小林内閣府特命担当大臣記者会見要旨 令和4年3月18日

(令和4年3月18日(金) 9:13~9:27  於:中央合同庁舎第8号館1階S103記者会見室)

1.発言要旨


 経済安全保障担当大臣として2点申し上げます。
 昨日、いわゆる経済安全保障推進法案が審議入りしたところでございます。この法案は、経済安全保障の確保のための喫緊の課題に対応する最初のステップでございますが、経済安全保障の課題はこれだけではございません。国民の皆様の生活や経済活動を支える産業が直面するリスクを総点検、そして評価し脆弱性を解消するとともに、強み、優位性や不可欠性を獲得することも、経済安全保障の確保にとって極めて重要でございます。
 目下、ロシアによるウクライナ侵略を受けまして、内外の安全保障情勢は厳しさを増しており、特にグローバルサプライチェーンへの懸念が高まっているところでございます。こうした情勢を踏まえまして、3月11日(金)、関係省庁の局長を集めまして、経済安全保障重点課題検討会議を開催し、重要な産業のリスクの把握、分析を進めるよう指示を行ったところでございます。
 各省庁におきましても、早速体制を整えて様々な検討を始めているものと承知しております。各省で行った点検の結果につきましては、私のところにフィードバックを経て、必要性や緊要性などを確認した上で、必要な対応について今後の成長戦略、骨太の方針を見据えて反映していきたいと考えております。
 私からは以上です。

