衛藤内閣府特命担当大臣記者会見要旨 令和2年5月29日

(令和2年5月29日(金) 9:23~9:49  於:中央合同庁舎第8号館1階S101・103記者会見室)

1.発言要旨


 少子化対策担当の大臣として報告いたします。
 本日の閣議において、「少子化社会対策大綱」を決定させていただくことができました。
 新たな大綱では、基本的な目標として、「希望出生率1.8」の実現を掲げ、結婚支援、男女共に仕事と子育てを両立できる環境の整備、地域・社会による子育て支援、多子世帯への支援、不妊治療への支援など、総合的な少子化対策に大胆に取り組むこととしています。
 昨年の出生数は「86万ショック」と言われるように、過去最少となりました。深刻さを増す少子化の問題は、社会経済に多大な影響を及ぼし、今回の新型コロナウイルス感染症を乗り越えた先にも存在し続ける国民共通の困難であり、子供や家族が大事にされる社会への転換が急務であります。
 本日の閣議において、私から、少子化社会対策大綱についてご報告し、施策の速やかな具体化について協力を依頼しました。
 また、総理からは、大綱は「希望出生率1.8」を実現するための具体的な道筋を示すものであり、大綱に基づき施策を速やかに具体化し、実施に移すことで、総合的な少子化対策を更に強力に推進すること、あわせて、施策の具体化に当たっては、新型コロナウイルス感染症の収束後に見込まれる社会経済や国民生活の変容も見据えつつ、思い切った取り組みを進めることとのご指示をいただきました。
 総理の指示を踏まえ、新たな大綱に基づく施策の具体化に速やかに取り組み、個々人の結婚や出産、子育ての希望の実現を阻む隘路の打破に強力に取り組んでまいります。
 次に、消費者及び食品安全担当大臣として発言いたします。
 今週水曜日に閣議決定された第2次補正予算案について、消費者庁では主に給付金を騙る詐欺等による消費者被害を防止するための予算13億円を盛り込みました。具体的には、テレビや新聞、インターネットで国民の皆様に広く注意喚起、情報発信を実施し、高齢者など被害に遭いやすい方への地域の見守り活動を強化し、さらに、多くの消費者相談が寄せられる場合に備え、国民生活センターの相談対応体制を強化することで、今後も引き続き、新型コロナウイルス感染症に関連する消費者被害の防止に取り組んでまいります。

2.質疑応答

(問)少子化大綱についてなんですけれども、パブリックコメントがこの前に、閣議決定の前にあって、それで、3,800件のパブコメがあったうちの1,700件が不妊治療に関する意見だったということを担当課から説明を受けました。
 不妊治療は、少子化大綱で必ずしもメインのテーマではなかったと思うんですけども、今回、パブコメでこれだけ意見が多かったということに対する大臣の受止めと、具体的に、パブコメの中で保険適用の拡大だとか、助成の拡充だとか、いろいろ要望があったと思うんですけれども、それに対する大臣の意気込みをお聞かせください。
(答)パブリックコメントでは、広く国民の皆様から多岐にわたる切実なご意見を多数頂戴いたしました。今、ご指摘のように、中でも多かったのは、不妊治療への支援の必要性についての意見でございます。不妊治療については、調査研究を行った上で、広く医療保険の適用を検討して、支援を拡充するということを盛り込みました。
 今までは、公費のほうで不妊治療に対して出していたのですが、やはり、もうメインとしては、一般的な保険適用まで拡大をしていって、そして、あと自己負担分を公費で埋めるというような形でやること、すなわち、産みたいと思う人、子供が欲しいと思う方はできるだけ出産できるような形に、どうこれを担保していくのかということになりますから、これが一番だと思います。
 我々が目指している「希望出生率1.8」というのも、本当に子供の欲しい方、産みたい人が産める社会、そして、育てられる社会をつくろうと、子供が祝福される社会をつくろうということが一番のメインでありますから、そういう意味では、これだけの意見が寄せられまして、多くの方々がやはりそこのところに思いをいたしているんだということを強く感じましたので、大きな柱の一つに付け加えるような形になったと思います。
 そこのところでどうするのかということになれば、当然、これはまず保険適用をちゃんと確保して、医療体制の側からもそれをちゃんと考えられるようにするということになっています。
