小林内閣府特命担当大臣記者会見要旨 令和4年4月22日

(令和4年4月22日(金) 9:30~9:48  於:中央合同庁舎8号館1階S103会見室)

1.発言要旨


 科学技術政策担当大臣として報告させていただきます。
 本日、第11回統合イノベーション戦略推進会議を開催いたしました。本日の会議では、新たな量子技術に関する戦略、いわゆる「量子未来社会ビジョン」、そして「AI戦略2022」、この2件につきまして私から説明し、了解をいただくとともに、Society5.0の実現に向けた教育・人材育成に関する政策パッケージについて報告をいたしました。
 会議の中で松野官房長官より私を含む関係大臣に対しまして、まず経済安全保障上も重要でありスタートアップや新産業など生産性の向上にもつながる量子技術について、利便性や価値の向上、安全・安心の確保の観点からも取組を強化すること。2点目として、農業、医療、インフラ・物流などへの社会実装を見据え、AIの利活用に向けた取組を強化すること。3点目として、探究的な学びやSTEAM教育といった学びの転換など、本パッケージに沿った取組を着実に進めること。こうした指示がございました。
 官房長官からの指示を踏まえまして、科学技術政策担当大臣として関係大臣と連携・協力しつつ、量子・AI分野の新たな戦略を速やかに実行に移し、岸田政権の成長戦略の柱でもある「科学技術立国」の実現につなげていくとともに、教育未来創造会議との連携の下、イノベーションを担う人材の育成などを進めてまいります。詳細はこの後、事務局からブリーフィングをさせていただきます。
 続きまして、これも科学技術政策担当大臣としての報告です。
 内閣府では、2030年に世界最先端のバイオエコノミー社会を実現するため、2019年から「バイオ戦略」を策定し、その柱となる取組の一つとして、バイオ技術・産業振興の拠点となる「バイオコミュニティの形成」を進めています。
 バイオコミュニティには、世界的なイノベーションのハブを目指す中核的な「グローバルバイオコミュニティ」と地域に応じた特色ある取組を展開する「地域バイオコミュニティ」がございますが、今般、グローバルバイオコミュニティを選定いたしました。
 具体的には、東京圏の「Greater Tokyo Biocommunity(グレータートーキョーバイオコミュニティ)」、そして、関西圏の「バイオコミュニティ関西(Biock(バイオック))」、この2件を認定いたしました。
 今回の2拠点につきましては、選定されることによって、まず情報発信や海外のバイオクラスターとの拠点間交流がしやすくなること、そして、バイオコミュニティ間の連携を促進するための官民プラットフォームの構築を始め、政府による全体の後押しを通じて関連施策を一体として支援が可能になること、こうした意義があると考えております。
 両地域につきましては、今回の認定を契機として、それぞれの特徴を生かしつつ関係者間の連携を更に深め、世界と競争できるバイオコミュニティに発展していくことを期待しております。
 内閣府としても、去年6月に初めて認定した地域バイオコミュニティと併せて、今後、両地域に対しまして戦略的な情報発信、また各種施策との連携強化の取組を通じて、関係各省と連携して必要な支援を行ってまいります。詳細は、科学技術・イノベーション推進事務局までお願いをいたします。
 3点目、これも科学技術政策担当大臣としての報告です。
 本日の閣議におきまして、「令和4年度に日本学術会議が共同主催する国際会議の中止について」を口頭了解しました。「令和4年度の国際会議の中止について」は、昨年8月に開催を了解いただいた11件のうち2件につきまして、新型コロナウイルス感染症の影響を受け、令和4年度の開催を中止するものです。日本学術会議の重要な役割の1つは、学術分野における国際的なネットワークの構築です。これらの国際会議の開催などを通じ、学術研究分野における一層の発展に貢献し、国民の皆様から理解・信頼され続けるような学術会議になっていただきたいと考えます。
 以上でございます。

