小林内閣府特命担当大臣記者会見要旨 令和3年11月16日

(令和3年11月16日(火) 10:52~11:11  於:中央合同庁舎第8号館1階S103記者会見室)

1.発言要旨


 科学技術政策担当大臣として、1点ご報告を申し上げます。
 先週金曜日に東京大学を訪問いたしまして、藤井総長を始め関係者の皆様と懇談をさせていただいた後、東京大学におけるスタートアップ支援の状況に関しまして視察をさせていただきました。藤井総長他、東京大学の経営陣の皆様からは、藤井総長のリーダーシップの下で策定されましたUTokyo COMPASS(ユートウキョウコンパス)という、多様な人が共に協創するとの理念の下、スタートアップ支援や人工知能教育などが盛り込まれた大学改革に向けた新たな行動計画についてお話を伺いました。
 また、続きまして、スタートアップの経営者の方々と車座で意見交換を行わせていただきました。若い経営者の皆様の熱意と、失敗をしてもチャレンジする姿勢に大変感銘を受けました。
 様々な議論がなされたんですけれども、具体的には起業時の苦労や失敗例などについて生の声を伺わせていただきまして、起業時の資金や人的ネットワーク、また出会いの場をどうやって形成していくか、様々な課題を提示いただきました。
 今回の視察で伺いました課題につきましては、国の科学技術政策に反映をいたしまして、高い志を持って取り組まれているスタートアップ関係者の方々の取組を国としても後押しできるよう検討を進めてまいります。

