井上内閣府特命担当大臣記者会見要旨 令和3年10月4日

(令和3年10月4日(月) 9:58~10:36  於:中央合同庁舎第4号館2階共用220会議室)

1.発言要旨


 先ほどの閣議におきまして辞表が取りまとめられました。昨年9月16日に国務大臣を拝命し、約1年間、担当する各政策に全力で取り組みました。この間、お世話になった全ての皆様に深く感謝を申し上げます。
 この場をお借りして、ちょっと長くなりますけれども、退任に当たっての所感を申し述べたいと思います。
 まず、大阪・関西万博につきましては、初代の国際博覧会担当大臣として、大阪・関西万博の成功に向け、オールジャパン体制を構築し、着実に準備を進めました。万博の成功には、まずは地元の皆様の協力が不可欠です。このため、就任直後から毎週のように大阪・関西に足を運び、現場を肌で感じ、そして地元の皆様から直接お話を伺ってまいりました。
 地元の皆様からの声や要望も踏まえ、昨年12月には政府としての「基本方針」を、そして本年8月には「インフラ整備計画」を策定しました。また、万博のコンセプトである「未来社会の実験場」の具体化に向けて、規制改革など政府として必要な措置を実施していくためのアクションプランを、年内に策定すべく取り組んでいるところです。様々な関係者の皆様の御協力を得ながら、万博の開催に向けて一丸となって推進していく道筋を付けることができました。
 各国の招請活動にも先頭に立って取り組みました。昨年12月のBIE総会での登録承認、そして私から各国に対する成功に向けた決意表明を皮切りに、各国閣僚とのウェブ会談、駐日大使への働きかけ、さらには海外に直接出向いての働きかけなど、これまで精力的に取り組んでまいりました。目標の150カ国・25機関へは道半ばではありますが、コロナ禍の厳しい状況の中でありながら、57カ国、5国際機関から参加表明を得るなど、着実に進展することができました。
 これまで私自身が広告塔となって全国的な機運醸成にも取り組んできました。万博の開催までいよいよ3年半余りとなり、今後ますます国民的な理解を得ながら機運を盛り上げていくことが、万博の成功に不可欠です。大阪・関西万博は、東京オリンピック・パラリンピックに続く国を挙げた一大イベントです。その成功に向けて私自身、引き続き様々な形で支援したいと思っています。
 科学技術・イノベーションは国力の源泉であり、国際的な覇権争いの激しい分野です。国際動向に対応し、世界に伍する研究環境を実現するため、様々な取組を進めてまいりました。
 まず、Society5.0の実現に向け、今後5年間の政府の研究開発投資を30兆円、官民の研究開発費の総額を120兆円とする思い切った目標を掲げた「第6期科学技術・イノベーション基本計画」を本年3月に策定しました。世界トップレベルの研究大学実現に向け、10兆円規模の大学ファンド創設に取り組みました。このファンドは今までにない資金規模・手法により、我が国の研究開発におけるゲームチェンジャーとなるものです。今後、早急に10兆円規模を実現するとともに、地域の大学の機能強化を進めることで、我が国の大学全体の研究力を充実させていただきたいと思います。
 我が国の経済安全保障の確保・強化にも力を入れました。我が国として確保すべき重要技術に関する研究開発を重点的に行う方向性を示しました。また、研究の健全性・公正性を自律的に確保するため、研究インテグリティの確保に係る対応方針を策定しました。
 原子力政策について、本年3月に原子力立地地域における防災インフラ整備への支援継続を規定した原子力立地地域特措法改正を行いました。
 この他、野心的で大胆な目標を掲げるムーンショット型研究開発制度について、台風や豪雨の制御など、新たな目標を掲げたほか、AI、バイオ、量子、マテリアル等の最先端の最重要技術分野の戦略強化を進めました。
 また、本年8月のイタリアでのG20研究担当大臣会合をはじめとして、国際協力関係の構築、分かりやすい情報発信にも取り組みました。
 宇宙は安全保障や経済社会において、その役割が大きくなっており、ますますその重要性が増しています。そうした中で、宇宙基本計画を実現するため、私が先頭に立って政府全体の宇宙関係予算の大幅な増額を達成しました。過去10年かけて伸ばしてきた額を上回る増額を1年で実現したことは、宇宙政策として大きな前進でした。
