井上内閣府特命担当大臣記者会見要旨 令和3年3月5日

(令和3年3月5日(金) 8:35~8:49  於:衆議院分館4階第17委員室前)

1.発言要旨


 まず、消費者及び食品安全担当大臣として報告します。
 本日の閣議において、「取引デジタルプラットフォームを利用する消費者の利益の保護に関する法律案」及び「消費者被害の防止及びその回復の促進を図るための特定商取引に関する法律等の一部を改正する法律案」、この2つの法案が閣議決定されました。
 まず、取引デジタルプラットフォームを利用する消費者の利益の保護に関する法律案は、取引デジタルプラットフォームが消費者の日常生活において不可欠な取引基盤としての地位を確立しつつあることに鑑み、消費者が安全で安心して取引デジタルプラットフォームを利用できる環境を整備します。
 従来の消費者保護法は、消費者の取引相手となる事業者に義務を課すものでありましたが、本法案は、消費者と事業者の通信販売取引に介在する取引デジタルプラットフォームという、いわば第三者的な地位にある者の役割を法的に明らかにする画期的な新法と考えております。
 次に、消費者被害の防止及びその回復の促進を図るための特定商取引に関する法律等の一部を改正する法律案は、高齢化や新型コロナの影響により、消費者を取り巻く環境が大きく変化する中で、消費者の脆弱性につけ込む、巧妙な悪質商法による被害が増加していることに対応します。詐欺的な定期購入商法への対策強化、販売預託の原則禁止など、特定商取引法、預託法及び消費者裁判手続特例法を一括で改正します。
 両法案は、デジタル分野における新たな消費者トラブルの抑止や、悪質商法に対する抜本的な対策強化、消費者の利便性の向上のために非常に重要なものであり、早期の成立に万全を期してまいります。
 もう一件、消費者担当として報告します。
 新型コロナワクチンの接種に関し、所管の独立行政法人である国民生活センターに対し、神奈川県相模原市より、4月以降の集団接種会場として国民生活センター相模原事務所を使用したい旨の要請をいただきました。同センターに対しては、相模原市に積極的に協力するよう伝えたところ、4月以降、施設を利用できることになったと聞いております。
 当庁で把握する限り、医療関係以外の独立行政法人が接種会場になった例は承知しておりません。ワクチン接種は大変大事なコロナ対策の一つであり、国や独立行政法人が協力することは極めて重要であると考えております。
 科学技術政策担当大臣として報告します。
 第5期科学技術基本計画の最終年度としての令和2年度第3次補正予算における科学技術関係予算が取りまとまりました。3兆5,529億円を計上しました。これまでの補正予算における規模が最大1兆円となっていたことと比較すると、この3次補正は非常に大規模となっております。
 具体的には、運用益を活用し、若手研究者への支援など、研究大学における将来の研究基盤への長期・安定投資を行う「10兆円規模の大学ファンド」0.5兆円、総理による2050年カーボンニュートラル宣言を踏まえた2兆円規模の基金である「グリーンイノベーション基金事業」2兆円といった、前例のない大規模かつ長期間にわたる事業を含んでおります。
 この3次補正を加えた第5期基本計画期間中の科学技術関係予算の合計額は28.6兆円であり、第5期基本計画の投資目標である26兆円を達成することができました。先ほどお伝えした2つのファンド事業を仮に含めなかったとしても26.1兆円と、目標の26兆円を超える水準ともなりました。科学技術基本計画の政府研究開発投資額の目標を達成したのは、第1次計画以来であり、大変喜ばしいことです。
 また、第6期基本計画の初年度として位置付けられる令和3年度政府予算案においては、4兆1,414億円を計上しました。第5期基本計画期間における投資目標を達成したよい流れを受けて、第6期基本計画期間においても30兆円という政府研究開発投資目標を達成できるよう、科学技術政策担当大臣として最大限努力してまいります。
 最後に、科学技術政策担当の大臣として報告します。
 昨年12月に河野行政改革担当大臣と連携して、競争的研究費に関する事務負担軽減について検討する旨、言及しましたが、その検討結果をお伝えします。
 各種事務手続に関する現場の研究者の方々等へのアンケート結果を踏まえ、関係省庁と調整した結果、「競争的資金」に該当する各事業と、それ以外の公募型の研究費である各事業を区分することなく、これらを「競争的研究費」として一本化し、本日、関係省庁申合せの形で統一的なルールを定めました。このことを関係省庁を通じて研究機関に伝えます。
 具体的には、次の措置を行いました。第1に、各種提出書類の様式や提出期限、消耗品の取扱い等に係るルールを統一しました。第2に、各種書類の押印省略やデジタル化・簡素化を徹底しました。第3に、購入した研究機器の譲渡等に係る手続を迅速化しました。これにより、各省合わせて100件以上に及ぶ競争的研究費の取扱いが、この度初めて統一されることになりました。
 なお、個別の研究機関の事情により、事務処理や物品の取扱い等について追加的な措置をとる場合もあると思われます。その場合であっても、競争的研究費に関する事務負担軽減につなげるため、追加的措置は必要最小限に抑えていただき、統一化という原則を極力守っていただきたいということも関係省庁を通じて研究機関に伝えます。
 研究活動の主役はあくまで研究者です。私の役目は、研究者の皆様が研究に集中できる環境をつくること。これからも研究者の声に耳を傾け、世界で最もイノベーションに適した国づくりを目指してまいります。
 以上です。

