小林内閣府特命担当大臣記者会見要旨 令和3年10月5日

(令和3年10月5日(火) 11:46~12:50  於:中央合同庁舎第8号館1階S103記者会見室)

1.発言要旨


 皆さん、おはようございます。今日はお忙しい中、お集まりいただきまして、ありがとうございます。
 私はこのたび、岸田内閣におきまして経済安全保障担当大臣、また内閣府の特命担当大臣として科学技術政策、そして宇宙政策を担当させていただくことになりました小林鷹之と申します。今後ともどうぞよろしくお願いをいたします。
 今日、私から冒頭、少し、なぜ私が今ここに立っているのかも含めまして、簡単に私なりの思いというものを最初にお話しさせていただきたいと思います。
 そもそも私が政治家として、いろんな政策づくりに携わっているんですけれども、常に国力を高めたいという意識があります。
 私が政策づくりに当たって、頭の中に常に置いている国力のマトリックスという図があって、それは何かというと、国家戦略の根幹にあるのは、国民の暮らしを豊かにする経済と、国を守っていく、国民の皆さまの命を守っていく安全保障、この経済と安全保障を車の両輪としてしっかりと回していく、これが基本だと思っています。
 この経済と安全保障を、2つをしっかりと下で支えているのがイノベーション。このイノベーションというのは、社会に対して新しい価値を生み出していく力と捉えています。そのイノベーションを一番下で支えているのは教育だと考えています。
 それは、イノベーションを生み出すのも人ですし、またイノベーションの成果を社会のためにプラスの方向で使うというのも人なので、これは教育というのは単なる知識の集積ではなくて、例えば倫理とか、あるいは人間力とか、あるいはいろんなものに挑戦していく精神とか、そういったものを含めた広い概念なんですけれども、経済安全保障、そしてイノベーション、教育という、この国力のマトリックスの中で、今、自分が何をやっているのか、やっていることはどこに当たるのかというのを常に考えています。
 その中で、まず経済安全保障なんですけれども、今申し上げた経済と安全保障がまさに融合していく世の中になっています。安全保障は安全保障、あるいは経済は経済、こういうふうに割り切れる時代は終わりつつあると思っておりまして、経済と安全保障を一体として捉えていく経済安全保障という新しい政策分野というものを、やはり国として進めていかなければならないと思うんです。
 特に今どういう時代かというと、デジタル化が進んでいく、データの利活用が進んでいく、そういう社会構造が大きく変わってきています。
 また、皆さんご存じのとおり、新型コロナでサプライチェーンの脆弱性というものも露呈された。一方で、海外を見ると米中の対立というものが長期化する様相を見せていて、その中で国家間の競争というのが非常に激しくなってきています。その中で経済的な手段を用いて影響力を行使していこうとする動き、あるいはそういった機会というものが増えてきている。そういう現実に今我々は置かれているんだと思っています。
 その中で、国民の皆さまの命と暮らしをしっかりと守って、日本の持続的な成長をしっかりと実現していく、経済面からそれをしっかり確保していくことが必要だと思っておりまして。そのためには例えば他国の動向に右往左往するのではなくて、まずは日本としてどうしていくのかという視点というものが私は非常に重要だと思っているんです。
 少し話は長くなってしまうかもしれませんが、政府の立場という前に、これまで私は自民党の議員だった。今もそうなんですけど、自民党の側でやっていたんです。
 党の側で何をやってきたかと言いますと、この3年間、まず自民党の知的財産戦略調査会、そして去年の6月に立ち上がった新国際秩序創造戦略本部。これは皆さんご案内のとおり、総理が当時政調会長であって、今、自民党の幹事長である甘利幹事長が座長で、私は事務局長を務めていたんですけれども、こうした場で経済安保について取り組んできて、いろんな提言も含めて取りまとめてまいりました。
 そのことについて若干触れますと、まず知財戦略調査会では、例えば外為法の改正、こうしたことを含めまして我が国の技術的な優位をどうやって確保していくのか、あるいは技術流出の防止をどうやっていくのか、そういう具体的な検討をしてまいりました。そして、今言った新国際秩序のほうでは、そうした技術の話だけにとどまらず、経済安保をもっと広く捉えて、「戦略的自律性」と「戦略的不可欠性」という2つの概念で自民党としては整理をしてきました。
 戦略的自律性と不可欠性というのは、分かりやすく言うと、「自律性」は守り、「不可欠性」は攻めという位置付けなんですけれども、戦略的な自律性というのは、例えば今の世の中を支えているいろんな産業がありますけれども、その中で基盤となる産業はやっぱりあると思うんです。
 例えば情報通信であり、エネルギーであり、金融、医療、あるいは運輸・物流。私たちは党のほうでは戦略基盤産業と言っていますが、いわゆる基幹インフラです。こうした基幹インフラ産業の様々なリスクシナリオを設定し、日本のどこに脆弱性があって、それをどうやったら解消することができるのか、こうしたことを党ではやってきました。
 一方で、攻めのほうの戦略的不可欠性の確保・強化というところについては、技術保全の在り方を含めて、我が国が世界にとって本当に必要不可欠な存在となるために、先端的な研究開発の推進を含めて、政府に対して党のほうから求めてきた経緯があります。こうした弱みを解消して強みを磨くことによって、それで初めて他国と意味のある擦り合わせができるようになってくるんだと思っています。その意味で、そうすることによって国際ルールの形成を主導して、また日本の国益をしっかりと確保していく。これが自民党の新国際秩序のほうでやってきた話であります。