 それから、いわゆる産婦人科治療、病院の充実もできるようにやるということは、極めて重要なことになってくると思います。ご承知のとおり、産婦人科は結構リスク負担が高いということ、それから、非常に待機時間が長い割に診療報酬がちゃんと確保されていないということがありますから、そのような不妊治療等のことを通じて、妊娠から出産に関わるところ、それから、初期の子育てに関わるところをうんと充実していかなければいけない。産婦人科治療の充実を図るということは極めて大事だということを改めて再認識いたしました。それに懸命に取り組むということで、いわば四つの大きな柱を掲げていましたが、五つ目の柱になったと思っています。
(問)少子化大綱でお伺いします。
 今回、児童手当の件なんですけれども、子供の数ですとか年齢に応じた拡充の方向性と読めるような文言も盛り込まれていると思います。児童手当は内閣府の所管かと思いますけれども、拡充には議論が必要かと思うんですけれども、いつごろ議論を始めるかとか、いつごろまでに結論を得たいかという、現在の見通しがあれば教えてください。
(答)来年度にすぐできるかというと、そうは簡単にいかないんですね。今年度かけて、具体化に向けての議論を進めてまいりたいと思っています。相当大きな金額になると思いますので、いわば内閣を挙げて、それから、財務省からもなるほどと思えるように何としても説得をして、ご理解いただいて、そして内閣全体の理解まで高めていくということで、具体的な、政策化をしていくということをやりたいと思っています。
 今、方針は決まりました。ですから、来年度からスタートがすぐできるという状況でないことはよく分かっておりますので、その周辺のところは今回の大綱において、来年度から頭が出せてスタートできるものもたくさんあると思いますから、明確にそれを分けて検討していきたい。
 そういう中では、これは多子世帯への支援、児童手当ということは相当な金額を伴うものでありまして、財政上の問題も理解をしていただきながら進めていかなければいけない。いわゆる財源の問題の確保もしながら考えていかないと、到底実現できないということはよく理解いたしておりますので、そういう検討を進めさせていただいて、今年度の中には方向を決めて、来年度の中で、具体的に途中からでもできるかとか、いろいろなことがあると思いますけれど、どういう方向になるのか決定していきたいと思っております。
(問)少子化大綱で1点お尋ねしたいんですけれども、先ほども質問で出た不妊治療の件だったり、児童手当の拡充の件だったり、経済的な支援への前向きな言及が多いように受け取れたんですけれども、その辺前回の大綱と比較して、今回特に意識して力を入れた部分などをお伺いできればと思います。
(答)今まで少子化対策でやらなければいけないということで、どういう対策をやるかということについて、個々にあったと思うんですけれど、今回、少子化を招いた原因はどこなんだと。そして、「希望出生率1.8」の目標を達成するために、どういう要素が必要なのかということを、一応、大きく選択させていただいたということだと思っています。
 ですから、いろいろずっと今まで言われてきたことを総合的に整理させていただいて、この少子化に至った経過・原因というものを冷静に見つめて、その一つ一つの隘路を打破し、そこにいわゆる柱としての目標を各々定めて、そして、これをどう達成していくかという方法論を決めようとしたものであります。
 そういう意味では、PDCAサイクルをただ回すという以前の問題として、少子化についての原因について、いろいろな方からご意見もいただきまして、それを総合的にまとめさせていただいたことが、若干違うのではないかと思っています。
 ですから、ずっとお話ありましたように、少子化の原因はと言われると、一つは未婚化、晩婚化が原因です、では、ここに至る支援体制をどうとれるのかと。そうすると、今まではなかなか言いにくいことだったと思いますけれども、おそらく労働環境だけ良くしていけば良いのではないのかということがありましたけれども、しかし、調査をかけてみますと、出会いの場が少ないということもあったわけですから、その方が多かったわけですから、その両方をちゃんと確保していくことが必要だということが分かってきたところです。
