井上内閣府特命担当大臣記者会見要旨 令和3年1月19日

(令和3年1月19日(火) 10:17~10:36  於:中央合同庁舎第4号館4階共用408会議室)

1.発言要旨


 科学技術政策担当大臣として報告をいたします。
 本日、先ほど第8回統合イノベーション戦略推進会議を開催しました。会議では、第6期科学技術・イノベーション基本計画素案、10兆円規模の大学ファンドの創設、標準の戦略的な活用に向けた取組、マテリアル、バイオ、量子、環境の各分野別戦略について、私から説明し、「第6期科学技術・イノベーション基本計画素案」及び「バイオ戦略2020」について了承をいただきました。
 会議の中で加藤官房長官より、私を含む関係大臣に対し、感染症の拡大や気候変動といった課題に直面する中、科学技術に対する国民の期待は高まっており、政権の重要課題であるデジタル化の推進やカーボンニュートラルの実現をはじめとして、国民の期待に応え、社会変革につなげていく科学技術・イノベーション政策を進めることなどの指示がありました。本日の会議の詳細については、後ほど事務局から説明をさせていただきます。
 私から特に申し上げたいのは、昨日、菅総理が施政方針演説の中で示されたように、本日報告した第6期科学技術・イノベーション基本計画の素案では、今後5年間の政府の研究開発投資の目標を、第5期目標を4兆円上回る総額約30兆円とするとともに、官民合わせた研究開発投資を総額約120兆円とすることとしていることであります。素案については、明日20日から3週間のパブリックコメントを開始し、その御意見も反映した上で、与党審査等の手続を経て、年度内の閣議決定を目指しております。次期基本計画では、財源を十分に確保しながら、我が国の科学技術・イノベーション政策の抜本的な強化を図ってまいります。
 国際博覧会担当の大臣として報告します。
 先週1月15日に、4カ国の在京大使、またその代理の方をお招きし、大阪・関西万博への参加招請を行いました。
 まず、私より昨年12月1日のBIE総会での登録承認を受けての大阪・関西万博の成功に向けた決意を表明するとともに、新型コロナウイルス感染症で世界中が苦しむ中、ポストコロナの時代を見据え、次の世代の命のための強靱で持続可能な社会を思い描かなければならない、このポストコロナ社会のショーケースとして、世界各国とともにつくる万博であることを強調し、各国の積極的な参加を強く働きかけました。相手国からは、大阪・関西万博への強い関心と期待が表明され、参加を前向きに検討いただいているとの印象を受けました。大変心強く思っております。できるだけ早期に参加表明してもらえることを期待しております。
 なお、これまでの参加招請の進捗状況としては、私自身がフィリピンとの閣僚会談を含め、22カ国1国際機関に働きかけたほか、私以外の閣僚からも、会談等の機会を捉えて働きかけを行っていただいており、いずれの国からも前向きな反応をいただいています。また、各在外公館において、大使を筆頭に積極的に働きかけも行っております。コロナ禍で大変厳しい状況ではありますが、今後とも様々な機会を活用して、しっかりと招請活動を進めてまいります。
 消費者及び食品安全担当大臣として発言します。
 緊急事態宣言後の状況についてですが、新型コロナウイルスに関連する消費生活相談については、特に足元で急増しているような状況ではありません。物資の需給状況については、現在のところは緊急事態宣言が出された地域において、生活関連物資が品薄になったという情報は寄せられておりません。
 物資については、本日の閣議において、国民生活安定緊急措置法に基づき、昨年8月のマスク等の転売禁止の解除を含む昨年下期の施行状況報告を決定いたしました。現在、マスクや消毒液等の需給状況は改善しており、これは事業者の努力によって十分な供給をいただいているとともに、消費者の皆様にも冷静に対応いただいているからだと考えています。
 本日公表する1月の物価モニター調査でも、物価に加え、コロナ禍での買い物に関する意識を調査しましたが、トイレットペーパーや米・乾麵などの食料を一定数の人が買い置きするなど、冷静に対応いただいている様子を窺(うかが)うことができました。消費者の皆様においては、引き続き落ち着いた購買活動をお願いしたいと思います。同時に悪徳商法にも御注意いただき、少しでも不審なことがあれば、消費者ホットラインに御相談をお願いします。
 もう一件、消費者及び食品安全担当の大臣として報告します。
 昨年末、携帯電話料金の低廉化に向けた取組として、携帯大手各社の広告表示について総点検を行いました。
 各社において、それぞれ指摘内容を踏まえ、広告表示の見直しについて前向きに取り組んでいただいていると承知しており、現在その見直し結果をお待ちしております。加えて、大手3社の新しい格安料金プランが出そろいましたが、今後その広告表示が本格的に実施されていくものと思います。
 その際、仮に他社の料金プランと料金・サービス内容を比較する形の広告表示を行う場合には、比較対象となる料金プランの条件をそろえて比較するなど、比較の方法が公正である必要があり、各社におかれては、十分御注意をいただきたいと思います。
 消費者及び食品安全担当大臣としては、消費者が自分のニーズに合ったプランを選ぶことができるか、分かりやすい表示になっているかという観点から、携帯電話各社の広告表示について今後も注視し、必要がある場合は適宜指導等を行ってまいります。
 以上です。

