談を行う予定です。この会談には、昨年、IAEAの総会に代理出席をいただきました上坂原子力委員会委員長も同席し、原子力の幅広い利用の在り方について意見交換を行う予定です。本日の会談を踏まえて、今後の我が国とIAEAとの協力の更なる進展につなげていければと考えております。
 私からは以上です。

2.質疑応答

(問)グロッシー事務局長との面会についてなんですけれども、具体的にどういうお話をするのか、お話しできる範囲で教えてほしいというのと、また医療用RIのアクションプランを取りまとめられつつありますけれども、IAEAのような国際機関も含めて国際連携についてどのように考えているのか、教えてください。
(答)今、本日の会談についてご質問がありました。日頃よりIAEAをまさに先頭に立って主導して国際的な原子力の平和利用を推進していただいていますグロッシー事務局長に感謝の意を示すとともに、IAEAと日本政府間の更なる協力関係の強化の観点から、原子力の利用につきまして幅広い観点から意見交換を行うことを予定しています。
 その中で、今、医療用RIのお尋ねもございました。この医療用RIは、当然がんの診断や治療等に用いられるものであって、その多くを現在輸入に頼っているということで、それを国産化していくということは、経済安全保障の観点からも非常に重要だと捉えております。したがって、原子力委員会の下に専門の部会を設置して議論を進めてまいりました。
 今月中旬に、この専門部会で研究開発から実用化、社会実装に至るまでのアクションプランの案を取りまとめられたと聞いておりまして、このアクションプランの案におきましては、国際的なサプライチェーンの参画を含めてRIの流通に関わる国際協力に戦略的に取り組むこととしておりまして、IAEAですとか、あるいはOECD/NEA、こうした国際機関との連携というものを積極的に、また議論を積極的にやっていきたいと考えます。
 そして、またIAEAにおきましては、グロッシー事務局長のまさにリーダーシップの下で「Rays of Hope」、これは放射線治療や診断に関する能力とかインフラを持っていない主に途上国への支援を行う取組でございますけれども、こうした取組を推進していると承知しておりますので、我々としてもアクションプランに基づく形で、IAEAを含めた国際的な連携というものを追求していきたいと考えています。
(問)宇宙政策について2点お伺いします。
 大臣、先日の米国出張でもNASAの長官とお会いするなど、日米の宇宙協力の調整をなされていると思いますが、本日の宇宙開発戦略本部会合を受けて、大臣として改めてこれから重視していくべき点は何かという点をお伺いしたいと思います。
 あともう1点、国際宇宙ステーションの運用延長への参加については今回含まれなかったと思うんですが、この辺りについてもお伺いできますか。
(答)先ほど総理からの発言を紹介させていただきましたけれども、私としてもそこの問題意識としては当然共有をしているところでございます。宇宙というのは、民生の分野、産業分野でも、あるいは科学探査の分野でも、あるいは安全保障の分野でも極めて重要な空間でございますけれども、これからはフロンティアでございますから様々な可能性を秘めている。そういう意味では、日本にとって、国民の皆さまにとっても、まさに希望の種が様々存在するエリアと思います。したがって、我が国としては宇宙空間の利活用というものを積極的に進めていかなければならないと考えています。
 その中で私が非常に重要だと思っているのは、様々な宇宙空間の利用の分野はあると思うんですけれども、やはり一番重要なものの一つは打上げのところだと思っています。今、残念ながら商業用の打上げについては、基本的に過去5年を見ると、全て海外での打上げに頼っています。果たしてそれで本当に国家としていいのかという問題意識は強く持っております。これから小型衛星のコンステレーションをはじめ、我が国としても商用衛星を含めてニーズ、需要が増えてくることは明らかなわけです。一方で足元を見ると、こうした厳しい国際情勢の下でロシアのソユーズロケットは使えない。そういう中で、では我が国としてどうしていくのか。それは、我が国としては打上げ能力をしっかり確立していくことだと思っています。
 そのためのアプローチとしては、私は大きく3つあると思っていて、1つは打上げのときに一回で複数の衛星を打ち上げていく。そのための一つのやり方としては、H3ロケットの能力をしっかりと強化していくことだと思っています。
 そして、2点目としては、例えば基幹ロケットを打ち上げるときに、やはり頻度を上げていく必要があると思っていて、射場の運用のシステムを整備し、改善していかなければならないとも考えています。
