西村内閣府特命担当大臣記者会見要旨 令和元年12月20日

(令和元年12月20日(金) 17:10~17:32  於:中央合同庁舎8号館1階S108会見室)

1.発言要旨

 お疲れ様です。御報告いたします。
 まず、景気の現状についての総括判断でありますけれども、「景気は、輸出が引き続き弱含むなかで、製造業を中心に弱さが一段と増しているものの、緩やかに回復している」としております。世界経済の減速を背景とした輸出の弱さが続くなかで、特に外需の影響を受けやすい製造業の生産が足下で一段と弱含んでいることから、前段の表現を下方修正しております。ただし、内需がけん引する形で、景気全体の動きは引き続き上向いていることから、「緩やかに回復している」との基調判断は変えておりません。
 先行きにつきましては、そこにありますとおり、「当面、弱さが残るものの、雇用・所得環境の改善が続くなかで、各種政策の効果もあって、緩やかな回復が続くことが期待されます」としております。来年度の実質GDP成長率はプラス1.4%程度、名目GDP成長率はプラス2.1%程度と見込んでいるところであります。また、その後に記してありますとおり、「ただし、通商問題を巡る動向、中国経済の先行き、英国のEU離脱等の海外経済の動向や金融資本市場の変動の影響に加え、消費税率引上げ後の消費者マインドの動向に留意する必要がある」としております。
 それから、今年の経済のポイントについて、3ページ、4ページ、5ページのところですけれども、まず、今年1年の日本経済の状況について、需要面と供給面から見ております。3ページのところですね、お持ちの方は見ていただけると。需要面については、6年連続で今世紀最高水準の賃上げが実現しておりまして、中央の上下の図で示しておりますとおり、実質総雇用者所得が緩やかに回復、増加する中で、GDPの6割近くを占める個人消費が持ち直すなど、内需が緩やかに増加をしております。
 その一方で、海外経済の減速を背景に、GDPの約2割を占める輸出が、右上の図のとおり1年間を通じて弱い動きとなっております。実質GDPの成長率を見たものが右下でありますけれども、全体としては外需の低調さを内需が支える形で景気が緩やかに回復を続けております。
 4ページ目にありますけれども、供給面からみますと、生産活動からみた動向でありますが、中央の上にあります図のとおり、先程申し上げたような外需の弱さが、我が国のGDPの約2割を生み出している製造業の生産を下押しをしております。
 他方で、その下の図の非製造業の生産、これは内需が緩やかに増加する中で、GDPの約8割を生み出している非製造業の生産は増勢が続いております。
 こうした製造業・非製造業の生産活動の差は、企業マインドにも表れておりまして、右の図にありますように、企業の景況感は製造業を中心に慎重さが増しているところであります。
 5ページ目の設備投資の動向についても、今回報告をしました。左上の図ですね。設備投資の実質と書いてあるところですが、海外経済減速の影響を受けながらも、我が国の企業は設備投資の増加基調を維持しております。
 その下にありますように、日銀短観12月調査、2019年度の設備投資計画も、前回9月の調査に比べて若干下方修正はしておりますが、製造業ですね。依然として前年度比増加ということで、特に、人手不足業種を中心にソフトウエア投資が高い伸びとなっております。
 右側の表のとおり、電気自動車関連や5Gを見越した投資のほか、省力化のためのソフトウエア投資など盛んに行われておりまして、Society5.0への対応が進んでいると理解をしております。今般取りまとめました経済対策、補正予算、税制改正などでこうした未来への投資を後押しするものと期待をしているところであります。
 私からは以上です。