2.質疑応答

(問)統合イノベーション戦略会議のことについてお聞きしたいんですけれども。2つありまして、1つは、大学ファンドが今後運用開始されるかと思うんですけれども、そのスケジュール感について教えてほしいのと、もう1つは、基本計画で30兆円というふうに今日発表されましたけれども、この30兆円の根拠について教えてもらえますか。
(答)まず、大学ファンドのスケジュールにつきましては、今後、総合科学技術・イノベーション会議のもとに設置する予定である資産運用や金融などの専門家から構成する有識者会議において、運用の基本的な考え方等について検討するとともに、運用主体であるJSTの体制整備などを行った上で、2021年度中の運用開始を目指してまいります。
 次に、30兆円の根拠についてですけれども、我が国として諸外国との熾烈な競争を勝ち抜くため、ポストコロナ時代を見据えた各国の科学技術・イノベーションに対する追加投資の水準等を勘案して、大胆な規模の投資を確保する観点から設定をいたしました。
 諸外国政府では、例えば米国では5年間で10兆円、英国では5年間で3兆円、ドイツでは2年間で2兆円、フランスでは10年間で3兆円、それぞれ増の計画がされております。我が国が世界を主導するフロントランナーの一角を占め続けるためには、これら諸外国の投資規模や人口・経済規模を勘案し、見劣りしない規模となるよう、第5期目標を4兆円増の30兆円の目標を設定したということです。
 また、官民合わせた投資目標については、今後民間投資をさらに引き出していく必要があり、これまでも官民合わせた投資額について、政府投資の4倍程度で推移してきていることから、今回、政府の大胆な投資目標に合わせて民間の投資努力を促すため、120兆円の目標を設定しました。
(問)同じく、統合イノベーション戦略推進会議についてお伺いいたします。
 統合イノベーション戦略2020で策定すると定められましたマテリアル革新力に関する政府戦略ですけれども、今回中間論点整理でようやく全体の概要が見えてきたかと思います。これに対して大臣の所感がありましたら、お答えいただけると幸いです。
(答)マテリアルは、我が国の科学技術・イノベーションを伝える基盤技術であるとともに、リチウムイオン電池や青色発光ダイオードなど、我が国がこれまで数多くのイノベーションを生み出し、世界の経済・社会を支えてきた重要な分野です。「マテリアル革新力」の強化に向けては、入り口側の研究開発力の強化のみならず、出口側の社会実装の迅速化における課題も重視しており、本日示した中間論点整理において、戦略の基本方針として、1.産学官競争による迅速な社会実装、2.本質研究とイノベーション基盤の強化、3.人材育成等の持続的発展性の確保の3点を掲げております。国際競争が熾烈となっている中、産学官関係者が共通ビジョンのもとで、我が国の強みに立脚した政府戦略の策定を目指してまいります。
(問)同じく、イノベーション基本計画について伺います。
 今回の基本計画で掲げた政府の投資目標30兆円というのは、過去最大規模だと思います。ただ一方で、過去5回の基本計画で掲げた政府投資目標額は、実際の政府の予算額では目標を超えていない現実があると思います。こうした過去の事例から見ても、この目標を達成するというのは相当大きなハードルがあると思うんですが、この財源確保をしたいと先ほど大臣はおっしゃいましたが、その辺の決意とか、改めて今回大きな目標を掲げることの意義について、大臣の御所見を伺いたいと思います。
(答)短期的には成果が出にくい科学技術の特性を踏まえて、これを長期的な視点で振興していくため、第1期以降、政府予算の単年度主義を超えて、5年間という複数年度の研究開発投資目標を設定してまいりました。このように、基本計画において、政府全体として具体的な投資目標を設定することを通じて、科学技術関係予算は、期を追うごとに着実に増額をしてまいりました。
 また、投資目標を示すことで、政府投資を呼び水として民間投資を促進する相乗効果も期待しています。次期基本計画においても、諸外国との熾烈な競争を勝ち抜く観点から、大胆な規模の研究開発投資目標を設定させていただきました。
(問)現在最終年度の5期については、その政府投資目標に対して、実際今どのくらいまで積み上がっているのか、現状の把握している情報を教えてください。
