井上内閣府特命担当大臣記者会見要旨 令和2年11月27日

(令和2年11月27日(金) 11:26~11:46  於:中央合同庁舎第4号館2階共用220会議室)

1.発言要旨


 科学技術政策担当大臣として報告をいたします。
 昨日、日本学術会議の梶田会長ほか幹部の皆様に大臣室までお越しいただき、学術会議のよりよい役割発揮に向けた課題について、現在の検討状況を説明いただきました。
 また、昨日の意見交換では、学術会議側から、従前から検討されている5つの課題のほかにも、学術会議がナショナルアカデミーとしての機能を発揮する上で最も適切な組織のあり方についても検討するとのお話をいただきました。
 私としては、5つの課題に対する検討状況を確認した上で、学術会議の組織の見直しについては、国の機関から切り離すことも含めて、学術会議としてよりよい機能発揮のために望ましいと考えられる形態を御検討いただきたいと申し上げました。その上で、年内にできる限りの対応案を取りまとめて御報告をいただきたいと改めてお願いいたしました。
 今後とも、学術会議のあり方につきましては、梶田会長をはじめ学術会議と緊密に連携して、ともに未来志向で検討してまいります。
 もう一つ、科学技術政策担当大臣として報告をいたします。
 昨日、SIP事業の一つである自動運転のプロジェクトにおける東京臨海部実証実験の一環で行われている自動運転バスに試乗したことを御報告いたします。
 本実証は、次世代公共交通システムの実現に向けて、羽田空港地域に整備した磁気マーカーなどのインフラと協調した自動運転バスの実証であります。公共交通の分野では、高齢化等によるドライバー不足や、移動制約者等にも優しい移動手段の確保などの課題があり、自動運転技術による解決は喫緊の課題です。まだクリアすべき課題はあるが、乗り心地は非常によく、着実に自動運転の社会実装に向けた開発が進展していると実感しました。
 この度の実証実験で得られた技術的な成果を高齢者の多い過疎地における公共交通システムへの導入を進めるなど、自動運転の実用化に向けて、産学官が連携して引き続き取り組んでまいります。
 消費者及び食品安全担当の大臣として報告します。
 消費者庁では、デジタルツールを活用した食品表示の可能性を検討するため、12月から首都圏2カ所と徳島県1カ所の小売店で実証事業を開始します。これは、デジタル化に対応した消費者施策の推進の一環でもあります。
 現在、食品表示は大きく容器包装上に行う必要があるが、現状でも多くの義務表示事項があるのに加え、多様化するニーズに即した表示をさらに行うようにとの声もある。一方で、表示事項が増えると、ニーズが多様化する消費者にとって表示が見づらく、活用しづらくなるとの指摘もされています。
 このため、この実証事業では、デジタルツールを活用する上での技術的課題を把握するとともに、消費者のニーズを直接確認し、食品表示におけるデジタルツールの実用化に向けた具体的な課題を探ることとします。
 消費者庁としては、デジタル化社会に対応し、消費者のニーズにきめ細かく対応して、見やすさ・分かりやすさを向上させるよう、可能な限り早期の食品表示におけるデータツールの実用化に向けて取り組んでまいります。
 国際博覧会担当の大臣として報告します。
 明日、11月28日に、大阪にてテレビ番組への出演を予定しています。また、博覧会協会のシニアアドバイザーである吉田憲司氏と、テーマ事業プロデューサーである石黒浩氏と意見交換を行う予定です。どのような万博を目指すのか、また、具体的なテーマ事業のイメージなどについて意見交換をしてまいります。
 最後に、クールジャパン戦略担当の大臣として2件報告します。
 現在、コスプレイヤーとして活躍されている、えなこさんのクールジャパン・アンバサダー任命式を12月9日に開催します。
 クールジャパン・アンバサダーは、クールジャパンの発信力強化を主な目的として任命しています。えなこさんは、御自身のSNSで国内外に多くのフォロワーを持つコスプレイヤーです。その高い発信力を生かし、日本の魅力や文化を世界に発信していただくことを期待し、今年の4月1日にクールジャパン・アンバサダーに任命しました。また、えなこさんには、クールジャパン・アンバサダーとして情報発信のほか、コスプレイヤーとしての活動を通じて、著作権に関する正しい理解や適切な利活用の普及・啓発を行っていただけることも期待しております。
 なお、コスプレと著作権に関しては法的な課題が生じることも認識しており、コスプレイヤーの皆さんが安心してコスプレを楽しむことができる環境整備に努めてまいりたいと考えています。
 もう一つ、佐賀出張について報告します。
 地方におけるクールジャパンの発掘・発信を目的として、2013年度以降、全国14カ所で地方版クールジャパン推進会議を開催してきました。12月5日に佐賀県において地方版クールジャパン推進会議を実施し、諸般の事情が許せば私も出席する予定です。
 同会議においては、佐賀県知事や佐賀市長、有識者とともに、佐賀県の様々な魅力をいかに磨き国内外に発信していくのか、また、佐賀県が取り組むロケ誘致の効果や幅広い地域への裨益などについて議論する予定です。
 会議のほかに、佐賀県知事が力を入れているプロモーション施策など、佐賀県におけるクールジャパンの取組を視察する目的で、日本茶や和紙など地域の魅力を生かした取組、海外映画等のロケ撮影の誘致の取組などを視察する予定です。議論や視察を通して、地域の活性化やクールジャパン戦略を一層効果的に推進していく方策など、今後の政策の検討に役立ててまいります。
 以上です。