 それから、やはり、女性が子育てに入るかどうかということについて、両立ができるかどうかということが非常に大きいということです。そういう意味では、我々も過去20数年間、育児休業補償制度について努力をしてきましたが、やはり女性が賃金によって、出産を選ばないということが決してないように、できれば働いているときと同じぐらいの所得が確保できるとかというようなこととか、それから、今、コロナで、これだけ雇用調整助成金が今まで余っていたから、その料率を下げるというところまで議論をしていて、これは可決されたばっかりなんですけれど、コロナが起こって、雇用調整助成金をぼんぼん使って、おそらく赤字になるのではないですかね、このまま行くと。政府からも雇用調整助成金に対して、相当財源を注ぎ込んでるような状態ですから、そういう意味で、ここも将来どうしていくかということについて、もっと検討していかなければいけないことだと思います。
 それから、子育て支援の中で、いわゆる元々共同養育社会だったものが、いわば核家族化によってここまで狭められてきた。そうすると、現在における子育てのバックアップはどうすべきかということを考えたときに、もちろん今までずっと議論されてきた待機児童問題とか、そういう問題をちゃんと解決していくことは当然でありますけれども、そのような充実だけでは足りないものがあるということを感じました。そのための支援体制を国全体でどうつくっていくのかということになると思います。
 だから、例えばですが、過去ファミリー・サポート・センターみたいなものをつくってきましたが、国民の皆さんが広く利用できることになっていなかったということも考えますと、この支援体制を全部つくり上げていかなければいけない。当然、そうしますと、あらゆる出産を希望する方、出産された方は、まずはみんな専業主婦も育児休業中の人も入れて、子育てについての相談ができる。あるいは、一時預かりとか、そういう体制がある。さらには、みんなが支えてくれるという安心があったんですけれども、核家族になってきて、その安心のシステムをさらにどういう具合につくり上げていかなければいけないのかということについて、やっと踏み込んだ議論が行われて、それをやろうとしています。さらには、最後になりますが、多子世帯に対する支援を明確にやるということだと思います。
 「希望出生率1.8」の目標を達成するということは、思い切った、2人目から、それから3、4人からというぐあいに、多子支援というものをやらなければいけない。
 いずれにしても、社会、国全体として、子育てをみんなで祝福し合って、そして、子供をもっともっと大事にするという社会に変えないと、今ですと、時々話がありますけれども、ベビーカーを持って電車に乗ると嫌な顔をされるとか、あるいは、子供が外で遊んでいると追い払われるとか、そんな社会ではなくて、祝福される社会に切りかえる。
 また、どうしたらみんなに気持ちよく祝福してもらえるかという、その環境づくりもちゃんとやらなければいけないと思っていますので、こういう柱を、四つの大きな柱と、そして、先ほどからお話ございました、不妊治療も加えさせていただいたところでございます。
 あと、二つ目の柱で育児休業のところにつきましては、男性がもっとちゃんととれるように。結局、核家族になったわけですから、夫婦2人が中心になって育てるしかないんですね、いろいろ言ってもですね。だから、そこのところを男女共同参画という、もっと以前の問題として、だから男性もこうやりなさい、平等だからこうやりなさいというよりも、結局、2人で育てるしかないわけですよね。そうしたときに、男性も今は育児休業をとられているのが6.16パーセントという実態の中では、それはちょっとおかしすぎるでしょうと。だから、現状をよくお互いに認識していただいて、いわゆる少子化社会とか、あるいは男性が働かなければいけないというか、肉体労働が中心の社会というのは、むしろ工業社会でしたから、その中で豊かになってきたからでしょうが、今は女性もみんな生きる上での将来の生きがいを求められている。だから、出産もできる、仕事もできる、いろいろな社会奉仕活動もできるというようなことを、どう保証していけるのかということ、私はこの少子化社会、ある意味では、社会構造の転換が必ず伴うことだと思っておりますので、そこまで踏み込んで、今回の議論をさせていただいたと思っております。
