井上内閣府特命担当大臣記者会見要旨 令和3年3月16日

(令和3年3月16日(火) 8:56~9:19  於:中央合同庁舎第4号館1階全省庁共用108会議室)

1.発言要旨


 科学技術政策担当大臣として報告します。
 本日、第52回総合科学技術・イノベーション会議を開催しました。会議では、第6期科学技術・イノベーション基本計画答申案、10兆円規模の大学ファンドに関する「世界と伍する研究大学専門調査会」の設置について、上山議員及び私から説明し、案のとおり決定いただきました。
 会議の中で、菅内閣総理大臣より、私を含む関係大臣に対し、今回の基本計画によって、最先端の研究開発を加速させ、感染症や激甚化する災害など、直面する脅威に対応するとともに、次の成長の原動力としていくこと、そのため2兆円のグリーン基金、10兆円規模の大学ファンドなど、かつてない大胆な予算を確保するとともに、今後5年間で政府の研究開発投資30兆円、官民で120兆円の投資目標を設定したこと、そして、優秀な人材と豊富な資金が集まる世界トップクラスの研究大学への改革を目指し、専門調査会を設置し、新たな法的枠組みを早急に検討し、次期通常国会への提出を目指すことなどが述べられました。
 私としては、20年近くも続く研究力の低迷は、深刻な事態だと考えており、10兆円規模の大学ファンドなども活用しながら、多くの若者が研究者を目指したくなるような研究環境の充実を図ってまいりたいと思います。そこで生み出された多様な知を活用し、改革マインドをもって社会を変えなければならないと考えています。
 また、以前会見でも宿題とさせていただいておりましたが、CSTIの民間議員の皆さんとも協議した結果、この基本計画を一言で言うと、「「総合知による社会変革」と「知・人への投資」の好循環」と表せるのかと考えております。
 次に、消費者及び食品安全担当の大臣として報告します。
 食品ロス削減については、コロナ禍の中、一層厳しい生活環境に置かれる方もおられる一方、まだ食べることが可能な食品が大量に廃棄されている現状に、大変な危機感を感じております。消費者庁としては、関係省庁と連携して、制度的な課題の検証を含め、実効的な対策を講じたいと思います。この一環として、今般、食品表示基準に違反する商品について、新たに簡便な表示修正方法を導入します。
 食品表示基準に違反する場合、表示の修正または店頭からの商品の撤去が必要となりますが、表示の修正には誤った表示の上から正しい表示を貼り付ける等、誤った表示を確実に訂正する方法のみが認められてきました。このため、実態として多くの食品関連事業者は、表示の修正よりも手間がかからない自主回収により、当該商品を廃棄しており、食品ロスの発生につながっております。
 こうした状況を踏まえ、アレルゲン等の消費者の安全に係る表示事項を除き、明日以降、誤った食品表示の上からではなくとも、商品の見やすい場所に貼り付けるポップシールや、ボトル状の商品の首にかけるネックリンガーによる簡便な表示修正方法でも構わないこととします。食品関連事業者の皆様におかれては、商品が安易に廃棄されることがないよう、新たな表示修正方法も積極的に活用し、取組を進めていただくようお願いします。
 次に、科学技術政策担当大臣として報告します。
 本日、全国原子力発電所所在市町村協議会の会長である渕上敦賀市長と面会をし、原子力立地地域特措法に関する意見交換を実施します。 本日の面会においては、立地地域における原子力立地地域特措法の延長への期待などについて、立地市町村の代表である渕上会長からお話を伺う予定です。
 衆議院内閣委員会においても、立地地域からの要望について言及があり、参議院での審議前に、渕上会長から直接お話を伺いたいと考え、このような機会を設けさせていただきました。私としては、今後の参議院における審議に向けて、しっかりと取り組み、今月中の法案成立を目指してまいります。
 最後に、クールジャパン戦略担当の大臣として報告します。
