西村内閣府特命担当大臣記者会見要旨 令和元年12月18日

(令和元年12月18日(水) 18:06~18:27  於:中央合同庁舎8号館1階S108会見室)

1.発言要旨

 お疲れさまです。本日の閣議におきまして、「令和2年度の経済見通しと経済財政運営の基本的態度」について私から説明し、了解されました。
 令和2年度につきましては、「安心と成長の未来を拓く総合経済対策」の円滑かつ着実な実施など、各種政策の効果もあいまって、我が国経済は雇用・所得環境の改善が続き、経済の好循環が進展する中で、内需を中心とした景気回復が見込まれます。
 この結果、令和2年度の経済成長率は実質で1.4%程度、名目で2.1%程度になると見込まれています。
 内容につきましては、お手元にお配りした資料及び大臣談話、私の談話のとおりでありますが、本日お示しした経済見通しの実現を確かなものとしていくためには、今般の経済対策を始めとする政府の取組による消費や投資の直接的な喚起だけではなく、これを呼び水とした経済界の方々によるイノベーションや生産性向上、それに伴う賃上げなどの取組が極めて重要な役割を果たすと、この点をこの機会に是非強調しておきたいと思います。
 来年度について、平均的な民間のエコノミストの見通しは平均0.5%であります。民需の寄与度は、私ども、政府の経済見通しが1.0%であるのに対して、僅か0.1%となっております。従来から申し上げているとおり、現預金も活用した投資、企業の現預金としてある内部留保、これを活用した投資、さらには、政府与党の税制改正大綱にも盛り込まれたオープンイノベーションにも取り組んでいただき、結果として実現される生産性向上の成果について、働く方々にしっかりと還元していただけるよう、賃上げについてもより一層、積極的に取り組んでいただくことで、民需を構成する個人消費や設備投資について、政府経済見通しでお示しした伸びの実現を確かなものにしていきたいと考えております。
 オープンイノベーションへの取組の遅れ、あるいは労働分配率の低さといった状況は、決して日本経済の将来にとって好ましい状況とは言えません。海外経済の下方リスクがなお存在し、不透明感がある中で、企業経営者の皆さんの判断に躊躇が生じ得ることも理解をしておりますけれども、政府は今回、このように一歩前に踏み出す中において、経営者の皆さん方におきましても、是非とも、一歩も二歩も前に踏み出していただければということを考えております。
 私からは以上であります。

