西村内閣府特命担当大臣記者会見要旨 令和2年6月23日

(令和2年6月23日(火) 10:33~10:58  於:中央合同庁舎8号館1階S101・103会見室)

1.発言要旨

 おはようございます。
 私から冒頭、AIを使ったシミュレーションについてお話し申し上げます。
既に発表しておりますけれども、これまで、今回経験した新型コロナウイルス感染症で得られたデータ、そして知見などを今後の対策に生かしていく。大きな波にしないように、小さな波で抑え込む努力は検知し、クラスター対策でやっていくわけですが、第2の大きな波が万が一来ることにも備えて、対策をしっかりブラッシュアップしていこうということであります。
 そして、まさに感染拡大防止と経済活動、社会活動との両立を図っていく「新しい生活様式」の定着を図っていく観点から、人工知能、スパコンを最大限生かして対策を考えていこうということであります。第2次補正予算で14.4億円を計上しております。これを活用してAIのシミュレーションを行っていきます。
 既に私どもコロナ室、IT室を中心にAIの研究ネットワークがありますので、研究者の皆さんからヒアリングを行っておりますし、また、使う側のニーズの側からもヒアリングを行って、今、テーマ選定を行っているところであります。
 特に2つです。1つは飛沫経路のシミュレーション。これを生かしたイベント等においての感染拡大防止策の検討。それからもう1つは、いわゆる8割接触削減のある意味背景となった、根拠となったSIRモデル。使えるモデルがこれしかなかったというのも現実、実際のところでありまして、このSIRモデルの検証も含めた、まさに感染拡大のシミュレーション、対策の効果分析を行っていきたいと考えています。特に、世界ランキングで1位を獲得しましたスパコンの「富岳」も最大限活用していきたいと思っております。
 そうした中で、2つの会議体を設置いたします。1つは、もう既に専門家会議のメンバーとして最前線で対策に当たられてきた、また、WHOでSARSの対策の経験もある押谷先生を初めとする感染症の専門家とAIの専門家の皆さん、特にAI戦略実行会議の座長であります安西祐一郎先生、元慶応大学の塾長でありますが、何人かのAIシミュレーションの皆さんとの間でAIシミュレーションの検討会議を設置いたします。これは、要は先ほど申し上げたようなテーマを選定していく会議でありまして、明日24日に第1回を開催いたします。
 そして2つ目、こちらの画面に出ておりますけれども、まさに感染防止対策のAIシミュレーション等による効果分析を進めるために、対策効果分析のアドバイザリー・ボードを設置いたします。委員長に黒川清先生に入っていただきまして、そして安西先生、自治医科大の永井先生と山中教授にも入っていただきまして、これから我々が行っていきますAIシミュレーション、特に飛沫経路をどう防いでいくのかということ、その中で、これまで我々がやってきた対策がどういう効果を持ったのか、対策の効果分析を行いながら、この4人の先生方にいわばそれを評価していただき、意見をいただくアドバイザリー・ボードとしてこの4人の先生にお願いし、快諾を得たところであります。
 第2の波が来たときに、これまでの対策の教訓を踏まえて何をやるべきかをしっかりと科学の力、人工知能、そして世界最先端のスパコンも使ってこれを分析し、4人の先生方から御意見をいただきながら、次なる第2波に備えていきたいと考えております。
 私から以上です。

2.質疑応答

(問)今御紹介いただいた会議なのですけれども、先日大臣がおっしゃっていたイベント開催の収容率の上限についての検討会との連携の仕方はどうなっているのでしょうか。
(答)イベント検討会のほうは、もう既に先週19日に第1回の検討会が開催されております。そちらでも「富岳」を用いて飛沫シミュレーションをやりながら、専門家の皆さんと業界の皆さんが一同に会して今、議論を進めているところであります。
 クラシック、音楽、ミュージカル、古典演劇、あるいはチケット関係、様々な劇場関係の方々に入っていただいて、そして感染症の専門家の皆さんも入っていただいて、これは既に。いわゆるガイドラインをどう作るかという、この業界の議論でありますので、それはそれでもうスタートしています。こちらはこちらで、できれば今月の末、あるいは来月の初めぐらいにはぜひまとめたいと思いますし、「富岳」のシミュレーションが間に合えば、それも生かしていきたいと考えています。
