小林内閣府特命担当大臣記者会見要旨 令和3年10月8日
(令和3年10月8日(金) 9:41~10:02 於:中央合同庁舎第8号館1階S103記者会見室)
1.発言要旨
まずは私のほうから科学技術政策の担当大臣という立場で冒頭少し申し上げたいと思います。
皆さまご案内のとおり、先日、今年のノーベル物理学賞をプリンストン大学客員研究員、また国立研究開発法人海洋研究開発機構フェローの眞鍋淑郎先生が、その優れたご業績によって受賞されることとなりました。眞鍋先生には心より敬意と祝意を表します。
近年、自然科学分野における日本人、日本出身の方のノーベル賞受賞が出ていることは、科学技術立国の実現に向けても大変喜ばしいことと感じています。また、今回受賞の対象となった眞鍋先生の研究自体は、先生が主に30代のころのものと承知をしておりまして、若くして優秀な諸外国の研究者との交流を通じまして独創的な研究を成し遂げられたことは非常に素晴らしいことと思います。
我が国におきましても、優秀な若手研究者の育成や世界と伍することのできる研究環境の充実、これが大変重要であると認識しています。このため政府といたしましては、若手研究者が自由な発想に基づき挑戦的な研究にじっくり腰を据えて打ち込める、いわゆる創発的研究支援事業など、若手研究者支援に力を入れてまいりたいと思います。それとともに10兆円規模の大学ファンドの設立に向けた取組を進めているところでもありまして、科学技術・イノベーション基本計画の下、自由な発想に基づく基礎研究をしっかりと支えてまいりたいと思います。そして、眞鍋先生の研究成果が気候変動問題の解決へ道を開きましたように、我が国の様々な研究成果が地球規模の課題にこれからも貢献していくように政府としても取り組んでまいります。
冒頭私からは以上でございます。
2.質疑応答
- (問)今の眞鍋さんの話なんですけれども、プリンストン大学の関係で、日本で好奇心に基づく研究がしにくくなっているんじゃないかと。今、大臣がおっしゃったように、創発的研究とか、最近、若手研究支援も進んでいますけれども、とはいえ十分ではないんじゃないかという趣旨だと思うんですけれども、それについて大臣はどのように受け止めて、これから取り組みたいのか教えてください。
- (答)私の先般の就任直後の記者会見の際にも、こうした日本の研究力の低下を含めてご指摘いただいたところであります。具体的に申し上げれば、あのときもおっしゃっていただきましたけれども、注目度の高い論文における日本の順位の低下、また我が国の研究力の低下が危惧されているところであります。課題は、博士の後期課程の進学率の減少ですとか、研究ポストの不安定な状況など、研究者の魅力が低下していることであると認識をしています。我が国が今後もノーベル賞につながるような基礎研究力をしっかりと確保していくためには、科研費のような、そうした財政的な支援の確保に加えまして、若手を中心とする研究者がじっくりと腰を据えて研究に打ち込める環境をつくることが何よりも重要だと考えております。
このため、第6期の科学技術・イノベーション基本計画におきまして、研究への政府投資を目標として30兆円と掲げておりますし、官民合わせると120兆円ということで目標を掲げているところであります。私どもとしましては、各省とも連携をした上で、研究環境の向上や基礎研究の振興に努めてまいります。具体的には、先ほど申し上げた10兆円規模のファンドの話ですとか、また博士後期課程学生への経済的支援の充実、また冒頭申し上げた創発的研究支援事業、こうしたものをしっかりと組み合わせながら日本の若手の研究者の方々が力を発揮できるような、そういう環境というのをつくってまいりたいと思います。 - (問)量子技術の戦略について、昨日から見直しの議論が始まったかと思いますけれども、大臣としてはどういった議論を期待されているんでしょうか。
- (答)量子というのは、経済安保とも関わってきますけれども、量子ですとかAI、バイオ、マテリアル、こうしたものというのは非常に革新的であると同時に、進行のスピードというのは極めて速いものだと考えております。これは経済安全保障上も極めて重要な話でございますので、この量子技術を今後どうしていくかということは、世の中のスピードに合わせる形でこちらとしては検討を進めていかなければならないと考えます。当然、政府の中だけではなくて、企業ですとか、アカデミアとか、日本の総力を結集して、そこは検討を加速していくということなんだろうと思います。
- (問)経済安保の活動についてお伺いします。