(答)5期につきましては、対GDP1%、そして約26兆円を目指すとしております。令和2年度第2次補正予算までを集計した金額、これが24.6兆円です。その後の令和2年度第3次補正予算及び地方公共団体分までを集計した第5期期間中の総額、これは現在集計中ということで、集計が済み次第、公表したいと思っています。
(問)基本的には、コロナ対策の緊急経済対策とか3次補正で大型の補正を組んでいますけれども、これに関連したものは5期に入るという認識でよろしかったでしょうか。
(答)3次補正までは今年度ということですから5期に入ると認識をしています。
(問)達成する可能性としては高そうだということですか。
(答)今24.6兆円ということで、あと1.4兆円ですから、そういう意味では可能性は高いと期待をしております。GDP比1%という目標についても同様だと考えています。
(問)河野大臣がワクチン担当の大臣に任命されたことに対しての期待感や、大臣の御所感などがあれば教えてください。
(答)やはりこの新型コロナ対策というのは、現在政府における最重要課題でありますから、それをしっかり推進していくために、河野大臣がその役割を担っていただくということは大変私も期待しておりますし、私もワクチンの研究開発とかいろんな所掌事項もありますから、しっかり協力してやってまいりたいと思います。
(問)携帯電話料金に関してなんですけれども、15日の武田総務大臣の記者会見で、auの新ブランドの「最安値」という表示が紛らわしいという発言があったかと思うんですが、井上大臣として、現在出ている各社の広告表示に関して思われることはありますでしょうか。
(答)御指摘の件については、料金プランの発表があったばかりで、広告という意味では、どのような広告がされるかも不明な段階ですので、コメントは差し控えたいと思っています。
 他方で、一般論として言えば、他社の料金プランと料金・サービス内容を比較する形の広告表示を行う場合には、比較対象となる料金プランの条件をそろえて比較するなど、比較の方法が公正である必要があります。携帯電話各社においては、今申し上げた点にも留意して適正な広告表示の実現に向けて取り組んでもらいたいと思っています。
(問)先ほどお話があったように、菅総理の表明の中で、小・中学生に1台の端末を与えながらオンライン教育であるとか、あと高齢者、障害者、デジタルに不慣れな方々にとってデジタル化が恩恵に浴するような、そういう政策をやるということを表明されていらっしゃいました。
 井上大臣としてはデジタル庁との連携ということについて、消費者政策の中で連携が必要だと思いますけれども、改めてお考えがあればお聞きしたいということが1点です。
 もう1点が、先週、企業の消費者担当窓口の担当者の方々が集まっている消費者専門家会議(ACAP)というところが「わたしの提言」という論文の賞を発表されたという中に大臣賞がありました。井上大臣の大臣賞がありましたが、それについて一言コメントをいただきたいということです。その2点をお願いします。
(答)デジタル庁との協力ということに関して言うと、消費者担当大臣としては、やはり消費者庁のデジタル化、これもより一層進めていかなければいけないと思っておりますので、そこは協力して取り組んでいきたいと思っています。また、デジタル化が進んでいくことによって、様々な消費者問題における課題というものも出てきてまいりますから、それについてもしっかり対応していきたいと思います。
 それから、この御質問のACAPの件に関してですけれども、今年度は、熊本県の小学校において教鞭を執られている清永康代先生が書かれた「持続可能な社会の担い手として、意思決定のできる児童を育てる」と題した作品を、内閣府特命担当大臣賞に決定しました。清永先生は、小学校の家庭科教育において、消費者教育を盛り込んだカリキュラム作成、現場での実践を長く行っていただいています。それを踏まえた今回の提言は、単なるお金の使い方や契約の意味等の知識を教えることにとどまらず、それを踏まえ、実際にどう意思決定するかを教えることが消費者教育に当たっては重要とし、例えば家庭科の料理実習では、実際の食材を地元の商店でどう購入するか、食品ロスを発生させないことに配慮しつつ、地産地消の購買などを教えることを提言し、実践しております。エシカル消費の教育としても大変意味のある提言、取組であると考えています。

(以上)