 そして、やはり宇宙空間の利用というものを持続的にやっていかなくてはいけないので、いつまでも国産の基幹ロケットだけで全てを賄っている状況では私はないと思っています。アメリカの例を見れば明らかなように、民間のベンチャーがどんどん出てきて、そこの役割を担っていっている。イーロン・マスクさんの「スペースX」もそうですし、ジェフ・ベゾスさんの「ブルー・オリジン」もそうですけれども、今、日本でもベンチャー企業が出てきています。まだまだ小さいかもしれませんが、我が国として民間産業の打上げのところを強化していかなくてはいけない、これが重要なことだと思っています。
 当然、あとはアルテミス計画にどう参画していくのか。総理から去年の年末に、2020年代後半、アメリカ人以外で初の日本人宇宙飛行士の月面着陸という大きな目標を示していただいていますので、それに対して日本がどう貢献できるのか、そこはしっかり考えていかなくてはいけないと思っています。
 2点目のISSの件については、今回含まれなかったというわけではなくて、今朝決定した重点事項では、ISSについては、アルテミス計画におけるISSの活用や民間事業者の参画拡大に向けた方策等の観点から、その延長に関する検討を行い、必要な措置を講じるとして、規定したところであります。
 ここのISSという場の重要性、これに対する認識は全く変わっていなくて、これまでも日本人の宇宙飛行士が船の内外で様々な貴重な経験を積ませていただいてきていますし、その蓄積がある。そして、今申し上げたアルテミス計画に参画していく上でも貴重な実証な場として重要だと思っていますので、今、厳しい国際情勢にはありますけれども、アメリカ、ヨーロッパ、あるいはカナダ、こうした他の国ともしっかりとコミュニケーション、連携を図りながら、我が国としてのスタンスというものを決めていきたいと考えているところであります。
(問)経済安保大臣としてご所感をお伺いしたいことがあります。
 来週、アメリカのバイデン大統領が来日されて、「IPEF」というものを発表する見通しで、日本政府も前向きに検討されていると承知しています。サプライチェーンの強靭化とか、大臣担当の経済安保と通じる点もある枠組だとは思うんですが、日本としてはどうコミットしていくべきものなのか、あるいは課題などがあるようでしたら、現時点での大臣のお考えを教えてください。
(答)これから日米首脳会談が行われますので、直前まで様々な調整が行われると承知しております。したがって、その具体的な中身について今申し上げることは控えますけれども、「IPEF」という枠組につきましては、インド太平洋にアメリカという国がしっかりとコミットしていく、そうした姿勢を打ち出すということは日本として歓迎すべきことだと考えています。
 ただし、一番日本国として最善だと思うのは、TPPへのアメリカの復帰ということだと、そういう姿勢に変わりはないと考えております。このサプライチェーンの話を含めて、私の立場としては、まずは日本としての基軸を作っていくというところで、先日、法律も成立しましたので、我が国として何ができるかというのを主体的に考えていくことが必要です。その上で同志国と連携を図っていく、そうしたことは当然重要だと思っておりますし、国会審議でも答弁させていただいているとおりですので、そうした視点をしっかりと日本の外交上の政策に盛り込んでいけるように、関係省庁と連携をしていきたいと考えます。
(問)先日、大学ファンド関連の法案が成立しました。この法案については、様々な形で大学関係者から反対意見が相次いでいますけれども、政府の説明に現場の納得感が得られていないのではないかと見えるんです。今後数十年間走り続ける政策となるわけですが、もう少し時間をかけて説明するような方法もあったと思います。その辺について大臣の考えをお願いします。
(答)皆さんご案内のとおり、今週、この法案が国会を通って成立としたということで、この国際卓越研究大学の在り方につきましては、これまでもこの場でもお話しさせていただいたとおり、CSTIの下の専門調査会で、この1月に取りまとめが行われて、そこで決められた基本的な方向性に沿って文科省でしっかりと法案を組み立てていただいて、そして国会の審議に臨まれたと認識しています。
 まず今後の運びについては、文部科学省において基本的な方針というものをしっかりと作っていただいた上で、具体的な対象となる大学を認定していく。そして、令和6年度中の開始を目指しているところでございますので、私どもの立場としては、そこのプロセスに責任を持って文科省と連携をしながら絡んでいきたい、関与していきたいと考えています。
 今、おっしゃったように、国会でもいろんな審議がなされたと承知しています。今、例えば大学の現場で様々なご意見があると思います。政府としては、そうした声に真摯に向き合って、これから法律に基づいて具体的に制度設計、基本方針とかをやっていくわけですから、そうした現場の声というものも大切にしながら、できる限り多くの方が納得いただけるように。これは経済安全保障もそうですけれども、経済安全保障の場合は産業界やアカデミアの方、有識者の方とまた意見交換をしながら、基本指針とか政省令とかを作っていきますけれども、そうした様々な声に耳を傾けていく姿勢というのは大切だと思います。
