小林内閣府特命担当大臣記者会見要旨 令和3年12月3日

(令和3年12月3日(金) 10:45~11:03  於:中央合同庁舎第8号館1階S103記者会見室)

1.発言要旨


 科学技術政策担当大臣としてのご報告でございます。一昨日12月1日に、特定国立研究開発法人でございます、いわゆる産総研(産業技術総合研究所)とNIMS(物質・材料研究機構)を訪問させていただきまして、世界最高水準の研究開発成果の創出を目指す研究機関の現場の状況を視察してまいりました。
 産総研では、スーパークリーンルームと次世代コンピューティング基盤、量子デバイスの開発拠点や量子アニーリングマシン研究などを視察いたしました。
 あらゆる産業に不可欠な半導体の先端技術の開発は、我が国の産業競争力を高める上で非常に重要でございます。産総研が産学官と密接な連携を図りながら、世界レベルの最先端を目指した半導体研究を行い、我が国の成長をけん引する役割を果たしていることに心強く感じたところでございます。
 また、NIMSでございますけれども、材料ビッグデータや人工知能を活用した最先端の電池材料研究、またLED照明を世界に広めた「サイアロン蛍光体」ですとか次世代蛍光体開発などを視察したところでございます。
 マテリアルは、我が国の科学技術・イノベーションを支える基盤であって、世界と比して強みを有してきた分野でもあります。NIMSでは、この強みを発揮し、世界に誇るマテリアルデータから生まれた次世代型の技術により、エネルギー・環境などの地球規模課題の解決に大いに貢献することが期待できると考えております。
 研究現場の視察や研究者との意見交換は、大変有意義であったと感じております。これらを通じて得た知見を踏まえ、第6期科学技術・イノベーション基本計画に基づきまして、政府としても今回視察をさせていただきました産総研・NIMSを含めて、国内の研究者をしっかりと後押ししていけるように、今後も着実に科学技術・イノベーション政策立案に取り組んでまいります。
 2点目は、健康・医療戦略担当大臣としての報告でございます。今年6月1日に閣議決定されました「ワクチン開発・生産体制強化戦略」に基づきまして、今年7月に関係閣僚会議を設置し、また本日、第2回目の会議を開催いたしました。本会合は、より強力な変異株、あるいは今後脅威となり得る感染症にも対応できるよう、研究開発の推進、生産体制の強化、薬事規制や国際協調、安全保障の観点までを見据えた総合的な議論を行うものであります。
 本日の議論の内容としては、世界トップレベルの研究開発拠点の形成、また新たな創薬手法によるワクチン開発等に向けた産学官の実用化研究の支援、そして創薬ベンチャーにおけるワクチン等の実用化開発支援や、緊急時にワクチン製造に転用できる、いわゆるデュアルユース設備の整備、またCOVAXなどの枠組みを通じた国際的な貢献、そして新型コロナウイルスへの国産ワクチンの開発支援など今回の経済対策に盛り込まれた取組に加えまして、薬事承認の在り方につきまして、国際的な合意形成を踏まえたワクチンの評価指針の見直しや緊急時の承認に関する検討状況、また新型コロナウイルスのオミクロン株への対応についても報告がございました。
 私の担当している研究開発につきましては、今回の経済対策の中でも、AMED(国立研究開発法人日本医療研究開発機構)にSCARDA(先進的研究開発戦略センター)を設置し、ワクチン実用化に向け政府一体となって戦略的な研究費配分を実施することとして、1,504億円の予算などを盛り込んでいるところでございます。ワクチンを国内で開発・生産できる力を持つことは、国民の健康保持はもとより、経済安全保障の観点からも極めて重要と考えられます。私も、関係閣僚会議を通じまして関係省庁と連携しながら、ワクチン実用化を目指した支援を引き続き緊張感とスピード感を持って進めてまいりたいと考えております。