 昨年12月には、小惑星探査機「はやぶさ2」が、「小惑星リュウグウ」からのサンプルリターンに成功しました。「はやぶさ2チーム」の研究者から報告を受け、今後とも我が国の高い技術力を守り、育てていくことの重要性を強く認識しました。
 昨年10月には、宇宙探査・利用を行う際の諸原則について、各国の共通認識を示す「アルテミス合意」に署名しました。月面に人が降り立ち、持続的な探査を目指す「アルテミス計画」により、今後さらに宇宙探査が進んでいく中で必要となる、国際的ルール形成の第一歩となりました。
 NASAのネルソン長官や、米宇宙軍のディキンソン司令官と意見交換を行い、日米宇宙協力のさらなる強化を確認しました。宇宙関係の現場の視察も多く行いました。JAXAの施設や北海道の大樹(たいき)町、鹿児島県の内之浦にも伺いました。現場で直接、研究者や企業の方々が情熱を持って取り組んでいる姿を見て、宇宙分野が今後ますます成長していくことも実感しました。
 知的財産戦略の推進につきましては、本年7月に策定した「知的財産推進計画2021」において、知財投資活用促進メカニズムの構築、官民一丸となった重点的な標準活用推進、データの活用促進に向けた環境整備、デジタル時代に適合したコンテンツ戦略などを盛り込み、コロナ後のデジタル・グリーン競争を勝ち抜くための無形資産強化戦略を打ち出しました。
 クールジャパン戦略については、日本文化の強みを生かしながら、日本人が自信を持って日本の魅力を磨き上げ、発信し、ソフトパワーの強化につなげるべく、再構築した戦略を踏まえた関係省庁のさらなる取組を推進しました。
 健康・医療戦略については、新型コロナウイルス感染症への対応が喫緊の課題でありました。本年6月に「ワクチン開発・生産体制強化戦略」を閣議決定し、国産ワクチンの開発・生産を進めるため、関係府省が一体的に取り組むための体制を整えました。また、新型コロナ感染症の検査機器や治療法の開発など、研究開発の推進にスピード感を持って取り組みました。
 日本学術会議の在り方の見直しにつきましては、国民に期待される役割をしっかり果たしていただくという観点から、梶田会長とコミュニケーションを取りながら、未来志向で進めてまいりました。本年4月に学術会議が報告書を取りまとめたことを受け、CSTI有識者議員懇談会において政策討議を続けていただいております。後任の担当大臣の下、検討を深めていただき、政府としての方針をしっかり決定してもらいたいと思います。
 消費者政策では、まず悪質事業者対策として、コロナ禍における不当表示等の取締りや、ワクチン詐欺等に係る注意喚起を徹底して行うとともに、販売預託の原則禁止をはじめとした特商法・預託法の改正を行うなど、消費者被害の防止、その体制整備に全力で取り組みました。国民生活に密接に関わる携帯電話料金に関しては、関係省庁とも連携し、表示の改善に取り組みました。
 消費者行政においても、デジタル化への対応は待ったなしの課題であり、消費生活相談のデジタル化の検討を進めました。相談員の処遇改善とあわせて、現場の相談体制の強化を推進するものと期待しております。
 また、消費者が取引デジタルプラットフォームを安全に安心して利用できる環境を整備するための新法を成立させました。さらに、特商法等における契約書面のデジタル化についても法改正を行いました。今後、後任の担当大臣には、消費者の利便性の向上などのため、改正法の趣旨に沿った制度設計に取り組んでいただきたいと思います。新たな課題として、食品ロス削減に向け、消費者、事業者双方の行動変容につながる制度的な手当も進めました。サステナブルファッションの推進に関しても、政府一丸となって取り組む枠組みを立ち上げました。
 私の担当分野は非常に多く、多忙な一年でありましたが、何とか走り切ることができました。縦割り打破、デジタル化、カーボンニュートラルなど、菅政権の目指す方向に貢献できたと自負しております。
 記者の皆様にも、私の担当分野の記事をたくさん書いていただいて、感謝しています。改めて大臣就任から1年間、大変お世話になった全ての皆様に御礼を申し上げます。ありがとうございました。

2.質疑応答

(問)大臣、お疲れさまでした。
 今、様々な分野での今までの1年間の取組を振り返っていただきましたけれども、その中で大臣として、これはちょっとやり残したなと、ここはもうちょっと次の大臣に期待したいなと、そういう部分があれば教えてください。
(答)まずは、私も初めての入閣ということだったものですから、大きな期待と大丈夫かなと、少しの不安も感じて就任をいたしました。また、大きな責任、使命感、そんなものを感じて1年間、全力で取り組んできたつもりです。そういう意味では、大変、自分なりに非常に充実していたと思っています。