2.質疑応答

(問)先ほどおっしゃっていた量子とAIの戦略なんですけれども、今回、社会実装に重点を置いてあって、そのことに大きな意義があると思いますけれども、バイオやマテリアルの戦略については、これと同じように社会実装に重点を置いて改定していくのでしょうか。
(答)特に量子・AIについては、近年、環境の変化が目まぐるしいと捉えています。そうした量子やAIと比較しまして、今ご指摘いただいたバイオ、そして材料、マテリアル、こうした分野については、既に現在の戦略の中で社会実装の観点を取り込んでいると考えています。そして、国内外の情勢を踏まえて、これらの戦略もフォローアップや改定を行っているところです。
 まず、マテリアルですけれども、昨年の4月の戦略策定以降、我が国の強みを生かしつつ、私も実際、NIMSに行って当時の橋本理事長とお話をさせていただきましたが、国内の関係研究機関を広く結集、または連携してデータを活用していく、こうした取組を今進めていただいていると認識しています。また、研究開発成果の円滑な実用化を図る産学官の連携体制の構築、こうしたものも進めていただいているというところですので、こうした社会実装を見据えた取組というのは有識者会議でもフォローアップいただいておりますので、今後とも成果の最大化というのを図っていきたいと考えます。
 バイオは、2019年に戦略を策定以降、関連市場の拡大に向けた取組を進めていて、昨年もワクチン、カーボンニュートラルをめぐる動向を踏まえた改定を行ったところです。今回は戦略自体の改定は行わずに、社会実装の促進に向けて戦略の実行に注力していく観点から、先ほど申し上げた、今回認定したバイオコミュニティの支援など、こうしたものに重点的に取り組んでいきたいと考えております。
 いずれにしても、バイオ、マテリアルともに、AI・量子と並んで革新的な技術の分野でございますので、経済安全保障上も重要ですし、また総理の言う「科学技術立国」の実現に向けて精力的に取り組んでいきたいと考えます。
(問)20日の原子力委員会の専門部会で、医療用RIの自給率を3割にするといった提言を出しましたけれども、今後、この実現に向けてどのように取り組んでいくのか、大臣のお考えを教えてください。
(答)RI(ラジオアイソトープ)、医療用RIですけれども、国内製造や安定供給の確立について、当然、我が国の医療体制の充実には極めて重要だと思っておりますけれども、別途私が担当している経済安全保障の観点からも、自律性の向上という視点から見て非常に重要なものだと考えています。
 経緯としては、昨年11月に原子力委員会の下に専門部会を立ち上げて検討いただいてきまして、今週4月20日の専門部会でアクションプランの取りまとめに向けた素案を議論していただいたと承知しています。一部新聞報道で自給率3割という報道がありましたけれども、これは診断用のRIであるモリブデン99についての目標案でございます。この点については、今現在100%輸入に頼っておりますし、また過去の経緯を見ても、海外の原子炉の計画停止ですとか、自然災害に伴う空輸トラブル、こうしたものに見舞われた経緯がございます。これはこうした過去の事例を教訓として、試験研究炉のJRR-3や民間企業の加速器を用いて、この一部を国内で供給することを目標案としているものと承知しています。このアクションプランの取りまとめ自体は、以前、確か申し上げたと思うんですけれども、5月の取りまとめを目指しておりまして、医療用RIの国産化に向けて、関係省庁のご意見もいただきながら取りまとめを急いでいきたいと思っています。
 具体的にどうするのか、3割。モリブデン99ですけれども、先ほど申し上げたJRR-3を用いた生産に加えまして、製薬企業による加速器を用いた自社生産プロジェクトなどによって、この3割という数字を目指していきたいと考えております。できれば2025年度までに、その技術の確立を目指したいと考えているところであります。
(問)学術会議について伺います。
 学術会議は、先日の総会で会員の選考方針の見直しを決定しました。会員候補の対象として、産業界を含めた実務の現場で活躍する研究者も考慮するというほかに、会員任命後に選考理由を公表して、いわゆる選考プロセスの透明化を進めるということです。こうした見直しが、これまで自民党やCSTIの有識者会議が提示している課題に対して改善策になると思うのか、大臣の見解を教えてください。