(問)少子化大綱についてお伺いしたいんですけれども、昨年12月のこの大綱を決めるに当たっての有識者による検討会の最終会合で、大臣は、今回の大綱が最後のチャンスであると思っているとおっしゃったと思うんですけれども、今回の大綱は、その大臣の危機意識ですとか、そういった思いに十分に沿う内容になったかどうかということをお伺いしたいのと、さっき、男性の育休取得率のお話もありましたけども、現大綱も、今の大綱も、数値目標は掲げていますけれども、多くが半分以上で、かつ、結構、男性の育休取得率とか、フリーターの数とか、おそらく重要と思われる数値が未達成になってるという状況だと思うんですけれども、これまでのこの施策の実効性の評価と今後の進める上での考え方をお伺いしたいと思います。
(答)少子化の問題は、もう長くみんなで実はやってきているんです。昭和の最後に、これからの日本は少子高齢化になる、情報化社会になる、それから、グローバルな社会になるというようなことは言われていて、そして、平成6年に我々はこの少子化問題、高齢者問題というのを一緒に、同時に扱うことをやってきました。
 しかし、高齢者問題はやっぱり、本当にもう後がないという状況でございましたから、いろいろな形で、年金制度改革、医療制度改革や、あるいは介護保険の導入とか、そういう形で取り組んできました。そのときに保育の充実とか、あるいは育児休業制度の導入とか、そういう形で一応やりましたけれども、その後、なかなかその修正の範囲でしかできなかったということは事実だと思います。
 その中で、やはり、早くやらなければ、早くやらなければと言っていたことは、もうこの「86万ショック」というようなことも起こり、もうぎりぎり、ラストチャンスと、これ以上放っておきますと、とにかくお母さんの数が減って、何ともならなくなってしまうという、そういう意識があるところでございます。この危機感によってやってきたところです。
 そうしますと、この内閣府の検討会の中で、少子化についてご議論いただきましたが、それに加えて、私どももちょっと新しい視点からも、いろいろな意味で再充実をお願いしたいということで、私どものほうの大臣室で、更に個人的に意見を聞くべきだと思う方々の意見も聞いて、そこに検討会の方にも何人かご出席いただいて、ぜひそういうところも補完した形で、考慮いただければというお願いもし、そして、すばらしい提言をいただきました。その提言にのっとって、今回、ここまで少子化大綱をまとめることができたと思っています。
 ですから、この検討会の皆様方、そしてまた、それをするまでに、いろいろなご意見をお寄せいただいた方々に、心から感謝を申し上げたいと思っております。
 評価のところも、引き続き、こういう評価をしてまいりたいと思っております。お話し申し上げましたように、PDCAサイクルは、ある意味では、結局、目標に対してどれだけ実現できたかというチェックシステムなんです。今回はそれにプラスして、いわゆる原因をどういう具合に究明して、そして、それに対する対策の柱は一体何と何と何なのかというような議論を煮詰めてきたわけでありますから、両方をちゃんといつも大事にしながらやっていかなければいけないと思っています。
 ここで立てられた目標は、これからはちゃんと実行できましたら、PDCAサイクルを回していきたいと思っていますが、常に一体どうしたらこの目標を達成できるだろうかという、そういう大きな見直しというか、見方も常に持ちながら、PDCAサイクルを回していかなければいけないと思っているところであります。
(問)話題が変わるんですけれども、全閣僚で「かりゆしウェア」を着て臨む、毎年恒例の「かりゆし閣議」の今年の実施の検討状況について、教えてください。
(答)新型コロナウイルス感染症の問題から、例年行われておりました、沖縄県による総理等への「かりゆし贈呈式」が各県を越しての移動は自粛せよということになりまして、全国的にもいろいろなものが全部自粛されておりますので、沖縄県としても、いわゆる見送る方向だということでございまして、「かりゆしウェア」の官邸での贈呈式とかは行われないということになりますと、当然、「かりゆしウェア」の着用も見送られるということになったところでございます。
 現時点において、その次の予定はありませんが、これは遅らせてもどうするのか、それとも今回はこういう状況の中で見送るべきなのかということについては、沖縄県とも十分相談をさせていただきたいと思っております。

(以上)