西村内閣府特命担当大臣記者会見要旨 令和2年6月19日

(令和2年6月19日(金) 12:15~12:42  於:中央合同庁舎第8号館1階S101・103会見室)

1.発言要旨

 もう既に御案内のことと思いますが、景気の現状についての総括判断は「景気は、新型コロナウイルス感染症の影響により、極めて厳しい状況にあるが、下げ止まりつつある。」と、先月から上方修正しております。
 我が国経済は、感染拡大防止のために、4月から5月にかけて緊急事態宣言の下で経済活動を抑制してきたため、この間の数字は極めて厳しいものになっています。これは、ある意味で外出自粛や休業など、国民の皆様に御協力していただいた裏返し、その結果でもあると思っております。改めて国民の皆様に感謝したいと思っております。
 先行きについては、そこにありますとおり「各種政策の効果もあって、極めて厳しい状況から持ち直しに向かうことが期待される。」としておりますが、ただ、当然のことですけれども、国内外の感染症の動向、それから金融資本市場の変動等の影響について注視していく必要があります。
 具体的に申し上げると、もう細かい数字は申し上げませんけれども、5月の景気ウオッチャー調査の先行き判断は、過去最大の上昇となっていることをはじめとして、業況判断には改善の兆しがみえます。また、個人消費も外食売上高が5月に前年比マイナス幅が縮小しておりますし、家電販売額も5月以降、前年比プラスとなっています。大手百貨店の売上高もマイナス幅を縮小していく中で、戻ってきていると、持ち直しの動きがみられるところであります。
 雇用だけちょっと申し上げたいと思います。前にもお話ししましたけれど、就業者の数が107万人減る中で、休業者が650万人ということで、4月はまさに大変な状況でありましたけれども、企業が休業という形で踏ん張ってくれている状況だと思います。これをしっかりと雇用調整助成金で支えていくということで、全力を挙げていきたいと思っております。
 就業者が約100万人減りましたけれども、休業で踏ん張っている中でこれだけ減っていますが、失業者は6万人しか増えていません。もちろん増えていますので、こういった方々へのマッチングが必要です。副大臣会議を開きましたけれども、必要とする業種にぜひうまくマッチングができるように、それぞれの地域で取り組んでいきたいと思っています。
 そうした中で、107万人の大半は一旦求職活動をやめて非労働力化しています。これが94万人増えているわけです。内訳を見ますと、女性の64歳以下が62万人、65歳以上の高齢者が男女ともに合わせて33万人となっております。何度も申し上げていますけれども、コロナは、要は弱いところについてくるわけです。しわ寄せが、こういった弱い立場にある方に行っているということだと思います。高齢者は当然感染リスクがありますから、一旦求職活動をやめるという選択をされているのではないかと思いますし、女性はお子さんの学校がずっと休みですので、そのために家にいなければいけないといったような背景があるのだと思います。
 経済活動の再開、そして段階的引き上げと同時に、感染防止策をしっかり講じながら、こうした方々がちゃんと復職できるようにしていきたいと思いますし、女性については以前から申し上げているとおり、正社員化、正規化を全力を挙げてやっていかなければいけないということだと思います。
 また、高齢者も感染リスクがありますので、テレワークなどになかなか馴染めなかった方もおられるかもしれませんけれども、そういったところをサポートしながら、高齢者も、元気な意欲のある方が働いていける環境を整備していきたいと考えています。
 今日からまた経済活動が引き上げられていくわけですけれども、感染リスクがゼロになるわけではありませんので、全て元に戻すということではありません。感染防止策を講じていただきながら経済活動を広げていくということでありますので、ぜひ、その点も御理解いただきたいと思います。
 いずれにしても、4月、5月を底にして内需を中心に経済回復をさせていければと思います。緊急経済対策、そして1次補正、2次補正を速やかに執行していくこと、GDP比6.4%分の直接的な下支え効果があるとみていますので、この間の厳しい状況にあった皆様方の事業・雇用・生活を全力で下支えしながら経済を回復基調に乗せていければと考えているところであります。
 私からは以上です。

2.質疑応答

(問)今回、「下げ止まりつつある。」ということで、まだ下向きの動きは続いているという御認識かと思うのですが、これを回復軌道に戻すためには何が欠かせないとお考えかということと、今日から全国の移動自粛が解除され、東京都の休業要請も全面解除されます。感染拡大予防と経済活動の活発化をどのように両立していくのか、あわせて改めて教えてください。