2.質疑応答

(問)昨日、CSTIの有識者会合で、日本の新しい研究融合領域への進出が諸外国に比べて遅れていると。そういう状況に対して、これから大臣としてはどのように取り組むのか、教えてください。
(答)新しい研究領域を開拓するような取組が諸外国と比べて不足している、そういった指摘は承知をしております。分野融合による研究領域は、世界に新しい「知」をもたらし、イノベーションの源泉となる成果創出につながるものです。例えば、脳科学研究やマクロ経済研究などとAI研究を融合させることで新しい成果が創出され始めています。このような独創的な研究領域の開拓のためには、研究者の自由な発想のもとで行われる挑戦を促進し、腰を据えて長期的に研究に取り組める環境を整備していく必要があります。
 このため、令和元年度の補正予算によって若手研究者を中心に、最長10年にわたって支援する「創発的研究支援事業」を整備しました。さらに、研究者が新しい研究に挑戦できる環境整備に向け、安定的なポストの確保や世界と伍する規模の大学ファンドの創設など、議論を進めているところであり、次期科学技術・イノベーション基本計画で具体化してまいりたいと考えています。
(問)消費者担当大臣として御発言のあった食品表示の実証実験のことで伺わせてください。
 消費者のほうからは、食品表示が見づらかったり、項目が多すぎて分かりづらいといった声も多く聞かれているということですけれども、今回の実証実験を通して、大臣として、この食品表示の活用のあり方、期待されていることがあれば教えていただけないでしょうか。
(答)今回の実証に参加いただいている企業が、今23社となっておりまして、今後は食品表示におけるデジタルツールの活用に取り組んでいただく民間事業者を拡大していくこと、これが重要と考えています。このため、農林水産省や経済産業省とも連携をして、さらに多くの企業に参加していただくように働きかけて、最終的には本取組を推進するための官民共同の体制整備を行い、より幅広い取組となるように努めていきたいと思っています。
 こうした取組を通じて、デジタル化社会に対応し、多様な消費者のニーズにきめ細かく対応し、表示の見やすさ・分かりやすさを向上させ、可能な限り早期の食品表示におけるデジタルツールの実用化に向けて取り組んでいきたいと思います。
(問)クールジャパン関連でお伺いします。
 これまでクールジャパン・アンバサダーは、声優の平野綾さん、松本梨香さんがなられていらっしゃいますけれども、えなこさんがコスプレイヤーとしては初めてかと思います。4月1日に任命ということで、えなこさん自身も漫画誌のグラビアとかでも活躍されていらっしゃいますけれども、大臣が御就任になられる前から御存知だったのかどうかということがまず1点。
 もう一つ、クールジャパンと知財戦略において、コスプレについてどのように捉えていらっしゃるのか、大臣御自身の御見解をお聞かせいただければと思います。
(答)コスプレについては、本当に熱狂的なファンも多く、そして、それを楽しむコスプレ人口も非常に増えているということは認識をしておりますけれども、残念ながら、えなこさんのことを個別には知っていませんでした。
 日本にはポップなものから深淵なものまで様々な魅力があって、その多様性はクールジャパンを支える日本の強みと考えています。クールジャパンは様々な分野を包含することから、アンバサダーについても多くの分野から任命することが重要であります。これまでポップカルチャー分野におけるアンバサダーが少なかったことから、昨年以降、ポップカルチャー分野からアンバサダーを任命させていただきました。
 今後は、これまで任命したアンバサダーの発信力をより活用しつつ、クールジャパンの取組を進めていくことが重要だと考えています。
(問)万博関連で1点質問させてください。
 BIE総会の直前だと思うんですけれども、今回の大阪出張で何か詰めておきたいことだとか、確認しておきたいこととか、そういったことは何かありますでしょうか。
(答)時期的にはBIEの直前なんですけれども、今回の出張については、特にBIEに向けてということで行くわけではありません。先ほど申し上げたように、シニアアドバイザーや、あるいはプロデューサーと意見交換がありますので、そこで今後の万博の様々な課題について率直に意見交換をしていきたいと思っています。
(問)先ほどのクールジャパン・アンバサダーの関係で、冒頭の発言の中で、コスプレイヤーが安心してコスプレできる環境整備を進めるというふうにお話しされましたけれども、具体的にどういった環境整備が必要だというふうに認識されていますでしょうか。