 その中では、やはり秘書官をはじめとした役所のスタッフの皆さんに、自分は本当に恵まれたなと思っています。内閣府の特命担当大臣ということになると、どうしても組織がそんなに大きくないですから、そういう意味では、役所の皆さんの支えの比重が、他の各省付の大臣と比べると、たぶん非常に大きいんだと思うんですね。そういう意味で、すごくありがたかったなという思いがあります。
 他方で、やはり所管分野が非常に広くて、分かれていたものですから、これはなかなか大変だったのは本音のところです。それぞれの分野において、今申し上げたように、自分なりには着実に成果を上げることができたと思っていますけれども、やはり1年間は短いですね。就任して手を付けたことが、なかなか1年間で終わるというのも難しいですから、道半ばのものも残念ながらたくさんあるということが現状かなと思っています。
 そういう中で、最初のコメントの中でも申し上げたように、例えば万博などというのは3年半後が開幕ですから、そういう意味では、全て終わるわけはないのであって、これからしっかりやっていかなければいけないということ。コロナ禍だったので、どうしても招請活動が限定されていたので、なかなか目標まで、まだ半分以下という状況ですから、これは急いで後任大臣の方に頑張って取り組んでもらわなければいけないのかなと。そして、もう絶対に成功させるんだということは、大きな使命だと思っています。
 あと、いろいろたくさんあるんですけれども、やはり前半、非常に世の中の注目を浴びたのが学術会議の話でした。そういう意味では、政府として学術会議の改革の方針というものを、しっかり私なりにきちんと決めることができなかったというのは、少し残念に思っています。
 他方で、やはり大きな改革をするためには、丁寧に時間をかけていろいろ関係者と協議をしながらということも大切でありますから、是非、後任の大臣の方には、そこはしっかりやっていただいて、政府としての方向性を出してもらうということだと思います。
 それからもう一つは、私だけでなくて、この1年間、菅政権として取り組んだのは、やはりコロナの対策だったと思うんですね。このコロナの対策にある意味、大きなエネルギーをかけたわけです。私は特に国産ワクチンの開発・生産担当ということでしたので、これもどうしても時間がかかってしまうので、本当は任期中に実用化できれば、こんなにうれしいことはなかったんですが、もう少し時間がかかるということです。コロナ自体は、おかげさまで少しずつ収まってきておりますけれども、いつ何時、またリバウンドするかも分かりませんから、そういう意味で、この国産ワクチンの実用化、これもしっかり次の方に実現してもらいたいと。
 主立ったものでいうと、そんなところですかね。ありがとうございました。
(問)お疲れさまでした。
 消費者及び食品安全担当大臣としての一年を振り返ってみてのお伺いなんですけれども、消費者というのは国民全員が消費者なので、例えば不妊治療とかと比べて、全員が関わってくるというか、そういう意味での難しさみたいなのも、政策を実行していったり、大臣としての仕事をしていく上であったのかなと思うんですけれども、消費者担当大臣として一番感じた難しさと、それをどう次の方に引き継いでいくのかというのをお聞かせください。
(答)この消費者行政についても、やはり本当にいろいろ考えながら、悩みながら取り組ませてもらったと思っています。おっしゃったように、消費者行政、消費者問題というのは、全ての消費者・国民に関わることでありながら、具体的な課題はその時、その時で注目を浴びることはありますけれども、やはり全体としてあまり関心を持っている方が多くないと感じます。
 それは、国民もそうですし、国会議員とか有識者の方とか、そういう方々も、どうしても一部の方はものすごく関心があるんだけれども、一般的には何か大きなイシューになっていないということを残念に思っておりまして。そういう意味では、国民の皆様、そしてそれを代表する国会議員の方々などにも、いわばこの消費者問題のその全体の枠組みの話ですね、これの重要性というものを、やはりアピールしていくということが非常に重要なのかなと思っておりました。