(答)外需はまだ非常に厳しいものがあります。輸出も大幅に減少しています。アメリカ向けも5割減ということで、対米貿易収支はとんとんという形になっています。中国は若干経済は戻りつつありますけれども、海外の経済動向は先行きが非常に不透明なところがあります。
 もちろん、経済活動の再開をしていっているところもありますけれども、第2波が生じているところもありますし、引き続き感染拡大が続いているところもあります。外需については慎重にみていかなければいけないと思っています。
 他方、内需については、今日も幾つかの数字をお示ししていますけれども、長い間の自粛もありました。様々な活動が上向いてきている、これは経済活動を再開し、そのレベルを引き上げていくわけですから、当然、経済活動は活発化していきます。
 また、今日視察しました文化・芸術活動であるとか、様々なイベント、社会活動も再開し、あるいは活動のレベルを上げていく段階にあると思います。
 大事なことは、感染防止策をしっかり講じることであります。このウイルスはどこに潜んでいるかわかりませんので、突然出てきます。北九州のような事例、愛媛県のような事例、あるいは東京もそうです。ですので、それを起こさないためにも感染拡大防止をしっかり講じていただくことが何より大事です。
 そして、仮に小さな流行が出てきたとしても、まずそれを検知する仕組みですね。これはPCR検査であったり、抗原検査であったり、最近では唾液を使った検査も出てきています。検知して、そしてそれをクラスター対策、もう少ししてからだと思いますが、アプリも導入できますので、これまでの保健所を中心とした人海戦術によるクラスター対策に加えて、より効率的に対策がとれるようになりますので、そうしたことを通じて小さな流行に抑えていく、大きな流行は作らない、これが何より大事だと思います。
 もう緊急事態宣言は出したくありませんから、小さな流行で抑えていく。そのためにもそれぞれの皆さんに感染防止を徹底していただくことが何より大事です。
 県をまたぐ移動についても再開されていきます。これから活発していくものと思います。そうする状況の中で、感染防止策は講じていただかなければいけませんし、観光地も「3密」を回避していただくとか、今日も国立新美術館もそうでしたけれども、入場制限をしながら人と人の間がとれるように、そうした工夫をしてもらいながら活動を再開、あるいはレベルを引き上げていくということであります。
 イベントについても、ガイドラインに沿って対応していただければいいのですが、収容人員の2分の1というのが非常に厳しいという声もいただいていますし、より新しい知見も出てきています。人工知能も使って、工学系の先生にも入ってもらってガイドラインをさらに進化させることができないか、そうした検討も進めていきたいと思います。
 プロ野球も今日から無観客で始まると聞いています。その場合でも、選手やスタッフの体調管理、あるいは感染防止策の徹底、試合前後の行動管理も含めて、とにかく感染しないように感染防止策を徹底していただくことが大事だと思っています。
 そうした様々な感染防止策を講じていくことについては、2次補正でもさらに拡充しております持続化補助金で、これは全国の商工会議所、商工会で受け付けておりますので、そういったものを活用してもらいながら万全の防止策をとっていただくことを我々としても支援していきたいと考えています。
(問)県域を越えた移動について伺います。今日から全面解禁になったわけですが、政府は観光については全面解禁と言わず、徐々に引き上げとしていると思います。自治体からは、今日から観光を全面的に解除してもいいのではないかという困惑の声も挙がっていますが、観光についてはなぜ徐々に引き上げなのでしょうか。
(答)一気に今から観光振興をやってしまうと、多くの人が移動して、人気のスポット、場所などに集中してしまいます。まさに「3密」を生みやすい状態を作ってしまいますので、徐々に徐々に。つまり入場制限をしながら、あるいは感染防止策を講じていただきながらなど、とにかく一気に人がどこかにわっと押し寄せるようなことが一番感染が広がる要因ですので、とにかく「3密」を避ける、そして感染防止策を徹底していく、そして一般の皆さんには、とにかく新しい生活様式を定着させていくことが必要だと思いますので、県をまたぐ観光については、徐々に徐々に広げていく取り組みをお願いしたいと思っています。
 今日から一気に日本中どこへ移動してもいい、そして、みんなでどこかへ観光に行こうということではなくて。もちろん移動はいいんですよ。必要な移動はしてもらっていいと思うのですが、しかし、一気に観光で1箇所に多くの人が集まって「3密」の状態ができることは避けなければいけませんので、そうしたことを理解していただきながら、当然、観光地、県内移動、あるいは県をまたぐ移動も徐々にこれから広がってくると思いますので、入場制限などさまざまな工夫をしていただきながら、地域の経済もまた活発化していくことを期待したいと思っています。
