山際内閣府特命担当大臣記者会見要旨 令和3年10月15日

(令和3年10月15日(金) 11:28~11:52  於:中央合同庁舎8号館1階S108会見室)

1.発言要旨

 皆さん、おはようございます。
 今朝の閣議におきまして、「成長と分配の好循環」と「コロナ後の新しい社会の開拓」、これをコンセプトといたしました「新しい資本主義」を実現していくため、総理を本部長、官房長官と、新しい資本主義担当大臣である私を副本部長とし、全閣僚から構成される「新しい資本主義実現本部」を設置することを決定いたしました。
 その後、この実現本部を持ち回りによって開催し、「新しい資本主義」に向けたビジョンを示し、その具体化を進めるため、実現本部の下に総理を議長、官房長官と私を副議長とし、財務大臣、厚生労働大臣及び経済産業大臣と、総理が指名する有識者から構成される「新しい資本主義実現会議」を設置することを決定いたしました。
 有識者のお名前は、お手元の名簿にある15名であり、経済界を代表する経営者の方々や、アカデミア、AIやデジタルを用いてイノベーションを起こす若手経営者、現場で汗をかいておられる中小企業経営者や労働界の方など、委員の半分近くとなる7名の女性を含む老壮青からなる多様なバックグラウンドをお持ちの方々に御参加いただきます。
 具体的に御紹介いたしますと、日本総合研究所理事長の翁百合さんは、長くエコノミストとして活躍され、コロナ後の新しい社会について高い見識をお持ちの方です。
 Zホールディングス社長の川邊健太郎さんは、黎明期のデジタル業界で起業を経験され、デジタルに高い御見識をお持ちの方です。
 経済同友会代表幹事の櫻田謙悟さんは、長く日本の損害保険業界をけん引された経済会を代表する経営者です。
 塩野義製薬副社長の澤田拓子さんは、製薬におけるイノベーションの現場に身を置かれ、現在は関西経済界を中心に活躍する経営者です。
 シブサワ・アンド・カンパニーの渋澤健さんは、金融業界での経験に加え、「論語と算盤」を基礎に資本主義における持続性・包摂性の重要性を説く経営者です。
 ダイヤ精機社長の諏訪貴子さんは、エンジニアとしての勤務の後、主婦から町工場の社長という大きな転身を経験され、テレビドラマのモデルとなった方です。
 経団連会長の十倉雅和さんは、長く日本の化学業界、製造業に貢献された経済界を代表する経営者。
 経営共創基盤会長の冨山和彦さんは、産業再生機構などで不振企業の再建に辣腕を振るわれた企業再生を専門とする経営コンサルタント。
 シナモン社長の平野未来さんは、大学在学中や外国で起業された経験をお持ちで、現在はAIを活用したビジネスを展開する若手経営者です。
 東京大学教授の松尾豊さんは、AIを専門分野とする研究者であると同時に、大学発ベンチャーのインキュベーションにも取り組んでおられる方です。
 日本商工会議所会頭の三村明夫さんは、長く日本の製造業をけん引され、現在は全国の中小企業の意見を代表する方です。
 MPower Partnersの村上由美子さんは、外資系金融機関や国際機関での勤務経験をお持ちであり、現在はESG投資ファンドの経営に携わられている方です。
 READYFORのCEOの米良はるかさんは、クラウドファンディングサービスを提供する企業を立ち上げられた若手経営者です。
 東京大学教授の柳川範之さんは、外国において学校に通わず、独学で勉強された経験をお持ちで、現在は若者活躍と人材育成の重要性を指摘する経済学者です。
 連合会長の芳野友子さんは、労働界において働く女性の立場から活動され、現在は全国の労働者の意見を代表する方でございます。
 このように、幅広い御見識をお持ちの方にメンバーとなっていただき、「新しい資本主義」を議論する場にふさわしい方々にお集まりいただけたと考えております。有意義な議論が行われることを期待してございます。
 また、初会合については、なるべく早く、できれば10月中にも開催したいと考えており、決まり次第お知らせいたします。
 また、本日付で「新しい資本主義実現本部事務局」も設置いたしました。事務局長は、木原誠二内閣官房副長官が務めることになりました。
 以上が「新しい資本主義」についてです。
 次はコロナの話でございます。先ほど新型コロナウイルス感染症対策本部が開催されまして、岸田総理より、「次の感染拡大に向けた安心確保のための取り組みの全体像」の骨格として検討すべき事項について、改めて御指示を頂きました。
