小林内閣府特命担当大臣記者会見要旨 令和4年5月13日

(令和4年5月13日(金) 9:15~9:33  於:中央合同庁舎8号館1階S103会見室)

1.発言要旨


 経済安全保障担当大臣として報告をさせていただきます。
 11日(水)に「経済施策を一体的に講ずることによる安全保障の確保の推進に関する法律」が、衆議院・参議院、合わせて50時間以上にわたる審議を経て、参議院本会議にて可決をいただき成立いたしました。
 この法律は、我が国の経済安全保障の確保に向けた重要な一歩であり、法律の成立にご尽力いただいた方々に改めて感謝を申し上げます。今後は、法律の円滑かつ可能な限り速やかな施行に向けて、基本方針、基本指針、政省令の策定など、担当大臣である私が中心となって、関係省庁ともよく連携しながらしっかりと準備を進めてまいります。
 また、私自身、これまで申し上げてまいりましたし、国会審議でもご指摘をいただきましたが、法律の施行に当たっては、我が国の安全保障と経済活動の自由の両立を図ることが重要でございます。企業を含む産業界やアカデミアなど様々な分野の方々の意見を聴き、よく連携してまいります。
 以上でございます。

2.質疑応答

(問)一部報道で、大学発の技術を実用化するために、特許庁が大学の海外特許化費用を支援する事業を新設するという報道がありました。その事実関係と、大臣としての所見をいただきたい。また、もし事実としたら、これまでにも海外特許化支援事業は幾つかあったんですけれども、それと何が違うのか教えていだけると。
(答)これは、特許庁として既に予算要求がなされているものと認識しています。したがって、こうした動きというのは、私自身歓迎しているところでございます。
 そもそも大学発の優れた技術を新しい産業や社会変革につなげていくために、大学などが保有している知的な財産を最大限活用できるような環境を整備していくことは極めて重要だと考えておりまして、今ご指摘いただいたように、関係府省におきましても、これまでも必要な施策の検討実施が行われてきたところでございます。
 その中で、海外の特許出願につきましては、グローバルな事業展開をするに当たって、これは当然、適切な権利を取得することが不可欠であります。ただ一方で、どうしても高額な費用を要するということで、特に大学、スタートアップにとっては大きな負担となっていると認識をしています。
 このことから、文科省、特許庁においても、これまでも海外特許出願の支援がなされているとは承知しておりますが、今年度からスタートアップの設立に向けた海外特許支援を新たに行うものであって、その実態に応じ、様々なメニューが用意されることは喜ばしいことと考えます。
 今現在議論を行っているスタートアップの専門調査会におきましても、世界と競争できるスタートアップのエコシステムを作っていけないかということで、事業化を見据えた戦略的な知的資産の取得ですとか、また大学からスタートアップへのライセンスの促進を含めて、知的財産の活用の促進、また支援を重要な論点の一つとして取りまとめにも盛り込んでいきたいと考えているところであります。
(問)昨日の夜に発表があったんですけれども、国立天文台が参加している国際チームが、地球がある天の川銀河でのブラックホールの撮影に成功したと発表しました。科学技術担当大臣としての受け止めを教えてください。
 それからブラックホール関係でいいますと、国立天文台の水沢観測所が、お金がなくて、クラウドファンディングをして研究費を確保するというような状況になっているんですけれども、そういった状況に対する水沢観測所への国としての支援についてお考えを聞かせてください。
(答)今、おっしゃった天の川のブラックホールにつきましては、昨日、私自身も報道に接して、非常にわくわくしましたし、とても前向きな知らせだなということで非常に喜ばしく感じました。
 国立天文台を含む国際共同研究プロジェクト「イベント・ホライズン・テレスコープ」のチームが、天の川銀河の中心にあるブラックホールの輪郭の撮影に世界で初めて成功したということであります。特に日米、そしてヨーロッパが共同で運用しているアルマ望遠鏡を含めて世界6カ所、そして8つの電波望遠鏡が連動した観測が行われたと承知をしております。日本からも国立天文台などに属する多くの研究者の方が観測や解析に貢献したと聞いておりまして、このことも非常に喜ばしいと感じたところであります。
 ブラックホールというのは、当然ほぼ全ての銀河の中心に存在しておりまして、強い重力によって光さえも脱出できないことから、なかなか直接観測することが難しい謎の多い天体であります。今回、まだ謎の多いブラックホールの性質を知るための新たな一歩となる歴史的な成果であると受け止めておりまして、今後とも宇宙の解明につながる研究が進展することを期待しておりますし、その中で日本人の研究者の方が大きな役割を引き続き担っていただくことを期待するところであります。
 その流れの中で水沢のお話も今なされましたが、ここは研究費が不足していると伺っております。この点につきましては、大学共同の利用機関でございますので、文部科学省におきまして必要な予算の獲得を含めて適切に対応されると認識しているところであります。
(問)経済安保法のことで1点お尋ねします。大臣からも今ございましたが、これからの政省令とかの策定に当たっては、民間企業からの意見も伺うということだったんですが、もうちょっと具体的に、民間企業の方々はその辺の手続きを心配されているので、大臣としてどういった手順で、あるいはどういった考え方で、そういった民間との対話をして決めていくかということを教えていただきたい。あと民間企業の方々、ロシアによるウクライナの侵攻を受けて、経済安保の対象となる重要物資であったり、あとは対象となる重要インフラ――重要設備の辺り、どう変化するのかということも気にされています。その辺りは、ウクライナの侵攻が今後の具体的な措置にどう影響していくか、大臣の今のところの見解を教えてください。
