井上内閣府特命担当大臣記者会見要旨 令和3年6月18日

(令和3年6月18日(金) 11:06~11:25  於:中央合同庁舎第4号館2階共用220会議室)

1.発言要旨


 科学技術政策担当の大臣として報告します。
 本日の閣議において、「統合イノベーション戦略2021」と「新SBIR制度に関する方針等」を決定しました。
 統合イノベーション戦略2021では、国際的な技術覇権争いの先鋭化や気候変動問題への取組の進展などを踏まえ、今後1年間に重点的に取り組むべき科学技術・イノベーション政策を取りまとめました。
 また、新SBIR制度については、スタートアップなどに対し、研究開発とその事業化を一貫して支援するため、支出可能な補助金の支出目標額を定める方針や指針を取りまとめました。基金創設や支援制度整備など、科学技術・イノベーション基本計画を着実に実施していくための仕組みが整ってまいりました。一方、大学ファンドの拡充、経済安全保障への対応や新型コロナウイルスの国産ワクチン開発など、まだ課題も多くあります。関係省庁と連携し、基本計画の実行に向けて取組を加速させてまいります。
 国際博覧会担当の大臣として報告します。
 昨日、スペインのガジャック外交・イベロアメリカ・カリブ担当長官との間で、2025年の大阪・関西万博について二国間のウェブ会談を行いました。会談では私から、大阪・関西万博の成功に向け、早期参加表明を強く働きかけました。先方からは、大阪・関西万博への強い期待が表明をされました。参加を前向きに検討いただいている模様であり、大変心強く思っております。
 これまで政府として精力的に参加招請活動を行ってきており、私からは56カ国1国際機関に対し直接の働きかけを行っております。今後とも様々な機会を活用して、しっかりと招請活動を進めてまいります。
 以上です。