本日、所信表明演説が行われ、岸田首相が重視する政策について考えが表明されます。経済安保の一括法についても、政府は今後重点的に取り組む課題として上げていらっしゃいますけれども、改めて今後のスケジュール感と取り組みたい内容について、検討状況をお示しください。 - (答)今、所信表明演説に言及していただきましたけれども、ご案内のとおり、本日午後、本会議におきまして所信表明演説が予定されているということでございますので、現段階において私がその点について発表できるものでないということはご理解いただきたいと思います。
その上で、私が経済安全保障担当という立場で一般論として申し上げますと、政府としましては、我が国を取り巻く安全保障環境が変化している、そのことへの対応の重要性というのは、当然そこは認識していかなければいけないというわけであります。我が国の将来の安全保障の在り方については、引き続きしっかりと検討していく必要があると思っております。経済安全保障の確保というのは、当然喫緊の課題でございますから、私自身が先頭に立って関係省庁と連携をしながら、政府一体となって、また民間企業の方や、あるいはアカデミアの方の、そうした知見もいただきながら経済安全保障の取組を進めていきたいと思っております。
時期について具体的にどうこうというのはなくて、私の立場としては経済安全保障の取組というものを、これも先ほど申し上げたように、時々刻々と技術の進化を含めまして国際情勢も含めて状況は変わっていきますので、そこは日本としても具体的な取組というものを検討、またその実施というものを加速していかなければならないと、そういう認識でおります。 - (問)岸田総理は総裁選の際に、外交政策の中で国家安保戦略の改定の必要性にも言及されています。国家安保戦略を改定する際に、経済安保についても踏み込む必要性があると指摘されていますけれども、大臣はその点についてどんなふうにお考えでしょうか。
- (答)繰り返しになりますけれども、岸田総理が総理にご就任になる前の総裁選のときにおっしゃっていたことでありまして、正式には分からないんですけど、今日、所信表明演説、岸田総理がおっしゃるメッセージというものをしっかりと踏まえた上で考えていきたいと思っております。
国家安保戦略とは別に、一般論としましては、今申し上げるとおり経済安保の必要性、重要性というのは、皆さんもそうだと思いますけれども、世界の各国が認識しているところであると思っておりますので、この取組というのは、私がこういう立場、必要な新設のポストとして設けていただいた以上は、そこは最大限スピードアップしていくということだと思います。 - (問)経済安保について伺います。
大臣は先日の会見で、今後取り組むべきこと、重要なポイントとして、重要技術の特定、保全、育成などを上げていました。まず、この点については今後どう具体的に進めていくのかという考えと、そのための役所の体制については今後どのように構築していくお考えなのか、併せてお聞かせください。 - (答)まず、私が先般申し上げました、あのとき確か経済安保について、どういう点を優先して取り組んでいくんですかというお問い合わせがありまして、それに対して重要技術の特定、保全、そして育成について、これは一つの項目として重要であると確かに申し上げました。この点については先ほどの量子のご質問とも関連してくるんですけれども、量子とかAIとかこうしたものというのは、革新的かつ進展が早い先端技術でございまして、こうしたものを中心に国家間の競争というのが今激化しています。その中で経済安保の確保に向けましては、こうした重要な技術が一体何なのかと特定して、保全をして育成する取組を進めていかなきゃいけないと。それは、我が国の自律性、あるいは他国に対する優位性、ひいてはそれが不可欠性になると思っておりますけれども、こうしたことを実現していく観点から重要であると思っています。
具体的に、こうした観点から先端的な重要技術の実用化に向けまして、強力な支援を行う新たな仕組みを創出してまいります。この新たな仕組みというのは、経済安全保障の重要技術育成プログラムというようなものですけれども、これをしっかりと創出して、重要な技術情報の保全と、その共有、活用を図る仕組み、これも早急に検討していきたいと考えています。
そのための役所の体制につきましては、この間申し上げましたけれども、経済安保という取組というか、その分野自体が非常に多岐にわたるものであります。したがいまして、私としてはその先頭に立って国家安全保障局を含めた関係省庁と連携して、必要な体制整備も含めて、政府一体となって必要な取組を進めてまいりたいと考えております。 - (問)先ほどのノーベル賞の関連でお話を聞かせていただきたいんですけれども。研究者は世界を舞台に活躍するという、人材の流動性というのも担保すべきかなという気がします。眞鍋先生が若くしてアメリカに活動の場を求めたということも、ある意味では肯定されるべきかなと思います。その一方で、若手人材はこれからの次代を担うということなんですけれども、シニアの研究者ということも行き場がなくなってしまって、海外に活躍の場を求めるという動きもあります。研究者としてはグローバルにはいいのかもしれないんですが、技術流出ならぬ頭脳流出という形での危惧も、反対から見れば危惧されるかなと思うんですけれども。大臣はその辺の人材を引き止める、それから人材の活躍の場を世界に提供していくという、この難しいバランスがあると思うんですけれども、その辺はどのようにお考えでしょうか。