2.質疑応答

(問)昨日、CSTIの有識者懇談会で、「総合知」の推進方策について中間取りまとめが行われました。「総合知」というのは第6期基本計画で初めて出てきた概念なんですけれども、この中間取りまとめでは、SIPとかムーンショットで「総合知」を実践していこうということを言っているんですが、イノベーションを社会実装とか社会に適用するという観点から言えば、より広い研究開発課題で「総合知」を実践していかなきゃいけないかと思うんですけれども、大臣としてはどのようにお考えでしょうか。
(答)いわゆる「総合知」につきましては、第6期の基本計画におきまして、その基本的な考え方や戦略的に推進する方策について、今年度中に取りまとめるとされているところでございます。それを受けて、昨日のCSTIの有識者議員懇談会において、「中間取りまとめ」の案が了承されたと聞いております。
 この「中間取りまとめ」におきましては、我が国の科学技術・イノベーションが様々な課題に適切に対応していくために、「総合知」、すなわち、まだまだこれからこの概念を広げていかなければいけないと思っていますが、専門領域の枠にとらわれない多様な「知」が集い、新たな価値を創出する知の活力を生むことが不可欠であるとの見解が示されたところでございます。幅広い複眼的な視点で社会課題を捉えて解決を図っていくことで社会変革をもたらすことは、我が国の科学技術やイノベーションの力を底上げしていくには非常に重要なことだと思っております。
 内閣府としては、昨日案が取りまとめられた「中間取りまとめ」などを踏まえまして、「総合知」の意義、あるいは関連する情報を社会に広く発信していく必要があると思っておりまして、今後、例えば全国主要都市において「総合知キャラバン」というものを実施して、この「総合知」の基本的考え方、戦略的な推進方策の認知度の向上を図っていきたいと思っております。また、ポータルサイトを設置して、「総合知」を活用した好事例を発信していきたいと思っています。
 また、ご案内のとおり、次期SIPなどにおきましては「総合知」を活用することとされておりますので、この「総合知」を活用した取組の好事例を内閣府としても作っていきたいと考えています。
(問)先ほどの冒頭発言の関係ですけれども、これはウクライナ情勢に鑑み、サプライチェーンについてという、ある種そこが中心というか限定しているものなのか、ウクライナ情勢があったから指示したものなのか。関係省庁というのはどの辺の省庁を指すのか、その辺を教えてください。
 あと、成長戦略や骨太とかに反映させていくということですけれども、その前に報告書みたいな何か取りまとめみたいなのをされることはあるんでしょうか。お願いいたします。
(答)ウクライナ情勢に限ったものではありません。私が大臣になる前から、自民党に新国際秩序創造戦略本部、今の経済安保対策本部の前身がありまして、その中で様々なリスクシナリオを基幹産業、基幹インフラ産業について設定して、どこに脆弱性があるのか、あるいは強みはどこにあり得るのかということをいろいろラフな検討を続けてきたんですけれど、岸田政権になり、私、担当大臣になりまして、第1回の経済安全保障推進会議、確か11月でしたか、そこで総理からも指示が出たところでございます。第2回目のところでも総理から指示が出たと認識していますけれども、関係省庁と私の立場で連携をしまして、主要産業におけるリスク点検、あるいは強みを把握していく分析をしっかりと進めていくようにと指示を受けてもございます。これはこれまでも各省とはいろいろやってきているところでございますが、今回、こういう形で形式化していくということであって、当然、ウクライナ情勢についてもアンテナを張っていくこととなりますが、それがあったから、それだけのためにやっているというものではありません。
 関係省庁はどこかというところは、経済安全保障推進会議というホームページに載っていますので、そこをご覧いただければと思います。かなり幅広い省庁の局長クラスの方にご参加いただいているところでございます。
 また、骨太などにつきましては、今、何か報告書を取りまとめるということを特段考えているわけではございません。特にこれは骨太をやったら終わりというものではなくて、常にその時々の情勢に応じて不断に、脆弱性あるいは強みの分析というのは続けていくことが重要だと思っておりますので、そうした中で対応を講じていくということです。
(問)関係省庁というのは、推進会議に参加している各大臣の省庁と、そういう理解でいいわけですか。
(答)ほぼ重なっております。
(問)今の質問にも関連するんですが、局長会議、大臣が冒頭で法案が最初のステップだとおっしゃいましたが、経済安全保障上の課題や政策の可能性について次のステップを検討していくようなイメージでよろしいのでしょうか。
 また、骨太に何らかの反映をさせた後、必要があれば、例えば臨時国会であったり、来年の国会であったり、そのようなところで法制化をするようなことも視野に入っていらっしゃるんでしょうか。
(答)最初のステップというのは、法制としては最初のステップなんですけれども、これまで繰り返し国会でも答弁させていただいているとおり、昨年、私が就任して以降も、法整備に限らず、例えば機微技術の流出防止対策などについて様々既に講じているところです。情勢は常に流動しますので、常に課題というものを洗い出していく作業自体を継続していくことが重要だと思っています。その流れの一つとして、今回位置付けていただければと思います。
 それと、次期臨時国会が開かれるとして、あるいは来年の通常国会、これについては、今、私の立場で何か申し上げるのは時期尚早だと思っていまして、昨日、本格的に法案がようやく審議入りしましたので、とにかくこの法案の成立に全力を尽くしていく、そのことに尽きると思います。
 ただ一方で、常に課題というものを洗い出していく作業自体は必要だと思っておりますので、そこは予断を持って申し上げることは控えますけれども、そういう姿勢でこれからも臨んでいきたいと考えています。
(問)量子技術やAIに関する新しい政府戦略について伺います。
 当初は年度内にも策定という予定だったと思うんですが、現在の策定、検討状況について教えてください。
 また、改めてこのタイミングで新しい戦略を作ることのねらい、意味について、大臣の考えを教えてください。
(答)総理からも既に発言がありましたけれども、新しい資本主義の実現に貢献していく観点からは、科学技術政策の強い国家意思を持って重要な研究分野に戦略的に取り組んでいくことが重要だと思っています。CSTIとしては、量子、そしてAI、この2つの重要な分野につきまして、研究開発だけではなくて、社会実装までを視野に入れて、そこに重点を置いた戦略の検討というものを進めていくところであります。
 ご案内のとおり、量子については、ワーキンググループにおきまして産業競争力の強化などの方策の検討を進めておりますし、AIにつきましては、戦略実行会議の有識者会議におきまして、社会実装ですとか、あるいは国民の皆様にAI利用の実感を持っていただいて、より身近に感じていただけるような方策というものも検討しています。時期としましては、CSTIとしてはその取りまとめを4月から5月のうちに行った上で、新しい資本主義の実行計画などに盛り込んでいけるように取り組んでいきたいと考えています。
(問)大臣の直接の所管ではないと思うんですけれども、先日、名古屋大で研究不正の発表がありました。元大学院生によるネイチャー論文などの不正が認定されたわけですけれども、所属先は著名な研究者の研究室で、このラボでは相次いで不正が発覚しています。科研費も名古屋大の中ではトップレベルに獲得している研究室のようですけれども、何かこれについて所感があれば、お願いします。
(答)その件について、データの捏造などがあった件については承知をしています。この研究不正行為というのは、国民の科学技術への信頼を揺るがして、科学の発展を妨げることにつながりかねないものであって、大変残念だと受け止めています。
 この研究不正対策としては、研究機関を所管する各省がそれぞれガイドラインを定めて、研究活動が適切に実施されているか確認しているものと受け止めておりますけれども、CSTIにおきましても関係府省などにおいて研究不正への対応が一体的に機能するように、平成26年に各組織に研究行為不正の実効性ある対応を求める決定を行っておりまして、関係省と協力の上、研究機関への周知などに努めてきたところでございます。
 引き続き関係府省、あるいは関係機関と連携をして、研究不正が行われないよう健全な研究開発環境の整備に取り組みまして、そのことをもって公正な研究活動を推進していただけるように力を尽くしていきたいと考えます。

(以上)