西村内閣府特命担当大臣記者会見要旨 令和元年10月18日

(令和元年10月18日(金) 17:54~18:14  於:中央合同庁舎8号館1階S108会見室)

1.発言要旨

 御報告を致します。
 景気の現状についての総括判断は、「景気は、輸出を中心に弱さが長引いているものの、緩やかに回復している。」としております。「緩やかに回復している」との基調判断は維持をしつつ、世界経済の減速に起因する輸出や生産の弱さが長く続いていることから、前段の表現を下方修正しております。
 先行きにつきましては、「当面、弱さが残るものの、雇用・所得環境の改善が続くなかで、各種政策の効果もあって、緩やかな回復が続くことが期待されます。ただし、通商問題を巡る緊張、中国経済の先行き、英国のEU離脱の行方等の海外経済の動向や金融資本市場の変動の影響に加え、消費税率引上げ後の消費者マインドの動向に留意する必要があります。また、令和元年台風第19号など相次ぐ自然災害の経済に与える影響に十分留意する必要があります。」としているところであります。
 台風の影響につきまして補足を致しますと、既に判明しているだけでも、輸送機械メーカー、自動車メーカーが部品メーカーの浸水被害により操業停止をしております。10月25日までと聞いております。それから、北陸新幹線が浸水により長野‐上越妙高間で運転休止となっておりまして、北陸方面への観光、ビジネスに支障をきたす状態にあります。また、箱根につきましても、登山鉄道の運休により観光等に大きなマイナスが出ているということであります。
 農林水産業につきましても、ちょうど収穫期のリンゴをはじめとした被害が報告をされております。いまだ全容がなかなか分からないところでありますけれども、いろんな情報も入ってきておりますので、引き続き経済への影響を注視をしていきたいと考えております。
 次に、今月のポイントとして、私の方から2点申し上げました。皆さんの概要資料はありますかね、3ページ目でありますけれども、もし資料見れる方は見ていただければですが、最近の消費動向です。
 一番左の実質総雇用者所得、私もよく引用しますけども、今世紀に入って最も高い水準の賃上げが6年連続で続いているということでありまして、雇用者数も増加する中で、その左の図にありますように、実質総雇用者所得は緩やかに増加を致しております。全体の所得増ですね、実質的に増えていっております。こうした雇用・所得環境の改善を背景に、中央の表、消費総合指数にありますように、個人消費は持ち直しております。
 ただ、右側の図でありますけれども、先行きの消費者マインドは弱含んできています。この背景は、見ていただいたら分かりますとおり、割と早い段階から、2018年の下半期から落ちてきているわけでありまして、ちょうど米中の貿易摩擦などが起こってきた後だと思いますけれども、そうしたところから続いている世界経済の減速の影響や消費税率引上げ後の懸念、そういったものがあるんだろうと思います。駆け込み需要は、これまでも御説明してきておりますとおり、全体として前回ほど大きくはないという認識をしておりますけれども、台風の影響も懸念をされ、こうした消費者マインドの動向や消費への影響には留意が必要であると考えております。一方で、ページの下の部分、これはもう御案内のとおり、消費税率引上げに伴う各種施策が実施をされてきておりますので、引き続き、その円滑な実施と、そのための丁寧な広報をより力を入れてやっていきたいと思っております。
 次のページに、設備投資の計画とソフトウエア投資についての資料もございます。左の上の青、赤、黄、緑の棒グラフですけれども、日銀短観の2019年度の設備投資計画であります。それぞれ左からプラス5.3%、プラス6.2%等ございます。括弧内は前回6月調査に比べたものでありまして、6月調査からは少し下方修正されていますけれども、今年度の伸びは今申し上げたプラスの5.3%やプラス6.2%、非製造業でのプラスの4.4%ということで増加をしております。さらに、その中でも左下の緑の折れ線グラフ、ソフトウエア投資が非常に高い伸びとなっております。
 右側に幾つかの業種の数字と、それから背景を書いてありますけれども、製造業では電気自動車等に関する投資が目立っておりますし、Society 5.0への対応を進める中で、製造業・非製造業を問わずIoTとかAIの導入とか、自動化・省力化、ロボット導入とかですね。そのためのソフトウエア投資が行われていると思っております。
 消費者マインドが少し落ちてきている中ではありますけれども、企業においては、製造業、非製造業を問わず、この新しい時代の投資が動き始めているという認識をしております。こうした動きを是非、今後の成長戦略で後押しをしていきたいと思っております。
 もう一点、出張につきましてお知らせを致します。
 新たな出張の日程が決まりました。これまでも消費税率の引上げ前後の経済状況について現場の声を、あるいは経営者の皆さんの声を、産業界の皆さんの声もお聞きをしたいということで申し上げておりました。
 その一環として、明日九州に出張を致します。まず、福岡県を訪れまして、九州の経済団体の皆さんと、それから、小川福岡県知事と意見交換を行いまして、消費税率引上げ後の九州の経済の状況など、意見交換できればと思っております。
 午後は佐賀県に移動しまして、農業県でありますので、農業団体の方々から、最近の状況と農業の生産性向上や就農支援などの取組について、意見交換したいと思っております。
 その後、AIやドローンなどのそういった技術を使った、先端技術を活用したスマート農業、新しい農業のスタイルの企業の視察を行いたいと思っております。
 週明けまして、月曜日には商店街、百貨店、スーパーマーケットを訪れることに致しました。正に消費税率引上げに伴う売上げの状況、あるいは各種施策の対応状況などをお伺いしたいと思っております。
 具体的には、巣鴨の地蔵通り商店街の幾つかの店舗を訪れます。そこで、商店街の振興組合の皆さんとも意見交換をする予定であります。
 その後、日本橋の百貨店、江東区のスーパーマーケットを訪れまして、現場の様子、食料品の売場なども視察をさせていただく予定にしております。
 引き続き、いろんな統計を見ながらでありますけれども、現場のお声にしっかりと耳を傾けながら、今後の政策対応を考えていきたいと考えているところであります。
 私からは以上です。

