西村内閣府特命担当大臣記者会見要旨 令和2年3月26日

(令和2年3月26日(木) 20:05~20:24  於:中央合同庁舎第8号館1階S101・103会見室)

1.発言要旨

 今月の月例経済報告について、御説明いたします。
 皆さんもお手元の資料、お持ちだと思いますけれども、配付資料1ページ目でありますが、景気の総括判断につきまして、「景気は、新型コロナウイルス感染症の影響により、足下で大幅に下押しされており、厳しい状況にある」と下方修正を致しております。
 我が国の経済は、一部に弱さを抱えながらも、昨年10月の消費税率引上げの影響が徐々に和らぎつつあり、緩やかに回復してきたというふうに、これまで評価をしてきておりましたが、足下では、新型コロナウイルス感染症の影響によってですね、国内外を問わず、家計や企業、その活動は著しく制約されており、これによって経済活動の水準が大きく低下し、厳しい状況になっております。
 ちなみにこの表現は、7年8か月ぶりであります。実はリーマン・ショック直後のですね、2009年2月から、この表現が取られて、2012年7月まで、これは東日本大震災まで、この表現は用いられておりまして、そのとき以来ということで、7年8か月ぶりになります。
 先行きについても、この「感染症の影響による厳しい状況が続くと見込まれる。また、感染症が内外経済をさらに下振れさせるリスクに十分注意する必要がある。金融資本市場の変動等の影響を注視する必要がある」としております。
 3ページ目には、新型コロナウイルスの感染症の厳しい状況のデータが幾つか出ております。
 国内経済については、もう既に御説明しました2月の景気ウォッチャーの調査で、リーマン・ショック時並の低い水準になっているということであります。特に、右側の図で「小売」、「サービス」、「飲食」、こういったところ、右下で「百貨店」、「宿泊施設」、「旅行代理店」、「レストラン」などで厳しい状況になっております。
 海外経済も非常に厳しい状況で、4ページ目に、まず中国については、感染拡大防止のために強力に進められた移動制限・休業措置等によって、1~2月の消費、特に飲食サービスがマイナス43.1%、生産もマイナス13.5%、小売りも20.5%ということで、大幅に減少している状況です。
 ユーロ圏でも、3月のサービス業の景況感は、過去最大の下落幅で、水準は28.4ということで、これもリーマン・ショック時の水準を大幅に下回って、98年7月の統計開始以来の最低値であります。
 英国の3月のサービス業の景況感、これも過去最大の下落幅で、水準は35.7と、リーマン・ショック時の水準を下回り、96年7月の統計開始以来の最低値となりました。アメリカは、3月10日頃までの景況感が、ニューヨーク連銀から出されており、ここも、3月10日までですけれども、過去最大の下落幅、水準はマイナス21.5ということで、2009年3月以来の低水準となりました。その後の状況は御案内の通りでありまして、更に厳しい状況になっているものと思います。いずれにしましても、このように、内外に大変厳しい状況となっております。
 5ページ目の雇用ですけれども、これまで労働需給が引き締まった状況が続いてきていました。雇用情勢は改善をしてきましたが、左下の図で日次の有効求人数、これはネットでの求人ですけれども、紙のみと併せたものと、ほとんど同じ、動きになってきます、過去のトレンドで言いますと。これを見ますと、足下で減少幅が大きく拡大をしてきております。一方で、右側の図で、連合の調査でありますが、今年の賃上げ率、1.94%ということで、昨年、ここ数年の2%以上を下回っておりますので、力強さに欠けるところもありますが、これまで公表されているもので言えば、56.4%の企業がベアを実施するなど、厳しい中にも経営者の皆さんのそういう思いがにじみ出ているものと思います。
 6ページ目は、雇用に関する影響、これはもう御案内の通りで、民間転職市場の求人、特にサービス業が堅調だったのが、ここにきて減少してきている。アルバイト・パートの時給についても低下をしているということで、サービス関連において、労働時給は軟化をしてきているということであります。また右側の通り、政府の支援策の、雇用調整助成金を活用したりとか、様々な姿勢が、雇用維持のために努める姿勢も見られるところであります。
 いずれにしましても、先般の第二弾、企業の資金繰り、それから雇用維持、生活を守るということで、しっかりと、全力を挙げて、取り組んでいきたいと思っているところでありますし、さらに、この難局を乗り越えるために、具体的な経済政策の検討を急いでしていきたいと思っているところであります。
 それから、対策本部の方はあれですね。もう見ておられたとおりでありますので、はい。私からは以上です。