(問)大臣、月例経済報告のことについてもう一度教えてください。冒頭に、4月、5月を底にして内需中心に回復していければという御発言がありましたけれども、改めて確認ですが、これは最悪期は脱したという御認識でいいでしょうか。もう1点、総括判断では「下げ止まりつつある。」ということなので下向きのトレンドですけれども、底打ちの時期はいつぐらいだとみていらっしゃるのか教えてください。
(答)いわゆる緊急事態宣言の下でさまざまな活動自粛をしていただいてきました。4月、5月は、当然その裏返しで数字はものすごく悪くなります。厳しい数字になっています。その最悪の内需について言えば、それを底として既に様々な数値は上向いてきています。したがって、内需については4月、5月を底として経済活動を段階的に引き上げていっていますので活発化していく、そしてそれを先ほど申し上げました補正予算、こうしたもので迅速に執行して、それを下支えしていくことが大事だと思います。
 その上で外需について言えば、5月の貿易統計が非常に輸出は弱いですし、先ほどから申し上げているとおり、海外の経済動向は感染状況がまだどうなっていくのか不透明です。ヨーロッパをはじめとして感染者の数がかなり減って、域内の移動も活発化しようという動きもみられますが、他方で感染者の数がまた増えてきているところもありますし、そもそも感染が引き続いている南アジア、中東、あるいは南米、中南米、こういった地域もありますので、とにかく外需を含めた経済全体としては、それが最悪期を脱したのかどうか、これは慎重に見極めていかなければいけないと思っています。そういう認識でありますけれども、とにかく内需については、4月、5月を底に回復させていくということだと思います。
 したがって、全体としてみれば4-6月期のGDPもかなり厳しい数字になることは覚悟しなければいけないと思っていますが、内需を中心に回復基調に乗せていくことが大事だと思っています。
(問)首都圏マンション総販売数、対前月60%と、これは分析的には取引ができなかったからと書いてありますが、人口稠密な都市部の住宅地であれ商業地であれ、やはり買い手が非常に減っていると。これは、これからそういうところの地価を含めたある種の大きな構造的な変化が起こってくる前兆ではないかと私は思うのですが、マンションを含めた地価などについてはどんな御認識をお持ちになっていますか。
(答)不動産市場についてはよく分析しなければいけないと思っていまして、部局にも分析の指示をしているところです。
 御指摘のように、今回テレワーク、あるいはテレビ会議を含めて様々なやり方で仕事ができることがわかってきたと思います。毎日満員電車に乗って同じ時間に通勤しなくても、時差出勤もできるし、様々なやり方で仕事ができることがわかってきたと思います。
 また、人によっては、子育てをしながら仕事をする、テレワークをするには自分の書斎が欲しいと思う人も出てきていると思います。様々な意識の変化がありますので、都心部のリスクがあるところで仕事をするよりは、様々な形で多様な働き方が、今回経験してそれがいいのではないかという意識の変化、あるいは企業側の取り組みの変化もあると思います。それがどういう影響を与えていくのかについては、しっかりと見極めていきたいと思っています。
 オフィスも、そういう意味で、みんなが集まるオフィスはそんな広いスペースは不要ではないかという考え方も一方にありますし、他方、やはり人と人とがリアルに対面しながらいろいろ議論することの必要性、その場合には、むしろ距離をとらなければいけませんから、より広いスペースが必要ではないかという考え方もあります。
 また、オフィスや住宅以外にも、ネット販売によって物流が非常に活発に動いているデータもありますので、そういう意味で、物流施設についてはさらにいろいろな投資が行われるのではないかと。これはもう既にいろいろなデータがありますけれども、そういった見方もありますので、いわゆるオフィス需要以外の物流も含めた様々な施設の需要、それからマンションを含めた住居、住宅の市場、需要、こういったもの全体で分析しながら、今後、不動産市場がどうなっていくのかぜひ見極めていきたいと考えています。