2.質疑応答

(問)冒頭で言及された取引デジタルプラットフォームの新法についてお伺いします。
 今回の新法では、大臣がおっしゃるように、取引デジタルプラットフォームが果たさなければならない役割を明らかにした一方で、当初検討されていた、役割を果たさなかったときの罰則の導入というものは見送られました。どうしても消費者保護の機能というのがちょっと弱まってしまうのではという印象というふうに思うんですけれども、今後、この新法が成立したとして、これまで図られてこなかった消費者保護に確実につなげていくためには、どんなことが必要だというふうに考えていらっしゃいますでしょうか。
(答)今回、消費者と取引を図るプラットフォームとの関係という意味では、初めて新しい法律をつくったわけですから、そういう意味では大きな前進だと思っております。
 ただ、これから取引デジタルプラットフォームの役割、存在というのはますます大きくなっていくことが想定されるわけですから、まずは、この法案を成立させていただくということですけれども、引き続き、それ以上消費者のためにできることは何があるかということは、また検討しながら進めていきたいと思っています。
(問)科学技術関係予算に対してなんですが、26兆を超えたということなんですが、実は、いろいろとこういうふうに3年間で3,000億積み増しとか、そういうことをいろいろやってこられている。それからイノベ転換をやられているということで、外側のところの予算が増えていて、肝心の真水の部分の、研究そのものに充当される研究費というものがなかなか増えていないのではないか。科振費なんかを見てもそうなのかなという気がするので、その辺の御所感を大臣にお聞きしたいと思います。
(答)なかなか科学技術関係予算、一体どこまでをカウントするかとか、そこはなかなか難しい線引きがあるのかとは思っております。今回の28.6兆円の中でも、もちろんいろいろな予算が多数含まれておりますから、その中において、今後も、私の立場からしますとやはり、より研究者に望まれるような、そういった予算を積み上げていくということになるんだと思います。
(問)本日閣議決定された消費者被害を防止する3法の束ね法案なんですけれども、その中で預託法についてお聞きしたいと思います。
 預託法については、今回、法律名も特定商品預託法から預託法に変わって、事実上、販売預託商法が原則禁止されると。実際、行う場合は消費者庁の厳格な手続が行われて、いろんな資料の提出であるとか、消費者委員会にも意見を聞くということで、事実上、そういう従来やっていたような預託商法というのができなくなる法律だと思うんですけれども、そこら辺の大臣の御所感と、また、今回原則禁止するという大きな転換だと思うんですけれども、これによって消費者被害がどのように防止されるか、大臣のお考えを教えてください。
(答)そうですね。販売預託のことだと思いますが、販売預託については、今までも様々な消費者被害が報告されてきたわけでありますから、検討した結果、やはりこれはもう原則禁止ということにしようということで、今回の法案を提出させていただいております。
 その例外に関しては、厳格な手続の中でということですけれども、少なくとも現時点において何か想定しているということではありません。ただ、可能性としては、今後のことですからあり得るということで、その場合にも、厳格な手続を経ることによって、しっかり消費者の保護を図ってまいりたいと思っています。
(問)特商法に関連してなんですけれども、今回の改正で盛り込まれている契約書面のデジタル交付について、消費者団体からいろんな懸念が示されて、消費者委員会からの建議というのも出ています。
 それで、きちんと承諾を得るだとか、悪質業者が悪用できないような仕組みに政省令・通達で今後定めて、もし改正になった場合には今後定めていくというお考えは伺っているんですけれども、あまりに細かく定め過ぎてしまうと、正業の業者も使いづらくなってしまうのではないかというジレンマがあるのではないかと思いまして。そもそも消費者の利便性を図るためにデジタルでの契約書面の交付もOKにするという議論の出発点だったと思うんですけれども、そこのバランスをとるのが難しいのではという懸念があるんですけれども、ここについて、大臣はどうお考えでしょうか。
(答)やはり大事なのは、消費者の立場に立つということだと思っています。デジタル化の社会が今後ますます進展していく中で、むしろデジタルが望ましいという消費者の方もいれば、そうではないという方もいらっしゃるわけですから、それぞれのニーズに応じてしっかり対応ができるようにといったのが、私は基本的な考え方だと思っております。
 ですから、法制度として仕組むときには、いわばバランスといいますか、役割分担といいますか、そういうところを明確にしていくということだと思っておりまして。ですから、手続とか基準とか、そういったことは政省令、そういったものできちんと明確にしていくということが今後大事なのかなと思っております。

(以上)