 今、私は党の立場をある意味離れて、政府の担当大臣という立場に変わりました。立場は変わりましたので、こうした与党自民党が出した提言も踏まえつつ、これまで政府がやってきた取組というものをしっかりと改めて把握させていただいた上で、経済安保を政府の立場で強力に進めていくことができればと考えております。
 具体的には昨日、岸田総理から指示がありました。少し読み上げさせていただきます。
 総理からは、「国家安全保障会議の審議に基づき、戦略物資の確保や技術流出の防止に向けた取組を進め、自律的な経済構造を実現していく」よう指示をいただいております。
 今後、経済安保の確保に向けた大きな戦略的な取組の方向性としては、先ほど申し上げたように、まずは経済活動を通じた安全保障上のリスクに対処して、我が国の自律性というものをしっかりと確保していくこと。それに加えまして、技術、産業競争力というものをしっかりと強化することによって、我が国の優位性、ひいては不可欠性をしっかりと獲得していくことが重要だと考えております。
 当然、基本的価値ですとか、あるいはルールに基づいた国際秩序の下で、同志国を含めた他国との協調というのは当然必要になってきます。ただ、先ほど申し上げたとおり、同時に自らの戦略軸というものをしっかりと持っていないと、協調イコール追随ということになりかねないので、そこは協調も進めていきつつ、じゃあ日本として同時にどうしていくのかということを当然考えていかなければいけないと思っています。
 今後の進め方につきましては、経済安保というのは非常に分野が多岐にわたりますので、また政府だけではなくて、経済界ですとか、あるいはアカデミア、こうした様々な主体の方と連携していく必要があると思っております。従いまして、今回、岸田内閣の新設ポストということで経済安全保障担当大臣という職が設けられた以上は、私自身が省庁を含めて関係する主体の皆さまとしっかりと連携して、自らが先頭に立って一丸となって経済安保というものを進めていきたいと考えております。
 私の担務は、この経済安全保障に加えまして、科学技術、宇宙、これも岸田総理から指示されております。
 まず科学技術につきましては、今申し上げた経済安全保障、特に技術の優位性ですとか、それを突き詰めていったときの不可欠性みたいなところと表裏一体というか、切っても切り離せない非常に重要なものだと思っております。具体的には、例えばAIとか、量子とか、マテリアル、バイオ、あるいは半導体、様々な分野があって、各国がしのぎを削る分野だと思っています。
 これはまさに科学技術の分野そのものですので、そこはしっかりやっていきたいと思います。またより広い見地から見ると、科学技術政策というのは、カーボンニュートラルのような地球規模の課題に今我々直面しておりますし、また今後、経済社会構造の変革の鍵となるものが、まさに科学技術・イノベーションだと私は捉えております。
 既に政府のほうは第6期の科学技術・イノベーション基本計画を出しておりますから、これからSociety5.0、Society5.0というのは何となく共有されていますけど、じゃあそれを具体的にどうしていくんだというところで、これまでの発想にとらわれることなく大胆な政策というものを政府の担当大臣として取り組んでいきたいと思っています。
 また、担務としては健康・医療戦略の推進についても指示をされておりまして、既に第2期の健康・医療戦略が2年目に入っておりますけれども、この健康・医療を取り巻く諸課題というのはかなり多岐にわたっていますので、これについても健康長寿社会の実現に向けた施策というものをしっかりと推進していきたいと思っています。
 特に国産のワクチンの話です。これについては、今、新型コロナ感染症が猛威を振るっておりますけれども、新型コロナの後、もしかするとさらに烈度の高いウイルス等の感染症が襲ってくるかもしれない。昨日、岸田総理が、まさに夜中の記者会見の中で、新型コロナ対策については最悪の事態を想定するということをおっしゃっておりましたけれども、そこに通底するものがあると思っています。
 新型コロナが仮に終息したとしても、いつそういうものが襲ってくるかもしれない。その最悪の事態も想定した上で国産ワクチンの実用化、あるいは研究開発、こうしたものを既に政府が6月の頭に戦略を出しておりますので、これをしっかりと進めていくのも私の責任だと思っておりますので、関係省庁とも連携をしながら頑張っていきたいと思っております。
 次に、日本学術会議についても触れさせていただきます。この学術会議の在り方につきましては、梶田会長との間でコミュニケーションを丁寧に取りながら未来志向で検討を進めてきているものと認識しております。まさにCSTIの有識者会議におきまして、日本学術会議の在り方に関する政策討議を行っていただいております。その場で検討を深めていただいているものと承知しております。
 私自身もCSTIの有識者会議の懇談会での議論などを十分に聞いた上で、政府としての方針につきまして責任を持って示していくこととしたいと考えております。
 最後に、担務として冒頭申し上げた宇宙の話なんですけれども、宇宙政策というのは、まさに「はやぶさ2」ですとか、皆さんご案内の米国を中心とした有志国によるアルテミス計画、これはまた月面の話とかがいろいろ出てきていますけれども、多くの国民が、これは子どもたちからご年配の方に至るまで、国民全体が夢や希望を感じられる分野だと認識しています。例えば私が小学生の頃、月に行くというと本当の夢でしかなかったんですけど、今、私は小学生の子どもがいるんですが、月に行くということは夢ではなくて目標というものに変わってきていると思います。
 そうした中で、同時に我々の社会というのは、例えばGPSを使ったスマホの位置情報ですとか、カーナビとか、あるいは衛星放送とか、私たちの身近にあるものが全て宇宙空間を利活用しなければ成り立たない、そういう時代に入っています。