(答)今、おっしゃったとおり、先般の総会で決定された新たな選考方針につきましては、会員選考プロセスに関する説明責任を強化する趣旨であると理解しておりまして、政府としては、この取組をしっかりと前に進めていただけることを期待しています。私としての評価はそのとおりです。そこに尽きます。
 今後、私が今、総理からご指示をいただいている学術会議、日学の在り方につきましては、政府において、今、触れていただいたCSTI有識者議員懇談会の報告を始め、前回も申し上げたと思いますが、あらゆる要素を総合的に考慮しながら丁寧に検討を進めていきたいと考えます。
(問)KMバイオロジクスが開発中の新型コロナワクチンについてお伺いします。
 近く、最終治験の実施であったり、子どもを対象とした治験を行って、今国会で審議されている緊急承認制度も念頭に入れているようです。SCARDAも当然重要だと思うんですが、こうした国内のワクチン開発について国としてどう対応していくか、支援であったりという部分をお伺いできればと思います。お願いします。
(答)今、ご指摘いただいたKMバイオロジクス社が、開発中の新型コロナワクチンの臨床試験に関する届出を行った旨を4月20日に発表されたということは承知しています。
 まず、KM社のワクチンについてですけれども、これについては、既にAMEDにおきましても令和2年度の第1次補正予算で実用化を目指して支援を行ってきたところでございます。今、ご指摘いただいたように、新型コロナの国産ワクチンの実用化は大変重要であると考えておりますので、一つでも多く、少しでも早く実用化できるように支援を進めていきたいと考えます。
 緊急承認の話というのは、今、国会でまさに薬機法改正の審議がされているところでございますし、またこれは厚労省において、これがもし改正が行われれば適切に判断されると思いますので、厚労省にお聞きいただければと思います。
 SCARDAにつきましては、新たな視点や戦略性を持って、今後、脅威となり得る感染症に対するワクチンの迅速な開発を目指していきたいと考えております。その中で、この対象になるのは、例えば副反応が少なくて、より安心して利用できるものですとか、あるいは保存性に優れる、こうした有効性、安全性、利便性の観点から付加価値の高い技術の獲得が期待できるものを重視して支援することとしていきたいと考えています。
(問)昨日、アメリカの商工会議所とお会いしたと思うんですけれども、半導体の関連でいくつか質問をしたいんですが。昨日の話し合いの中身と、昨今、米国側が、台湾と日本と韓国に半導体のアライアンスを作ろうという話を提言されていると思うんですけれども、その点について政府の姿勢を教えていただけますでしょうか。
(答)まず、昨日、ACCJ(在日米国商工会議所)の皆様と面会をさせていただきました。経済安全保障に関する考え方を公表されて、我が国が今審議していただいている法案を含めて、日本が進めている経済安全保障の取組につきましてご支持をいただいたということで、そこは歓迎をしているところであります。相手のいらっしゃることですので、会談の中身を逐一申し上げることは控えたいと思いますが、一般論として申し上げますと、提言書というか意見書にも書かれていたとおり、民間企業にとっての予見可能性を高めて、透明性を高めていくことですとか、あるいは事業負担をできるだけ少なくしていくことですとか、私からも国会答弁で政府としての基本的な姿勢はお示しさせていただいているとおりですけれども、そこと現時点で大きな齟齬はないと私は感じたところでございます。
 特段、半導体の話がそこで何か具体的に出たというわけではありませんが、今、経済産業省で半導体の今後の戦略については、萩生田経産大臣の下で検討されているものと承知をしております。この半導体の戦略については、当然、経済安全保障上も極めて重要だと私自身も認識しておりますので、経産省とはしっかり連携していきたいと思います。
 また、今後具体的にアライアンスがどうこうというのは、ACCJさんの提言なのかもしれませんが、日本は日本として、我が国の国益の視点に立って、そこはしっかりと今後の戦略を作っていくということだと思っております。当然、今、TSMC社が熊本に投資をしていただいているという現実はあります。また、日本とアメリカ、これは次世代の半導体を含めて連携を強化していく、アメリカというのはその一つの相手となり得ると認識しておりますので、そこは我が国の国益の視点に立って適切に戦略を作っていくということに尽きると考えます。

(以上)