 それとは別に、むしろこの一連の大きな波、2月から3月、4月、5月、特に4月、5月の緊急事態宣言を発出しているこの時期に国民の皆さんに8割の接触削減をお願いし、様々な自粛をしていただきました。そして、多くの事業者の皆さんに休業要請をし、それを実行していただいたわけでありますけれども、これらの経験を踏まえて様々なデータも出てきておりますので、そして世界的のいろいろな知見も集まってきています。そうしたものを集大成しながら、人工知能と、そしてスーパーコンピュータを使って次なる第2波に備える対策、我々が今回行ってきたことの効果分析を行って、次に備えるということであります。
 そのいわば大きな視点での議論に大所高所から御意見をいただく意味で、この4人の先生方にお願いして快諾をいただいたということでありまして、近く準備会合を開催したいと思っておりますし、様々な先ほど申し上げたテーマ選定をやりながら、実際に人工知能やスパコンを動かしていく中でいろいろな検証が出てくると思いますので、分析結果が出てくると思いますので、それをこの4人の先生方に大所高所から御意見をいただくというふうに考えています。
(問)現在、経済活動がどんどん再開されていますが、3密回避の対応などで経営的に苦しい事業者がたくさんありますが、この現状をどのように見ていますでしょうか。また、今後の追加支援の必要性はあるとお考えでしょうか。
(答)事業者の皆さんには、感染拡大を防止していただきながら、感染することを防ぎながら事業を再開し、その活動を広げられようとしているところ、非常に厳しい状況の中で苦労しながら、そして工夫しながらやられていること、改めて感謝したいと思いますし、敬意を表したいと思います。
感染がもし広がってしまえば、また何らかの対策を強化しなければいけないことになります。緊急事態宣言はもう出したくないと思っていますけれども。そしてまた、今回このような検証というか効果分析、大きな検証はもう事態が落ちついてからやるわけですけれども、とにかく第2波に備える対策の効果、対策の分析、これは急がなければいけないと思っていますので、それはやりますけれども。しかし、感染症対策の基本は、人と人との接触を断つことでありますから、もし感染が広がれば、やはりその基本に立ち返れば、人と人との接触を断つということになっていきますので、より厳しい状況になってきます。
 ですから、感染させない、感染を広げないという取り組みを前提として経済活動が広げられていくわけであります。先ほどの劇場でもそうですけれども、収容人員の半分というのは非常に厳しい状況だと思います。何かできないのかということで、スーパーコンピュータの力も借りながら、専門家の意見も得ながら、事業が継続していけるように我々としても応援していきたいと思いますし、何か工夫ができないのかと、常に進化させていきたいと思っています。
 ただ、それぞれの業種でガイドラインをつくっていただいて、アクリル板を置くとか、ビニールカーテンを引くとか、フェイスガードをするとか、換気をよくするとか、様々な努力を工夫をされているのだろうと思います。それについては、中小企業の皆さんには持続化補助金という形で応援していきます。商工会で今、募集もやっております。最大200万円まで使える、業種によって違ったりしますけれども、消毒液を買ったり、マスクを買ったり、換気をよくする設備を入れたりすることもできます。
 また、観客が少ない中でオンラインでライブ配信をやったり、最近はオンラインの飲み会、スナックの皆さんもオンラインでやったり、様々な工夫をされています。そういった設備を入れるのに補助も出ます。感染防止策をやっていただきながら、そして様々な工夫をしていただきながら、ぜひ、事業を継続、そして昔のようには直ちにはなりませんけれども、ぜひ、徐々に徐々に活動を広げていく、そうした取り組みをお願いしたいと思いますし、政府としてはそれを全力で応援していきたいと思っています。
 様々なデータも出てきますし、こうして科学の力も使いながら、前と同じことよりも、何か進化した形で対策がとれないのかということを常に考えていきたいと思いますので、事業者の皆さんには様々な御苦労があると思いますけれども、ぜひ、踏ん張っていただきたいと思います。1次補正、2次補正で手当した予算をできるだけ早くお届けしていきたいと考えています。