 その中で、宇宙政策の重要性というのは言うまでもないですけれども、これも私が党にいたときのことを若干一つだけ申し上げますと、議員立法でこの間の通常国会、6月の会期末近かったと思うんですけれども、略称ですけれども、宇宙資源法というものを同僚議員と共に走り回って成立させました。この宇宙資源法というのは何かというと、商業活動として宇宙空間に、例えば月に行って資源を取ったときに、それに所有権を認めていこうという議員立法なんです。これはなぜ議員立法として一生懸命頑張ったかというと、今、宇宙空間はルールがまだまだ整備されていない分野の一つです。その中で、しっかりとした国際ルールをつくっていくのにどういうやり方があるのかなと考えたときに、例えば日本がしっかりとした国内法をつくることによって、そうすると日本の法律に基づいて月に行ってみようよと、ほかに行ってみようよという宇宙産業が進行するし、またルール形成という意味でも、国内法を作っておくことによって国際ルール形成により主体的に参画できると思ったからつくったんですけれども。
 今回、政府に立場を変えましたので、こうした重要な宇宙政策の在り方について、また国家として何ができるのか真剣に考えていきたいと思いますし、既に決まっている準天頂衛星のシステムの整備・運用などについても責任を持って進めていきたいと思っております。
 冒頭、私からのお話はこれで終わらせていただきたいと思いますけれども、経済安保にしても、科学技術にしても、あるいは宇宙政策にしても、私はもう一回、この日本という国を世界のど真ん中に立たせたい、世界をリードするような国にしたい。そういう思いを一政治家として持ってこれまでも活動してきておりますので、その気持ちは大臣になっても変わらず持ち続けて、皆さんと一緒にこの日本を盛り上げていきたいなと思っております。
 以上で冒頭終わらせていただきます。

2.質疑応答

(問)経済安全保障に関して2点伺わせてください。
 一つは、政府内で今、経済安全保障一括法、岸田総理は総裁選で推進法を整備するとおっしゃっていましたが、来年の通常国会をめどに審議が始まると思います。どのようなスケジュール感で、小林大臣としてどのようなポイントにこだわりを持って立法をリードされたいお考えでしょうか。詳細など、こだわりのある産業があれば一緒に教えてください。
(答)ありがとうございます。これは、自民党の先ほど申し上げた新国際秩序本部のほうでも提言に盛り込ませていただきました。ただ、あれは党の立場ですので、政府とはまたちょっと別の立場です。
 今、言及いただいた経済安全保障を推進していくための法律についてなんですけれども、まずそもそもどういう法律をつくっていくべきなのかというところについては、先ほど申し上げたとおり、経済安保の確保に向けて、基本的価値やルールに基づく国際秩序の下で、同志国との協力の拡大を図りつつも、我が国としての自律性を確保し、また優位性、ひいては不可欠性というものを獲得していくことが重要だと思っているんです。
 こうした観点から、今特に感じているのは、重要技術の特定、保全、そして育成。こういったポイントですとか、あるいは基幹的なインフラ産業の安全性や信頼性の確保、あるいは先ほど少し言及しましたサプライチェーン、技術基盤の強靱化に早急に取り組む必要があると思っております。
 こうした経済安保に関する取組を進めるに当たって、私自身、政府のこれまでの取組というのをしっかりと改めて把握した上で、与党とも相談をしながらですけど、与党との相談というのはしっかりとしなければいけないと思っていますが、次期通常国会の提出も視野に入れた法整備、またそのために恐らく必要な体制整備というものがあるでしょうから、こうしたことも含めまして必要な対応については速やかに検討をしていきたいと思っております。
(問)先ほど日本が世界の中でトップに立っていきたいというお話だったんですけれども、今、科学技術の基盤となる、例えば研究論文の注目されている「トップ10%論文」でいうと、日本は世界10位にまで落ちてしまっています。こうした現状についてどういうふうにお考えになって、これからどういうふうに取り組みたいのか、教えてください。
(答)まず、日本が今後トップに立っていくために、トップに立っていくというのは、どこの分野で世界と勝負していくのか。日本にどこに強みがあるのか。これは、例えば先ほど少し触れさせていただいた半導体とか、AIとか、量子、マテリアル。こういったところは日本も強みがありますけれども、他の国も頑張る分野じゃないですか。これはどっちにしてもやらなきゃいけない分野だと思っています。
 それ以外で、じゃあ日本に本当にどこに強みがあるのかというのは、これは結構、把握が難しいと思っていて。弱みはどこにあるのかというのは比較的明確に分かりやすいんですけど、強みがどこにあるのか。まず現時点でどこに強みがあるかというのは、今の例えば産業構造を見て、バリューチェーンでどこに日本の強みがあるかというのは把握できるかもしれないけれども、どんどん時代は変わっていくので、例えば5年後、10年後、どういう社会になっているか分からないし、そこで日本はどこに勝負をかけるんだというのは、よほど想像力を働かせて、世の中、例えば10年後にこういう社会になるだろうということを想像した上で、じゃあ今何するかというのを考えなきゃいけないんで。これは政府だけじゃなくて、いろんな方の知見をいただきながら考えていかなきゃいけない。これはまず私の感想です。
 今ご指摘された論文数とかの話については、まさに今ご指摘のとおりなんだろうと思います。
 だからこそ、今後、先ほど申し上げた第6期の科技イノベ基本計画に基づいて、デジタル化やデータの連携の活用、地球規模の課題という、いろんな課題について持続可能で強靱な社会への変革に取り組んでいくとともに、例えば、いわゆる10兆円ファンドというのは皆さんもご案内のとおりですけれども、こうした10兆円ファンドなどをしっかりと創設して、これからの博士課程後期の方を含めた若手の研究者の方が頑張っていただかないと、この国の未来は私はないと思っています。
