衛藤内閣府特命担当大臣記者会見要旨 令和2年9月1日

(令和2年9月1日(火) 10:50~11:06  於:中央合同庁舎第8号館1階S101・103記者会見室)

1.発言要旨


 北方対策担当大臣として御報告いたします。
 北方四島交流等事業については、可能な限り早期に事業を実施できるよう検討してきたところでございますが、新型コロナウイルス感染症をめぐる状況に鑑み、我が方及び四島側(ロシア側)で合意が得られていた今年度の事業については、実施が困難な状況となりました。
 このような自由訪問ができない状況の中、故郷を思う元島民の方々のお気持ちに鑑み、北海道庁と協力して、北海道本島側上空から航空機を利用した慰霊等を行うことを検討しているところでございます。
 詳細については北方対策本部までお尋ねいただければと思います。

2.質疑応答

(問)まず、冒頭ございました自由訪問の中止についてお伺いできればと思います。昨日、自由訪問を千島連盟が断念を決めまして、今年1年間ビザなし交流がない形になります。これが35年ぶりということになりますが、これについて大臣の御所感をお伺いしたいのと、今後このビザなし交流が1年間ないということの影響を大臣はどのように考えられるか、教えていただけますでしょうか。
(答)我が方と四島側で合意を得られていた今年度の北方四島交流等事業について、全て実施が困難な状況となったことについては、元島民の方々が高齢化する中で、極めて残念であります。
 引き続き、北方四島交流等事業の重要性に鑑み、新型コロナウイルス感染症をめぐる状況の推移を見極めつつ、今年度の実施を調整中の「航空機特別墓参」を含め、日露政府間及び双方の実施団体間で協議を継続していく所存でございます。
 なお、故郷を想う元島民の方々のお気持ちに鑑み、北海道庁と協力して北海道本島側上空から航空機を利用した慰霊等をこの秋に実施することは、冒頭述べたとおりでございます。
(問)昨日、安倍首相とプーチン大統領の日露首脳会談がございました。日本側説明によりますと、平和条約交渉の継続を確認したということですが、ロシア大統領府側はそれについて触れていなくて、多少齟齬があるところではありますが、昨日の会談を受けての大臣の御所感と、それから、新内閣への引継ぎになってくるかと思いますが、今後の領土問題の解決に向けて、内閣府としてどのような活動が必要か、お願いできますでしょうか。
(答)プーチン大統領からは、安倍総理はこれまで建設的に対話を重ねてきたパートナーであり、これまでの協力に感謝するとともに、貢献を高く評価する旨を述べられ、安倍総理からは、謝意を述べつつ、依然として未解決の領土問題を解決する重要性を強調し、今後も精力的に交渉が行われることを期待する旨を述べられ、さらに、両首脳は、二人の間の合意も踏まえて、平和条約交渉を継続することを確認したと承知いたしております。
 私としても、昨日、両首脳で確認されたように、これまでのお二人の間の合意も踏まえて、平和条約交渉を粘り強く継続することが重要であると考えております。
 この条約交渉をめぐる問題は、国際情勢の中でいろいろな動きがありますけれども、いずれ開けるときが来ると確信いたしております。
(問)少し質問がかぶるんですけれども、先週、安倍総理大臣が辞任を表明されまして、大臣、閣僚として、補佐官として長年お支えされてきた身として、改めて御所感と、今後総理・総裁選をめぐるいろんな派閥の抗争とかがありますけれども、次の総理・総裁に望むことを、大臣としてあれば教えてください。
(答)総理が志半ばで辞されるということを決めたということは、極めて残念であり、かつ真面目な方で、常に全力投球する人で、見えないところで大変な努力を重ねている人ですから、よく私はそれを知っていますから、大変な努力家でもございます。それだけに、やはり今まで全力で取り組んできたことに対して、本当にお疲れ様でしたと、御苦労様でしたということを一言言いたいと思っております。
 そして、この間を振り返りましても、本当にやはり日本の方向について、よくここまで転換することができたと思っています。民主党を悪く言うという意味では全くありません。しかし、その前の民主党を含めて、その前の自民党の責任も入れて、どうしても平成の時代のリーマンを経ながらいろいろなことを経て、そういう沈んだ国であったような気がします。そして、ちょうど第二次安倍政権にかわる前の日本の空気というのは、何となく、もうこの国は沈むんだろうなという予想を持っている国民が多数でありました。
