竹本内閣府特命担当大臣記者会見要旨 令和2年9月16日

(令和2年9月16日(水) 10:13~10:37  於:中央合同庁舎第8号館1階S108記者会見室)

1.発言要旨


 これが最後の記者会見となりますが、在任期間を振り返ってということでしゃべるようにと言われたのですが、昨年の9月11日だったと思いますが大臣を拝命しまして、2日後にIAEAの総会、ウィーンで開かれたものに行きまして、天野事務局長の追悼の演説と、そして日本の原子力政策を訴えました。そこで日本の福島原発における汚染処理水の処理について非常に厳しい質問を現地で受けましたけれど、それがこの仕事の最初の出会いでございました。
 爾来、私は科学技術、IT等々、いろいろ6分野、厳密に言うと7分野を担当しているのですけれど、非常に忙しく、恐らくスタッフの皆さん方も、自分達がルーティンでやっている仕事プラス、同じぐらいの量の新しい仕事をふっかけていったと思います。大変せっかちな私によく付き合ってくれまして、面白おかしく仕事がやれました。本当に楽しい1年間であったと思っております。
 特にその中で、例えば宇宙政策を担当していますが、これからは宇宙はanother worldではなくて、our worldと、我々の住む世界になるであろうと。こここそ一番力を入れなければいけないということで、各省に予算の増額を要求、既にしましたけれど、その中で小泉環境大臣が、是非それをやりましょうということで、環境省も衛星を打ち上げて宇宙デブリ除去技術の開発をやっております。
 ベンチャーでそれをやっている人がおられまして、そこに一緒に視察に行き、そしてともかく宇宙こそ日本の産業のフロンティアであるというような思いの中で、両省を挙げて共にやったのは非常に面白かった、楽しかったと思っております。また菅政権が各省の垣根を越えてという言葉を言っておりますけれど、まさにそういうはしりをやったのではないかと私は思っております。
 その他、ITについては各省間でLANが全然別で、隣の役所とテレビ対談できないというのを発見しまして、これは、どうしようもないということで、中央省庁のLANの統一を図ることにしました。これが実現しますと、毎年数百億円近くの節約ができるという試算もございます。また、地方自治体のシステムの標準化もやることにいたしました。
 政府CIOというのが私の下に民間人でおられまして、その下に各省が副CIOを持っておりますので、その連携でやっているわけでございますけれど、これをさらに強化するのが、今、言われておるデジタル庁の話だと私は考えておりまして、走り出しを我々がやっていたということは非常に良かったと思っております。
 その他、健康医療、何としてもコロナとの戦いでございました。AMEDを通じて研究開発に全力を挙げさせ、そして治療薬、ワクチンの開発、それぞれに相当の予算を事あるごとに割り振りまして、努力してきました。治療薬については、少し目途が出てきたという情報もございますけれど、まだ世界では確たる治療薬、ワクチンが発見できていない。このことが、コロナがいかに人類にとって驚異であるかということだろうと思います。引き続き、何としてでも治療薬、ワクチンの開発をしっかりやり遂げていかなければならないと、関係者の努力に大いに期待するところであります。
 その他、いろいろな分野で新しい試みがありました。例えばコロナ後の日本の社会はどうなるかということについては、竹中先生を座長とする竹中懇談会をつくりまして、デジタルを使って、デジタル国家というんですか、デジタル国土整備を図るべきだという提案をいただきました。
 また、宇宙については宇宙政策委員会というのが当然あるのですが、その前に若い多方面な人たち、30人近くの学者、ベンチャーに集まっていただきまして、宇宙の未来に関する懇談会を開きました。これも非常に楽しかったと思っております。
 さらに、ベンチャーの育成ということで、今、日本ではユニコーン、いわゆる1千億円の資産を持っているベンチャー企業が3社ぐらいしかないと言われておりますけれど、アメリカでは180社ぐらいあると言われております。もっと、ここ20年ぐらいの間に40社ぐらい出てくれれば良いなという思いの中で、日本にシリコンバレーをつくろうということで、拠点都市の指定を4つの地域でやりました。そして、その各地域を訪問し、若い意欲ある人たちの、未来を見据えた眼差しを見ながら議論をする中で、私は日本の将来は非常に明るいという印象を受けました。要は、日本は科学技術が生命線と言いますか、科学技術立国によってこの国を支えていくことが一番大事だと思っております。そういう中で、やはり現在の研究者の研究されている環境が必ずしも十分でないということの中で、例えば創発性研究制度、1年間700万円を10年間出すというような制度とか、あるいはその他、今回予算要求をしておりますけれど、10兆円ぐらいの財投を積み立てて、年間3千億円の運用益で研究者の応援をするとか、あるいは科学技術大臣賞を出すとか、いずれにしろ科学技術に従事することが非常に誉れある立場であると、社会的地位も上げて、そうすることによって、論文等が世界的に、かつては1位、2位を争う状態であったのが今は4位とか5位とかどんどん落ちております。これを救っていかないと、日本の将来はないと思っております。
 今世紀に入って18人の方がノーベル賞をもらいました。アメリカに次いで世界第2位、中国は1人しかいない。韓国はゼロということを考えますと素晴らしいことなのですけれど、これがこれからも続くかどうかとなると必ずしも十分、私は自信が持てない。したがってここで一発きちんと科学技術立国の足場をつくっておく必要があると私は考えておりまして、そのことに全力を傾けました。
 科学技術立国といいますか、サイエンスがリスペクトされる社会、これをつくることが今の日本にとって一番重要だと思っております。 アカデミアがつくった成果品、知的財産が産業界で高く評価される社会にならないといけない。当方で調査したところによると日米比較をするとアメリカの20分の1という統計も出ております。これでは優秀な学者がどんどんアメリカへ行って逃げて行ってしまう。日本の将来は危ういと思いますので、やはり待遇を良くし、そして成果品に対する適切な評価がされる、サイエンスがリスペクトされる社会にしなければいけないと思っている次第でございます。
 ざっと振り返ってそういう思いをいたしました。