 そこに大学の財政基盤とか、まだまだ強化していかなきゃいけないので、その意味で、これはある意味、政治が主導する形でしたけれども、10兆円ファンドというのは創設をした。これはまだこれからも、まだまだ10兆円に到達していないので、これをしっかりと積み増していって、国として支援できる体制というものを速やかにやっていかなきゃいけないと思いますので、他の関係省庁ともしっかりと連携しながら、私自身頑張っていきたいと思います。
(問)経済安全保障についてお伺いします。今の報道等でも各紙注目されているんですけれども、なかなか国民にとってなじみのない言葉だと思います。
 先ほどいろいろ新しい政策分野だという話もありましたが、新型コロナに関わるということも含めて、なかなか分かりやすくというのは難しい面もあると思うんですが、経済安全保障というのはどういったものなのか、具体例も交えてなるべく分かりやすく国民にご説明いただければと思います。
(答)ありがとうございます。今、ご指摘いただいたとおり、経済安全保障は、私、党の中でやっていたときに感じたのは、永田町・霞が関界隈では、非常に最近、言葉としてははやってきているというか、だいぶ普及してきたなと思うんですが。
 例えば地元で経済安全保障ということを言っても、「何?」、と言われることが多いです。
 例えば、今回コロナで皆さん本当にご苦労されています。コロナ禍が始まった当初に、まずマスクがなくなった。医療現場では、医療用のガウンですとか、手袋ですとか、あるいは医療用の器具とか、こうした国民の命を守るために必要不可欠な物資の供給が困難になったということは国民の皆さまも認識されていると思います。
 こうしたものも戦略物資の一つとして、サプライチェーン、全て日本の中で生産するというのは、それは理想かもしれないけれども、難しいところがある。じゃあ他国に依存していいところと、依存しちゃいけないところは戦略的にどう分けていくかとか、そういうことを医療の話も含めてやっていかなきゃいけません。サプライチェーンの話。
 あるいは、サイバーセキュリティというのも広く当然入ってくると思います。私の担務ではないですけれども、牧島大臣だったと思いますが、例えばサイバーセキュリティで、今、一日海外からの攻撃は13億回を超えるとも聞いていますけれども、私たちの貴重なデータ、あるいはデータが知らない間に盗まれていたり、あるいは機微技術、会社にとって重要な情報、こうしたサイバー面でのセキュリティの強化というものも、当然、広い意味での経済安全保障に関わってくる。
 サイバーの話でいえば、データの話だけではなくて今全てに関わっていますから、先ほど少し申し上げた戦略基盤産業とか基幹インフラの中でも、例えば医療もそうだし、金融もそうですし、サイバー攻撃を受けたときに、私たち国民生活が機能しなくなり得る、それだけのインパクトを持った話であるということは、私の地元の皆さまにお話をすると、「そういうことなのね」ということでお分かりいただくかなと思います。
(問)今のことにも関連するんですけれども、経済安全保障の確たる定義がないと言われているかと思うんですけれども、大臣が考える経済安全保障の定義はどういったものなのか。また、それを法律に書き込むご意思があるかどうか、こちらを伺いたいと思います。
(答)まず、政府の定義も含めて、また法律をどうしていくかも含めまして、これは今後の検討事項ですので、先ほど申し上げたとおり、速やかにそこは検討していかなきゃならないと思っています。少なくとも経済安全保障の基本理念みたいなものは、何らかの形で、法律なのかどこなのか分かりませんが、政府として示していく必要があるんだろうと思っています。
 これは党のほうで私がこれまで議論していたのは、経済安全保障というのは多岐にわたるので、簡単に言うと、国の独立、生存、そして繁栄を経済面から確保していくこと。
 これを経済安全保障という形で定義して、党の立場ではこれまで議論してきた経緯があります。なので少し先ほど申し上げましたが、単に先端技術だけを守る、技術だけを守る、これはすごい重要な話なんですけど、それだけではなくて、もっと広い視点から国民生活をどんなことがあっても守り抜ける、そういう体制をつくっていく、政策を進めていく、そういう考えが私の中にはあります。
(問)話題が変わりまして、日本学術会議についてお伺いします。
 菅政権では新会員の委員の任命を見送りました。大臣は、この菅前総理の判断をどのように評価されますでしょうか。また、学術会議側は6人の任命を求めておりますけれども、新政権においてはどのように対応されるのでしょうか。また、学術会議が長年反対しているデュアルユース、軍民両用については、大臣はどのようにお考えになるでしょうか。デュアルユースについては大臣のお考えを。
(答)まず、日本学術会議につきましては、我が国の科学者の内外に対する代表機関としまして、科学に関する重要事項の審議などの職務を独立して行う重要な機関であると認識はしています。また、学術会議が国の予算を投ずる機関として、科学の観点から社会的課題について提言をしていくなど、本来発揮すべき役割を適切に果たして、国民の皆さまに理解される存在であり続けることが重要だと考えています。
 現在の学術会議の在り方につきましては、先ほど申し上げたとおり、CSTIの有識者会議の場におきまして検討を行っていただいているところでありますけれども、これについては私の前任の井上大臣もおっしゃっておられるとおり、あらかじめ方向性を決めることなく自由なご議論をお願いしていると私自身も承知しております。
 従いまして、今日午後、井上大臣と引き継ぎ式もあるんですけれども、引き続き梶田会長とコミュニケーションを取りながら在り方の検討を進めていくとしておりまして、日本学術会議の改革に向けた取組を進めていきたいと思っております。
 デュアルユースの話につきましては、まず学術会議がデュアルユースについてどうこうという話につきましては、これは私の立場で今どうこう申し上げることではなくて、学術会議自身で、まずは一義的には考えていただくものだと思っております。