 法律改正もおかげさまで2本実現することができて、本当に良かったなと思っておりますけれども、その時、大きな話題になったのが、例の特商法などの書面のデジタル化のことでありまして。このことについても、やはり一部の関係者の方々からは、いろんな疑義が示されましたけれども、国民全体にとっては、これは必ずやらなければいけないこと、非常に国民のためになることだと。そういう信念を私は持って進めてまいりましたので、いわば本当に一部の関係者の方々、専門家の方々と国民の皆様とのギャップ、これを埋めていくということが、いわば消費者行政が国民にとって、より身近なものになる、そのための一つの大きなステップになるのかなと思っています。
 そういう意味では、食品ロス削減とか、それからサステナブルファッションの実現とか、それも同じような話だと思うんですね。ですから、道半ばではありますけれども、そういったことに取り組むことができたということは、大変私にとっては名誉なことだと思っております。まさに私もこれで一人の国会議員に戻るわけですから、一人の国会議員として、この消費者問題に引き続きしっかり取り組んでいきたいと思っています。
(問)今ちょっとお話の中にもあったんですけれども、特商法の契約書面のデジタル化については、今、有識者のほうで会議が開かれていて、具体的にどういうふうにトラブルを防止していくかという制度設計が、まさに議論されているところなんですけれども。冒頭のお話の中で大臣が、後任の方には法改正の趣旨に沿った制度設計をしてもらいたいというようなこともあったと思うんですけれども、もう少し具体的に、どんな制度設計を心がけてほしいというか、方向性として大臣の心の中にあるものを、ちょっとお話しいただければと思うんですけれども。
(答)これは、もう私は辞めていく大臣ですから、何か後任の大臣の方を縛るような発言はすべきではないと思っています。ですから、さっき申し上げたのは、法律の趣旨に則ってというのは、これは当然のことですから、それはしっかりやっていただこうと。
 私が思いますのは、やはり一部の専門家の方々の御意見というのも、もちろん重要で、そこはしっかり聞いていかなければいけませんけれども、やはり広く国民一般の声を是非しっかり聞いていただいて、そしてその国民の声に応えるような、そういう制度設計をしていただければ、大変ありがたいなと思います。
(問)1年間お疲れさまでした。
 これから新しい岸田新政権がこの後発足されて、大臣の所管もそれぞれ引き継がれると思うんですけれども、新政権に期待することというのを教えていただければと思います。
(答)期待することはたくさんありますけれども、今申し上げた、私がやり残したことも当然そうでありますし、国民にとっては何といっても、やはりコロナの収束というものが、一番喫緊の大きな課題だと思いますので、それは岸田政権として、是非実現をしていただきたいと思いますし、私も一国会議員に戻りますけれども、その立場で岸田政権を全力で支えていきたいと思います。
(問)万博の部分で伺いたいんですけれども。
 これまでいろんな国に参加を働きかけてこられたかと思うんですけれども、一つ一つ事前の準備ですとか、勉強みたいなこともきっとされてきたのかなと思います。個別の話でも全体を通してでも結構なんですけれども、招請活動での印象的なエピソードなどがあれば教えていただきたいなと思っているんですけれども。あともう一つ、ドバイ万博が1日から始まりましたけれども、これに対する期待もあわせてお聞きしたいと思います。
(答)万博に関してはさっきも申し上げたように、どうしてもコロナの影響で、なかなか招請活動を直接できなかったというところは、ちょっと残念には思っています。
 でも我々はたぶんスタッフも含めてその焦りがある中で、パリに行ったときにBIEの事務局長さんから、むしろものすごく褒められまして。「本当にこの半年ちょっとの間に、これだけの参加表明を勝ち取って、これはもうものすごいことだ」と、だいぶ褒められまして。私も最初はお世辞かと思ったけれども、何度も言われるものだから、そういう意味では自分に少し自信を持ち直したかな、ということがちょっとありました。
 あとは、私はこれをいつも申し上げているんですけれども、招請活動に限らず万博で一番大事なことは、国民の機運醸成だと思っているんです。国民の皆様お一人お一人が、やはりこの万博に期待し、楽しみにし、そして参加をしてもらう。そして大きなレガシーをつくっていきたいと思っているんです。それもまだまだ、特に大阪、関西は少し機運は醸成されてきていると思いますけれども、それ以外の地域においては、まだまだ道半ばかなと思っています。
