山際内閣府特命担当大臣記者会見要旨 令和4年5月20日

(令和4年5月20日(金) 18:42~19:00  於:中央合同庁舎8号館1階S108会見室)

1.発言要旨

 本日、人への投資と取引適正化・競争当局の提言機能を議題として、第7回新しい資本主義実現会議を開催いたしました。
 冒頭、十倉経団連会長から今年の春闘の状況について報告がありました。アップ率が2.27%、業績がコロナ前の水準を回復した企業のアアップ率が3.02%とのことでした。
 また末松教育再生担当大臣から、教育未来創造会議の第一次提言について報告があり、その後、議論をいただきました。主な内容は以下のとおりです。
 時代や社会環境の変化に応じて、成長分野への円滑な労働移動を進め、さらに賃金を上げていくためにも、企業内に閉じずに国全体の規模で働き手のスキルアップや人材育成策の拡充を図っていく。IT人材など重要分野に重点を置くとともに、転職やキャリアアップについて一般の方が相談することができる体制を整備する。
 また、産業界の協力を得ながら、男女間賃金格差の解消、多様な正社員の導入拡大、兼業の解禁を進めていく。
 最低賃金については、官民協力して引上げの環境整備を図るとともに、その引上げ額については、公労使三者構成の最低賃金審議会において、しっかりと議論していく。
 中小企業の賃金引上げを図るに当たって、転嫁を円滑化する施策を推進するとともに、公正取引委員会について、取引慣行の改善や規制改革を提言する機能、すなわち「アドボカシー、唱導」機能の抜本的強化を図る。
 岸田総理からは、DX、GXといった大きな変革の中にあって、「人への投資」は新しい資本主義の最重要な核となる。経団連会長から春闘の状況について伺った。今年は、ここ数年低下している賃金引上げの水準を反転させ、新しい資本主義の時代にふさわしい賃金引上げが実現することを期待すると申し上げた。その期待に応えていただいていると思う。物価が上昇する中で、引き続き官民連携して賃金引上げの社会的雰囲気を醸成していく。労働者の男女間賃金格差を解消していくため、早急に女性活躍推進法の制度改正を実施し、労働者300人を超える事業主に対し、男性の賃金に対する女性の賃金の割合を開示することを義務化する。この夏には施行できるよう準備を進める。新しい資本主義のグランドデザインおよび実行計画の6月上旬の取りまとめに向けて、山際大臣を中心に、関係大臣が協力して作業の加速をお願いするとの発言がございました。
 冒頭、私からは以上です。