2.質疑応答

(問)内閣府が発表する景気動向指数では、機械的な景気の基調判断が最新の8月分で再び悪化に転じています。
 その中でも今回、月例の方では景気は緩やかに回復しているという基調判断を維持された理由を改めて御説明いただけますか。
(答)前にも申し上げましたかもしれませんけれども、景気動向指数は生産、雇用など、景気に関する9つの経済指標を統合して指数化したものでありまして、その基調判断については、指数の動向をあらかじめ決められた基準に機械的に当てはめて判断をし、公表しているものであります。
 一方で、政府としての景気判断は、この景気動向指数だけではなくて、それ以外にも、GDPはもちろんですし、貿易、住宅、公共投資等に関する様々な経済指標の動向、さらには、その背景にあります経済の環境、あるいは企業の景況感、これは日銀短観なども見ながらでありますけれども、そうしたものを総合的に勘案して行っているところであります。
 8月の景気動向指数において悪化となりましたのは、正に世界経済の減速の影響を受けて、輸出の弱さから製造業の生産、出荷を示す指標は低下したもの、それによるものであります。10月の今回の月例経済報告におきましても、生産は弱含みという評価をして、先程申し上げたとおり、輸出を中心に弱さが長引いているとの認識を示しておりますので、そういう面では、齟齬があるわけではないと認識をしております。
(問)2012年12月から始まった戦後最長の景気回復というのは続いているという政府の認識でよろしいでしょうか。
(答)御案内のとおり、景気の山・谷の判断については、専門家による事後的な検証を経て正式に決定されるものであります。私どもの判断は、我が国経済は輸出を中心に弱さが長引いているものの、雇用・所得環境の改善を背景とした堅調な内需に支えられて、正に緩やかに回復しているという、この認識をこのところ継続をしているところでありますので、いずれにしても、事後的な検証を経て、正式に決定されることになります。
(問)西村大臣、一昨日の参・予算委員会で、日次のデータで台風直前の買いだめの影響も見ていきますとおっしゃっていましたが、この趣旨をもう少し細かく説明していただけますでしょうか。それは数字が良すぎて出るんじゃないかとおっしゃっている、基調よりと、そういうことでしょうか。
(答)まず大前提として、日次とか週次のデータ、以前にも申し上げましたけれども、対象範囲が非常に限られておりますので、消費全体を見極めるには、もう少しそれ以外の各種データを見極めなければいけないと思っております。それと、この台風の12日前後のデータは、正に買いだめ等で、一時的にこう増減がもう既に生じておりますので、よく見ていかなければいけないということですが、ちなみに直前の11日には、非常に、スーパーですから、いわゆる食品、日用品なんですけれども、この消費が急増しております。台風に備えて、いろいろなものを今のうちに買っておこうという心理だと思います。
 それがまずあり、それから、その後は急減しておりますが、これは百貨店もそうですし、スーパーもそうですし、休日のところが、休業してしまうところが多数ありましたので、その分、相当落ちておりますが、その後、15日、16日辺りはかなり戻しております。台風の影響は、よく見極めなければいけないと思っておりますが、今のところ均してみれば、2014年のときに比べると、それほど大きな落ち込みはないと思います。
 ちょっと台風で大きく伸びて、落ちてというのはあるんですけれども、それを均してみて、差し引いてみても、全体としては前回ほど大きな落ち込みはないという認識をしておりますが、ただ、これも限られたデータですので、それ以外のデータも、週次のデータ、それから月次のデータももう少しすれば出てくると思いますので、そういったものをよく見て判断をしていきたいと思いますし、よくいろんな企業なり、団体からもヒアリングを行って、現場の様子もしっかりと踏まえた上で判断していきたいと考えております。
