小林内閣府特命担当大臣記者会見要旨 令和4年3月1日

(令和4年3月1日(火) 9:31~9:47  於:中央合同庁舎第8号館1階S103記者会見室)

1.発言要旨


 冒頭発言なし

2.質疑応答

(問)先日、東大の研究グループが脳内のタウタンパク質の排出のメカニズムを解明したんですけれども、日本で有力な認知症の解決につながるような成果が出ているんですけれども、なかなか実用化につながりません。それについて大臣、どのようにお考えでしょうか。
(答)お尋ねのあった研究というのは、2月25日に論文が公開された東大の岩坪教授を始めとしたグループの成果でございまして、2月28日に東京大学・JST・AMEDが共同でプレスリリースを行ったところであります。
 これまで認知症の原因物資としてのタウタンパク質の存在というものは認知はされておりましたけれども、この研究によりまして世界で初めてタウタンパク質が脳内から除去されていく排出経路、そしてタウタンパク質の除去を担うシステムの機能の低下が認知症の進行を助長することなど、これまで明らかになっていなかったメカニズムが示されたものであります。
 今ご指摘があったように、基礎研究から医薬品などへの実用化を加速するためには、革新的な創薬シーズの開発だけではなくて、国内の創薬環境を整備していく必要があると考えています。AMEDが設立されて以降、基礎研究から臨床・実用化まで一貫した研究開発というものが、よりスムーズに行えるようになったものと認識はしていますけれども、更なる実用化の促進と医薬品の創出に向けまして、健康・医療戦略推進本部の下に医薬品開発協議会を設置しておりますので、そこで議論を行ってきているところであります。
 この協議会におきまして、昨年の3月に「当面優先して議論する課題」というものを取りまとめまして、そこで課題に挙げられたことが幾つかございます。1つは、アカデミアと企業とのギャップを埋めていくための仕組の構築、新しいテクノロジーや開発手法の推進、そして医薬品の創出に向けた環境整備・人材育成ということでございまして、関係省庁が連携して取り組んでいるところでございますので、今後もこうした研究開発支援をしっかり続けていって、国民の皆様が世界最高水準の医療をしっかり享受できるように対応していきたいと考えています。
(問)サイバー攻撃の関連でお伺いいたします。トヨタ自動車が、本日、主要取引先へのサイバー攻撃と見られる影響で、国内全工場で稼働を停止しています。直接的な対象ではありませんけれども、今般提出された経済安全保障推進法案でも、重要インフラの安全性確保というところで事前審査制度を設けていますが、お聞きしたいのは、経済安全保障上、こうした国内の重要な産業ですとかインフラがサイバー攻撃によって経済的損失を受けるということを防ぐ重要性について、大臣のお考えを改めてお願いいたします。
(答)今、2点ご質問があったと思っていまして、経済安保全般に関する今回の事案の受け止めということと、また法案の話も少し出していただいたので、できる限り簡潔に申し上げたいと思います。
 昨日、皆様ご案内のとおり、トヨタ自動車が仕入れ先である小島プレス工業におけるシステム障害の影響によって、本日、国内の全14工場の稼働を停止することを公表したこと、また、一部の関係者は、この原因がサイバー攻撃であるとコメントしているということは私も承知をしております。現在、生産活動の復旧に向けて全力を挙げていると伺っておりまして、経済産業省において事実関係の把握に努めていると承知しています。
 これまでも政府におきましては、サプライチェーンを担う企業を狙ったサイバー攻撃リスクへの対応を呼び掛けてきておりまして、各企業がサプライチェーン全体でのサイバーセキュリティ対策を一層強化していただくよう関係省庁と連携して取り組んでいきたいと考えております。
 また、この間、閣議決定して国会に提出させていただいた法案との関係について若干整理をさせていただきます。記者の皆様、中身はご覧いただいているものと思いますけれども、今回、4つの項目の中に、サイバー攻撃を含む外部からの脅威に対応するため、基幹インフラの安全性・信頼性の確保という項目があります。
 これにつきましては、法案の中での新たな制度というものは、基幹インフラ事業者が重要設備を導入する場合に事前審査して、その重要設備がサイバー攻撃を含めた妨害行為の手段として使用される恐れが大きい場合には、その内容の変更または中止を勧告、あるいは命令することを可能とするものであるのですけれども、今回の自動車及びその部品などの製造業は、規制対象の基幹インフラ事業にはされていないということは申し上げておきたいと思います。いずれにしても、サイバーセキュリティの対策を基幹インフラ事業者以外の産業についても強化していくことが当然重要だということは、先ほど申し上げたとおりです。
 また、サプライチェーンにつきましても、4項目の一つとして強靱化が挙げられていますけれども、今回の法案で手当てするものは、他国からの供給に過度に依存する重要な物資が途絶しないように、民間事業者が安定供給を確保する取組を支援するものであって、サイバーセキュリティ対策そのものを目的としたものではないと、法案と今回の事案との整理だけは申し上げておきたいと思います。