2.質疑応答

(問)月例経済報告、今年恐らく4回目の下方修正なのかなと思うんですけれども、下方修正繰り返しながらも緩やかな回復というのは維持している、どうしてというか、なぜこれを維持できているのかというところを、もう少し詳しくお話しいただけたらというのが1点と、逆に言うと、この先何があれば緩やかな回復っていうのはもうちょっと言えなくなるのかなっていうのが、もしお考えありましたら伺わせてください。
(答)「緩やかに回復している」という基調判断を維持しておりますけれども、先程申し上げましたとおり、前段の表現は下方修正をしております。正に世界経済減速する中で、輸出が弱含み、製造業の生産収益、業況に弱さが増しているということで、下方修正をしております。
 一方で、内需については、雇用・所得環境、これは3ページのところでもお示しをしましたけれども、実質総雇用者所得、賃金、この伸びは緩やかな伸びが続いております。
 連合と経団連がそれぞれ冬のボーナスの集計を行っておりますけれども、これも、連合の調査で前年比プラス2.0%です。それから、経団連でもプラス1.5%ということで、高い水準の伸びが引き続き継続をしているということから、内需についても引き続き雇用・所得環境の改善を背景に、消費が持ち直しを続けると見ております。3ページのところでも図で示しましたとおり、外需が弱いんですけども、それを補う形、それ以上に上回る形、支える形で内需がしっかりしております。設備投資も公共投資も、高いレベルでありますので、そういう意味でこの緩やかな回復ということは、基調判断は維持をしております。
 一番のリスクは海外経済でありまして、米中の摩擦がどうなっていくのか、一応合意がなされて署名に向けて動いているようでありますけれども、その後の協議もどうなっていくのか。あるいは、英国のブレグジット、EU離脱が、選挙で一応の方向性が出たと見ておりますけれども、EUとの交渉がまだ続きますので、どういう形での離脱になっていくのか、EUとの関係がどうなっていくのかというところもしっかり見ていきたいと思いますし、引き続き香港の情勢なり、インド情勢、あるいは欧州の経済も弱いものはありますので、こういったところをしっかり見ていきたいと思っております。
 この辺りのリスクが顕在化をして、厳しい状況になることも想定しながらですね、ということに備えながら、今回の経済対策も実施をしておりますので、その中で単に支出を増やすということだけではなくて、ワイズ・スペンディングの考え方の下、正に未来への投資ということで、将来に生きる形の人材、技術、IT、こういったところにしっかりと投資をして、民需主導で、そして新しい産業構造、社会の構造をつくり上げていく中で、成長軌道にしっかり乗せていきたいと考えております。
(問)今日の資料の中で、日銀短観を使った人手不足の、人員過不足感のグラフがありますが、確かにその人手不足、続いているとは思うんですけれども、やはりその外需の弱さが製造業に波及してというかですね、製造業の方がそれほど人手不足じゃなくなってきているというふうに出てまいりますが、この辺を大臣としてはどういうふうに受け止めていらっしゃるか、お願いいたします。
(答)日銀短観の12月調査の雇用人員の判断DIですね。これは御指摘の製造業も含めて、いずれも不足が過剰を上回っている状態、不足の方が多いという状態であります。そういう状態が続いているということで、全体としては人手不足感はまだ続いているということであります。
 製造業について見れば、3ポイントぐらい上昇し、不足感が緩和したということは言えると思いますけれども、それでもなお大幅な不足超でありますので、そういう状態の中で、今日も外国人の特定技能についての報告がございました。5,000人ぐらいの方が試験を受けられて、年度内には1万人の試験を目指すという方向性も示されておりますので、そういった外国人への期待感もあると思いますけれども、一方で女性や高齢者の就職、就労、これは引き続き増えていくものと、伸びは鈍化すると説明申し上げましたけれども、増えていくものと思っております。保育所の整備など、あるいは幼保の無償化なども下支えになると思いますし、そういった形で女性の活躍を更に進めていきたいと思いますし、高齢者も、元気な高齢者が健康寿命が延びる中でたくさんおられますので、今回の全世代型社会保障改革の中でも高齢者の方も働く就業機会の確保という方向性を打ち出しておりますので、そういったことを通じて労働供給はまだ増加をする余地はあると見ております。
 併せて、今回の経済対策で、正にデジタル・ニューディールと申し上げていますけれども、新しい技術への投資、ロボットであったり、IoTであったり、人工知能であったり、そういったものを活用する中で、生産性を向上させていくということだと思いますので、この人手不足にもしっかり対応しながらやっていきたいと思いますし、将来のリスクに備えて万全の経済運営をしていきたいと思っております。
(問)先程大臣からも言及あったんですけども、この1、2週間で米中貿易交渉ですとか、EUのブレグジットなど、海外情勢では多少好転の兆しもあって、例えば日銀は今週の決定会合の後に出す声明文で、多少海外リスクに関する表現を和らげていたと思うんですけども、政府としては、海外経済のリスクの大きさについて、1か月前の月例と比べるとどのように変化したとお考えでしょうか。
(答)正に御指摘ありますように、好転の兆しは、米中のいわゆる貿易摩擦について、あるいは英国のEU離脱についてですね、これはそうした方向性、明るさが少し見えてきたのかなというのは感じております。ただ、依然として、この後実際どういうふうに進捗していくのかということは残りますし、併せて、先程申し上げたように、香港の情勢であるとかインド経済、欧州経済あるいは南米の経済も一部心配なところもあります。等々を考えると、やっぱり海外のリスク、経済のリスクの下方リスクは残っていると思っております。
 昨日、黒田総裁とも立ち話で、私どもの見ているところを簡潔に申し上げて、黒田総裁からもコメントがございましたけれども、見方に大きな違いはないと感じました。いずれも海外リスクには備えて、明るさは見えるものの、しっかりとそれには備えていかなきゃいけないという認識だと思います。