 持続化給付金も151万件で2兆円を超える給付となっておりますし、無利子・無担保の融資も約80万件で14.3兆円まで増えています。政投銀(日本政策投資銀行)のやや規模の大きいところまで入れると15.7兆円まで融資も進んできております。
 また、雇用調整助成金もなかなか手続が煩雑であったり、時間がかかって御迷惑をかけていますけれども、それでも今、申請の21万7,000件に対して61%の13万5,000件まできました。今、週4万件ぐらい対応できるような体制ができておりますので、できる限り迅速に必要とする方にこれをお届けしていきたいと。雇用調整助成金の上限も月額33万円まで引き上げておりますので、こうした支援策をうまく使っていただきながら、そして先ほど申し上げた持続化給付金で様々な対策がとれるようになっています。ちょっとした経費は持続化給付金で対応できます。ぜひ、こういったものを活用していただきながら、できるだけ早く2次補正で成立しました家賃の支援や「Go Toキャンペーン」とか、様々な御指摘を踏まえて改善をしながら、手続も当面やりながら、できるだけ早くこうした支援が届くようにしていきたいと考えております。
 もちろん今後、いろいろな事態もあり得ると思います。中小・中堅企業向けに出資や、いわゆる劣後ローンという長い資本性のあるローンも用意しております。私はいろいろな事態に備える万全の枠組みが整ってきていると思いますけれども、さらに事態がいろいろな変化をすることもありますし、日本経済、世界経済との関わりは非常に深いです。貿易立国でもあります。世界経済の動向いかんによっては、もちろん臨機応変に様々な対応を考えていかなければいけないと考えていますが、予備費の10兆円もありますので、臨機応変に対応していきたいと考えています。
まずはこの1次補正、2次補正の予算をしっかりと迅速に執行して、これを皆さんが使っていただけるように対応していきたいと考えているところです。
(問)先ほど委員長に黒川清先生を選ばれたと。黒川清先生はたしか81になられたと思います。ただ、この方はまさに原発で世界的にも名が知れているし、欧米の人脈もすばらしいと思うのですが、やはり何かそういうものを世界に発信していこうとか、あえて御高齢の黒川先生を選ばれたことに何を期待されておられるのかも含めて伺いたいと思います。
(答)黒川先生、私も外務政務官のころからだったと思いますけれども、アフリカでマラリア対策をやられて、オリセットⓇネットという蚊が入ってこないネット、蚊帳に殺虫剤を織り込んで蚊が刺さないということを世界に広げるときに一緒に取り組ませていただきました。まさにこの分野でも様々な知見を有しておられますし、また、いろいろな検証にもこれまでも関わってこられています。そういう意味で、我々がこの間とってきた対策について、私たち自身もしっかり見直さなければいけないと、もっと何かできたのではないかと、こういうやり方があったのではないかという、これも人工知能やスパコンの力も借りながら考えていきたいと思っていますが、その際に、より高い見地から世界的なネットワークも持っておられますので、我々の対策について、ぜひ、効果分析をする中で御意見をいただきたいと思っています。
 ある意味、人工知能のまさに専門家である、第一人者でもある安西先生、座長としていろいろな人工知能と見てこられています。それから、この医療の世界でも様々な御意見を私も既にいただいています永井先生、それと、やや第三者的に科学の目で見る、感染症の専門家ではありませんけれども、科学という視点から客観的に見ていただける山中先生ということで、これだけのメンバーに御快諾いただきましたので、私たちがとってきた対策についての効果分析についてしっかりと我々も議論して、それについて大所高所からの御意見もいただきたいと思っています。
 もちろん、皆さん国際的なネットワークをお持ちですし、知名度のある方ですから、日本がとってきた対策についてもう一度理解していただいて、そして足りなかったところ、改善すべきところ、よかったところをしっかりと世界にまた発信していただければと思いますし、私自身も引き続き発信はしていきたいと思っています。
(問)大臣のお話になられたことの確認になるのですが、2つの会議体の関係性について教えてください。あと、このアドバイザリー・ボードなのですが、分析のみにとどまるのか、それとも先ほどおっしゃったように新しいやり方、8割削減みたいなものの修正等も含め、新しいやり方も含めた提示をされていくのか。提示をされていくのであれば、大体時間的な目処のようなものがあれば教えてください。
