小林内閣府特命担当大臣記者会見要旨 令和3年11月10日

(令和3年11月10日(水) 10:02~10:23  於:中央合同庁舎第8号館1階S103記者会見室)

1.発言要旨


 科学技術担当大臣としての報告ですけれども、ムーンショット型研究開発制度に関しまして、コロナ禍による経済社会の変容や気候変動問題を踏まえまして、9月28日のCSTI本会議で新しい目標を2件決定しておりました。これらの目標に関しまして、昨日9日、各研究開発プロジェクトのリーダーとなるプロジェクトマネジャーの公募を開始いたしました。約2カ月にわたって公募をさせていただきます。JST(科学技術振興機構)による厳正な審査を経て、来年春ごろに研究に着手する予定でございます。
 この2つの新しい目標は、昨今の重要な社会的な課題に対しまして、今までの科学技術では挑戦できなかった分野でございまして、また若手を始めとした多様な分野の研究者の参加が見込まれるものでございますから、私としても大変期待をしております。詳細につきましては、事務局までお問い合わせをいただければと思います。
 続きまして、今度は宇宙政策担当の大臣としてのご報告になります。
 本日11月10日、「軌道上サービスを実施する人工衛星の管理に係る許可に関するガイドライン」を制定いたしました。
 このガイドラインは、スペースデブリの除去ですとか人工衛星への燃料補給などの、いわゆる軌道上サービスを実施する人工衛星の管理について、宇宙活動法に基づく許可を得るために必要な考え方や具体的な手段を示すものでございます。ちなみに、こうした事柄につきまして国が定めるものとしては世界初となるものでございます。
 我が国の企業は、軌道上サービスの実現に向けまして、世界でも先進的な取組を進めているところでございます。来年度にはJAXAが行う商業的なデブリ除去に向けた実証事業におきまして、対象とするデブリについて軌道上での状態の確認を行う予定でございます。
 今回のガイドラインは、こうした軌道上のサービスを行う衛星にとっても、また他の第三者の衛星にとっても安全・安心なものとするものであると同時に、我が国の宇宙産業の振興にも資するものだと考えております。
 内閣府といたしましては、今後、このガイドラインにのっとった実例をしっかりと積み重ねながら、本ガイドラインについて積極的に国際的に発信していくつもりですし、また各国に働き掛けていくつもりでございます。軌道上サービスのルール作りを国際的にリードしていきたいと考えております。
 なお、このガイドラインの細部につきましては、宇宙開発戦略推進事務局にお問い合わせいただければと思います。