 3月18日に、全国都市会館の大ホールにおいて、「クールジャパン・マッチングアワード2021」の表彰式を開催します。国会対応などがなければ私自身が出席し、表彰状の授与を行う予定です。クールジャパンの取組を進める上で、官民や異業種間の連携、地方のクールジャパンにかかわる取組を広めることが重要です。これらの幅広い連携を実現した取組を表彰し、さらなる連携を促すために、2016年度以降、「クールジャパン・マッチングアワード」を開催してきました。
 今回は、新型コロナのまん延による制約の中で、日本の魅力の縦方向の深掘りと横方向の連携を実現した取組を、クールジャパンのベストプラクティスとして、グランプリをはじめとする各賞を表彰します。今回の授賞式をきっかけとして、引き続き全国のクールジャパンの取組の幅広い連携を促し、日本のブランド力の向上とソフトパワーの強化につなげてまいります。
 以上です。

2.質疑応答

(問)基本計画を一言で表現していただいたんですけれども、それをもし解説するとしたらどんな感じになるんでしょうか。
(答)解説すると一言ではなくなるのですけれども、「「総合知による社会変革」と「知・人への投資」の好循環」ということで、一言にしてはどうしても長くなってしまったんですけれども。やはり今回の基本計画の中で、社会変革、それから研究力の強化、そして人材の育成と、こういったところが大事なポイントだと思っています。この社会変革と、それから投資、これはいわばスパイラルとなって、相乗効果といいますか、好循環の中でよりよく高めていきたいと、そういったような趣旨です。
(問)それともう一つ、今日のある紙面で、国立大学に資産運用会社を設立するという記事がありましたけれども、事実関係はどうなっているんでしょうか。
(答)これは少しミスリードで残念なんですけれども、本日の朝刊に「国立大学に資産運用会社を設置するための法改正案を提出する」と私が発言した、という報道がありましたけれども、これは特に決定されたことではありません。世界に伍する研究大学として必要となる財政基盤の強化を図るためのあらゆる手段について、本日CSTIにおいて設置をされた「世界と伍する研究大学専門調査会」において、今後、具体的なことは議論していくという段階です。
(問)つまり、現段階では国立大学に資産運用会社を開設する、つくるというお考えはあまりないということですか。
(答)一つの選択肢かもしれませんけれども、何か既にそちらでそれが決定して、かつ、そのために法改正をするといったような論旨に見えたものですから。そういうわけではなくて、国立大学は、いわば大学ファンドの受皿でありますから、そのためには大学自身がやはり改革をしてもらわなければいけないということで、大学自身が資金を集めて、運用して、そしてそれを投資していくと、こういったことができるような大学を目指してもらいたい、そのために法律改正も必要であると。その目的の中でどういったことをやっていくかということは、まさにこれから、この専門調査会で議論していただこうということです。
(問)冒頭で発言のあった食品表示の修正の簡便化についてなんですけれども、なぜこの食品表示の修正を簡便化することが食品ロスの削減につながるとお考えになったのか。例えば、このことによって運用を変えることによって、どれぐらいの食品ロスが削減されるという試算などがあるのでしょうか。
 また、ネックリンガーなどでの修正も可能だというお話でしたけれども、一つ一つの製品の上からシールを貼るのと、一つ一つネックリンガーをつけるのと、手間はそんなに変わらないのではと思ったんですけれども、何か違いがあるのでしょうか。
(答)これは、冒頭申し上げましたように、食品表示に誤りがあったときに、それを修正してもらわなければいけません。しかし、その修正のコストと廃棄するコストを比較した場合、やはり後者のほうがコストが低かったり、あるいは手間がかからないといったようなことで、そちらの手法を選ぶといったような事業者が今まで多かったものですから、このこと自体、当然食べられるものを廃棄するわけですから、食品ロスにつながってしまっていると。これを何とかして少しでもロスを減らしたいと、そういう思いで、今回こういう改善を行うということです。