2.質疑応答

(問)リーマン・ショックの際は、事後的に景気後退局面と認定されました。今回の判断は厳しい状況ということですが、今はまだその景気拡大期にあるのか、それとも、景気後退期にもう既に入っていると考えているのか、御所見をお願いします。
 あと、もし入っていないということであれば、今後後退局面入りする可能性はどの程度あると考えていらっしゃるのか、併せてお願いします。
(答)常々申し上げていますけれども、景気の山・谷の判定はですね、これは「景気後退局面」かどうかの判断ですね。これは専門家による事後的な検証を経て、正式に決定されるということであります。
 月例経済報告では、従来から景気が上向いているのか、下向いているのか、上昇局面なのか、下降局面なのかということを示してきておりますが、私がこれまでずっと言ってきた、これまでの緩やかな回復基調は明らかに転換をしてですね、下降局面に入っているという認識であります。
 いずれにしても、今回そうした私の持っている強い危機感を表したものでもあります。ヒアリングも連日続けてきておりますので、もう切実な声を聞いておりますので、そうした声をしっかりと踏まえながら、総理の言われる強大な経済対策をしっかりと練り上げていきたいと思いますし、機動的に必要かつ十分な経済財政政策を躊躇なくやっていきたいと思っているところであります。
(問)ただいまですね、景気に対して厳しい状況にあるというお話でしたけれども、これまで、いろいろな指標が悪い値を示していても、所得と雇用が、維持できているから「緩やかに回復」なんだと御説明をされてきたと思います。
 まだ所得や雇用に関しては、1月分までのデータがほとんどで、しっかりとしたデータが出ていない状態だと思いますが、今までの御説明との整合性というのはどのように取られるお考えでしょうか。
(答)変化の速さがもう全く違いますから、平時ではありませんので、もう月次のベースの数字を待っていたのでは判断ができません。もう日次、週次、先程も日次のデータも示しましたけれども、今我々の手元にあるのは、早いもので月次でいうと1月、2月のものはまだほとんど出てきていませんので、この雇用のデータで、2月以降は足下にかけて急速に悪化をしております。
 こうした激しい局面では、こうした日次、週次のデータをしっかりと見て判断をすべきだということであります。景気判断が遅れてはならないということから、今回は非常時だということでこうした判断をしたところであります。
(問)今回の判断では、「回復」という言葉が6年9か月ぶりになくなったということですけれども、この「回復」ということを削除した判断、どのような判断、お考えでされたのかということを教えてください。
(答)先程の問いとも重なるんですけれども、正に私が「緩やかな回復」と言い続けてきたのは、雇用・所得環境が本当に良かったからであります。有効求人倍率、失業率、それから賃上げの状況、昨年末のボーナスも、連合の数字も非常にいい数字、これまでと遜色のない数字でありました。
 そうしたことから、消費についても、雇用者の数と、働いている人の数と掛ける賃金で総所得は出てきますので、この総所得が、雇用者もいいし、賃金もいいということで、非常にいい環境が続いてきたわけでありますけれども、残念ながら今申し上げたとおり、この新型コロナウイルス感染症の影響によってですね、急速にこの足下、日次や週次のデータを連日見ておりますけれども、急速に悪化をしている中で、これはもう回復という言葉は使えないという判断をしたところであります。
(問)厳しい状況にあるということですけれども、改めて経済対策はどのくらいの規模、内容を必要としているのでしょうか。
(答)これは今しっかりと積み上げていくと同時に、マクロ的な視点からどの程度のインパクトが今生じているのかという双方で見てですね、どのぐらいの規模が必要かということはしっかりと考えていきたいと思っておりますけれども、昨年末、10月-12月のGDPギャップが、御案内のとおりマイナス8兆円であります。加えて、この1-3月期は更に悪化をするんだろうと思いますので、デフレに後戻りしないよう、そのインパクトに見合うだけの規模の対策が必要だと考えております。
 ただ、その対策を考えるに当たっては、言わば三つのフェーズが必要ではないかと考えておりまして、今正にやっているのが第1フェーズで、何とか中小企業の資金繰りを下支えして厳しい雇用を守り、厳しい状況の雇用を何とか守り、そして国民の生活を守っていくという、この姿勢で無利子・無担保の融資であったり、あるいは雇用調整助成金の要件の緩和であったり、さらには、緊急の小口資金ということで20万円は返済猶予も付いているということで、各地域の社会福祉協議会の皆さんにお願いをして今対応していただいています。こうしたものを使っていただきながら、何とかしのいでいただくということであります。