 ただ、学術会議というところを外して世の中全般として見ると、当然、先ほど経済と安全保障と融合しているということがそれそのものなんですけれども、技術というものが、これから安全保障と経済というのは民生みたいなのがあって、それが例えばGPSみたいなものはアメリカ米軍が開発して軍事技術が民生に転用されたというものですけれども、今度は逆に、例えば半導体を含めまして、それが逆に行くこともあるわけじゃないですか。
 そういう意味では、デュアルユースというのは否定しきれない現実だと思っておりまして、国として今後そこをどう捉えていくのか、そこは重要な視点だと認識をしています。
(問)経済安全保障ですけれども、先ほどおっしゃったように、財界だとか、アカデミア、様々な方から意見を聞いてというふうにおっしゃっていましたけれども。それは、例えば法案作成、あるいは政策推進に向けて、どういう形で意見を聞いていくのか。何らかの場をつくっていったりすることはお考えなのかということと、今回こういう立場になられて、政治家として最初のマイルストーンとして何を実現しようというふうにお考えなのか、お聞かせ下さい。
(答)まず後者の話から申し上げると、マイルストーンというか、これから、先ほど申し上げたとおり、党の方では私、かなり力を入れてやってきましたけれども、今度政府の立場に立って、政府も、これまで党と連携をしながら、政府なりの取組というのを進めてきています。その進捗状況などもしっかりと確認させていただいた上で、その優先順位というのは決めていかなきゃいけないと思っています。
 先ほど法案のご質問をいただいた際にも少し答えさせていただきましたが、やっぱり今、我が国の自立性の確保と優位性、ひいては不可欠性の確保、強化というところからすると、特にやっぱり重要技術の特定、保全、育成というのは重要だと思うし、基幹インフラ産業の安全性、信頼性の確保、またサプライチェーンや技術基盤の強化、強靱化、こうしたところというのは、やはりかなりスピーディーにやっていかなきゃいけないのかなと思っています。
 また、法律をつくっていく際にも、あるいは法律だけじゃなくて経済安保を進めていく際にも重要なのは、やはり政府だけが旗を振っても、やっぱりプレーヤーとしては民間企業であり研究機関といったアカデミアの方だと思います。
 非常に重要なプレーヤーだと、ステークホルダーだと思っておりまして、当然そうした方々、企業やアカデミアの方々からお声を頂く。これまでも十分政府では、いろいろ意思疎通というのはやっていただいていると思っておりますけれども、さらにこの現場の声というものは共有させていただく必要があるし、逆に、例えば民間企業やアカデミアの現場において経済安全保障に関する意識の醸成、これについても政府から、やっぱりそこは一緒に連携をしながら高めていただく必要というのもあると思っておりますので、これまで以上に省庁以外の方々とも連携をしていく必要があると思っています。
(問)経済安保に関して、戦略物資という面では、今はやはり米国、欧州も、半導体の確保であったり、国内で製造とかサプライチェーンを何とか確保しようということで、政府としてかなり大きな支援をして企業誘致であったりというものに動いているという現状があると思うのですが。
 日本として、やはり世界の動きの中でどういう戦略を持って、特にこの重要な物資、当然入ってくると思うんですが、半導体に関する取組を進めていこうと、今大臣、お考えでしょうか。
(答)ご案内のとおり、もう以前から世界的な半導体の供給不足の現象が起きています。特にこのコロナ禍になって、東南アジアなどを中心とする工場が、この稼働率が低下をしている。そういう稼動抑制が断続的に生じている中で、供給サイドの制約によって、例えば日本が今、日本経済をある意味核となって支えている自動車産業を含めて大きな影響が出ているのは、皆さまご案内のとおりかと思います。
 その中で国としてどうしていくかというのは、やはり中長期的な半導体の需給の安定に向けて、他国に匹敵する取組を進めていくこと、これを早急に進めていく必要があると思います。
 特に先端半導体の生産拠点への日本への立地というものを、しっかりと推進していく必要があると思っています。
 また、既に日本に今ある半導体の工場ってたくさんあるじゃないですか。特に日本の場合は素材ですとか製造装置が強いと言われておりますけれど。今、例えば何もしないと、もし何もしないと、そうした日本の今強みを握っている企業が、もしかすると海外にどんどん行ってしまうかもしれない。
 ご案内のとおり、1980年代は半導体の世界のシェアの半分を占めていた日本ですけれども、今、足元では、恐らくもう1割を切っている。このままいったら本当になくなっちゃうんじゃないかという、そういう危機感をやっぱり共有しなければいけないと思っていて。じゃ、どうするかというところは、やはり今少し出ましたけれども、サプライチェーンの多元化、強靱化というものに取り組んでいく必要があると思います。
 また、やはり政府としても、民間企業が、じゃ、日本で頑張ってやろう、もう一回日本の半導体産業の再生に向けて頑張ってみようじゃないかという、そういう国としての具体的なメッセージというものを私は出していく必要があるんじゃないかなと個人的には思っています。
 もう既に経済産業省が、今年の夏でしたか、春から夏にかけて半導体戦略、これは一応経産省が多分クレジットだったと思うんですけれども、出していると思うんですけれども、それにのっとって今やっていただいていると思うし、それは今、萩生田経産大臣の下でこれから強力に進めていかれると思いますけれども、私としては、今申し上げたような認識をしっかりと共有をさせていただいて、経産省始め関係省庁とも連携をして、政府一体となって、この半導体産業の再生、復活に向けて力を尽くしていきたいなと考えております。