(答)コスプレと著作権に関して法的な課題が生じ得るということは認識をしておりまして、例えば私的使用などの例外を除いて複製等をする場合に著作権者の許諾が原則として必要になるが、キャラクターになり切って写真を撮る場合、あるいはその写真をSNSに載せる場合、またイベント等に参加して報酬をもらう場合、こういった具体的な場面において法的な整理が必要だという指摘がありますので、それについてはしっかり受け止めて検討していかなければとは思っています。
(問)学術会議の件でもう一度お願いします。昨日大臣は、梶田会長に、国の機関からの切り離しも含めて幅広く検討してほしいと要請しました。この国からの切り離しを選択肢として考えてほしいと大臣が要請した理由、改めてこの辺、教えてください。
(答)これは学術会議の組織のあり方ということで、やはり幅広くいろんな課題について検討していただきたいということを従来から申し上げておりますので、その一環ということであります。
 私も有識者の方とか、あるいは若手研究者の方とか、いろいろ御意見も伺っておりますし、あるいは国会や国民世論、そういったところからもいろんな問題意識が示されております。そういう意味では、本当に国の機関の一環である必要があるのか、あるいは公務員である必要があるのか。そういったような御意見もあるものですから、そういったことを受け止めて、まず学術会議側で考えていただきたいということを申し上げました。
(問)例えば、どのような有識者の意見とか国民世論の声を受けて、そういうふうに考えるのか。もし具体的に何か根拠というか、あれば教えてください。
(答)どなたがいつ言ったとか、そういう話ですか。
(問)国の機関から切り離すと考えた、その理由ですね。根拠になった、その意見とか。
(答)多分、それはお調べになればすぐ分かると思いますが、いつ、誰がどう言ったかまで、この場ですぐには即答できませんけれども、そういった御意見がたくさんあったことは多分御承知だと思います。
(問)これから学術会議側で年末に向けて意見を集約すると思うんですけれども、もし仮に反発とかがあって意見がまとまらなかった場合ですが、これは学術会議側の了解というのが前提でないと、そのような組織の見直しというのはできないのか、それとも了解は必要ないのか。その辺、どういうふうに考えていらっしゃるんでしょうか。
(答)反発というか、何も私が意見を申し上げて、それは方向性を示しているわけではないので。ですから、あくまで私の意見として、それはお聞きになっていただいた上で、まずは学術会議の皆さんに考えていただくと、そういうことです。当然のことながら、その学術会議の皆さんから年内に報告をいただいて、それをもとに我々が我々で考えていくということになります。
(問)今の質問に関連してなんですけれども、切り離すというのが、いろんな方の意見を伺った上で大臣がそういうふうな発言をされたんだと思うんですけれども、大臣自身の問題意識としては、国から切り離すというところ、どういった問題意識を持っていらっしゃって、そういった提案というか、昨日の話になったんでしょうか。
(答)そういう意味では、学術会議の検証に関しては様々な課題があると思っています。ですから、その一環として、当然組織のあり方というのは大きな課題ですから、やはりそこはちゃんと検討してもらいたいという考えです。
(問)これは何か方向性を示しているわけではなくて、一例として切り離しというのもありだよねということで提案されたということなんでしょうか。
(答)そうです。
(問)あえていろんな選択肢の中からそれを選んだ、その大臣の問題意識というのはどういったところになるんですか。繰り返しで申し訳ないですけれども。
(答)たまたま昨日、ぶら下がり会見でちょっと御紹介をしたということであって、梶田会長はじめ学術会議の皆さんとは、いろんな論点についていろいろ意見交換をしております。その一例ということです。
(問)となると、他のあり方も大臣のほうから、こういったあり方もあるのではないかということで、何か提案されたこともあるということですか。
(答)学術会議の皆さんから、やはりナショナルアカデミーとしての機能、役割、これはやはりしっかり堅持した上でよりよいものをつくり上げていきたいといったようなお話がありました。そういう中で、ナショナルアカデミーとしての組織のあり方には一体どういう形があるのか、そういった議論の流れでした。

(以上)