(答)せっかくの機会ですので、メディアの皆さんに今後のスケジュール感をお伝えします。今後、法律の執行につきましては、新たに内閣府に新設される部署が担っていくこととなります。法律上規定させていただいているのは、執行体制については法律の公布後6カ月以内に整備をしていくと、その整備をした上で、各制度を段階的に施行していくということであります。具体的に早めに走らせていくのが、支援色が強いメニューでございまして、これはサプライチェーンのところと重要技術のところ、法律上は公布後9カ月以内に施行するということ。もう一つ、若干規制色が前面に出る分野、これは基幹インフラの部分と特許の非公開の部分ですけれども、これは一定の準備が必要になりますので、それぞれ公布後1年9カ月以内、そして2年以内と定めているところでございます。法律上そういう期限というものは設けさせていただいていますけれども、可能な限り早期に施行できるように努めていきたいと考えております。
 そのプロセスの中で、国会答弁でも、民間の有識者の方々の意見をしっかりと伺った上で基本指針を定め、またそれに基づいて政省令を定めていくということを申し上げました。具体的にどういう形で有識者の方々の意見を聞いていくかということについては、現在検討中でございますので、それが固まりましたら、また皆様にご報告をさせていただきたいと思います。
 もう1点、ウクライナの情勢を受けて、サプライチェーンの重要物資のところについて何らかの変化があるのかというご質問については、これも国会答弁で申し上げたんですけれども、今回のウクライナの情勢、これは許し難い暴挙だと考えております。経済安全保障上も、今回、例えば天然ガスを含めたエネルギーをどうするとかという話ですとか、あるいはパラジウムというような鉱物資源の話をメディアの方々にも取り上げていただきました。ただ、私どもが今回法律を整備したのは、ウクライナの侵略が起こったからどうこうという以前に、それ以前から、今後もウクライナ、これに類似するような事象が今後世界のどこかで生じるかもしれないし、また別のインシデントが生じるかもしれないと。大切なのは様々なリスクシナリオを考えた上で、何が対応できて何が対応できないのか、対応できないとするとどういう施策が必要で、それを優先順位を時間軸に沿ってどのように整理していくかということが重要だと考えています。
 そうした意味で、今回のウクライナの情勢というのは当然重要な出来事だとは思いますけれども、これだけにとらわれることなく、様々な状況を想定した上で、安定供給が途絶された場合に国民の生命に対して、あるいは経済社会活動に対してどれだけのインパクトが生じ得るのか、そうしたことをかなり幅広く想定して、その中で重要物資を絞っていく。その絞り方につきましても、政府が勝手に絞るわけにもいかないので、先ほど申し上げたとおり、民間の有識者の方々にしっかりと知見をいただいた上で、そのルールも明確化していきたいと考えております。
(問)経済安全保障の先端技術の開発支援策についてですけれども、一部報道で、音速を大きく超える極超音速輸送機を対象とされていたんですけれど、この事実関係についてと、あと具体的に決まっているものなどを教えていただけたらと思います。
(答)報道については承知しておりますけれども、現時点で経済安全保障重要技術育成プログラム、これは令和3年度の補正予算で手当てをしていただいたものでございますけれども、現時点で開発支援の対象となるものについては決まっておりません。したがって、一部報道にあるような事実というものは、何か決定したというような事実というのはありません。
 そして、今後どうするのかというところは、これも有識者の知見が必要になってきますので、公募対象となる技術を示していくビジョンというのを決定しなければいけないんですね。このビジョンをしっかりと決定した上で、できる限り速やかに公募を開始できるように準備を進めていきたいと考えておりますが、何か今の時点で具体的にこれだということを決めているわけではありません。
(問)宇宙関連の話ですけれども、ロシアのソユーズロケットが現状使えない状況で、これだけ実績のあるロケットが使えないということで、宇宙産業には影響があるのではないかと思うんですけれども、この代わりになるようなものについてのご意見と、宇宙開発が戦争によって分断されることが起きてしまっている現状について、大臣のご意見を伺えないでしょうか。
(答)まず、ロシアのソユーズロケットが使えないという状況の中で、今後、我が国としても様々な衛星の打上げなどを計画しておりますから、できるだけいろいろな状況を想定して準備しておくことというのは重要なことだと思っています。
 それと同時に重要なことは、我が国としての打上げ能力というものをしっかり確保していくことだと考えています。H3ロケットの開発についても、今、様々な事象が起こっておりますけれども、これもできる限り急がなければいけない。基幹ロケットに限らずスタートアップの皆さんたちも、まだそんなに数は大きくないですけれども、挑戦を始めています。
 先日、米国に出張してまいりまして、直接ベンチャーの方とはお話しする機会はなかったですけど、NASAのネルソン長官をはじめ宇宙関係者の方と話しているときに、国として基幹ロケットを開発していくことは当然重要なんですけれども、持続可能な宇宙空間の利活用というものを我が国として実現していくためには、民間の力というものをしっかり育成していかなければいけない。そういう意味で、スタートアップをどうやって支援していくのかは重要な課題だと思っています。
 2点目の今の状況につきましては、そもそもロシアによるウクライナの侵略というのは、先ほど申し上げたとおり、これは絶対に許すことのできない暴挙でございます。その上で宇宙空間の利活用の在り方につきましては、現在、この間、アメリカにも行ってきましたし、アメリカ、ヨーロッパを含め関係各国としっかりと連携しながら、今後の宇宙空間の利活用の在り方については向き合っていかなければいけないと考えております。今現状、予断を持って何かを決め付けることができるような状況ではないと認識しておりますので、しっかりと各国とも、日本だけで全てが決まるわけではないですから、各国と密に連携を取っていきたいと考えております。

(以上)