2.質疑応答

(問)マスクの着用についてお伺いします。安全性が高い屋外や未就学児には一律に着用を求めないという方針が今回決まりましたが、国民一人一人の判断に委ねられる部分も大きくて、また特に未就学児を持つ親世代からは戸惑いの声も聞かれています。これまでの政府方針でも、周知が不徹底だと大臣をはじめ政府の方々が結構言われていたと記憶していますが、今後、どのように国民に周知を徹底して感染の再拡大を防いでいくのか。併せて、基本的対処方針の改正など、今後の取組についても改めてお考えをお聞かせください。よろしくお願いします。
(答)基本的対処方針に関しては、これはもう近々にやらせていただこうと思っております。またそれもご報告します。
 その上で、今回、まさに後藤厚生労働大臣から詳しく皆さまに対してご説明を申し上げていますので詳細はそちらに譲りますが、我々として心掛けなくてはいけないと思ったことは、何か今回で今までの政府のマスク着用に関しての方針が大きく変わったのかと、別にそういうことではないです。
 しかし、おっしゃったように、大変分かりづらいというか、こういう場合にどうしたらいいだろうかということが私たち国民一人一人に周知されていないと、腹落ちしていないこともあるから、分かっていただきやすいように、もう一度明確にして、きちんと周知を広めていくと。皆さんに、より理解した上で活用していただけるようにしていく。それが必要だということで、今回、そういう意味での整理をしたということです。ですから、それに基づいての話ですので、それに基づいたものを基本的対処方針の中でも確認するという作業になります。
 一点だけ、このオミクロン株の対応ということで、未就学児のマスク着用に関しては、この2月以降、2歳以上の子どもたち関しては、一時的に、それを着けられる子どもに関しては着けることを推奨するということがありましたが、これは、ご案内のようにオミクロン株の感染が今、だいぶ下向きになっていることも踏まえて、その元のオリジナルのものに戻して良かろうと。こういう判断が厚生労働省のアドバイザリーボードの専門家の意見から出たということでございますので、それを受けて基本的対処方針は元に戻すということを書き込むということ。そこの部分だけは少し変わっています。しかし、これは大きく変えるというよりは、元々そうだったものに戻すということなので、そういうものだと理解していただければと思います。
(問)新しい資本主義実現会議についてですが、総理から、男女間の賃金差について開示を義務付ける方針が表明されました。省令を改正して今年の夏に施行されるということですが、いつまでにこの格差を解消していくのか。そういった絵姿、そういったものがあったら教えていただけないでしょうか。
(答)これは、いつまでにその格差をどれぐらい減らしますという、ある意味定量的なものを時間軸をもってお示しすることを我々は考えているわけではないです。一般論というか、普通に考えますと、その男女の賃金格差は男女の処遇の違いを反映しているものだということからしますと、当然、そういう差が大きい企業は人材の多様性が乏しいと見なされると。となると、マーケットの中で労働者、あるいは投資家から選択されにくい状況になるであろうと。それは企業にとって決してプラスにはならないことから、そういう正しいプレッシャーがかかることによって、男女の賃金格差が徐々に無くなっていくであろうと。これはそうだと思います。
 ですから、そこをもって、徐々にかもしれませんが賃金格差が無くなっていくことを狙うと。こういうことですので、何か明確に何年までにどれぐらいの目標でという類いのものではないとご理解いただければと思います。
(問)ちょっと話題は変わりますが、消費者物価指数、CPIについて伺います。本日発表された4月分で、コアCPIが2.1%の上昇と、消費税増税の影響を除くと13年7カ月ぶりの高い伸びとなりました。日銀の物価安定目標の2%も超えていますが、賃金が伸び悩む中で、国民への負担の増加とかそういったことを含めて大臣の受け止めをお願いします。
 あともう1つ、関連して、政府の物価判断については、今までデフレではない状況に来ているという判断だったと思いますが、ただデフレ脱却宣言までには至っておりません。足下で需給ギャップが残っておりますし、どういう状況になればデフレ脱却宣言ができるのか。さらに、デフレ脱却に向けた政府の取組についても改めてお願いします。
(答)まず足下の2.1%という数字が示されましたが、このことについての評価も、単純にこういうものではないですかと言えるものではないですが、一般的に、私たちがこれまでも述べているように、コロナ禍から経済が回復しつつある。ですから消費が伸びていることや、あるいはウクライナの問題があって、原油をはじめとするエネルギー価格、あるいはそういう意味での材料費の高騰等々が物価の上昇に結び付いている原因ではないかということは、申し上げているとおりです。
 それに加えて、昨年比でいくと、携帯電話の話が当然出てくるわけですから、そういう分析になってくるだろうと思います。ですから、それが、肌感覚として物価が少し上昇してきているというのは誰もが感じるものだと思いますが、それをもってして、いきなり何か大きく政策を転換しなくてはいけない状況にあるという判断ではないだろうと思います。