2.質疑応答

(問)経産省が蓄電池の産業戦略の策定に向けて動き始めたとお聞きしています。研究開発という立場から、蓄電池分野に関してどのような取組が必要かということのご所感をいただければと思います。
(答)蓄電池につきましては、様々な観点から見ていかなければいけないと思っています。今後、EVですとか、あるいは再エネの主力電源化を目指していくとすれば、当然、蓄電池は極めて重要な位置付けになると思っておりますし、各国が今しのぎを削っている分野だと認識しております。また、そういう意味では経済安全保障の観点からも、我が国としてもそうですし、また同盟国アメリカも様々なサプライチェーンの位置付けなどについて、先行的な取組を始めているというところです。
 そうした観点からしますと研究開発、これは当然各国が今、競争している分野でありますから、我が国としてもしっかりと取り組んでいかなくてはいけないと。まず、今、政府としては、電池の材料の大規模拠点化とか、それを進めようとしていますが、その先に次世代の蓄電池をどうしていくのかというところは、しっかり考えていかなくてはいけないと思っております。今、液体のリチウムイオン電池が主流ですけれども、その後に次世代の電池として全固体電池がありますし、さらにその先、革新的な電池としてフッ化物ですとか、いろいろありますけれども、ヨーロッパではマグネシウムですか、話が出てきています。そこは負けられない分野ですので、我が国としてもしっかりと国としてサポートしていく必要があると思っています。
(問)とはいえ、LiB(lithium-ion Battery)に関しても、吉野(彰)先生とか日本が先行してきたんですが、やはり後塵を拝したというところで、簡単に強化というよりは復活みたいな部分があって、相当アゲンストが吹いているような気がするんですが、それを踏まえてどういう取組が必要かということをお伺いできればと思うんですが。材料開発とかも含めて。
(答)今おっしゃったように、リチウムイオン電池、これも当然、日本の研究者の方が大きく貢献した分野であるにもかかわらず、今、特にコスト面でいうと、他国の後塵を拝してしまっているというところだと思います。
 これについては、一朝一夕にどうなるものではありませんが、今回の経済対策においても、岸田総理からの指示におきまして、蓄電池を含めたクリーンエネルギーへの投資というのが一つの大きな柱として盛り込む方向とされておりますので、経産省をはじめ政府一丸となって取り組んでいきたいと思いますし、研究開発だけではなくて、それをどうやって社会実装していくのか。この点については、政府もそうですし、産業界もそうですし、そこがオールジャパンとして一体となった取組というのが私は必要になってくると思いますので、研究開発というのをしっかりと後押ししつつも、それをどうやって社会実装まで持っていくか、一体として考えていかなくてはいけないと思っています。
(問)本日行われているアメリカのバイデン大統領と中国の習近平主席の初めてのオンラインの首脳会談について、経済安全保障大臣として期待する点とか成果などがございましたら、お願いいたします。
(答)基本的に第三国のやりとりですので、その点について私の大臣としての立場から具体的なコメントをすることは差し控えますけれども、一般論として申し上げれば、アメリカと中国、この2つの大国の間の話ですので、当然その議論については、経済安全保障担当大臣の立場からも注視をしていきたいと考えています。
(問)経済安全保障に関してお伺いします。週末、読売新聞さんの報道でも、経済安全保障推進法の概要など、各紙報じられています。これは非常に注目を浴びているのはご承知のとおりだと思いますけれども、検討状況と19日に初会合ということも報じられていますが、有識者会議を含めて調整状況についてお伺いします。
(答)複数社の報道は承知しております。事実関係を申し上げれば、先週の木曜日に今後の経済安全保障に関する取組を加速させていく観点から、今後の進め方について私自身、総理にいろいろ相談をさせていただきました。その時総理からは、経済安全保障の法案につきまして、特に有識者の方々の意見をしっかり聞きながら準備を加速してほしいというご指示をいただきました。その指示を踏まえて、今後の必要な体制の整備、あるいは具体的な進め方、これは今検討しているところでございまして、報道で閣僚会議の設置とか有識者会議、それは承知をしておりますけれども、現在、中で様々な検討を加えているところで、現時点で固まっていることはございません。
(問)ロシアがミサイルを使った人工衛星の破壊実験を実施したと米国が発表して批判しています。NASAによると、宇宙ステーションの近くに破片が飛んできたというような情報もあるようなんですが、宇宙政策大臣として何か受け止めとか、日本として対応があればお伺いできればと思います。
(答)アメリカの宇宙軍、そして国務省が11月15日、モスクワ時間ですけれども、いわゆるASAT実験を行ったと、その実験の結果、これまでに1,500を超えるスペースデブリが発生している旨をアメリカ側として発表したということは承知しています。我が国としても現在、関係省庁で連携をしまして情報収集と分析を行っているところです。
 一般論として申し上げれば、こうしたことも含めまして、関係国に対しましては、宇宙空間における責任ある行動を我が国として求めていきたいということでございます。
(問)研究者の発明の対価をめぐる動きについて質問させていただきます。
 先日、大阪地裁で、がん治療薬の「オプジーボ」の開発をめぐって、ノーベル賞受賞者の本庶佑教授が治療薬の販売の小野薬品工業に特許使用料の一部支払いを求めた訴訟がありました。
 小野薬品が280億円を支払うことで和解が成立したんですが、研究者の発明の対価をめぐっては同様の訴訟が過去にも相次いでいまして、産学連携を呼び掛けている政府として、今後このようなトラブルが起きないように、大学は何が必要なのか、あるいは政府として何かできることがあるのか、大臣の考えを教えてください。