 それをまずは経済を再生しようということで、それまで日本がやってきたことのないデフレ解消策として、金融緩和という思い切った手を打ちながら、これは周りの方々が必ずしも賛成したわけではなかった。むしろ反対が強かった中で、もうこれ以上待てないという中で金融緩和策を講じて、そして三本の矢を討って経済を転換させた。そして、日本を沈んだ国から、いや、将来の希望が持てるかもしれないのではないかという具合に大きく流れを変えた点は、極めて大きな功績だろうと思います。
 そして、そういう中で、外交についても明確な方針を持ってやりましたから、この第二次安倍政権の中における安倍総理の諸外国からの評価は、極めて当てにされる、安倍さんの意見を聞かなければいけないという形になってきて、この外交は、そういう意味では戦後初めてのことで、まさにそういう状況をつくり上げてきた人です。
 それから、安全保障面も、第二次安倍政権のスタートのときには、平成の時代を通しての中国の変貌ということについても強く指摘していましたから、今のような状況になるにあたっての我が国の対処の仕方をずっと間違いなくやってきたと、これは外交問題でも極めて大きかったと思います。これをちゃんとクリアできなかったら、おそらく今の日本の外交は成り立っていないと思います。
 それから、安全保障もいろいろありましたけれども、集団的自衛権の一部容認というか、部分容認というのか、集団的自衛権の部分的容認を決めた中身は、いわゆる北朝鮮の力を前に、一般的な米軍ではなくて、日本を守りに来ている米軍がもし攻撃されたときに、これを見過ごすことができるのかどうかということについて考えた中身でありました。これは、もし日本を守りに来ている米軍、限定的ですね、米軍全体を言っているわけではありません。それが叩かれているのを見過ごしているということになりますと、それは日本攻撃をそのまま許すということになりますから、日本のいわゆる安全の基本に関わる問題です。日本が安全保障上、大変危険な状態になるわけですから、その部分だけは守るということをちゃんとしなければいけない。
 昭和47年政府見解で示したのは、そういう中で、御承知のとおり、日本には個別自衛権も集団的自衛権もありますと、個別自衛権の行使は当然です。しかし、集団的自衛権の行使は、他国防衛をその内容とするものであるから行使できないということだったんですけれども、それは一般的な米軍を守るという他国防衛ではなくて、日本を守りに来ている米軍だけは守らなければ、日本の存立が全うできないという意味で、部分的容認だけはしておかないと、日本の安全保障は全うできないという中、これも転換を行いましたが、戦後といわれる中で非常に大きな転換だったと思います。日本がなさなければいけない転換を、勇気を持ってやったということは、極めて大きな功績だと思います。
 それを受けて、総理は憲法改正についても9条の1項、2項はそのままにして、自衛隊という存在を正式に認めるということを、憲法学者の3分の2の方が違憲だとかいう議論をしないで、国民世論が割れないで、もう真っ直ぐ進むべきだという中で、この憲法の改正案も私案として出されたのではないかという気がいたしております。
 だから、こういうところは経済の問題も、それから外交上の問題も、安全保障の問題も、極めて大きな功績があったというか、ここは安倍さんで本当に良かったと私は思っています。
 そういう意味で、また安倍さんは、常に全力投球できなければ国民の足を引っ張るかもしれないということで、自ら引かれました。極めて残念ですが、そのことについて大きな評価をさせていただき、本当にお疲れ様でしたと申し上げたいと思っております。
(問)次の総理・総裁に望むことを、大臣としては何かおありでしょうか。
(答)ぜひそういう意味では、安倍さんの路線をそのまま引き継ぐのが良いとか、そういうことは言いませんけれども、安全保障上の観点、外交上どうあるべきかということ、それから、このコロナの中で何としてもコロナを抑えて、日本をもう一回回復基調に変えなければいけない。そして、コロナの中で見えてきた、我々の社会の在り方も、やはり一気にデジタル化を進めていかないと、これが進んでいないということで、いろいろな意味で非常にやりにくかった部分がありますから、そういうことも考えて、思い切ってやっていける人が必要だと思っております。
 ですから、政策議論をちゃんとして、経済の在り方、今後の日本経済全体の在り方も、海外投資だとか技術というものに対して、どういう形で外国と接していこうとするのか、そういうこともちゃんと言った上で、やはり進めていくときが来ていると思います。
 そういう意味では、ぜひ安倍総理がやった、沈む国から、日が昇ろうとすることの見えるところまで来たんですけれども、ちょうどその矢先でコロナということになりましたから、ぜひ日本がもっと活力を持って、元気を出して前に進める国にしてもらいたいと、そのリーダーとして期待をする次第でございます。

(以上)