(問)経済安保について、国際連携と国際情勢の考え方について伺います。国際連携と、協調と、あと、それに追随の難しさ等には言及されていましたが、先日のQuadのように有志国で連携するという動きも今活発になっていると思います。こうしたアメリカですとかオーストラリア、インド等を含めた有志国の経済安保における連携の重要性や意義についてどのようにお考えなのかということと、そうした国際会議ですとか、何らかの対話に大臣自身がどのように関わっていこうとお考えなのか、併せて教えてください。
(答)まず、前半の有志国との連携につきましては、これも冒頭少し言及させていただいたとおり、これは極めて重要だと思っています。Quadもそうですし、先ほど冒頭で私が申し上げたのは、価値観を、基本的な価値を共有する、あるいはルールに基づいた国際秩序の下で、そうした同志国との連携というのは極めて重要だと申し上げたつもりです。
 なので、今お話しされた、このQuad、この連携というものも経済安保上非常に重要だし、日本としても積極的に関与していく必要があると思っています。だからこそ、菅前総理が先般アメリカに行って、このQuadの首脳と直接意見交換をされた。そこは非常に大きな意義があったと思っております。
 私が申し上げたかったのは、協調というのは必ずやっていかなきゃいけない。その一方で、同時に、じゃ、日本として本当にどうするのか。弱みを解消して強みをどうやって磨いていくのか。それというのを同時並行でやっていかなきゃいけないということで申し上げたつもりです。
 後半の、私自身が国際会議にどうやって関与していくかというところは、まず、今回新設されたポストということもありまして、岸田総理からは、しっかりと横串を刺すような形で、また調整役としてしっかりと頑張って推進してほしいということを言われていますけれども、これはまず、海外にどうこうというよりも、まず国内の政府内部で、これはかなりオーバーラップしてくるので、連携を強化するという以外に多分ないと思うんですけれども、そこをもう少ししっかりと精査をした上でないと、今のご質問には、ちょっと今の時点ではなかなか答えにくいかなと思っております。
(問)関連してですけれども、経済安保で中国とはどういうふうに向き合っていくのか。中国は同盟国や有志国ではないと思うんですけれども、それについてどう考えられるか。併せて、関連で、科学技術の分野でオープンサイエンスという考え方がありますけれども、これについては大臣自身はどう考えていらっしゃるのか、それをお願いできますでしょうか。
(答)まず、経済安保の重要性とか基本的なスタンスというのは、国際協調とかという意味で言いますと、やはり基本的な価値やルールに基づく国際秩序の下で、同志国としっかりと連携をしていく、この関係というものも拡大しつつも、また深みを増していく、これが基本にあると思っていまして。その中で同時に日本としての自律性、脆弱性を解消し、優位性、不可欠性を強化していくということだと思っていまして、特定の国を念頭に置いたものではないということはご理解をいただきたいと思います。
 さはさりながら、中国との関係というのは日本にとって極めて重要なものだと認識をしております。日中間には当然様々な課題はございますが、中国との安定したこの二国間の関係というのは、日中両国のみならず地域及び国際社会の平和と反映のために重要だと私は認識をしています。
 また、経済大国となった中国が国際社会のルールにのっとって大国にふさわしい責任をしっかりと果たしていただくということが、日本経済、世界経済の更なる発展にとって重要だと同時に認識をしています。
 そこは、日中関係については、いろんなチャネルで、それは政府の方もいろんなチャネルがあるし、また民間の方は民間の方でいろいろやっていると思いますので、そこはしっかりとコミュニケーションを取ってやっていくことだろうと思います。
 あとは、日本企業のやっぱり一般論として申し上げると、企業活動というのは原則自由ですから、そこは自由なんだと思います。ただし、別に中国に限った話じゃなく一般論として申し上げると、例えばデータの取扱いの在り方を含めて、各国によってやっぱり法制度とか、いろいろ考え方は違うと思うんです。当然企業の皆さま、例えばそういった日本とは違う法制度の国でビジネスをするときには、やっぱりそうしたことも当然念頭に置いてビジネスをやっていただくのが大切なのかなと思っています。
 後半の2問目のオープンサイエンス、オープンイノベーションのことについては、当然そうだと思います。やっぱり今、一国の中だけで何かイノベーション、それは生まれるかもしれないですけれども、やっぱり先ほどのお話にもありましたけれども、日本の例えば論文数で見ても、どんどん今ランキングが低下してきている中で、一国の中だけで、あるいは一企業の中だけでそうしたイノベーションというものを生み出していくというよりも、国と国をまたいだ連携ですとか、あるいは企業と企業をまたいだ連携、このオープンイノベーションというのは、当然大前提としてやっぱりあるべきものだと思っています。ただし、経済安保という観点からすると、先ほど申し上げた技術の流出保全とか、そういう点からすると、やはり、じゃ、もう全く自由にどうぞというわけではなくて、やっぱり国益の観点から一定のルールづくりというのは必要なのかなと認識しています。
(問)医療分野の経済安保について質問させてください。
 新型コロナウイルスの流行によって、医療物資やマスク、あと感染症治療薬の原薬なんかは中国に依存しているという状況が明らかになったと思います。これらの医療分野の点は、国民が経済安保の重要性を認識した前例だと思うんですけれども。
 これらの物資を日本で今後生産していくという、回帰させていく上で、一定程度医療機器メーカーや製薬企業に生産の体制を国内にしてもらうために、ある程度の制約というものを課していかないといけないと思うんですが、これらの制約について、法的に何かしら裏付けるために、新しい法律にこのような企業の行動を制限するような事項などを盛り込む必要があるでしょうか。