2.質疑応答

(問)来年度の成長率の見通し1.4%程度、先程大臣もおっしゃりましたが、民間の0.5%というのと比べると、かなり高いというか、図抜けて高い、楽観的じゃないかというような指摘もありますけれども、そこについてはどうお考えでしょうか。
(答)今も若干触れましたけれども、この政府経済見通し、これは様々な統計データに基づいて分析された基調的な動き、これをベースとしながら、需要項目ごとに積み上げる作業を行いまして、当該年度及び翌年度の見通しを策定しております。この策定過程におきましては、制度改革を含む各種政策の効果についても考慮をしているところであります。今回の見通しにおいても、先般の経済対策の裏付けとなる補正予算に盛り込まれた措置による効果を始めとして、政府として取り組む生産性向上、就労促進に係る様々な施策が各需要項目に与える影響を織り込んでおります。その結果、お示しした姿になっております。私としては、しっかりとこれを実現できるものと自信を持っているところであります。
 民間機関の見通しを見ますと、経済対策の策定前後でこの成長率の見通しがほとんど変化しておりません。私どものスタッフも民間のエコノミストともいろいろ意見交換をしておりますけれども、政府の経済見通しでは、財政支出が13.2兆円程度、それから、国、地方の歳出が9.4兆円程度、直接的な実質GDP押し上げ効果がおおむね1.4%と見込まれておりますけれども、この経済対策の効果が着実に発現することを織り込んでおります。
 もちろん海外経済に目を転じますと、米中貿易摩擦の行方など、通商問題を巡る動向、あるいは中国経済の先行き、英国のEUの離脱、中東地域、あるいは香港を巡る情勢、様々な不確実性が存在をしておりますし、このほか、インドや欧州の経済も弱さが見られます。海外発の下方リスクが顕在化をして、投資の減少など、我が国経済への悪影響が生ずることのないよう、しっかりと注視をしていきたいと思いますし、経済対策、これを着実に、円滑に実行していきたいと考えております。
(問)すみません、今の質問にも似てしまうんですけれども、これまで第二次安倍政権下で、毎年度の見通しというのを出されてこられて、その結果、実績が常に見通しを下回っているような状況というのが非常に多かったと思うんですけれども、やはり見通しはその予算編成だったり、税収の見積りなども根拠になってくるものでもあるわけで、それがちょっと結果的に年度が終わった後に、やはり実績が下回っているというのは、今までの傾向というのがあるわけですが、これについて、大臣はどういうふうに受け止めていらっしゃるのか、また、今のNHKさんの質問でもありましたけれども、やっぱりその辺りで楽観的だというふうな御指摘というのは、かなり市場にもありまして、それについても、どのように思われるのか教えてください。
(答)これはこれまでも申し上げてきたところでありますけれども、経済は生き物ですので、国内の様々な経済活動も、海外の経済の影響を受けますし、これまでももちろん、国内のバブル崩壊という、これは国内の政策の結果がありますけれども、安倍政権になって以降も様々な海外経済のショックを受けて、これは中国の経済のショックもありましたし、アメリカ経済のショックもありました。これは海外の経済の影響を受けますので、自分たちの中だけで完結する話ではございません。特に、日本経済は世界に開かれた、我々、正に自由貿易、通商のこのルールも、世界の6割の国々と結んだことになりますので、そういう意味で、様々な影響を受けながらではありますけれども、国内の経済運営、この万全を期していきたいと思っております。今の個人消費の動向、それから、若干、雇用者の数も引き続き伸びていくんですけれども、これは高齢者の雇用対策、今回、近々にまとめる全世代型の社会保障改革の中でも70歳までの雇用確保の方向性を是非まとめたいと思っていますし、女性が活躍できる環境、これは保育所の整備もそうですし、幼児教育・保育の無償化もそうですし、様々な施策で女性の働く環境、もちろん、まだ男性の育児休業をもっと取らなければいけないとか、あるんですけれども、そうした中で、高齢者、女性の就業者数、雇用者数も増えていくことも見込んでおりますし、その伸びは少し低くなっていくものと思いますけれども、それから、賃金についても、先般発表されました連合の調査でも、これは2,211組合という非常に広い範囲での年末の一時金、ボーナスの集計も前年比2.02%ということでありますし、経団連はちょっと社数が82社ですけれども、これでも約1.5%の伸びということで、引き続きこの雇用所得の環境はいいものと、改善が続いていると見ておりますし、そういう意味で、個人消費、それから、公共事業を含めて、この経済対策をしっかり実行することによって、私はこの数字を実現できるものと思っておりますし、併せて、先程申し上げましたように、民間企業の経営者の皆さんにおかれても、是非この投資、そして、賃上げの流れの継続、こういったところを是非とも継続していただくことによって、私はこれは確実なものに、確かなものになっていくと思っています。
(問)ちょっと不勉強で申し訳ないんですけど、先般の日米貿易協定のGDP押し上げ効果という試算を内閣府で出していらっしゃいますが、これは今回の見通しの範囲内よりも先の話になってくるのか、今回も織り込まれているのか、お願いします。
(答)輸出についての算定というか、この積上げですけれども、計算方法ですけども、原則として世界経済の動向、これ連動する形で見通しを作成しております。個々の施策について、定量的な効果を積み上げているものではございません。
 したがって、お尋ねの日米貿易協定についても、一般論として貿易環境の改善に資するものとして認識していますけれども、個別にこれが何パーセントプラスといった積上げは行っておりません。世界経済の見通しの中で、それぞれ輸出がどの程度増えるかということを積み上げていっているものであります。
 ただ、政府としては御指摘のような日米協定の発効、それからTPP11、日EU・EPA、こうした施策、それから正に今回対策の中でまとめました中堅・中小企業の海外展開に対する支援、それから和牛酪農の増頭・増産に向けた生産基盤の強化など、こういったものも各種施策が輸出の拡大につながっていくものと期待をしておりますし、また、来年は東京オリンピック・パラリンピックもございますので、訪日観光客、外国人の客の増加、これはサービス貿易のプラス、サービス輸出のプラスになりますので、こういったことを期待しております。