 政府といたしましては今般の御指示を踏まえ、医療提供体制の強化、ワクチン接種の推進や追加接種、治療薬の実用化と確保、「ワクチン・検査パッケージ」等の活用による行動制限の緩和の具体的内容等について早急に検討いたします。
 後藤厚生労働大臣や堀内ワクチン接種推進担当大臣をはじめ、関係大臣と協力の上、11月の早期に全体像を取りまとめてお示しいたします。国民の皆さまに納得感のある説明を行うとともに、冬の感染拡大に備えて、最悪の事態を想定した危機管理を行い、対策に万全を期すよう引き続き全力で取り組んでまいります。
 さらに、月例経済報告等に関する関係閣僚会議の概要を報告いたします。
 景気の現状についての総括判断は、「景気は新型コロナウイルス感染症の影響により依然として厳しい状況にある中、持ち直しの動きも続いているものの、そのテンポが弱まっている」とし、先月の判断を維持しております。
 先行きについては、感染対策を徹底し、ワクチン接種を促進する中で、各種政策の効果や海外経済の改善もあって景気が持ち直していくことが期待されます。ただし、サプライチェーンを通じた影響による下振れリスクに十分注意する必要があります。また、国内外の感染症の動向や、金融資本市場の変動等の影響を注視する必要があるとしております。
 この他、本日の会議の詳細については、後ほど事務方から御説明いたします。私からは以上です。

2.質疑応答

(問)冒頭、発言がありましたが、「新しい資本主義実現会議」についてお伺いします。間もなく衆院選が告示されますが、この会議の初回会合が月内にもということですが、中間報告の時期などについて、一連のスケジュールを現時点ではどのように考えていらっしゃいますか。また、議題は多岐にわたると思うのですが、例えば賃上げ税制などもありますが、具体的にはどのような点までについて有識者の皆さん方と議論を進めたいとお考えなのか、以上2点、よろしくお願いします。
(答)初回会合は今月中にやりたいと思います。やっと枠組みが決まりましたので進めたいと思います。その中身については、まださすがに予断をもって申し上げられる状況にはございませんが、今御指摘いただいたように、例えば、税に関わるものという話になりますと、当然、税の議論に間に合うようにやっていかなければいけないということになりますから、当然、それは年内でなければ来年度の税制に反映させることはできませんので、そのスケジュール感だと思っていただいて結構です。
 また、おそらく、来年の骨太方針には、今回の成果物というものを全て乗せ込むぐらいのことが最終的には望まれると思っております。しかし、そこまで何もやらないというわけでは当然ございませんので、中間報告というような形で報告できるもの、あるいは成果として、これをやろうというのが決まったものに関しては、まだ全く予断をもって決めているわけではありませんが、決まったものに関して適宜適切に出していくと、これは必要だと思っております。まずは総理から経済対策という話が出ておりますので、経済対策との連携を含めながら早期に進めたいと思っています。
(問)私、15人中7人女性というのは、やはり快挙なのではないかと。私がこれを見ていても、女性の中で知っている人は3人ぐらいです。ほとんど、多分、政府の審議会をやっていたのも、翁さんぐらいは有名ですけど、この人選を受けまして、この点について、大臣はどれぐらい面識があって、15人中7人女性というのは快挙だと思うのですが、その辺のことを伺いたいです。
(答)もちろん、私が個人的にこれまで様々な政策・議論をする時に関わりのあった方もいらっしゃいますし、それ以外に様々な方から御推挙いただいた方もこの中に入っております。
 我々が心掛けたことは、総理がおっしゃっているように、多様な意見をきちんと聞こうと、その上で「新しい資本主義」を作っていこうということでした。ですから、15人というのは今までの政府の会議としては少し多い方かもしれませんが、老壮青、そしてジェンダーのこと、男女ということも含めて選んできた結果がこうなってきていると思っていただければと思います。
 一例を少しお話ししますと、ちょっと違った切り口でどういうことを考えたかということです。
 第一に、資本主義論、あるいは資本市場の機能について御見識をお持ちの方という切り口です。これは、渋澤健さんに加えまして、翁百合さん、あるいは冨山和彦さんがこの分野で見識をお持ちだということです。
 さらに、第二に、分配面についての議論を行うために、労働者の代表として芳野友子連合会長に入っていただいたということ。