(答)すみません。質問に対して質問するというのもちょっとありなのか、私、全然ルールが分からないんですが。例えば制約を掛けるというと、例えば具体的に、工場を出すなとか、そういう話ですか。
(問)例えば、工場をあまり中国であるとか、そういうところにつくるなとか、あるいは、原薬だとかの比率をなるべく国内の方に割合を向けてくれとか、そういうことを法的に何かしら強制するようなことというのはあるんでしょうか。
(答)いや、これは先ほど申し上げたとおり、民間の企業活動というのは原則は自由だと思うんですよ。それぞれの企業の経営判断に基づいてやるべきものだと思っています。ただ一方で、今回露呈された医療面での脆弱性というのは当然あると思います。今言ったような医療物資、その原薬も含めてですね。そういうところについては、今、政府のほうでも、全てを、じゃ、先ほど申し上げたとおり日本の国内で何か作ればいいかというと、多分そういう問題ではなくて、いろんなリスクシナリオを想定した上で、国民の皆さまの命を守れるためには何が戦略的に本当に必要なのか。これは優先順位も付ける必要があると思うし、そこをしっかりと戦略的に見極めた上で、その政策というのをつくっていかなきゃいけないと思います。
 その政策をつくった上で、でも、それでも、例えば中国だけじゃない、他の国に工場を出すなとか、それは多分国がこの自由経済の中でやるべき話じゃないと思っていて。ただ一方で、国としては国民の皆さんの命を守らなきゃいけないというのがありますから、先ほどのサプライチェーンの話と同じで、国内の生産基盤というのは強化しなきゃいけない。だとすると、企業活動を、これをやっちゃいけないという何か制約を掛けるというよりも、国として、例えば、やり方としてはインセンティブを出して、国内にその製造拠点をつくりやすくする措置とか、そういったものというのは、やっぱり幅広くいろんなオプションを考えていけばいいのかなと思っています。
(問)科学技術の人材育成について考えてまいりたいと思います。
 確かに、この科学技術のイノベーションを興すには、人材なくしてイノベーションはできないと思うんですが。実際日本では論文が減っているという現状と、さらに博士人材というのもどんどん減っていて、イノベーションの種を興す人材供給量が途絶えつつあります。博士号を取っても、大学ではポストがなかったり、ほとんど企業であまり博士人材が重用されないという現実があります。大臣として、どうやって人材育成をしていくのか、考えを教えてください。
(答)これは多分文科省とも絡む話だと思いますけれども、今、おっしゃったとおり、今、手元にもデータがあるんですけれども、主要各国の博士号の取得者の推移というのを見たときに、アメリカでは今9.2万人、これが最多ということで、その後、中国が6.1万人、ドイツ2.8万人と続いていて、日本は僅か1.5万人ということです。
 先ほどの質問にもかぶりますけれども、このままこの傾向が続いたときに、日本の未来って本当に明るいものなのかといえば、私はそうは思えないし、先ほど申し上げた優越性、技術優越性とか優位性とか、あるいは、ひいては不可欠性ということを考えても、やっぱりこうした博士課程の方がどんどん増えてきていただかないと、そうした優位性とか不可欠性の獲得というのは難しいんだろうなと思います。
 その意味で、先ほども少し触れさせていただきましたけれども、だからこそ10兆円ファンドのような、これは私はどう言っていいか分からないんですけれども、かなり大胆な政策だと思います。これは政治主導でかなりやったものだと認識をしますけれども、こうした大学ファンドというものをとにかくやると決めた以上は、これはもう、先ほど申し上げたように、博士課程の方を含めた若手の研究者の育成のためにやるものでもあるんですけれども、決めた以上は、これはやっぱり実現していかなきゃいけないと思っています。別にこれだけが全ての解だとは思いませんが、こうして思い切った政策をやっている以上は、まずこれをしっかりとやり抜く。
 そうしたことによって、やっぱり若手の研究者の方からは、なかなか研究資金が少ないとか取れないとか、取ろうとすると短期的に何か成果を出さなきゃいけないとか、そういうものも研究として必要だとは思うけれども、本当に中長期的に何が起こるか分からない世の中だと思いますので、本当にいろんな角度から、研究というのはしていただいた方がいいと思っていますので、まず資金面で国ができるということはまだあると思っておりますから、そこをまずしっかりとやっていきたいと思います。
(問)新設のポストですので、国民としては何をなさるための大臣なのか一番知りたいところです。経済安全保障については、甘利自民党幹事長がテレビ番組の「日曜報道THE PRIME」で、中国とのデカップリングをどう戦略的に図っていくかということがまさに経済安全保障であるとおっしゃっています。経済安全保障大臣とは、この甘利幹事長の言われた中国とのデカップリングを主に行う大臣であると考えてよろしいのでしょうか。また、中国とのデカップリングをなぜ、どういう理由があって進める必要があるとお考えでしょうか。
 また、デカップリングが必要だと言われましても、民間企業にとっては大変重要な問題で、工場を中国に持っている企業もあり、生産を依頼している企業もあり、中国という最大のマーケットを輸出先として当てにして生産を行っている企業もあり、トヨタも代名詞と言えるカローラを中国で生産しています。デカップリングされたとき、それら民間企業は生産拠点なりサプライチェーンを寸断され、さらに中国のマーケットも失う可能性もあります。
 また、デカップリングは果たして成功するでしょうか。成功事例として、米国ではトランプ前大統領が中国に対しデカップリング宣言をし、アップル社のMacBook Pro、最上級機種の生産拠点を中国からアメリカ本国に移させましたけれども、アップル社が、コストが高く作れば作るだけ赤字が出る事態になり、トランプ氏在任中に生産拠点を中国に戻しました。トランプ前大統領も、最も反中的なポンペオ前国務長官も、これに対し何も言っていません。デカップリングは失敗に終わったわけです。