2.質疑応答

(問)先日の産総研とNIMSの視察に関連してなんですけれども、日本が強みを持つナノ材料分野、これを基礎から実用化までちゃんと一貫して持っていかなきゃいけないかと思うんですけれども、そのためにはどういう取組が必要だと大臣はお感じになったでしょうか。
(答)材料分野は、先ほど申し上げたとおり、我が国の強みであると考えておりまして、青色LEDですとかリチウムイオン電池、こうしたものに代表されるように、我が国初の基礎研究が社会実装されて世界に大きな影響をもたらしております。
 一昨日NIMSを視察いたしまして、LED照明を世界に広めた蛍光体物質の開発など、製品開発に直結した基礎研究の成果を実際に確認させていただきましたし、また研究成果創出の高速化につながっていく、日本が誇る良質な材料データ、この材料データを活用した新たな研究手法も拝見したところでございます。
 ご案内のとおり、今年の4月に「マテリアル革新力強化戦略」を策定しておりますけれども、これに基づいて、特にデータを活用した革新的な材料研究の開発を日本全国で進めていくための基盤を整備していく、これが重要だと考えております。また、研究開発成果の円滑な実用化を図る省庁間の連携体制をしっかりと構築していくことなどを通じて、重要領域の材料開発を社会実装までを見据えて支援する取組を推進しているところでございます。
 今回、橋本理事長からNIMSのデータを今後どうやって集めてそれを活用していくか、いろいろ考え方を伺わせていただきました。日本というのは物質・材料に限らず、極めて質の高いリアルデータが豊富にある。でも、それを活用しなかったら、ただの宝の持ち腐れになりますから、それをどうやってデータを活用して、開発・発明し、またそれを社会実装していくかというのが、非常に関心があったところでございますので、理事長から直接その辺の大きな方向性みたいなものを伺えて、非常に参考になりました。私自身がこれまで自分の中で感じていた方向性とほとんど合致するところでございましたので、非常に有意義な視察だったと思っております。いずれにしても、革新的な材料研究の成果の創出と迅速な社会実装を目指して、しっかりと取り組んでいきたいと考えています。
(問)関連してですけれども、大臣がおっしゃったように、日本には良質な材料データがあるということなんですけど、むしろ企業にとっても個別戦略的に重要なデータになってしまって、なかなかクローズにしてオープンスタンスのところには持ってこないという部分が間々見受けられると認識しているんですけれども。いわゆる競争と協調という部分。たぶん橋本理事長もそのお話をされたと思うんですけれども、協調と競争の部分をうまくバランスを取るためには、どういうふうにしていけばいいと大臣はお考えでしょうか。
(答)ご指摘のとおりだと、本当に重要なところだと思っておりまして。イノベーションを起こすためには、できる限り多くの主体が持てるデータを共有して、それでみんながより多くのデータを使ってイノベーションを起こしていくというのが私はあるべき大きな方向性だと思っています。しかし、各企業それぞれ何もしないで放っておくと、他人のデータは使いたいけど、自分のデータは出したくない。それは当然だと思うんですよ。でも、そんなことをしていたらイノベーションは出てこないので、やっぱりオープン&クローズの戦略、これは恐らく今回の物質の分野だけではなくて、他の自動運転とか、自動走行とか、農業とか、いろんな分野に関わってくると思いますけど、分野ごとにそれぞれ状況は違うので、これはデータだから牧島大臣がやられていると思いますけれども、データ戦略、オープン&クローズのルールみたいなものを各産業に今後どうやって作っていくのかというところは極めて重要であって、それは日本としても急ぐ必要があると個人的には感じています。
 具体的に、では企業が持っているデータをどうやってできるだけ出してもらうのかというところは、そこはそれぞれ具体的な、データを出すインセンティブをどうつくっていくかという、そこの仕組みづくりというのは、たぶんそれぞれ分野ごとに違うと思いますので、そこは工夫のしどころだと思います。
(問)経済安保の法案についてお伺いします。政府は特許の公開制限やサプライチェーンの強化など、4項目を重視する考えを示していらっしゃいますが、自民党が求めていた適格性評価など他の項目についてはどのように法整備を進めていくお考えでしょうか。高市政調会長は、段階的に進めるともおっしゃっています。政府も段階的に環境整備を進めるお考えでしょうか。