 それと絡んで、ですからそのデフレからの脱却がどうかという話になりますが、もちろんデフレからの脱却というのは、デフレではない状況が存在しているというだけではなくて、デフレの状態にはもはや戻らないと、こういうところまで確認しなくてはいけないわけです。そのためには様々な指標も含めて、景気判断だけではなく様々なもの、数字を含めて慎重にこれは判断していかなくてはいけないものです。ですから物価が少し上がったといっても、すぐにそれでデフレが脱却したという判断にはならないということを繰り返して今までいるということです。
 私たちとしては、当然ですが、安定的に物価が2%ずつ上がっていく状況を作ろうということを日銀との間で決めて、そのオペレーションに関しては日銀に任せているわけですから、これからも金融政策に関しては日銀にしっかりやってもらわなくてはいけないと思っております。我々政府の側としてやらなくてはいけないことは、まずは今傷んでいる経済を総合緊急対策で下支えをして、そしてこれから新しい資本主義の中における様々な成長戦略を回す中において、安定した成長軌道に経済を乗せ込んでいくと。そういうことが実現されれば、当然デフレから脱却したと言える日がやってくるだろうと思っておりますし、それを目指して進むということです。
(問)男女間の賃金格差についてお伺いします。本日の会議では、女性活躍推進法を改正して開示の義務化を目指すというお話だったと思いますが、それとは別に、有価証券報告書における男女賃金格差の開示の義務化のタイミングについては、大臣はどの辺りを考えていらっしゃるかお教えください。
(答)これは、もう一つ、男女の賃金格差に関しての開示ということは今日、メニューで出されましたが、その前に、非財務情報をどう開示していくかということをずっと議論しているわけです。これ、省令改正が必要なものですから、有価証券報告書を変えていく、中身を変えるためには、そうすると、どうしてもその2つが連動するのだろうと思います。
 ですから、その非財務情報の開示ルールを我々はどの段階でフィックスさせて、それでその省令改正まで持っていって皆さんに使っていただけるものにしていくかということと、どうしてもタイミングを合わせていかなくてはいけないと思っております。
 こちらの方に関しては、日本国内でも金融庁の審議会で今、回してもらっていますから、ある程度、その中での議論が煮詰まれば、きちんと皆さま方に、こんな形でやりましょうということをお示しできると思います。
 一方で、これも都度、私は申し上げているように、ガラパゴスになってはいけないものですから、ある程度、どういう情報を開示するかに関して、国際的にコンセンサスが得られるようなものとしてやらなくてはいけないという部分もありまして。これは、だからIFRSみたいなところで今も議論をすることが決まって、その枠組みを日本もコミットして今、しっかりやっているところですから、そちらとの絡みも含めながら、どういうタイミングで変えていくのがいいかというのが決まってくると思います。
 ですから、今の段階でいつですということを申し上げる状況にはないですが、しかし、何年もかけますという話では当然ないと思っていただければと思います。
(問)男女間賃金格差についてお伺いします。先ほど、前の質問とやや重複する部分もありますが、今回、義務化をする意義について伺いたいのと、あと、やはり一定の企業負担が発生することになるかと思いますが、企業に対してどのように理解を得ていこうとお考えでしょうか。
(答)これも、答えは繰り返し重なる部分がありますが、もちろん岸田政権として男女間の賃金の格差は無くしていかなくてはいけないという思いはあります。
 しかし、一方で、もう少し大きな目で見た時に、日本の経済を考えた時に、あるいは日本の社会を考えていった時に、これからは男性だろうが女性だろうが、性にかかわらず、それぞれのお一人お一人が自己実現できるような社会を目指さなくてはいけないというのが新しい資本主義の中でもお示ししている我々の哲学なわけです。
 そうなってまいりますと、実現したいというのは、政権の側の話や、あるいは国全体としての話があります。一方で、民間の企業からしても、これから先、どうしても我が国は人口減少に、もうその局面に入っておりますから、人材をしっかり確保していこうとするならば、当然、今のままで十分な人材は確保できない日がいずれ来るわけです。ですから、企業の側からしても、どのように人材を確保し続けるかということは喫緊の課題なわけです。
 そういう中で、お互いの考えをすり合わせる中で、女性にしっかりと活躍していただける環境を整備していくことが必要だと。そういう流れの中で今回のことをやっていますので、民間の企業の皆さま方が、嫌々男女間の賃金の格差を開示していくということでは、私はないだろうと思っています。
 当然、それを行うことによって各企業がどんどん変革していくということが、まさにその企業が21世紀にも生き残る必須条件になってくるという認識をみんなで持つような状況がもう環境としてはできていますから、その自然な流れに乗っていくということではないでしょうか。
 ありがとうございました。
 

(以上)