 統計的なものは特にありませんし、むしろこれは食品表示に誤りがあった場合の話なので、そもそも食品表示に誤りがないようにしてもらうというのが大前提ですから、特に何か具体的な数字をつくっているわけではありませんけれども、これはしっかりやっていただきたいと。そういう意味で、いろんな手法を用意して、それぞれ事業者の判断でやっていただくということになります。それは、それぞれいろいろな製品とか、表示の仕方などによっても違うと思いますので、それはいろんな選択肢を認めていくということで考えたいと思っております。
(問)アレルギーなどは除くということでしたけれども、大臣がおっしゃったように、食品表示は正しいものが書かれているのが前提だと思って、消費者もそれを確認してお買い物をされている方も多い中で、ポップなどをどれだけ人がそこをきちんと見て、違う情報が一個一個の製品には書かれているけれども、全体としてはこれが正しいですという情報は、きちんと消費者に届くのだろうか、そこで何か重大な判断ミスがあって、その消費者保護に反するようなことにならないだろうかというような懸念を抱く方もいるんじゃないかと思うんですけれども、そこについてはいかがですか。
(答)シールとかネックリンガーとかということになると、例えば外れてしまう、剥がれてしまったということも可能性としてはあり得るものですから、アレルゲンみたいなような、本当に安全性に直結するようなことに関しては、こういう手法は認めるのをやめておこうということで、これはもう当然、消費者保護の立場に立って、今回それは除外をしていこうということにしました。
 あとは、食品表示の修正ですから、そういう意味では、きちんと目に留まるように、目立つように表示してもらうとか、そこは各事業者のいろいろな工夫をしてもらいたいと思います。
(問)関連なんですけれども、となると、新しい表示修正方法とおっしゃいましたが、これはつまり緊急・暫定的なものではなくて、制度としての導入ということを考えてよろしいのかどうかということです。これが1点です。
 もう一つが、コロナのことなんですけれども、コロナ対策被害防止がキャンペーンされて1カ月たっているんですけれども、これまでワクチンの詐欺の110番であるとかというのはありました。コロナ関連の相談の特徴とか、何かお気づきの点があれば教えてください。この2点をお願いします。
(答)1番目については、制度としてということで、自治体に対して通知を出すとともに、それから事業者にも周知をしていきたいと考えています。
 それから、2点目ですけれども、ワクチン接種をかたる消費生活相談、消費者庁において確認した限りでは、現時点では全国で30件程度です。最近では、公共団体や厚労省などの公的機関などをかたって金銭を要求する電話がかかってきた事例が目立っております。警視庁など各地の警察でもワクチンをかたる不審な電話が報告をされております。また、電話以外にも不審なメールやショートメッセージが届いたり、チラシを受け取ったという相談も寄せられております。
 改めて、消費者の皆様に申し上げますけれども、ワクチン接種は無料です。市区町村等がワクチン接種のために金銭や個人情報を電話やメールで求めることはありません。不審な電話やメールがあったら相手にしないこと。その上で不審に思った場合やトラブルに遭った場合は、一人で悩まず、消費者庁のホットライン、また、お近くの消費生活センターに御相談をいただきたいと思います。
(問)もう一点、コロナ禍の中で、高齢者、障害者のステイホームというのが新しい日常になっておりまして、見守りネットワークについて、活動の強化ということについては、各地方自治体に対して働きかけがあるとしたら、大臣としてはどんなお考えがあるのかどうか、ちょっとお聞きしたいと思います。
(答)消費者庁において、各地域で整備を進める「見守りネットワーク」、これは自治体の消費者行政担当部局や、消費生活センターのほか、福祉関係者、警察、民間事業者など、多様な関係者が連携し、高齢者や障害者の消費者被害を防止する大変重要な仕組みであると考えています。