2.質疑応答

(問)10兆円ファンドについて、大臣が何度も強調されているように、異次元のものだと。それだけインパクトの高いものなので、逆に一部の分野で世界トップレベルに行っていても、全部の分野でトップレベルの規模がないので、そもそもエントリーできないような大学も多いかと思います。今、検討中の大学振興パッケージに関して、同じような何らかのインパクトのある政策が必要なんじゃないかという議論があるんですけれども、大臣としてはどうお考えでしょうか。
(答)当然、10兆円ファンドは、異次元の政策だと捉えておりますが、私の問題意識としては、トップレベルの研究大学だけではなくて、例えば特定分野に強い大学ですとか地域の拠点となる大学、様々な機能を担っている大学というものがたくさんございますので、こうした多様な大学全てが、そもそも我が国の知の基盤であると私は認識をしています。
 その中で、大学ファンドは、これはこれで非常に重要ですし、これは早急に運用に向けて段取りを進めていきますが、それだけではなくて、裾野を広げて日本全体の研究力の強化というものをやっていく必要があると考えています。その意味で今おっしゃっていただいた総合振興パッケージ、もうご案内かと思いますけれども、特定分野において世界的拠点となっている大学への支援強化ですとか、また地域が新しい産業ですとか雇用を生み出していくに当たって、大学の知をしっかりと活用してイノベーションを起こしていく仕組みですとか、また大学シーズの社会実装に至るまでのプロセスを加速化していくと、こういうものをパッケージとして取りまとめていくということになっています。
 10兆円ファンドというのは非常にネーミングからしてもインパクトがありますけれども、重要なのは、インパクトも大切なんですけれども、しっかりと政策を、今既に方向性を決めている、やると決めていることを実行に移していくことだと思っています。それをやれば、当然相応の結果が出ると私たちは思って、この政策も、この総合振興パッケージを年度末までに取りまとめているとしていますので、まずはそこをしっかりと取り組んでいくということだと考えています。
(問)経済安全保障の観点から、人工知能とか量子技術、そういう重要な先端科学技術について、複数年の研究を可能にする基金を検討しているかと思うんですけれども、この具体的なイメージというのを教えていただければと思います。
(答)これは、人工知能や量子だけではなくて、もちろんそれも入りますし、他にはマテリアルとかバイオとか、いろいろ革新的な技術であって非常に進化のスピードが速い重要技術、こうした各国がまさに熾烈な競争を既に展開している分野、あるいはそれに限らないものでもあるんですけれども、我が国の今後の社会にとって極めて重要だと思われる先端技術については、民間企業、あるいはアカデミアが、もちろん一生懸命今やっていただいているし、これからもそうなると思うんですけれども、それを国として強力にバックアップしていく仕組みというのを作っていかないと、今申し上げたような分野を始め、これからの先端技術の研究開発において他国と勝負することは難しいと思っています。
 したがって、国としてそれを強力に支援するための基金というのが必要でございますので、今申し上げた企業、アカデミア、当然関係省庁一体となってやらなくてはいけないし、専門家の方にも協力いただかなくてはいけませんが、そういう方たちがしっかりと連携していただく中で、技術の実用化に向けた、社会実装に向けた取組というのをしっかりとやっていけるようなプログラムをつくろうとしています。その基金もつくろうとしています。
 当然それに加えまして、国のお金を入れて先端技術の開発というのをしていくわけですから、研究開発の成果が自由に海外に流出していったら納税者への説明責任が果たせないので、一定の保全というのも必要になってくると思いますし、そうした形で国として強力にバックアップしていくというイメージでございます。
(問)米国の「アルテミス計画」について伺います。日本時間の昨晩、NASAのネルソン長官が、2024年に予定していた米国人宇宙飛行士の月面着陸を当初2024年としていたものを2025年以降に延期すると表明しました。日本政府はアルテミス計画に参加していますけれども、今回、NASAの計画変更について大臣の受け止めをお願いします。特に日本の宇宙開発予算は、アルテミス関連を柱に据えていると思いますので、今後の予算折衝への影響とか、日本の宇宙政策全般への影響についてどのように考えているか、教えてください。
(答)NASAからそういう発表がなされました。ただ、今回延期となったのは、地球から直接月に向かう計画でございまして、アルテミス2と3のところなんですけれども、そのため日本として協力することとしております、いわゆるゲートウェイ(月周回有人拠点)の建設スケジュールには影響しないものと理解しております。今後、アメリカ側の発表などがあるのかどうか分かりませんが、そういうものは当然注視してまいります。
 したがいまして、日本としては引き続き宇宙基本計画、また米国などとの国際約束に基づきまして、ゲートウェイへの機器の提供、あるいは補給、月面データの取得や提供、そして月面における有人与圧ローバに関する開発などをしっかりと進めていくというところで、そこについては現時点で何らかの変更があるわけではありません。
(問)半導体について伺います。昨日、台湾のTSMCが、熊本県における工場建設を正式に発表しました。大臣は、これまでも半導体の重要性等については、繰り返し言及されている中ではあるんですが、改めて正式に発表があったということを受けて、受け止めと今後の取組などについてお聞かせください。
(答)TSMCが今回日本への先端半導体工場への投資の意思というものを機関決定したということは、これは率直に歓迎したいと思っています。これまでもここの場で申し上げてきましたとおり、まず我が国の半導体産業の再生を考えるに当たって、これはある程度中期的に考えていかなくてはいけない話ですけど、まずは今の足元で先端半導体の製造拠点が、この国には今ないという事実を考えれば、ここはまずしっかりと国としても後押ししていかなければいけないと思っております。