 ただし、今、時間軸の話もちょっと問題提起されましたけど、私はこれは本当に一刻の猶予もないと思っていまして。この場でも皆さん認識されているとおり、日本のイノベーション力というのは相対的には低下してきているし、論文数だって相対的にどんどん地位が低下してきているわけです。世界と勝負できる研究大学というものを国としてどうやって支援できるのかということを早急に考えて対策を打つのが私は当然のことだと思っていて、私は政治家として世界の真ん中にもう1回日本を持っていきたいと思いますけれども、ここのイノベーションというのは一番重要なところなので、そこは急ぐ必要があると思っています。
 ただし、国会審議でも問題提起をされたと承知していますけれども、格差が広がっていくのではないかとか、そこについては当然一部の大学だけがとがればいいというわけではなくて、日本全体の研究力を底上げしていかなくてはいけないというのは当然のことなので、この場でも申し上げているとおり、大学ファンドの取組というのと総合振興パッケージというものを車の両輪としてしっかりと回していく、そこは重要だという姿勢に変わりはありません。
(問)再び宇宙基本計画の関連でお伺いします。
 先ほど来出ていますように、今後については複数の観点があると思うんですけれども、宇宙安全保障というところについて、改めまして、このところのロシアによる軍事侵攻などを含めて、大臣自身、どういった点を優先して取り組みたいとお考えか、お願いいたします。
(答)この宇宙空間というのは、先ほど申し上げたとおり、産業分野、あるいは科学探査だけではなくて、安全保障上重要なエリアであるということはそこは基本の考え方としてあります。
 そうした中で、宇宙の安全保障をどう図っていくのかという点につきましては、まさに政府のスタンス、大きな考え方というのは、岸田総理が新しい国家安全保障戦略を含めた3文書を改定していくともう宣言しておりますので、その中でNSCの会合を含めて、しっかりと日本の宇宙空間の利活用の安全保障面での向き合い方については、そこで議論をしっかりと煮詰めていくということに尽きると考えております。
 その中で、例えばこの中にも、もう公表されている資料なので、後でご覧いただければと思いますけれども、重点事項の中にも衛星コンステレーションの話とか、具体的な話を盛り込んでいますので、そこは必要な予算をしつかりと獲得して、我が国の安全保障に万全を期していく。これは防衛省を中心にもちろんやるんですけれども、宇宙という意味では内閣府も絡んできますので、そこは宇宙と産業、こういったものをちゃんと一体と捉えた形で、整合性の取れるような形で、我が国としての政策を進めていくということが極めて重要だと考えます。
(問)経済安全保障担当として、政府のIT調達について少し教えてください。
 今週月曜日、自民党がデジタル庁に対してですが、「デジタル・ニッポン」を申し入れた中で、政府のクラウドについては機密情報で国産クラウドも活用すべきといった提言をしております。申入れの相手はデジタル庁ではございますが、もし経済安全保障担当として、政府のクラウド調達や機密情報の扱いなどについて取り組むこと、あるいは提言に対するお考えがございましたら、よろしくお願いいたします。
(答)自民党のデジタル庁に向けた提言そのものを、今、手元にないですし、まだそこは詳細に拝読できているものではないので、その点については触れませんけれども、政府のIT調達というのは、政府の申合せがあって様々な取組がなされていると承知していますし、デジタル庁において一義的には考える話と思いますけれども、おっしゃるとおり、経済安全保障上極めて重要なポイントだと私は認識しています。
 全て国産でやればいいというわけではないですけれども、例えばハイブリッドクラウドのような考え方があって、パブリッククラウドとプライベートクラウドをどうやって使い分けていくのか。このデータというのは、政府のデータもそうだし、民間のデータもそうだし、今後の取扱い、管理のあり方というのは極めて重要だと私は認識しています。
 国会の答弁でも確かクラウドについて質問をいただいたことがありますけれども、これは経済安全保障上重要な課題であって、我が国の自律性をしっかりと確保していく上では、国産クラウドの国内における技術ですとか企業の育成というのは――技術は人材ですね、育成というのは極めて重要だと考えておりますので、経済安全保障の観点から、引き続きデジタル庁などともしっかりと連携をして、政府のIT調達、ガバメントクラウドの在り方、こうしたものについては積極的に関与していきたいと考えます。

(以上)