 遠方に住む親族などと会いがたい新型コロナの状況においては、特にこうした見守り体制が重要になってきています。現場においては、感染防止にも十分に配慮をしながら、必要な方に対する見守りも行っていただいていると承知をしております。
(問)今日取りまとめられた第6期科学技術基本計画の中で、科学技術外交について戦略的に推進するという内容があると思うんですけれども、そこで外国企業との連携とか、競争的研究費の公募について2021年にガイドライン等の整備を進めるというふうな言葉があって、これは指針とかガイドラインというのが、形になるのは何年ぐらいを目標に、形にして提示したいというお考えはあるんですか。
(答)ガイドラインは年内に、ということですよ。
(問)以前、閣議後会見のときにおっしゃっていた、競争的資金についての考え方を今年早期に示したいとおっしゃったものが、この内容ということですか。
(答)資金の流れとか、情報を透明化するという、その話ですよね。それはガイドラインを年内に改正したいと思っています。
(問)このガイドラインは同じものですか。別のガイドラインですか。
(答)前回のというのは何ですか。
(問)2月あたりにおっしゃっていた競争的研究費についての資金の透明化について、政府の考え方を早期に示すというふうにおっしゃったと思うんですけれども。
(答)そうです、それがそうです。
(問)それのことですか。
(答)ええ、文科省がそれを科研費でやったという報道を受けて、私が会見の中で多分話したことだと思うんですが、まさにそれでして。それを全省庁に広げて、しっかり対応するようなガイドラインの改正を、今年中に行いたいと思います。
(問)本日で、菅政権が発足されてちょうど半年になるんですけれども、大臣、振り返られて御所感があればお願いいたします。
(答)とにかく半年間、大変なかなか忙しく、また厳しくもありましたけれども、自分なりには精いっぱいやってきたつもりです。初入閣をいたしまして、この大臣の職責の重さ、国民に対する責任、そういったことを常に感じながら、この半年間進めてきたつもりです。
 いろいろ私の担当の中でも大きな課題があって、特に目の前のことだけではなくて、やはり中長期的に考えて、日本の国益に直結というような課題、今日の科学技術もまさにそうですけれども、そういった課題に携わらせていただいているということで、非常にやりがいも感じておりますし、使命感も感じております。
 他方で、今の日本の国の状況を考えたときに、例えば国際的な競争であるとか、そういったことを考えると、非常に危機感も感じておりますので、また今後とも、より職務に邁進していきたいと思っております。
(問)冒頭の食品表示のことについて2点伺わせてください。
 食品ロスの抑制を目的にということなんですけれども、今まで食品ロスの数値というのが、なかなか推定値ではっきり企業の数字がなかなか見えづらいというところもあったかと思うんですけれども。今回非常にいい取組だと思うんですが、実際にどれぐらい抑制ができたのかの報告を求めるなどの仕組みは考えていらっしゃるのかというところと、消費者が誤認してしまうケースも今後出てくる可能性もあると思うんですけれども、消費者への周知だったり、誤認防止の対策などは、どのようにお考えなんでしょうか。
(答)1点目は、このことによってどれぐらいロスが減るかということに関しては、先ほども申し上げたとおり、これが目的というよりも、そもそも食品表示を正しくしてもらうというのが目的ですから、そういう意味では、別に数値を集計しようとか、数値にこだわっているわけではありません。
 ただ、食品ロス全体でいいますと、今、政府全体で、我々が取りまとめになって取組を進めておりますけれども、そもそもその食品ロスのデータが大分古いんですよね。なかなか集計、公表まで時間がかかり過ぎているものですから、それをもう少し迅速にできないかと。これは廃棄物を担当している環境省にも強く要請をしております。
 2点目に関しては、これも先ほども申し上げましたけれども、やはりポップシールやネックリンガーということで、それが剥がれてしまったり外れてしまったりすると、意味がなくなってしまうわけですから、そこは事業者において注意をしていただきたいと思っております。

(以上)