2.質疑応答

(問)万博についてお伺いします。
 おとといの党の推進本部で、大臣が「来月中には関連事業計画として政府でしっかり取りまとめをしていきたいと思っております」というような発言をされていましたが、これはどういったものを指されているのか。例えば夢洲への地下鉄の延伸の市の負担分だとか、そういったものも含まれているのか、大臣のイメージを教えてください。
(答)自民党の会合でも私からも御挨拶をしたんですけれども、やはり会場へのアクセスの整備、それから、それにとどまらず、万博を機会に大阪・関西の活性化をしたいと思っておりますので、そういった大阪・関西圏のインフラ整備といったものをあわせて関連事業計画に盛り込んでいくということになります。
 具体的には、鉄道、道路、空港、あるいはまちづくりといったような具体的な事業を、今、地元の自治体を中心に要望を取りまとめてもらっておりますので、それができたら政府に対して要望をいただきます。それを受けて政府で決定をしていく、そんな手続を考えております。
(問)オリンピックをきっかけに、東京のまちも大きく変わったと思うんですけれども、同じようなプロセスを関西でも踏めたらいいなというようなことを考えていらっしゃるというイメージでいいんですか。
(答)特に前回の東京オリンピックのときは新幹線や高速道路などが整備されたということですから、やはり今回の大阪・関西万博についても、そういういわば地域の起爆剤となるような、そういったインフラ整備も行って、一つのレガシーとして残していかなければいけないと思っています。
(問)予算の規模としては、どれぐらいを想定されているんですか。
(答)特に万博のインフラ関連でいくらとか、そういったパッケージというよりも、必要なものをやっていくということで、当然インフラ整備ですから、整備期間とか、実際に供用できる時期も異なってまいります。大阪・関西万博の開会自体に間に合わない事業も含めて、これは関連事業としてやっていくという形になりますので、事業費がいくら、という整理をするような性格のものではないということになります。
(問)とりあえず地元自治体には、こういったものをしたいんですけれどもというアイデアを出してもらって、その中から精査をするということになるということですか。
(答)これはやはり地元の意向を最大限尊重したいと思っています。
(問)統合イノベーション戦略に関して伺いたいと思います。
 先ほど冒頭発言にもありましたが、今、米中の覇権争いですとか、そういったことを念頭に置いた取組が日本で進められていると思います。技術流出を懸念し、日本も取組を進めているかと思いますが、大臣としてどういったところに課題があると思うか、問題意識を一言伺えればと思います。
(答)これは非常に重要な問題だと考えています。海外への技術流出につきましては、我が国の技術的優越の確保・維持の観点から、研究開発成果の大量破壊兵器への転用のおそれなどがある一方で、個々の研究者が海外の優秀な研究者との国際共同研究を進めるなど、多様な主体と知的交流を図るなどによって、卓越性が高く、独創的な研究成果を創出できる環境を実現することが重要です。ですから、その両方のバランスですよね。このバランスの下に様々な政策や施策の具現化を図っていくことが重要と考えております。
 また、多様な技術流出の実態に応じて、適切な技術流出対策は政府全体として進めていくことも重要だと考えております。その上で、内閣府として主体的に進める取組としては、例えば研究者や研究機関における研究の健全性、公正性、研究インテグリティを自律的に確保する観点から、本年4月に研究インテグリティに関する政府方針を統合イノベーション戦略推進会議にて決定をし、また、現在研究コミュニティーの意見も丁寧に聞きながら、競争的研究費事業の共通的なガイドラインの早期改定に向けての調整を進めています。
 さらに、安全・安心に関するシンクタンク機能については、我が国及び国民の安全・安心の実現に向けて、政府から示す課題設定などを受けて、重要技術などに関する政策に資する提言を行うための仕組みを構築するべく、今年度のシンクタンク機能の立ち上げに向けて、関係省庁との連携によって政府一丸となって取り組んでいくということで、いろんな取組がありますけれども、これをパッケージとして経済安全保障に取り組んでまいりたいと思います。
(問)統合イノベーション戦略の中で、大学ファンドの拡充についても盛り込まれたと思うんですけれども、10兆円規模というのは、いつ頃までに大臣としては実現したいとお考えでしょうか。
(答)これは、私としてはなるべく早くということで。そういう意味では、財政当局ともこれから概算要求とか、補正がいつあるか分かりませんけれども、そういった機会を捉まえて、しっかり要求していきたいと思っています。
(問)大学ファンドに関して、例えば今の想定では年間3%程度の運用益を上げて、そのうち一部を大学に配分するという想定なんですけれども、例えば大学ファンドの運用があまりうまくいかずに、マイナスが例えば何回か続いたりということがあったとしたら、政府としては、お金を引きあげてしまうのか、どうするのか。そこら辺はどういうふうにお考えなんでしょうか。