(答)1つ目の会議は、先ほど申し上げたように大きな2つのことは考えていまして、やっぱり今回感染を広げているのは飛沫ですから、飛沫がどういうふうに広がっていくのかというところのシミュレーションをしながら、先ほども御質問がありましたけれども、それぞれの業界でいろいろな特徴がある中で、どうやって感染を防いでいけばいいのか、どういうことをやれば事業が継続できるのか、その視点で、ぜひこれ、特にスーパーコンピュータ「富岳」を使って進めていきたいと思っているという大きな視点が1つあります。
 もう1つの視点が、やはり私たちがとってきた大きな波を4月、5月、緊急事態宣言の中で皆さん方の御協力も得て対策をとってきたその結果は出ているわけですけれども、何が効いたのか、ほかにこういうやり方があったのか。それからSIRモデルも、これは世界で一応、ある意味オーソライズされたモデルでありますけれども、これ以外にないわけです。ですので、これが本当に正しいのかどうかということも含めて、人工知能やまさにデータサイエンティスト、AIの研究者の皆さんの知見も得ながら、モデル自体の検証もぜひやりたいと思っています。
 何でも1つのことに頼るといけませんので、いろいろな視点から見て、最後、総合的に判断していく。科学の力をベースにしながら、これは最後は政治が判断しなければいけないことではありますけれども、そのベースとなる科学者の力を結集したいと思っています。第2波が来たときに備えるための、今回やったことの効果の分析をしっかりやりたいと思っていまして、その中でその2つを大きく考えているのですが、様々な研究者の中にはいろいろなことを研究されている方がおられます。そして、事業者のほうはいろいろな事業体がいろいろなことを考えておられますので、そこをマッチングしながらテーマ選定を行っていくのが1つ目の会議でありまして、押谷先生を初めとする専門家の皆さんとAI研究者のネットワークとの間で、そこを代表される方々とテーマ選定を行っていくというのが1つ目の会議。
 こちらのほうは、先ほど申し上げた我々の4月、5月、緊急事態宣言のもとで様々な対策をとってきた、それについての効果の分析を行っていただく。そのときの、これは実際にはスパコンを動かす、あるいは人工知能を動かしながら考えるわけですけれども、それについて大所高所から御意見をいただいて。もちろん、それぞれお考えはあるでしょうから、こういったことはできないのかという新たな提案もその中で出てくることもあり得ると思います。
 全て急ぐんです。業界の皆さんも事業者の皆さんも、それぞれ何をどうしたらいいのか工夫されたいと思っていますから、急ぎますから、こちらも近く準備会合を開いて、来月末までには、1カ月ぐらいで人工知能やスパコンなども動かしながらまずは1回目の評価、分析について御意見をいただける会が開ければと考えているところです。
(問)今の1つ目の会議と2つ目と、それぞれ開催頻度であったり、報告として取りまとめたり、あるいは、最後に政策にどのような形で反映されるのかという見通しみたいなものをわかっている範囲で、改めてロジの部分を教えてください。
(答)これは、まずテーマを選定して、そして一定の手続を踏まないと、予算の執行ですから透明性のある形でやっていきたいと。実際には研究者の皆さんに研究してもらうことになりますので、そして人工知能を動かす、あるいはスパコンを動かすことになりますので、一定の期間は要ると思います。ですので、今の段階でいつまでにどうというのは申し上げにくいのですけれども。ただ、いずれにしても事業者の皆さんも急いでおられるし、2つ目の会議体についても、これは第2波に備えるという意味では、できるだけ早く今の時期に対策を分析し、次に備えなければいけません。そういう意味で、できるだけ早く準備会合を開き、そして実際にシミュレーションを動かしながら、AIやスパコンを動かしながら、今回やってきたことについてしっかりと評価をいただこうと考えています。
 当然、次の第2波に備えるという意味では、何を次にやらなければいけないのかということについて、ここでの分析、そして先生方の御意見を踏まえて判断していくことになっていくと思います。
 ありがとうございました。

(以上)