 この後の話につきましては、もちろん足元では今回のこの話に加えまして、他にも日本全国に半導体関連産業の既存の工場があって、その刷新というものも速やかに図っていかなくてはいけないと。その先にあるのは、次世代のロジック半導体をどう開発していくのか。日本だけでできる話ではないと個人的には思っていますが、そういう他の国との連携の在り方ですとか。また安定供給、供給サイドだけではなくて、これまで過去を振り返れば、日本の半導体産業が1980年代には世界のシェアの5割を占めていたわけですよね。そこは家電メーカーに頼っていて、そこがうまくいかなくなって、また市場がシュリンクしてしまったという、そういう経験を踏まえれば、この先、自動運転とか、人工知能とか、様々な日本国内に半導体の市場というのをどうやってつくっていくかとか、そういう複合的な視点からしっかりと考えていかなくてはいけないと思っています。
 こうした点も含めて、現在、主管官庁である経産省におきましていろいろ検討がなされていると理解していますけれども、一昨日、「新しい資本主義実現会議」で緊急提言が出されまして、先端半導体の国内立地を推進していくために、複数年度で支援していくとか、必要な制度設計を行うとか、そういうことを通じて半導体のサプライチェーン全体を強靱化していくというようなことが書かれていますけれども、そうしたことを踏まえて関係省庁としっかり連携しながら、私としても自分の立場で物事を進めていきたいと思います。
(問)国産のワクチンの研究開発支援についてお伺いします。
 昨年6月に国内で先駆けて新型コロナウイルスワクチンの治験に取り組んできた創薬ベンチャーのアンジェスなんですけれども、臨床試験で有効性が確認できなかったと先日発表しました。国産ワクチンの研究開発の遅れは、今回のコロナ問題で露呈した課題だと思うんですけれども、政府が今考えている現状認識、今後の支援策について教えてください。
(答)皆さん、もうご案内かと思いますけれども、アンジェスのワクチン、これが国産の中では最も早く、2020年の6月から治験を開始していたというところです。ただ、アンジェスの発表によりますと、直近の治験の結果、期待する効果が得られなかったということです。したがって私どもとしては、今年の8月から用量を増やして臨床試験を行っていると伺っております。
 ワクチンに限らず、研究開発というのは、当然、不確実性というものを伴いますから、うまくいくこともあれば、そうでないこともあると。それは皆さま、ご理解いただけると思いますが、その中で日本としては戦略的に、かつ十分な幅のある複数種類の技術によるワクチン開発を支援していくことが重要だと思っております。それは不確実性があるのだから、その裏腹として、そこはやっていかなきゃいけないと思っていまして、もう既に、これも皆さんご案内かと思いますが、例えばKMバイオロジクスの不活化ワクチンですとか、塩野義さんの遺伝子組み換えタンパクワクチンですとか、あるいは第一三共さんのメッセンジャーRNAワクチンとか、あとはVLPセラピューティクスとかもありますけれども、そういう形でいろんなタイプのワクチンというものを開発していただいていまして、政府としても支援しているというところです。
 このワクチンの研究開発については、当然、国策上極めて重要であると。私が担当している経済安全保障という観点からも非常に重要でございますので、平時からの準備が当然大切だと考えています。これは戦略的に進めていかなくてはいけないので、今年の6月には政府としてワクチン戦略というものを閣議決定しているというところです。
 したがいまして、この戦略に基づいて、研究開発体制から設備の製造、あるいは薬事承認、あるいは治験環境の整備、こうしたものをしっかりと一貫してやっていくことが重要だと考えておりまして、今度決まる、今、政府の内部で検討している経済対策にも、このワクチン戦略をしっかりと、かつ速やかに実行に移せるように盛り込んでいきたいと考えています。
 私としても、今の担当大臣の立場で、できることはしっかりやっていきたいと考えています。
(問)先ほどの半導体の件に関することで、中長期的な課題として基本工場、いわゆるレガシー工場の刷新というところが課題であるとお話があったと思いますけれども。全国各地に半導体のレガシーの工場がある中で、どのように刷新の方向性に向けていくか。企業の体力、単体だけでは成し得ない部分もあるかと思うんですが、今後、中長期的に計画していく中で、どのような政策がマストになるのか。まだ決まっていない部分はたくさんあると思うんですけれども、大臣の今のお考えを教えていただければと思います。
(答)まさに、それをこれから詰めていくというところでございますので、今具体的にこうしますということは申し上げません。パワー半導体にしても、マイコンにしても、全てサプライチェーンを、とにかく半導体のサプライチェーンというものを強靱化するということが経済安全保障上必要ですので、我が国の半導体のサプライチェーンというものをしっかりとこれまで以上に把握した上で、ではどこを刷新していくか、てこ入れしていくのかというところが決まってくると思いますから、そうした作業をスピードアップしていきたいと、関係省庁と連携しながらスピードアップしていきたいと考えています。
(問)昨日、台湾のTSMCの発表の中で、日本政府の強い支援と初期の設備投資額が約70億ドルということが書いてあるんですけど、日本政府の強い支援ということについて、大臣としては具体的にどう考えていますでしょうか。
(答)これについては、経済産業省において今検討していると認識しておりますが、具体的な支援の枠組みについては、まさに今、政府内部で検討しているところでございますので、今この段階で具体的にいくらですとか、どういう形で支援しますというのは申し上げることは控えますけれども、今、様々な支援策を検討しているということは申し上げておきたいと思います。

(以上)