 私が就任直後に大阪に行ったときに、やはり地元の大阪の方々は、70年万博の思い出を本当に目を輝かせて話すんです。半世紀以上前のことを、あのときどうしたこうした、本当にあの万博は素晴らしかったと言ってくれる。私はこれが本当に衝撃でして、そんなに素晴らしかったんだと。半世紀経ってもこう言うんだと。自分の人生が変わったと言われるわけです。これは素晴らしい。
 だから今度の2025年の万博も、そのときの子どもたちに是非多く参加してもらって、その子どもたちが半世紀後に、2025年は本当に素晴らしかったと言ってもらえれば、初代万博担当大臣として、こんなにうれしいことはないと思っていますので、是非それぞれ後任の大臣や関係者の皆さんにも、3年半というのは長いようで短いですから、頑張ってもらいたいと思います。
(問)1年間大変お疲れさまでした。
 学術会議の任命拒否問題については総理の権限であって、御自身の担当ではないという主張もあって、これを切り分けて学術会議改革を進められてきたと思います。自民PTからもかなり厳しいボールが飛んでくるので、なかなか大臣としても難しい判断を迫られたと思うんですが、そのあたりの御苦労がどのようなものだったかということと、今、改革の議論は何合目まで来ているとお考えでしょうか。
(答)おっしゃるように任命拒否の問題について、私も権限がないものですから、そういう意味では、ある意味いつもこの同じ答弁で、聞かれる方に対して申し訳ないなと思いながら、しかし権限がないものですから、何も言えないということを繰り返したということが、若干自分自身としてはつらかったかなというのは正直思っています。
 ただ、だからこそ改革には、自分が担当大臣として力を入れようと思って、一生懸命取り組んできたつもりです。ただ、やはり改革の方向性についてはいろんな御意見があって、私としては自分の個人としての考えはさておいて、やはりそれぞれの関係者の意見をよく聞いて、いい形で取りまとめなければいけないと。
 そういう使命があったものですから、そういう意味ではいろんな方のお話を伺えば、逆に反対意見の方からは批判をされてということで、板挟みで非常に厳しい状況にあったというのは事実です。
 それはしかし、前半の手続としては必要なことだったんだと思います。ただ、これからまさに政府として責任を持って、また最終的に決めていかなければいけないので、それはちゃんとやってもらいたいと思うし、自分としては本当は、そこまでやりたかったという思いはありますけれども、是非後任の方に頑張ってもらいたいと思っています。
(問)何合目ぐらいまで議論は進んでいるとお考えですか。
(答)そういう意味では、いろんな議論とか意見の聴取とか、そういったことはかなり積み上がってきていると思いますので、あとはやはり政府としてしっかり決断をしていくという、その一番大事な判断が残されているんだと思いますので、そこはしっかりやってもらいたいと思います。
(問)もう一点だけすみません。先日、イプシロン5号機を視察に行かれたかと思います。残念ながらトラブルで飛ばなかったということなんですが、H2シリーズも近年配管トラブルとかいろいろ、火災とか施設の老朽化なども指摘されていると思うんですけれども、今回実際に打上げ、射場を見に行かれて何か感じられた課題とか、宇宙はこれから大事になっていくと思うんですが、何かあったらお伺いできればと思います。
(答)私も時間が限られていたので、その中でという話なんですけれども。町長さんなんかにも来ていただいて、それでやはりあの内之浦の地域に、JAXAの射場や職員の皆さんを受け入れていただいて、良好な関係を築いてきているということはすごく感じましたので、それは本当に素晴らしいことだなと思っています。
 他方で射場の老朽化とか、そういう課題もお聞きしましたので、そういうことに対してはやはりこれから対応していく、ということが大事なのではないかと思います。
 打上げ自体に関しては、確かに私も予定どおり見ることができなかったというのは残念ですけれども、逆にいえばわずか19秒前に中止の判断をしたという、そういうシステムが整っていて、実際現場の判断でそういうことができる、安心安全が最優先という体制なんだということがよく分かりましたので、それはむしろ宇宙開発に対する日本の素晴らしいところなのかな、ということを感じました。
(問)1年間御苦労さまでした。
