西村内閣府特命担当大臣記者会見要旨 令和2年2月10日

(令和2年2月10日(月) 9:45~10:05  於:中央合同庁舎8号館1階S108会見室)

1.発言要旨

 おはようございます。
 まず、TPP11について申し上げます。
 2月11日から14日まで、TPP等政府対策本部の三田内閣審議官と宇山内閣審議官をタイのバンコクに派遣を致します。
 両審議官は、バンコクでタイの政府幹部と会談をし、TPP11、CPTPPですね、について意見交換を行う予定であります。
 これまでも申し上げているとおり、タイがTPP11参加に対して関心を示していることを日本としては歓迎をしております。そのような観点から、必要な情報提供等の支援を行うために幹部を派遣することと致しました。結果につきましては、また改めて御説明を致します。
 それから、先週土曜日に京都を訪問してきました。地域経済の現場の声を聞くため、経済団体の方々との意見交換、それから、今回のコロナウイルスの感染による中国の感染拡大による観光施設への影響等を見てまいりました。併せてスタートアップ支援「engawa KYOTO」の視察を行ったところであります。
 概要だけ簡潔に申し上げますと、経済団体との意見交換では、企業の景況感について、製造業、中小企業を中心に海外経済の先行き不透明感、人手不足によって先行き慎重な見方があるというお話がございました。さらに、この新型コロナウイルスの拡大による観光業やサプライチェーンを通じた影響など国内景気の様子、影響を懸念をする声がございました。
 これについては、機動的な対応を求める声、あるいは風評被害を防ぐためにも政府の対応を情報発信してほしいと、欧米からの観光客にもしっかりPRしてほしいという声がございました。
 消費税率引上げの影響については、これまでのところ大きな影響はなかったという声がある一方で、伝統産業、業種によっては暖冬や高齢化の影響、また、ポイント還元策の終了など今後の動向を心配する声もございました。
 全世代型社会保障改革については、子育て支援などによる若年層への支援、負担能力に応じた負担ルールの確立などが重要という声がございました。
 また、京都はスタートアップやイノベーションを支援する取組に力を入れております。京都だけではなくて関西全体としてイノベーションエコシステムを創っていきたいと。特に2025年の大阪・関西万博をイノベーション創発のチャンスにしたいといった声がございました。
 観光地でありますけれども、清水寺の前の商店街、二条城、錦市場、大丸、それから、からすま京都ホテルなどで視察と意見交換を行いました。
 この新型コロナウイルスの影響についてですけれども、いつ終息するかについての不安があるということですが、余り強調し過ぎて萎縮し過ぎるのも困るということが声としてありました。
 また、消費税率引上げの影響が戻りつつある時期だけに、この記録的な暖冬と新型コロナウイルスの感染が重なってしまったと、経済全体が冷えないようにすることは大事という声がございました。
 そのほか、商店街ではキャッシュレス化が進んでいるとの声もございました。
 「engawa KYOTO」では、学生と起業家の交流、マッチング支援などの実際の現場を視察をさせていただきました。京都は学生も多いまちでありますし、新しいスタートアップが数多く起こっていくことを期待をしたいと思います。
 私からは以上です。