 ただ、1つ言えるのは、やはり我々の長年の宿題であった、課題であった東京一極集中という問題です。これについては、今回のこの機に地方移住や地方で仕事をすることを希望する人たちも増えていますので、感染リスクを下げるということも、そしてまた経済全体の効率、あるいは豊かさを実感する、子育てと仕事と家庭を両立していくことも含めて、一極集中はもうこの機会にとめなきゃいけませんので、そのために地方への移住や地方での仕事、あるいは二地域居住のための課題をきちんと整理して対応していかなければいけないと考えています。
(問)外需の先行きを見通す際の大きなリスク要因として、保護主義的な動きの強まりを指摘する声がありますけれども、一昨日の国際政治経済懇談会でも恐らくそれが話題の中心だったのではないかと思いますが、世界貿易体制の足下の状況と目先についてどのようにごらんになるか御所見をお願いします。またあわせまして、一昨日の懇談会で朝鮮半島情勢について何かしらのやり取りがあったかどうかもお願いします。
(答)まず、後者の朝鮮半島については議論はありませんでした。
 そして、1点目の今後の貿易についてでありますけれども、今は各国とも海外との人の行き来をとめているところであります。そして経済をとめている状況ですので、当然貿易も落ち込んでいます。IMFや世界銀行などを含めて、OECDもですかね、今年の世界貿易についてはかなり減少するという予想が出ています。
 そうした中で、日本は資源のない国でもあります。そうした中で、基本は自由貿易、自由な貿易こそが富を見出すと、私はそれを確信しておりますので、自由な貿易、投資、通商、その環境を維持し、発展させていくことが大事だと思っています。
 当然、今各国は内向きになっている状況だと思いますし、特にさまざま、中国に依存してきた、あるいはほかの国に依存してきた重要物資、マスクであったり、あるいは防護服であったり、あるいは日本で言えばアビガンの原料も中国に依存してきた、こういったところをやはりいざというときに必要だと、国内で生産すること、あるいは一国に依存するのではなくてサプライチェーンを多元化、多層化してく取り組みの必要性は多くの人が指摘されているところであります。
 まさに自由貿易をより強靱なもの、よりしなやかなものにしていくべく、日本はそういたことを主導していく立場でぜひ進めていきたいと思っています。その1つが私の担当していますTPPだと思いますの。近く既にかなり収束しているオーストラリア、ニュージーランド、あるいはベトナムといった国々と意見交換をしながら、より強靱な自由貿易、自由な通商・投資、ハイレベルなルールをぜひ維持し、そしてそれを広げていく努力をしながら、一方で強靱でしなやかな貿易の体制を作り上げていくことが大事だと思っていますので、そういった意見交換をぜひしたいと考えているところです。
(問)諸外国で保護主義的な政策が実際に強まりそうな機運があるのかどうか、いかがでしょう。
(答)各国は今、内向き、海外との人の行き来も含めてとめているところですので、どうしても今、国内に目が向いていると思います。しかし、例えばイギリスのように日英の交渉が始まる、あるいはTPPにも入ることを考えているという表明がなされています。
 今、大変な危機にありますから多くの国が内向きになっていますけれども、やはり主導する形、あるいはまさに自由貿易を施行する国々とともに世界での自由で公正な貿易・通商の体制を作り上げていく、維持し発展させていく。その中に新たな観点として強靱でしなやかな貿易体制、どこかの1国に依存するのではなくて、よりしなやかな体制を作っていく。その際には、例えば重要な医療物資などを融通し合うようなことも考えられると思いますし、そういったことをこれから議論を進めていきたいと思いますし、ぜひ、主導的に進めていきたいと考えています。
(問)総理が昨日の記者会見で、新たな国家像について未来投資会議で来月議論を始めると御発言されました。この議論はいつ、どのぐらい時間をかけて結論を出すものなのか。また、総理はメンバーを拡大する方針を示して、一部報道では専門家会議の尾身氏や茂木外務大臣が加わると伝わっていますが、事実関係を教えてください。
(答)まず、7月にまとめます骨太方針、それから成長戦略、未来投資戦略といったものをまずまとめていくことに、当面注力したいと思っています。そして、そうした中で、まさに今回の新型コロナウイルス感染症の事象を受けて、将来の社会経済の姿、日本が進むべき道の方向性については、それぞれお示しし、そしてその上で、その後に新たな未来投資会議を拡充する形で、そこでより具体的な議論を進めていきたいと考えています。
 まさにこういった状況ですので、感染症の専門家に入っていただいてはどうかなど、様々な議論があります。それについては、まだ調整しているところであります。まだ時間もありますので、これから調整し、未来投資会議にさらに拡充する形で、そして将来の経済社会の姿をお示しできるように議論を進めていきたいと考えています。
 ありがとうございました。

(以上)