- (答)極めて重要なご指摘だと思います。行きっ放しだったら、ただ空洞化してしまうので、先に結論を申し上げれば、こうした国際的な循環をしっかりつくっていくと。行っていろんな人と接して切磋琢磨して、それがまた戻ってくる、また出ていく、こういう循環をつくることが重要だというのが結論です。
眞鍋先生のように博士号取得者が海外で研究をすることは、おっしゃっていただいたように、海外の優れた研究者とのネットワークができていきますし、また異なる研究文化ですとか環境で研鑽を積むということは、いま申し上げた国際的な頭脳循環という観点からは非常に望ましいことだと思います。
ただ一方で、逆の視点からおっしゃっていただいたように、今、あらゆる研究活動がグローバル、ダイナミックになっていく中で、優秀な人材の国際的な獲得競争というものが熾烈化しているというのも現実にあるんだと思います。したがって、国を挙げて科学技術・イノベーション政策をしっかりと推進していく観点からは、優れた人材の育成、それに加えて確保、この視点というのが重要だと思っています。
そのため、先ほども少し申し上げましたけれども、十分な研究費を確保することは当然ですけれども、それだけではなく、若手研究者のポスト確保ですとか、継続的な基礎研究の実施、さらに眞鍋先生がなされたような挑戦的な研究への支援の強化、こうしたことを通じて、まずは国内の優秀な研究者の方が、海外に行くことはもちろん重要ではあるんですけど、そうした方が日本の中で研究を継続したいと思う研究環境を整備することがまず必要だと思っています。また、諸外国から優秀な人材を我が国に引きつけるような取組も、これも併せてやっていかなきゃいけないと思います。
眞鍋先生の翌日でしたか、ノーベル化学賞でご受賞された方も、WPIといって、今、日本の中に国際的な研究拠点というものを設けており、北海道大学で研究をされていた方が受賞したわけですよね。そうした優秀な海外の研究者の方をどんどん日本に呼び込んでくる。そうした知の循環というものを政府としてもしっかりと後押しできるような、そういう環境整備というのは極めて重要であると思っていますので、そこは意識をして進めていきたいと思います。 - (問)シニアの世代の研究者、やりたい人が海外に行ってしまっている部分というのがあると思うんですけど、その辺を引きつけるにはどうすればいいか。
- (答)そこはなかなか、政府がそういうものを行かないでくださいといって止めるようなものではないじゃないですか。ないんですけれども、そこはシニアの方のいろんなそれまでの蓄積されたノウハウとか、いろんなものを持たれていると思うので、それを日本の中でしっかりと活かしていただくということは極めて重要な視点です。これは経済安保とも絡んでくる視点だと思っています。それは恐らく国だけが制度や何かで担保できるものではないと私は思っていて、むしろアカデミアとか、あるいは民間企業とか、そうした方たちとしっかりと連携をしながら、日本の中でそうしたシニアの方も研究を続けたいと、そしてそれが結果として国益につながるような、そういう環境の整備というのは政府として必ず持っておかなければいけない視点だと思っています。
- (問)経済安保の一括法に関連してですけれども。この法律は多分、企業活動や大学での研究活動とか、ひいては国民生活に深く関わることになると思うんですけれども、法整備をめぐって有識者らによる公の会議を設けて検討されるのか、もしくは政府単位だけで検討されるのか。通常こういうものは他の省庁では審議会のようなものを立ち上げるのが一般的だと思うんですけれども、その点について大臣のお考えをお聞かせください。
- (答)その点につきましても、先ほど政府の体制をどうしていくんだというご質問をいただきましたが、その体制整備も含めて速やかに検討していきたいと思っています。どういう器でやるのかというところは別として、今ご指摘いただいたように、アカデミアの方ですとか、あるいは民間企業の方、こうした方と全く分けてやっていくということはあまり生産的ではないと思っていますので、形をどうするのかというのはいろいろ今後検討していきますけれども、そうした知見というものは当然いろいろと共有させていただきながら、オールジャパンとして進めていくということだと考えております。
(以上)