 それから、第三に、分配の問題は、労働者だけではなくて、中小企業や下請企業との取引関係の改善も非常に重要であり、総理は大企業と中小企業との共存共栄を目指すと言われていますから、典型的な産業である自動車産業で協力企業として経営されている諏訪貴子さんに入っていただいたということでございます。
 また、第四に、総理がデジタルの力による地域の活性化と進めると言われています。デジタル分野の研究者である松尾豊さんと、実際にデジタル分野で企業経営の前線に立っておられるヤフーの持株会社の社長の川邊健太郎さんに入っていただいた。
 第五に、成長戦略の鍵はスタートアップが生まれる環境整備であり、総理はイノベーションの担い手であるスタートアップの徹底支援を通じて新たなビジネス産業の創出を進めると言及されておりますので、平野未来さん、米良はるかさんという2人のベンチャー起業家に入っていただきました。平野さんは、事業を実施する側です。米良はるかさんは、その事業を資金提供という形でサポートする側、クラウドファンディングをやっていらっしゃる方ということです。
 そして第六に、日本の中での閉じた議論になってはいけないということもありまして、海外で活躍した経験のある村上由美子さん。この方は、元OECDの東京センター長をお務めでございますので、国際的な視点を入れてもらうという形です。
 そして第七に、「新しい資本主義」は、事業者団体にも、もちろんしっかり入って議論していただかなければいけないため、経団連会長の十倉さん、日商会頭の三村さん、同友会代表幹事の櫻田さん、そして、関西経済連合会の澤田さんに入っていただきました。
 最後に、マクロ経済について幅広い御見識をお持ちの柳川さんに入っていただいたということでございまして、老壮青、男女ということもありますが、非常に幅広い分野において、バランス良く、いろんな見識をお持ちの方に今回、入っていただいたと。その結果として、女性が7人になったということでございます。
(問)事務方はどなたがやるのか教えてください。
(答)事務局ということですか。
(問)いや、要するに役人です。
(答)事務局長は木原さんにお願いすることにしたのですが、もうお二方、栗生さんと磯﨑さん、同じ内閣官房副長官ですが、これに事務局長代行という形で入っていただこうと思っております。
 これは全部詰め切っているわけではないのですが、事務局が非常に大事なので、しっかりとした本部事務局をつくります。その人選が全部終わっているわけではないのですが、そこには内閣官房からも、内閣府からも、各省庁からもいろんな方に入っていただこうとしておりまして、その作業が終われば速やかに御報告したいと思います。
(問)外国為替市場で円安ドル高が進んでいて、2018年12月以来の水準に達しております。為替の動きについての大臣の受け止めと、あと、円安に伴う輸入コスト増が日本経済にもたらす影響への見解もお願いいたします。
(答)この為替に関しては、私の立場で何か発したら、これは大変なことになりますので、申し訳ないですが、この為替についての言及はちょっと避けたいと思います。従って、それが日本経済にどのように影響があるかということも、同じ趣旨で答弁は差し控えさせていただきたいと思います。すみません。
(問)今の質問に関連してなんですが、円安の背景にある原油や天然ガスなどエネルギー価格の高騰について、その高騰が日本経済の景気に与える、先行きに与える影響についてお考えをお聞かせください。
(答)エネルギー価格が高騰するということが日本の経済にどのような影響があるか。影響があるということは当然だと思います。しかし、どのような影響があるかということも、これまた私が言及しますと、少なからず経済に影響を与えると思いますので、影響があるのは間違いないですが、どのようなというところに関しては、ちょっと言及を控えさせていただきたいと思います。
(問)話が「新しい資本主義」の方に戻りまして。担当大臣としての御見解を改めてお聞きしたいのですが、これまでのいわゆる古い資本主義のどういった課題、どういったところを修正して、「新しい資本主義」ではどのような社会を作っていきたい、目指されたいとお考えでしょうか。
(答)古い資本主義とは表現もしないし、思ってもいないのですが、総理がおっしゃっているのは、1980年代ぐらいから出始めた新自由主義の流れ、よりマーケット重視だったという表現で総理は表現されていると思います。