(問)先ほどの閣議で、日本政府としてプーチン大統領やロシア地域に対する金融制裁や、ロシアの幾つかの研究機関からの貿易上の制裁措置を閣議了解されたと確認しています。まさに大臣が所管されている経済安全保障推進法案であったり、経済安全保障政策で重要な技術の話だったり、サプライチェーンの話が具体化するわけですが、法案としては今回の事態に間に合わないようにも見えます。こういう状況の中で法案審議をどのように進めていくのか、また政策をどのように深掘りしていくのか、その辺りを伺ってもいいでしょうか。
(答)特に経済産業省におきまして、我が国のサプライチェーンに関する把握というものを進めていただいているところだと承知をしております。これから法案審議、まだ始まっていないので、できる限り速やかに、この法案を審議していただいて成立するように全力は尽くしていきたいと思います。
 その上で、この法案に限った話ではなくて、経済安全保障全般について申し上げますと、こうした今回のような事態を含めて、今後も様々なリスクが顕在化し得ると考えています。ですから、そうしたリスクを可能な限り幅広く想定することによって、我が国の脆弱性というもの、あるいは他国に対しての優位性、あるいは国際社会にとっての不可欠性というものを事前に把握をする作業というものが必要であるんだろうと、今回の事案を踏まえても、そのような認識を改めて強くいたしたところでございます。
 そうした大きな流れの中で、この法案の位置付けというものも意義のあるものだと私自身思っておりますので、国会審議、気を引き締めて臨んでいきたいと考えています。
(問)1点目なんですけれども、ロシア側と日本の研究協力ですけれども、研究機関ですとか、個人とか、様々なレベルでもありますけれども、日本とロシアの研究協力への影響と懸念について教えてください。
 もう1点ですけれども、昨日、学術会議の梶田会長が、ウクライナ侵攻に関して批判的な談話を発表されていますけれども、これ以外にも東大など複数の大学の学長も批判的な談話を寄せております。これについても所感があれば、お願いします。
(答)2点ご質問いただきまして、後者のほうからまずお答えさせていただきますけれども、昨日、ロシアによるウクライナへの侵略につきましては、日本学術会議会長の談話が発出されたと承知をしております。また、その他の機関の声明も出されていると承知をしています。私自身は、その談話の内容につきましてコメントする立場にはないですけれども、世界と日本における学術の発展、そして学術の国際的な影響に及ぼす影響を深く憂慮して、対話と交渉による平和的解決を強く望む旨のコメントが日本学術会議から出されたということだと捉えております。いずれにしましても、日本学術会議が国民の皆様に理解をされて、国内外の社会に貢献する存在であり続けることが重要だと考えておりまして、学術会議が本来発揮すべき役割を適切に果たしていただくことを期待しているところであります。
 前者の点、日露の科学技術の協力につきましては、まず今回のロシアのウクライナへの侵略につきましては、力による現状変更であって、明確な国際法違反であります。最も強い言葉で政府としても非難をしているところであります。
 日本とロシアというのは様々なレベルで科学技術の協力を行ってきていますけれども、科学技術政策担当大臣としては、ロシアとの二国間協力の状況や現地の動向なども注視をしておりまして、まず関係省庁と連携して情報収集を続けていきたいと考えています。その上で、その状況を見極めて、日本として主体的に何が国益にかなうのかという点も含めて、そこを見据えた上で適切に対処していきたいと考えています。
(問)関連してロシアのウクライナ侵攻に関して質問します。
 米国は一連の経済制裁で、ロシアの航空宇宙産業も含めたハイテク製品の輸出規制を狙っています。これに対してロシアの宇宙機関のトップが強く反発していまして、国際宇宙ステーション(ISS)の運用に協力できなくなる可能性についても言及しています。大臣は、今回のウクライナ危機がISSの運用に必要な国際協調にどのような影響を与えるかについて、どのように考えていらっしゃいますでしょうか。
 また、ISSに参加する日本としてどう対応していくべきか、その辺の考えがあれば、教えてください。
(答)まず、この場でも何度か繰り返し申し上げていますとおり、ISSそのものにつきましては、我が国の宇宙飛行士の方々が、船内、あるいは船外で、これまで様々な宇宙活動を行ってきてくださいまして、その貴重な経験が蓄積された場でもあります。これからの月面を探査するアルテミス計画を含めまして、技術の実証の場として有益だという認識に変わりはありません。
 その上で、今、ISSというのは、参加各極のモジュールがそれぞれ補完し合いながら運用されているのはご存知のとおりだと思います。その中で、まずロシアが何を担っているかというと、ロシアはISSの高度の維持、あるいは姿勢の制御、こうした役割を担っておりまして、ISSの運用にはロシアのモジュールが不可欠な状況であります。
 その中で、先般、NASAからも、ISSの安全の運用のため、ロスコスモスを含む全ての国際パートナーと引き続き協力するということを言っております。そのことについては承知をしておりますけれども、一方でウクライナの情勢については、まさに予断を許さない状況となっております。ISS、今、運用延長するかどうかという話が議論になっておりますけれども、現下の情勢を踏まえながら、国際社会、そしてISSに参加しているアメリカ、アメリカの中でもいろいろ意見はあると思いますけれども、米国、欧州、カナダと連携を密にして、我が国としての方針を適切に判断していきたいと考えています。

(以上)