 これを、今いろいろお話を、ヒアリングをする限り、これに加えて更に対策が必要ではないかという、もう一段のこの中小企業の資金繰りあるいは生活支援、このことの対策について今ヒアリングを行いながら練り上げていっているわけであります。
 終息した後にはですね、これは、何度も申し上げていますけれども、観光の大キャンペーンをやって多くの人が地方に行き、そして様々な消費をしてもらうと。今非常に厳しい飲食もそうですし、土産物もそうですし、観光地も大変な状況であります。そうしたところをV字回復でやってもらおうという対策が必要になってくるんだろうと思います。
 そういう意味で第1段階、今やっていること、あるいは第2段階、これは、もうほんとに必要とする人に、苦しんでいる方にしっかりと支援が行くように対応しなければいけないと思います。
 終息した後は、これはもうできるだけ多くの人に消費を喚起してもらう、観光へ行ってもらうということでありますので、そういったことを頭に置きながら、どういう形でやるのがスピード感を持ってできるのか、いろんな議論も国会内外でも頂いておりますので、御提言も頂いておりますので、そうしたことを踏まえながら、これまでと全く違う発想で、いわば、異次元の思い切った対応策を是非考えていきたいと思っているところであります。
(問)経済対策の規模額をお示しいただけないでしょうか。
(答)先程申し上げたとおりです。
(問)すみません、新型コロナの対策本部の関係で2点ほどお聞きしたいんですけれども、総理から指示がありました基本的対処方針、この策定のスケジュール感というのがまず一つです。
 それから、今日、小池知事が大臣のところに来られて、特措法に基づく対応を検討してほしいという要望をしたというふうに聞いておりますけれども、これについて、どういった対応をとられていくのか。例えば、緊急事態宣言を出して、都道府県の措置に法的根拠を与えると、こういうことも選択肢としてあり得るのか、お願いいたします。
(答)はい。まず、1点目の基本的対処方針につきましては、その諮問委員会というのが設置をされておりますので、専門家の皆さんが入っておられます。
 今ある専門家会議のメンバーはほとんど重なりますし、その皆さんに、諮問委員会のメンバーにしっかりと御意見を聞いて、そして、今後の基本的な方針となる対処方針を定めていきたいと考えております。これは、もう総理からも指示を頂いておりますので、速やかに開催をして、そして基本的対処方針を定めていきたいと思っております。
 小池知事からは、御指摘の御要望もございました。東京都は、明日の朝、対策本部を立ち上げるという、衣替えをする、今もう既にやっておられますから、事実上、我々政府として同じように衣替えをして、正式の本部に立ち上げ、法律に基づく本部に立ち上げられるということだと思いますけれども、よく調整をしていきたいと思ってます。
 現時点で専門家の皆さんの御意見をお聞きする中では、緊急事態宣言を発する状況にはないという状況だと思いますけれども、日々状況は変わってきております。専門家の皆さんの意見、我々、日々のデータをよく見ながら、またお示しもしながら、特に感染者の数、その中でも経路が分からない感染者の数、それから、海外から帰ってきた人がかなりの数にだんだん日々なってきておりますので、こういった状況、海外の状況なども総合的に判断をして考えていくことになると思いますが、そうしたデータをしっかりとお示ししながら専門家の皆さんの御意見、諮問委員会の皆さんの御意見を聞いて適切に判断をしていくことになると思います。
 いずれにしても、緊急事態宣言まで至らなくとも、できればそうならないように、何とか封じ込められればと思っているわけですけれども、対策本部が立ち上がってくれば、より緊密に政府間で、政府と地方自治体の間で、知事との間で連携も総合調整の機能もありますので、しっかりと連携を取っていきたいと思いますし、知事には、法律に基づく、そうしたイベントについての自粛の要請ができるようになります。
 また、厚生労働大臣においては、検疫をするときに、大勢の人が入ってきて検疫をするという場合に、宿泊施設とかそうした施設を、同意がなくともそれを使用することができるという規定があります。これに基づいて、何人かの方をそこに停留してもらって、そして検疫を行うということも可能になってきます。その場合には、法律上、しっかりと保障する規定もありますので、法律に基づいて、そういった措置もとれるようになりますので、様々、意見交換の中でいろんなことも考えながら、連携しながらやっていきましょうということでありますけれども、何とか感染が拡大しないように、しっかりと連携をして、全力を挙げて、取り組んでいきたいと考えております。

(以上)