2.質疑応答

(問)今の出張報告の中でおっしゃった、取り分け観光の部分について、大臣、どういった御感想を持たれたのかと、あと、今後の政策とかに生かせる部分とかもしあれば御所感をお願いします。
(答)まず、影響についてでありますけれども、確かに清水寺商店街の前は、中国人観光客が大分減ったということで、人出はかなり減ってきているようでありますけれども、今のところ資金繰りまで苦しいといった声は、商店街の会長さん、理事長さんでしたけれども、そこはないけれども、先行きが見えないというところが非常に厳しいという声がございました。
 それから、二条城などは8か国の言語に対応してまして、中国人のインバウンドの観光客へのウエートが8、9%ぐらいということでありますので、それほど高くない。団体ツアーはキャンセルがされているということでありましたけれども、全体として欧米人もかなり来ていましたので、そういう意味で、観光地によって多少の差はありますけれども、いずれにしても、インバウンド、中国人観光客の減っている影響は出始めているという感じだと思います。
 併せて、サプライチェーンを通じた影響を心配される方がおられました。影響が出始めているということだと思いますので、まずは政府としては、この感染拡大の防止、これが何よりの経済対策でもありますので、これに全力を挙げるということであります。正に水際対策、蔓延防止対策の徹底など緊急対応策を週内にも取りまとめる予定でありますので、速やかに予備費の活用も視野に入れながら順次実行していくということだと思います。
 経済の影響については、引き続きしっかり見ていきたいと思っておりますけれども、風評被害を防ぐために政府の対応あるいは正しい情報をしっかりと発信していくことが大事だと思いますので、政府全体で取り組んでいきたいと思いますし、1月末には中小企業庁、観光庁、それぞれ専門の相談窓口を設置をしておりますし、2月7日には関係省庁から政府系金融機関に対して、資金繰りに重大な支障が出ないよう要請を行ってきております。まずはこうした対応でしっかりと声を聞きながらきめ細かく対応していきたいと思います。
 さらに、先般成立しました補正予算ですね、これに中小企業対策が盛り込まれておりますので、正に海外発の下方リスクを乗り越えるために策定したものでございますから、これを早期に着実に実行していくということが大事だと思っております。
(問)新型コロナウイルスの関連で質問です。2003年にSARSが流行した際に、内閣府は2003年5月に、日本経済への影響試算というのを出したと思います。今回、こうした影響試算を出す考えがありますでしょうか。あと、試算を出すとすれば、どういった前提で、また、いつ頃実施するのか、併せてよろしくお願いします。
(答)御指摘の試算は、恐らく2003年5月の「月例経済報告等に関する関係閣僚会議」に提出した資料に含まれるもののことだと思いますが、当時は、アジア経済の成長率が1%低下した場合に、日本の輸出がどのぐらい減少するかと、それを通じてGDPがどれだけ減少するかということをマクロモデルを使いながら示したものだと思います。
 そういう試算ではありますけれども、アジア経済が低下した場合に、日本のGDPにはどれだけ影響があるかという参考として示したものでありますので、SARSの影響を直接推計したものではないと認識をしております。
 少なくとも現状では海外において感染者はまだ増加をしておりますので、直ちに今時点で何か試算をするというより、まずは終息に向けて感染拡大を防いでいく段階だと思っております。私どもとしては、前回、輸出の減少だけを見ていましたけれども、当時と比べて中国経済の世界経済シェアは、当時4.3%でしたけど、今16.3%のシェアがありますし、それから訪日観光客ですね、中国人の観光客、当時49万人でしたけど、昨年959万人ということ、それから、対中貿易のシェアも、当時12.2%、日本の輸出額の対GDP比も1.3%でしたけども、昨年の貿易のシェアは19.1%と、中国経済の世界経済に占めるウエートあるいは日本経済の依存度、ある意味でのサプライチェーン、こうしたものの度合いがはるかに変わってきておりますので、こういったことも頭に置きながら、先般来申しておりますが、大きく四つの経路、一つは、インバウンドが減少する。少し京都でも影響が出始めておりますし、キャンセルが出ているということであります。
 二つ目に、日本から中国への輸出。これは、中国の経済が停滞することによる日本からの輸出あるいは生産の減少。併せて、中国からの部品供給もあります、サプライチェーンができてますので。これによって日本の生産が滞る可能性もあると。多くの企業で春節ということでしたので、在庫をそろえているということでありますけれども、これが長引いた場合どういうふうになっていくか。
 もう一つが、中国経済全体が減速した場合に、これは世界経済に与える影響。当然、アジアの経済にもアメリカの経済にも影響を与えますので、そうしたことを通じて日本経済への影響はございます。