 いずれにしても、補正予算、それから来年度の当初予算決定いたしましたので、国会が始まってできるだけ早期に成立をさせてですね、しっかりと実行に移していきたいと、円滑かつ着実に実行していきたいと考えております。
(問)今回、まず消費増税の影響について、12月はどういったものがあったのか。それで、今回の下方修正の判断に消費増税の影響というのは、消費増税後の、例えば消費の低迷だとかそういったものの影響があったのかどうか教えてください。
(答)基本的に今回の下方修正は海外経済の動向によるものであります。輸出が減少傾向にあり、生産が弱含んでいるということによるものであります。
 消費につきましては、正に今回もお示しもしていますけれども、雇用・所得環境の改善を背景に、消費については持ち直しが続いているという認識を変えておりません。
 9月に高額品を中心に駆け込み需要があったと思います。10月にはその反動もあったと思いますけれども、台風19号等の影響もあって弱い動きとなった面もあります。
 それから11月の数字もですね、新車販売も落ちており、自動車関係者にもヒアリングを直接やりましたけれども、やっぱり一部車種の不具合等が効いているということ、それから各社とも新しいモデルの投入なども考えているようでありますので、各社ともそんなに心配をしていないようであります。そういったことあるいはスーパーなどの日次を見ておりましても、だんだん戻ってきている感じを受けておりますし、百貨店の販売額がマイナスですけれども、減少幅は縮まってきていること、あるいはちょっと暖冬の影響もあるんだという分析もなされております。
 週次や日次のデータも見てですね、あるいはそういったヒアリングの結果も総合的に分析する限り、消費税率の引上げ前後の駆け込みと反動、その大きな落ち込みは前回ほどではないという見方を変えておりませんし、消費の持ち直しの基調に変化はないものと見ております。
 消費者マインドも、持ち直しの動きが出てきておりますけれども、まだ低い水準ですので、この辺りもしっかり注視をしていきたいと思っているところです。
(問)今日、月例、今年最後の会見なんで、来年に向けてのちょっと景気の展望といいますか、特にオリンピック・パラリンピックというイベントもあるので、そこに向けてこう景気が上がっていって、あと警戒されている落ち込みがあるかとか、どんなふうに見てらっしゃるのか、ちょっとそこら辺を伺えませんでしょうか。
(答)はい。経済見通しでお示ししましたとおり、外需はまだ少し弱さが残りますけれども、引き続き雇用・所得の環境が改善されていく中で、内需は堅調に推移をするものと期待をしております。これがしっかり実現していくようにですね、経済対策を具現化をしております補正予算であるとか税制であるとか、あるいは当初予算ですね、これをしっかりと成立をさせて、そして円滑に着実に実行していくということだと思っております。
 民間の見通しが非常に低い中で、私ども、自信を持ってこの数字を出しておりますので、着実に実行していきたいと思っております。
 この経済の基調を、確実なものとしていくためには、やはり民間企業の様々な投資あるいはこの賃上げの流れの継続、こういったことでの民間のサイドでのいろんな動きも必要でありますので、是非とも民間企業におかれてもですね、政府もこうやって一歩も二歩も前へ出ようとしてますので、是非、民間企業の側でも大いなるチャレンジ、一歩も二歩も前に出ていただきたいなと期待をしたいと思います。
 併せて、経済のこの変化のスピード、特に技術の変化のスピードが非常に速いですから、今回、デジタル・ニューディールという形でかなり思い切ったデジタル化投資あるいはイノベーション、研究開発、人材育成といったところまで含めて補正予算でも組みましたので、是非この新しい時代、新しい社会を見据えて、技術の実装を是非進めていただきたいと。そうした中で未来への経済成長、未来を切り開いていくということにつながっていくと思いますので、そうしたこと、正にワイズ・スペンディングで将来を見据えた投資を、是非進めていくことによって、経済をしっかりと民需主導で成長軌道に乗せていきたいと思っております。
(問)御説明ありがとうございます。先程ちょっと消費増税の影響で言及いただいたところで、ちょっと重ねてで恐縮なんですけれども、スーパーの日次も大分戻ってきていると。で、前回ほどの落ち込みではないということを日々、大臣おっしゃってらっしゃると思うんですけれども、この今日配られた資料でも、自動車と家電とドラッグストアと業種によってちょっとムラがあるように見えるんですが、まだやはり前年比でマイナスの状態が続いていたりですね、消費者マインドもまだ40に満たない状態であると。大臣の今の現時点での御所感として、いつ頃になればですね、この前年比の水準を回復してくるか、どういうふうに見ておられるか、先行きの時間軸がございましたらちょっとお教えいただけますでしょうか。
(答)いろいろヒアリングをしている感じで申し上げればですね、あるいは前回は数字が出ておりますので、前回との比較の中でいろいろヒアリングをしていろんな御意見を聞く中で申し上げれば、前回はやっぱり半年から1年回復するのに掛かったという業種、業態もかなりございました。今回は、10月段階でも、台風の影響もありましたので、マイナスの落ち込みもあるし、あるいは営業日が短かったりとかですね、少なかったりとかいろんなこともありますけれども、多くの小売の方々は、12月の年末商戦、クリスマスなり年末年始の様々なそうした商戦に向けてですね、回復基調になればいいなと、そういうことを期待しているという声がかなり聞かれました。
 もう実際に、ドラッグストアとかスーパーなどは戻ってきているんだと思いますけれども、家電もそうした年末年始に向けて様々なキャンペーンなりセールなどもあると思いますし、また、自動車も一部の不具合等が解消されてくれば、新しいモデルの投入も含めて、そう遠くない将来回復が期待できるんじゃないかと、そんなふうに私自身は期待をしているところであります。

(以上)