 岸田内閣は、今回新たに経済安全保障担当大臣を設置して、科学技術・イノベーションと宇宙政策担当を兼ねるということになりそうです。これはある意味、岸田新政権の目玉人事の1つになるわけですけれども、今回新たに経済安全保障担当大臣を置くことの意義について、大臣はどのように考えていらっしゃるか教えてください。
(答)これは大変素晴らしいことだと思いますし、大いに期待をしています。本当にこれからの国際情勢を鑑みますと、経済安全保障は非常に重要だと思っています。
 科学技術や宇宙の分野も、経済安全保障に関わるところがすごく大きいですから、それを1つにまとめて担当大臣が担うという、その判断自体は本当に素晴らしいことだと思っています。とりわけ小林新大臣は、そういった経済安全保障とか科学技術や宇宙も、党でだいぶ汗をかいて取り組んでこられた方ですから、そういう意味でも大きく期待はします。
 これは若干余談なんですけれども、岸田総理も小林新大臣も、私と高校の同窓ですから、そういう意味では非常に従来から親しい関係ですので、今度は逆に私も、党から小林新大臣をサポートできればと思っています。
(問)関連してなんですが、経済安全保障というのはある意味守るほうの政策であって、一方で科学技術政策というのは、振興するという方向性もあると思います。守るほうと振興するというのをどうバランスを取って、両立を図っていくのは結構難しいと思うんですが、その辺、大臣はどのように課題を感じていらっしゃいますか。教えてください。
(答)確かにおっしゃるように、非常に難しい部分はあると思います。しかしだからこそ、国の果たす役割というのが非常に大きいと感じているんです。
 私もこの1年間、なるべくと思って現場を見て、現場の研究者の方々といろんな話をさせてもらいました。やはり経済安全保障、研究インテグリティ、こういったところに関して、現場の研究者の方もいろんな悩みがあって、その中で活動をされておりますから、そういう現場の研究者の方の悩みを払拭できるような環境を整えていくというのも、政府の大きな役割だと思っています。
 日本の研究力の低下が叫ばれて久しいわけですけれども、やはり日本の研究者の方々は、必ずしも個人個人、海外の研究者に比べて劣っているというわけではありません。ですからしっかり研究に集中できる環境というものを整えた上で、その力を存分に発揮してもらいたいと思います。
(問)大臣が所管されていた公文書管理について、そのテーマも大変重要だと思うんですけれども、何か後任の大臣に伝えていきたいこととか言いたいことがあれば、一言お願いできますでしょうか。
(答)公文書も、これもいつも申し上げているとおり、私もずっと公文書の議員連盟の事務局長を務めてまいりましたので、公文書管理に関しては非常に思い入れがあります。
 その中で一つは、新たな公文書館はおかげさまで、いわばレールの上に載せることができたので、これは着実に進めてもらいたいと思っています。
 公文書館の整備自体も、日本は諸外国に対して非常に遅れているということ。それから私が感じるのは、やはり公文書の重要性というものが国民の皆様の間で、まだまだやはりあまり認識されていないということなんです。
 もちろん、いろんな公文書を巡る様々な問題が噴出して、そういった具体的な問題に対する課題としては出てきますけれども、そうではなくて、そもそも相対的に公文書というものが本当に大事なんだということ、このことは国民の皆さんに是非、より理解をしていただきたいと思っています。
 そのためにはデジタル化も必要だと思いますし、あるいはアーキビストの育成といったような、具体的な施策もしっかり取り組んだ上で是非、公文書の素晴らしさ、そして大切さ、これを国民の皆さんに理解していただきたいと思います。
(答)最後に、本当に記者の皆さんには大変お世話になりまして、ありがとうございました。なかなかうまく質問に答えられなかったりとか、あるいは開始時間が遅れてしまったりと、いろいろ皆さんに御迷惑もおかけしましたけれども、私自身は批判的なものも含めて、いろいろ記事にしていただいて本当にありがたいと。やはり記者の皆さんは我々と国民をつなぐ、いわば架け橋だと思っておりますので、大変ありがたかったなと思っています。
 コロナの影響で、なかなか懇親会というわけにはいかなかったので、そこは若干残念ではありましたけれども、私も政治の世界はまだまだこれからも頑張っていこうと思っていますので、是非この御縁で、引き続きお願いできればと思っています。本当にお世話になりました。ありがとうございました。

(以上)