 もちろん、それは大切なことだと思います。一方で、会社を例にとって言えば、会社を形づくっている要素って株主だけじゃないですよねと。マーケットだけではないですよね。これまた総理がおっしゃっていることで、様々なステイクホルダーがいらっしゃる中で、その様々なステイクホルダー全体を見て、企業としてプラスになるような、ひいては社会としてプラスになるような、そういう在り方が「新しい資本主義」なのではないかと総理はおっしゃっていますから、私はその理解でおります。
 ですから、「新しい資本主義」の中では、「成長と分配の好循環」を目指すという話をされていまして、まだ中身に関しては、今日そうしたことが決定されて、これからその会議体で議論は進められるものと思いますが、総理のお言葉を借りながら、今申し上げたようなことをコンセプトにしながら議論を進めていくものだと、このように思っています。
(問)実現会議のことをお伺いしたいのですが。先ほど大臣は、来年の骨太方針に向けてのスケジュールとか、骨太方針にも会議の中の議論を持ち込みたいというお話だったと思うのですけれども、会議のメンバーの中に経済財政諮問会議の民間委員になられている方がいらっしゃると思うのですが、経済財政諮問会議とこの会議の役割分担というか、どういう役割がそれぞれあるとお考えでいらっしゃいますか。
(答)経済財政諮問会議については、これまでもそうであったように、マクロ経済と財政の運営は経済財政諮問会議でしっかり見ていかなくてはいけないことになりますので、骨太方針を作っていくのも経済財政諮問会議になります。あるいは、税と予算の話、税は財務省ですが、それに誘発されて予算をどうしていくかということも、当然経済財政諮問会議でやらなくてはいけないことです。経済財政諮問会議としてしっかりやらなくてはいけない機能は、岸田政権においても今までと同様に維持されると理解していただければと思います。
 一方で、「新しい資本主義実現会議」では、これからの社会の在り方をきちんとお示しします。しかし、示しただけでは実現されないので、当然、国が動こうとすれば、裏打ちをする予算、あるいは財政との絡みが出てまいります。それは、経済財政諮問会議の方にそれを裏打ちするような形の議論をしてもらうということになると思います。そういう整理になると思っていただければと思います。
(問)本日のテーマとは別件なのですが、1つ御質問をさせていただきます。岸田総理大臣は10月8日の所信表明演説で、司令塔機能の強化や人流抑制、医療資源確保のための法改正、国産ワクチンや治療薬の開発など、危機管理を抜本的に強化すると述べられました。12日に発表された衆院選の自民党政権公約もそれと同様な表現をされていましたが、就任前の総裁選で掲げた健康危機管理庁の創設はなくなっていました。この点について、新型コロナ対策健康危機管理担当として、山際大臣はどうお考えでしょうか。なぜ総裁選公約の健康危機管理庁の創設がなくなってしまったのでしょうか。大臣御自身はその代役だとお考えでしょうか、御見解をお聞かせください。
(答)ありがとうございます。健康危機管理の重要性に関して、総理が考え方を変えられたということはないと思います。ですから、当然、その司令塔の機能も強化しなくてはいけませんし、これから第6波が来るかもしれない、また、あるいは新しい感染症がさらに我々を襲うかもしれない。そういうときに、どのように健康危機管理をしていくかということは、これは重要な課題だという認識の下に進んでいるとご理解ください。
 その上で、まずは今回のコロナウイルス感染症に関して全体像をお示しするということをやります。その全体像の中に、危機を管理するためにはどうすればいいかということが散りばめられます。それを、言ってみれば、形としてどういう体制に結びつけるかという議論になりますので、まずはこの全体像が見えてくる中で、それを本当に健康危機管理庁というような新しい行政の組織とするべきなのか、今あるものの中の何かを拡充するような形になるのか、あるいは今あるものの中の連携をしっかりできるような体制をとり、そこに司令塔がしっかりいるというような形になるのか、まだ予断をもって御説明申し上げられるような状況にないです。
 ですから、岸田総理が思っていらっしゃる問題意識は何一つ変わってはいないですが、要は、危機管理ができなくてはいけないのだという問題意識でいらっしゃいますから、危機管理を行っていくためにはどういう体制が一番いいのかということは、まずはこのコロナの全体像をみんなで示す中からでないと、その知恵がなければ次に進めないと、こういうことだと御理解いただければと思います。
 どうもありがとうございました。

(以上)