 ちなみに、ちょっと先程消費のところで幾つか申し上げましたけれども、消費の下支え策として、年金生活者支援給付金とか、あるいは介護保険の保険料の軽減、それから幼児教育の無償化、高等教育の無償化、それからマイナポイントを活用した消費活性化策、それからキャッシュレス還元策、これも引き続き行っていきますので、こういうことで当初予算には合計2.6兆円分の消費の下支え策も計上する予定でありますので、私ども、先程申し上げた雇用・所得の環境と併せて、個人消費は緩やかに増加をすると見込んでおりますので、輸出も含めて、そして、公共事業全体として見れば、私は実現できる数字だと思っております。
(問)経済の好循環と個人消費の関係でちょっとお伺いしたいんですけれども、今日は参議院の幹事長の世耕さんが講演をされていたんですけれども、その中で、アベノミクスは好循環と言っているけれども、最後の一パズルがはまっていないのは、やっぱり消費じゃないかということをおっしゃってらしたんですけれども、これまで終わった、特に18年度等のを見たときに、やはりその好循環と言っているけれども、個人消費のところにはまだちょっとそこの影響度というのが足りないのか、もしそうだとすれば、それはどういう理由なのかという、まず大臣の御見解をお聞かせいただきたいと。
(答)繰り返しになる部分もありますけれども、現在の雇用・所得の環境を見ますと、雇用者数が増加をしております。18年度は1.8%増加をしておりますし、19年度も1%は増加をすると見込んでおります。先程申し上げた高齢者とか、女性とかの活躍を見込んでおります。
 伸びはちょっと鈍化をしますけれども、それでも来年度も0.6%の伸びを見込んでおりますので、そういう意味では引き続き雇用者数が増えていくと。
 それから、賃金も6年連続で最高水準の賃上げ、経済界、2%前後のこれが続いておりますし、先程申し上げたように冬の一時金も、連合の調査を含めてその流れが継続しているものと思っております。
 そうした中で、18年度あるいは19年度を見ても、全体として雇用者報酬は増えておりますので、そういう意味で消費が、これが緩やかに回復基調にあるという見方は変えておりません。内需は堅調であるという見方は変えておりません。
 ただ、大きな流れの中で、これはもう少し研究したいと思っているんですけれども、このネット社会が広がってくる中で、利便性が向上して様々なものが安く手に入るようにもなっておりますし、それから全体として高齢者世帯が増えていますので、当然若いときに比べて消費するものは、金額は小さくなるということも考えられるでしょうし、この消費というもの、アメリカ経済は非常に消費は活発ですけれども、大きな日本社会においては、このネット社会、新しい技術がどういうふうにこの消費に影響するのか、あるいは高齢者世帯が増える中で、全体の消費がどうなっていくのか、こういったことについては引き続き研究をしていきたいと思っています。
(問)確認なんですけれども、これから先、去年からその臨時・特別の等をやっていて、これから先その消費が伸びるというところは、この数字にも表れているので分かるんですけれども、これまでの個人消費というのが、そのアベノミクスの好循環の中できちんと支えられてきているのかどうかというところは、どういうふうにお考えなんでしょうか。
(答)雇用者所得が増えてくる中で、先程申し上げたように6年連続で過去最高水準の賃上げが続いてきております。そうした中で、消費については緩やかな回復基調を続けていると、全体として続けているということで、ある意味堅調な動きであるという認識を持っております。
(問)大臣、先程20年度当初予算に2.6兆円分の消費下支え策を計上されるとおっしゃっていましたが、これは19年度予算と比べると増えているのか、減っているのか、何かもし対応するような数字がお持ちだったら教えてください。
(答)20年度の予算の決定はまだですので、2.6兆円程度ということで申し上げましたが、ちょっと比較をしていただいたらいいんですけど、先程申し上げた年金生活者支援給付金が5,000億円弱であるとか、幼児教育の無償化で9,000億円弱であるとか、高等教育の無償化で5,000億円強であるとか、マイナポイントを活用した消費活性化策とキャッシュレスポイント還元で合わせて5,000億円強であるとか、こういった予算を計上する、今、予定で最終の調整をしておりますので、そういう意味で合計すると2.6兆円程度にはなります。
 ですので、これら今年10月からの分で計上されている部分もあれば、キャッシュレスポイントももう既に今年度も計上されている部分もありますので、そういったことで少し考えていただけるとと思います。
(問)冒頭の御発言で、賃上げの話があったかと思うんですけれども、大手企業の賃上げ率が6年連続で2%を超えていますけれども、伸びは鈍化傾向になっていると思うんですけれども、どの程度の水準を期待するのか。
 また、何らかの機会に経団連等にその水準を求めていくようなお考えがあるのかどうか、よろしくお願いします。
(答)既に経団連との意見交換をやった中で、私からは賃上げのこの流れの継続ということはお願いを致しました。
 また、関経連始め、地方に視察をしたりしたときの意見交換の中でも、それぞれの経済界の皆さんにはお願いをしてきております。
 これは中西会長もぶら下がり等で発言をしておられると思いますけども、やり方はいろいろ経団連の中で各社いろんな事情の中で考えられるというふうに確かコメントをしておられたと思います。私どもは引き続きこの流れを是非継続をしていただきたいということで、お願いを私からはしております。
 いろんなやり方があるかと思います。全体の賃金体系も若い人にシフトをしたりとか、子育て世代に重点的にとか、いろんな考え方があると思いますので、そうしたことも含めて、私としてはこれまでの流れを是非継続していただけるようにお願いをしたいと思いますし、併せて、配偶者手当等の在り方についても、先般お願いをしたところであります。就業調整の一因とならないような、そうした変革を是非考えていただければとも思っております。
 したがって、賃金と併せて、そういう手当なんかも含めて、全体としてこの流れを継続していただければと思っております。

(以上)