(答)段階的かどうかというところにつきましては、まず、今当面やらなければいけない喫緊の課題がありますので、それについて取り組むということであって、その先のことを何か想定してやっているわけではないので、もちろん新しい課題が出てくれば、法制化すべき課題が出てくれば、当然その可能性というのは排除しないですけれども、当面とにかく4項目にフォーカスを当ててやっていくということでございます。
 適格性評価につきましては、閣僚による経済安全保障推進会議と、その後にこの間開かせていただいた有識者会議、その場で私からは4つの項目を提示させていただきまして、それを中心に忌憚のない議論を行っていただきたいということを有識者の皆さんには申し上げました。
 したがいまして、現時点で別に議論の幅というものを制約しているわけではございませんが、そうした有識者の方々の意見もしっかりと踏まえながら、議論を加速していきたいと思っております。
(問)冒頭発言にあった健康・医療の閣僚会議の話で2点確認したいんですが。緊急時の薬事承認の在り方に関する検討状況ということで、1回目のときに、年内にもワクチンの特別使用を認めるための制度の在り方について検討するという話があったんですけれども、それが実際どういう話になったかという話。あと、閣僚会議のときに、オミクロン株の話を、どういうことが話されたのかというところ、もうちょっとエッセンスを教えてほしいんですが。
(答)まず1点目につきましては、厚労省のほうにお聞きいただければと思います。
 2点目につきましては、オミクロン株の話ですけれども、これについては、感染力ですとか、あるいは既存のコロナワクチンの有効性などにつきまして、各国が共に急いで知見を集めているところだと認識しています。
 我が国におきましても、現行のAMEDのワクチン基金におきまして、新型コロナワクチン開発を支援対象としておりますので、オミクロン株のワクチンも、既存の基金の支援対象の範囲内であるということであります。このオミクロン株の感染性、重症度、そして既にあるワクチンの効果といった治験を踏まえた上で、必要に応じ既存のAMED基金なども活用して、早急に研究開発の支援ができるよう、政府としてもしっかりと対応していきたいということを、本日、私が司会進行を務めておりましたけれども、私自身の担当分野としては、今申し上げたようなことを発言させていただいたところであります。
(問)学術会議について伺います。学術会議は昨日、総会を開きまして、提言活動の強化とか会員選考過程の透明化など、一定の組織改革の案を示しました。これについて大臣の受け止め、評価を教えてください。
 あと、CSTIにおいて学術会議の在り方に関する政策討議が続いていますけど、年内までに一定の結論を出すつもりがあるのか、その辺についての見通しを教えてください。
(答)まず、1点目につきましてですけれども、私からは冒頭あいさつをさせていただきまして、その場で申し上げたこともちょっと紹介させていただきますと、我が国の科学者の内外に対する代表機関としまして、科学的な見地から社会的課題の解決に向けた提言を積極的に発出していただきたいと、こういうことを申し上げました。
 また、国際社会における日本のプレゼンスを私自身高める必要があると思っていて、学術会議には海外のアカデミーと連携もしていただきながら、国際的な課題に対する提言をより多く発出していただきたいと、この点についても申し上げました。
 加えて、今後も対話を重ねる中で建設的な信頼関係を築いて、様々な課題を乗り越えて、共に歩みを進めていきたいと、こうした点を冒頭、あいさつの機会を幸いにもいただきましたので、発言させていただきました。
 総会の中身につきましては、本日まで続いておりますし、総会での議論につきましては、あらためて報告を受けたいと考えております。したがいまして、その報告を受けた上で、また私自身の所感というものは申し上げたいと思っています。
 CSTIの話につきましては、これまでも申し上げているとおり、現在、精力的に様々な角度から議論をいただいているところでございますので、現時点でいつまでに何をということを決めているわけではございません。

(以上)