 こういった視点をよく見極めながら、全体の影響を見極めていきたいと思いますけれども、まずは感染拡大の防止、そして足元の資金繰りなどの対応、それから補正予算を着実に執行するということで、いずれにしても経済運営には万全を期していきたいと考えております。
(問)金曜日の指標の件で恐縮なんですけども、厚労省の毎月勤労統計で、昨年12月の実質賃金が6か月連続マイナスでした。あと、2019年通年では、名目賃金もマイナス圏に陥ったんですけども、御所見をお願いいたします。
(答)はい。毎月勤労統計ですけれども、御指摘のとおり、先週公表されたもので、実質賃金で3か月連続でマイナスということで、名目賃金の前年比も概ねゼロ近傍ということであります。
 これは、もう既に指摘をしてきておりますし、国会などでも説明されてきておりますけれども、この毎月勤労統計の留意すべき点です。
 一つは、パートタイム労働者の比率が上昇してきております。これも昨年と比べて上がってきております。人手不足の中で女性が働きに出られる、あるいは高齢者も退職をされて何らかの形で継続雇用の中で時間がフルタイムじゃなくなってきているという中で、パートタイムの労働者の比率が高まる中で、全体で平均すると、どうしても所得が下がった、低い人が増えたことによって全体の平均は下がりますので、したがって、どうしても今の経済の構造からして低下する傾向にあるということをまず御理解を頂ければと思いますし、もう一つは、昨年1月のサンプル替えに伴う水準の変化で前年比が低めに出ている可能性もあるということであります。
 よく言われるように、共通事業所系列も併せて参照として見るわけですけども、10月から12月の前年比は、この全体に比べて共通事業所は0.2%から0.5%の増ともなっておりますし、一般の賃金も、これも所定内給与について見れば0.5%から0.7%に上がっておりますし、パートの時給も2.8%から3.3%増となっておりますので、全体をいろいろ細かく見ていければと思っております。
 いずれにしても、生産年齢人口が減る中で、高齢者、女性の方々を中心に雇用者が増加するという状況が続いております。これで、平均するとどうしても下がってしまうということも頭に置きながらよく見ていきたいと思いますが、私ども重視をしているのは、国民全体の稼ぎである総雇用者所得、これをしっかり見ていきたい。
 家庭で見ても、例えば夫1人が働いていた。奥さん、妻が働いていなかったけれども、働きに出るようになって、フルタイムじゃないにしても家庭全体では所得は増えます。平均すると、お二人の平均になりますから賃金下がってしまいますので、平均はですね、2人の平均は。だけど、全体としては増えますから、総雇用者所得というものをしっかり見ていきたいと思っております。これは2015年半ば以降、名目、それから実質共に増加傾向が続いておりますので、国民全体の所得の環境、雇用環境の改善を背景として、これは改善が続いていると見ております。
 労働時間が減る中にあっても、堅調な動きが続いておりますので、引き続き細かく見ていきたいと思いますけれども、全体としては雇用・所得の環境は改善が続いていると認識を致しております。
(問)TPPの関係でお尋ねいたしますが、必要な情報提供ということですけれども、どういった形でタイの新規加盟を後押しするお考えなのかということと、海外発のリスク等もある中で、タイの加盟というのはどういう意義を持つのか、お考えをお願いいたします。
(答)まず、基本的にこのTPPの21世紀にふさわしいハイスタンダードでバランスのとれた、正に新しい21世紀型の共通ルールを世界に広めていくと、世界的に内向きな保護主義的な傾向もある中で、日本は主導的な役割を果たして、こうした新しい通商・貿易のルールを広げていくことによって自由貿易を拡大していくという基本的な姿勢であります。
 そうした中で、タイがTPP11に参加の意欲を示して関心を示しているということを我々としては非常に歓迎をしておりますし、タイは、御指摘のように、自動車産業を始め日本との間ではサプライチェーンもできておりますので、そういう意味では、もちろん日タイのEPAもありますので、タイがTPP11の参加に関心を示してくれていることは非常に歓迎をするところであります。日本の産業のサプライチェーンの拡大、自由な貿易、通商の拡大、投資の拡大という意味でも、非常に意義のあることだと思っております。
 そうした中で、まずはタイとして参加ということの意思決定をしてもらわなきゃいけませんので、その前の段階だと思います。そのために必要な情報をしっかりと提供をして支援を行っていく考えであります。
(問)TPPの関係で確認なんですけども、今回のこの派遣のタイミングについてなんですけども、何かタイ側から働きかけがあったのか、それとも、日本側から積極的に働きかけるという意味合いなのか、そのタイミングの関係について教えてください。
(答)これは、双方の日程等を踏まえて調整して、このタイミングで派遣をするということになったものであります。

(以上)