(問)今日の月例経済報告、閣僚会議では総理の御発言はどのような内容だったのでしょうか。冒頭の御発言はなかったと承知しておりますが、それで、その御発言で、例えば今後の補正予算含みの経済対策であるとか、あるいは月末の日銀金融政策決定会合との関わりとか、何かそういった御発言はありませんでしたでしょうか。
(答)今日は、総理は私の説明と、それから事務方の説明、そして、日銀からの説明をよく聞いておられました。時々うなずかれながら聞いておられましたので、特段、御発言はございませんでした。
(問)後から事務方の御説明があるかもしれませんが、日銀副総裁、何か政策決定会合等の言及はありませんでしょうか。
(答)いえ、金融市場の動向についての御説明だけでした。
(問)増税後初めての月例で、一応、基調判断は維持されたということで、あと、消費税の関係の対策もいろいろ用意されていることを考えますと、追加で何らかの経済対策の必要性は小さいと考えていらっしゃるか、その点を伺えればと思います。
(答)よく経済動向を見極めていきたいと思っております。十分な対策を用意をしてきておりますけれども、まだよく理解をしていただけていないところもありますし、これからプレミアム付商品券なども活用されてくると思いますので、そういった状況をまずはよく見極めたいと。そのためにも、先程申し上げましたとおり、これらの対策を円滑に、着実に是非実行していきたいと考えております。
(問)あわせまして、今回の月例の結果を見ますと、10月というのは、消費増税のタイミングとしては適当であったという判断でしょうか。改めて伺えればと思います。
(答)私ども、この間の経済動向も見ながら、先程申し上げたとおり、雇用・所得の環境は非常にいいですし、そうしたことを踏まえて、今回、10月に消費税率を引き上げたということは、私は正しい判断だったと思っております。
(問)月例経済の先行きの判断のところで、消費税率引上げ後の消費マインドの動向に留意する必要があるという文言がありますが、これは、来週視察されるのもそうですけれども、今後、対策が必要かどうかを考える上では、このマインドというところが重要になるということを意味しているのでしょうか。
(答)今朝も申し上げたかもしれませんけれども、見ていかなきゃいけない点、注意しなきゃいけない点、三つあると思っておりまして、一つは、やはり海外経済の動向、先程申し上げましたとおり、昨年辺りから、もう既に消費者のマインドは少しずつ悪い方向に来ていますので、これは米中の貿易摩擦があったり、あるいは中東情勢があったり、様々な国際情勢、そして、海外経済の動向に非常に大きな影響を受けますので、日本経済、当然、サプライチェーンもあれば、輸出もありますので、そうした意味で、まず一つ目は、海外経済の動向をしっかりと注視をしていきたいと思っております。
 そして、二つ目に、今般の台風19号等の影響ですね。先程申し上げましたとおり、様々な被害が広い範囲で出ておりますので、中小企業、観光、農業、こういったものを含めて、これをしっかり見ていきたいと思っております。
 三つ目が、先程来御指摘のある、消費者のマインドでありまして、やはり増税ですので、これは本当に政治家も、誰も増税はやりたくないと思いますけれども、日本の将来のために、特に社会保障の安定のためには必要だということで、我々決断をして、引上げをしたわけですけれども、一方で、先程申し上げましたとおり、様々な対策を講じておりますし、何より、1%分は、幼児教育の保育の無償化に充てていくわけですし、様々な社会保障の充実にも充てることになっておりますので、そういう意味で、そうしたこともしっかりと丁寧に説明しながら、そして、対策を説明しながら、着実にこうした施策を実施することによって、何とか負担も引き下げ、負担増を和らげ、消費の下支えができるようにと思っております。
 その意味で、消費マインドについてももちろん、しっかり見ていかなきゃいけないと思っております。

(以上)