(答)本庶先生と小野薬品工業との間で、オプジーボに関する特許使用料の裁判で和解が成立したと、そうした報道については承知をしております。我が国として、イノベーションを通じて持続的な成長を続けていくためには、「知」の創造の役割を担っていく大学の役割というのは極めて大きいと思っておりまして、大学の研究成果を社会実装する、あるいは大学が企業と一緒になって新しい社会的価値を創造する産学連携が大変重要だということは基本ラインとしてございます。
 今、ご指摘のあったような今回のような事案も踏まえまして、産学連携に当たっては、あらかじめ共同研究の成果の取り扱いを決めておくことが重要だと考えています。政府のレベルでは、平成28年ですかね、「産学官連携による共同研究強化のためのガイドライン」、これは当時、経産省と文科省が共同して定めたものと理解しますけれども、そういうガイドラインを定めています。したがって、こうしたガイドラインに基づいて、まず大切なのは、大学側が産学官連携を通じたイノベーション創出に資する「知的財産戦略」をしっかりと策定していくことが重要だと考えています。また、その中で、例えば知財に関する人材を含めた体制面での強化をしていただくこと、それを政府としてしっかりと後押ししていくこと、これが重要だと思っています。
 もう一方、他方で知財マネジメントというのは産学官の連携活動において全てではないと。ある意味重要なんですけれども、産学官連携活動における多くのマネジメントの要素の一つでありますので、知財の面だけに部分最適化したようなことも避けていかなければいけないと考えておりまして、その意味では個々の共同研究の実施目的ですとか、あるいは産学連携のビジョンをしっかりと関係者間で共有していくことが重要だと考えています。
 内閣府といたしましては、関係省庁と連携をいたしまして、今触れさせていただいたガイドラインをさらに普及させていくこと、ここの努力をしていきたいと思いますし、「科学技術・イノベーション基本計画」に基づいて組織対組織の連携を強化するなど、産学連携の深化に引き続き取り組んでいきたいと考えています。
(問)ベンチャーの関係の件で、スタートアップ支援の件でなんですけれども、北海道大樹町でインターステラテクノロジズ社さんが民間ロケットの発射などをしておりますが、宇宙関連のベンチャーの支援と、発射射場の選定について、今、大樹町が民間宇宙ビジネス関連だとありますが、他にも何か有力な地域があるのかどうかというのをお伺いしたいと思います。
(答)まず、宇宙に限らず、宇宙は特にですけれども、新しい領域、フロンティアの領域ですので、まさに各国はある意味イノベーションを生み出そうと、まさに最も注力している分野の一つだと認識しています。そういう観点からは、このイノベーションを担っていく今中心となっている主体というのはスタートアップだと認識しておりますので、宇宙分野におけるスタートアップ支援というものは、引き続き力を入れていかなければいけないと思っています。
 今おっしゃっていただいたインターステラテクノロジズ、他にもたくさんいろんな分野で今あるじゃないですか。具体的な名前はこの場で申し上げませんが、そうした方たちがこれからの宇宙産業を引っ張っていってくださると思っていますので、政府としてもそこは後押ししたいし、足を引っ張るようなことはしないということで政策をつくっていきたいと思っています。
 射場の件につきましては、これは今いろんな取組がなされているものと認識をしておりまして、この場で私から一つ一つ具体的に申し上げることはいたしませんが、北海道以外にも、例えば各自治体の取組で、この間、私のところに大分県知事と和歌山県知事がいらっしゃっていただきましたけれども、様々な取組を自治体としても後押ししていくと伺っておりますので、政府としては、そうした自治体の取組も含めて、できる限り応援していきたいと考えています。
(問)昨日、経済産業大臣と米国の商務長官の間で、日米商務・産業パートナーシップという枠組みの設立で合意がなされました。経済安全保障の強化を目的に、5Gですとか半導体の研究開発、インフラ整備などで今後協力を深めていくということです。これは大臣が所管する経済安全保障の分野とも大きく重なるところだと思うのですが、今後、大臣の下で経済安全保障分野の政策で、国際協力を同盟国、あるいは有志国などに求めていく、そういったお考えはありますでしょうか。
(答)昨日のいわゆる「JUCIP(日米通商・産業パートナーシップ)」と言われる日米間の取組につきましては、萩生田経産大臣とレモンド商務長官との間で合意されまして、これは半導体を含めてサプライチェーンの強靱化ですとか産業競争力の強化をしっかりと幅広くやっていくということですので、これは経産省ともしっかりと連携をしながら、私の立場としてもしっかりとこの取組に後押ししていきたいと思っています。
 まず、国外の話を申し上げる前に、国内で関係省庁、多岐にわたりますので、国内の体制を経済安全保障に関して政府一丸となって推進していかなければいけないので、その体制整備を含めてどうしていくかというところをまず考えなければいけないと思っています。
 その上で、国際社会におきまして、最終的には日本の脆弱性を解消して、また強みを、「不可欠性」と言っていますが、それを増していくことによって、日本の発言力を高め、結果として価値観を共有できる同志国などと連携しながら、しっかりと国際秩序、ルールを形成していく、その重要な一角を日本が、役割を果たしていかなければいけないと思っておりますので、国際間の連携につきましては今後の検討課題として位置付けておりますし、そこは各省庁それぞれカウンターパートもありますので、まずは国内の連携をしっかりと強化する、その先に海外との連携の在り方についても、今後の検討課題として位置付けていきたいと考えています。

(以上)