 このように、中国に対してのデカップリングは米国の失敗を後追いする周回遅れの政策であると思われます。日本はそれでもあえて中国に対しデカップリング戦略を取ろうとお考えなのはなぜでしょうか。よろしくお願いいたします。
(答)最後のお話を伺いますと、日本がデカップリング戦略を取るということが何か前提のようなご質問になっているんですけれども、私の認識は若干違っておりまして。まずテレビ番組で甘利自民党幹事長がどういう具体的な発言をされたのかというのは、私、ちょっと詳細は存じ上げないので、そこのもし真意が、本当にそのようなことをおっしゃっているとすれば、甘利幹事長にお聞きをいただきたいと思っています。
 私は、中国との関係とか、あとは企業活動というのは、今この記者会見の質疑応答の中で大体お話しさせていただいたとおりなので、あまり繰り返しはしたくないんですけれども。
 別の言い方からすると、日本と中国というのは、世界第2位、第3位の経済大国なわけです。このまま例えば経済成長が推移していったときに、比較的遠くないうちに中国が世界第一の経済大国になるとの、そういう見方もあるという状況の中で、やっぱり日中の両国間の貿易や投資のつながりというのは極めて深いと思っています。その中でデカップリング論というのが何を指しているのか、ちょっと私、具体的には分かりませんが、本当に完全にデカップルするかというのは、デカップルすればいいというのは、ちょっと極論だと思っています。全て本当にデカップルするというのはですね。そういう極論じゃなくて、何か大切なのは、連携や依存をしてもいい分野と、そうじゃない分野というものを戦略的に見極めていく、このことこそが私は重要だと思っています。
 なので、私自身は日中の完全な何かデカップリングが必要だとは思っていません。ただ、企業の方に対しては、先ほど申し上げたとおり、別に中国に限らず、他の国と今グローバルでビジネスする時代ですから、当然それはもう企業の自由なんですけれども、法制度になるといろいろ違いがある。どこの国も結構違ったりするんですけれども、そういうやっぱり違いがある場合には、やっぱりデータの扱いとか、いろいろあるじゃないですか。最近やっぱり極めていろいろ考えなきゃいけない部分というのは、経済安全保障上の論点というのがありますので、そういったものを、政府もそうですし、企業もそうですし、アカデミアの方もそうなんですけれども、みんなそういう視点を共有しながら行動するということが重要なんだろうと私は思っています。
(問)学術会議についてお聞きします。先ほどの質問でもありましたが、明確な回答がなかったので、6人の任命の拒否についてまたお伺いさせてください。この件お願いします。
(答)このことにつきましては、先ほどの繰り返しになりますけれども、学術会議自体は、我が国の科学者の内外に対する代表機関として非常に重要な組織であると認識をしております。また、学術会議が国の予算を投ずる機関として、科学の観点から社会的課題について提言をしていただくなど、本来発揮すべき役割を適切に果たして、国民の皆さまに理解される存在であり続けるということが重要だと考えております。
 私からのコメントというのは、もうそれ以上でもそれ以下でもなくて、重要なのは、先ほど申し上げたとおり、未来志向で、これまで梶田会長をはじめ井上前大臣の時代からやってきていただいていると承知をしておりますので、それを前向きに進めていくことが私自身の職責なのかなと思っております。
(問)先ほど大臣、「弱み」と「強み」の把握が大事だというふうにおっしゃいましたけれども、弱みについては把握しやすい部分があるとおっしゃいましたが、現在、大臣が経済安保分野で日本が出遅れていると感じている分野はどこでしょうか。
 そこの弱みと強みの把握について、難しい部分もあるとおっしゃっていましたが、どのように取り組んでいく考えかお聞かせください。まず最初に大臣に就任して何から手をつけるかという部分も教えてください。お願いします。
(答)弱みというのは、多分日本に限らずどの国でもたくさんあるので、挙げれば多分切りがないんでしょうけれども。卑近な例で言えば、やはり今回のコロナ禍の対応においてデジタルの遅れというのが露呈しましたし、サプライチェーンの弱さというものも露呈した。例えば、デジタルの遅れが露呈したので、この9月からデジタル庁が立ち上がって、その弱みを解消に向けてやっていると認識をしています。
 弱みと強みを今後どうしていくかというところですけれども、強みの方は先ほど申し上げたように、なかなか、じゃ、何で本当に勝負するのかというのは相当結構難しい話なので、これから議論をしっかり続けていかなきゃいけないと思います。
 弱みの方は、これはちょっと自民党の方で、新国際秩序創造戦略本部の事務局長としてやってきたのは、例えば党の中で、先ほど申し上げた情報通信とかエネルギーとか、5つぐらい基幹インフラ産業についていろんなリスクシナリオを想定した上で、本当に対応できるのか、できないのか。そうしたことを本当に粗い分析ですけれどもやってきました。
 そういう中で、政府の皆さんにも協力していただく部分はありましたけれども、こうした取組というのは各省庁、各産業において、しっかりやっていただく必要が私はあるんだろうと思っています。
 そのやり方というのは、所管する各省庁においていろいろあるでしょうけれども、そこの作業というのは続けていかなきゃいけないと思っています。
 取り組みたいということは、先ほど申し上げたとおりなんですけれども、そうですね、先ほどの繰り返しになっちゃうんですけれども、もうたくさんやるべきことってあると思っているんですが、特に重要技術の特定、そして保全、育成、これがまず一つ。また、基幹インフラ産業の安全性、そして信頼性の確保、そしてサプライチェーン、技術基盤の強靱化、こうしたところはやはりかなり急ぐ必要があるかなと思っています。

(以上)