(答)これ、今、CSTIの下に会議を立ち上げて、いろんな検討もしておりますけれども、一つは、これ、10兆円のファンドですから、長期安定的にということで考えておりますので、毎年度毎年度のあまり収支にとらわれることなく、ということは一つあると思うんです。ただ、他方で、当然のことながら国民負担の原資であるわけですから、それが毀損しないようにということで、チェック体制もしっかり整えて、仮に本当に赤字が何年も続くようなことになれば、そこで一度立ち止まって考えるとか、そういったことも含めて検討しなければいけないとは思っております。
(問)1つ確認なんですが、統合戦略2021を取りまとめるのはCSTIの役割だと思うんですけれども、持ち回りのCSTIはいつというふうな理解をすればよろしいんでしょうか。
(答)これはなるべく早くかな。17日に終わっているということで、すみません。持ち回りはちょっと私もあまり記憶が定かでなくて。
(問)CSTIで取りまとめないと閣議決定ができないと思いますので、17日に持ち回りのCSTIの会議で決定をして閣議決定という順番ということで理解をさせていただきます。
 それから、統合戦略というのが基本計画のフォローアップ的な役目も果たしていく、それから、新たに基本計画を策定したときとは状況が変わったときには追加的な措置も取っていくというふうに位置付けを明確にしたというふうに理解しているんですが。基本計画で掲げた政府の投資目標、30兆というのがあると思うんですが、これの検証をしたりとか、新たに、予算というのも結果だというふうな物の考え方もあると思うんですけれども、予算の拡充のための仕掛けを統合戦略で仕掛けていくということも考え得るのでしょうか。それから、2021にそういう部分があるのかということをちょっとお聞きしたいと思います。
(答)基本計画もまだ策定したばかりですから、そういう意味では、この30兆円の目標を達成できるようにしっかり取り組んでいくと。予算のことですから、これは年度ごとに、あるいは補正予算など、そういった度にしっかり要求して、そして確保していくということだと思っています。
(問)結果的なものというふうな部分は強いと思うんですけれども、やはり単純に30を5で割れば金額が出てくると思うんですけれども、これをこういうふうに着実に積み上げていかないと、なかなか目標を達成できないというところで、統合戦略の役割というのが強いかなと思うんですけれども、その辺は改めて大臣、どういうふうにお考えでしょうか。
(答)ただ、目標はすごく大事なことではありますけれども、やはりそれ以上に、その内容が重要だと思っておりますので、むしろ内容的なことをしっかりこの統合イノベーション戦略でも盛り込んで、そしてそれを実行していくということだと思っています。
(問)宇宙政策について伺います。
 先日の参院本会議で、民間企業の宇宙資源の所有権の取得を認める、議員立法ですけれども宇宙資源法が成立しました。この法律は、米国とか中国が各国、火星とか月の探査計画を本格化する中で、民間企業の宇宙開発参入を促すという目的があると思うんですが、この法律が成立したことの意義について、大臣のお考えを教えてください。
(答)まずは、この法律、宇宙資源開発法自体、議員立法でありますけれども、何とか国会の閉会間際に成立したということは、私としても歓迎したいと思っています。
 中身として、宇宙資源の探査や開発に関する活動については、アルテミス計画の本格化などにより今後ますます活発化することが予想され、実際に我が国にも月面でのビジネスを目指すベンチャー企業も現れています。こういった中で、速やかな制度環境整備が必要と考える超党派議連での議論が進められ、今回の法案成立に至ったものと承知をしております。
 政府として、許可の審査基準や手続など施行に向けた準備を進めるとともに、本法に基づき国際的なルールづくりに向けた議論に積極的に関与してまいりたいと思っております。
 この宇宙資源の話も、まだまだこれから国際的な議論をし、ルールづくりをしていかなければいけないということで、いわばそれに先駆けて国内法が成立するということは非常に大事な意義があると思っていますので、この法律に基づいて、しっかり我々は施行していきたいと思っています。
(問)現状、国連の宇宙条約では、宇宙資源所有権という規定が明確になくて、だからこそこういう国内法が成り立つのかなと思うんですが、今後、中国とか米国がどんどん月に開発していく中で、紛争を事前に防ぐという意味でも国際ルールをつくるというのはすごく大事だと思うんですが、日本としては、今回企業の話ですけれども、政府としてどのように、この国際ルールに関与していきたいと思っているのか、方針についてあれば教えてください。
(答)どのように……。
(問)姿勢ですね。どういう国際ルールにしていきたいか。
(答)ですから、この法律にありますとおり、やはり所有権を認めていくという方向で、しっかり国際的な議論を日本もリードしていきたいと思いますし、このルールづくりに積極的に関与していきたいと思っています。
(問)ちょっと話が戻るんですが、統合イノベーション戦略の関連で、先ほど海外の技術流出の話が出ていましたけれども、中国の人材招請政策、いわゆる千人計画、これの対応というのも想定されているんでしょうか。
(答)そういう意味では、特定国を想定してそのために、ということではなくて、幅広くということになりますけれども、当然のことながら、経済安全保障の中で日本の国益に反するようなことがあれば、それに対してしっかり対抗手段を取っていくということは重要だと思っています。

(以上)