2.質疑応答

(問)今、在任期間中を振り返っていただいたんですが、その中でも特に印象に残ったことと、あと、やり残したことがあったらぜひ教えて欲しいんですけれども。
(答)まず印象に残ったのはスタートアップ・エコシステムの若者との対談です。これは本省でもやりましたし、現地へも出かけました。非常に若い人たちが夢を持って、チャレンジ精神に満ちて仕事をしていただいていると、これは嬉しいことだと思いました。
 科技イノベ法を改正し、科学技術基本法を改正し、イノベーションをもっと取り入れた社会にしなければいけないということの中で、若い人が自発的にそういうことに取り組んでいただいているということは非常に良いことであったと思っております。
 十分でないというか、これからやらなければいけない課題として多いのは、今度の政権の中でデジタル庁創設と言っておりますけれど、先ほど言いましたように各省間のLANの統一。それから地方の政府、自治体のシステムの標準化、地方は5年を目途にやっているんですけれど、それをしっかりとやり遂げていただくことによって日本がデジタル国家に再生すると確信を持っております。
 私の後を継がれる方が、内閣だけでやる仕事ではありませんので、総務省も非常に関係しますが、関係省庁一丸となって、それをやり遂げていただければ世界に伍するIT国家になれると思っております。
(問)大臣、お疲れさまでした。
 今日で7年8カ月の安倍政権が終わるわけですが、大臣も閣僚の1人、また、一議員としてこれまでの安倍政権を振り返って一言お願いできればと思います。
(答)1つは、これは安倍総理にも申し上げたのですが、非常に、安倍総理は日本の立ち位置を、国際社会における立ち位置を大きく上げたことは間違いないと思っております。社会的地位と言いますか。
 実は現場に遭遇しておりまして、4年前だったと思いますが、ダボス会議に私が出ておりましたときに、安倍総理がそこでスピーチをされました。きれいな英語で、しかもジェスチャーを交えてやられましたので、それを見ていた2千人ぐらいの聴衆は我々の友達だと、仲間だという意識をあのとき初めて持ったのです。それまでは日本というのは特異な国であると、能力はありそうだけれど、特異な国であると。我々の仲間かどうかちょっと分からないけれど、少し距離のある存在だ。ところがあの安倍さんのスピーチを聞いて、見て、これは話せる連中だなという認識を持ったのではないか。世界のリーダーが。そこから、アベノミクスという言葉とともに日本の社会的地位が大きく、安倍さんがあちこち出かけられて、人と会われるという活動の中で日本の社会的地位が大きく上がったことは間違いないと思っております。
 それは安倍政権、いろいろな功罪はあると思いますが、最大の功績は、私はそれだと思っております。
 それからもう1つ、かつては外から見ており、今は中で1年間見てきまして、やはり安倍政権の一番の特徴は仕事が早いということです。大統領府制というほど。そのことについて批判もあります。党をあまり通さないという問題はあるんですけれど、やはり圧倒的に決断が早くて、結論が早い。このことが世界の動きに十分ついていける、そういう素地であろうと思っております。
 議院内閣制の中でこれだけ早く仕事をするというのは、なかなか難しい問題もあることはあります。反対論もあるかもしれませんけれど、事と次第によってはスピードが要求されることが多々ありますから、そういう意味では時代に合った政権運営と言いますか、行政運営をしておられたと傍で見ておりました。
(問)お疲れさまでした。
 大臣を中心に来年度からの第6期の基本計画の策定が進んでいると思うんですが、大臣としての私見で構わないんですが、次期計画での政府の投資目標、どのようにお考えでしょうか。改めて今、お話ができればというふうに思うんですが。
(答)一応、概略の骨格、考え方の基本概念というのはつくってあるのですけれど、来年の3月に閣議決定に持ち込みたいと思っているのですけれど、やはり基本はやはりサイエンスがリスペクトされる社会をつくるということだと思います。
 そのためには必要な予算を伸ばしていかなければいけない。例えば宇宙関係予算ですと、アメリカの15分の1、EUの3分の1ですから、これはせめて3倍ぐらいにして、EU並みに予算を貰わないとなかなか宇宙の競争には打ち勝てないと思っております。
 そういう予算をしっかりとやることが一番、差し当たり大事であると思っております。
(問)第5期では、GDPの1%ということで、いわゆる試算の仕方として総額を示しながらも、前提を付けたんですが、第6期は、大臣、どういう形で示すことがいわゆる科学技術振興につながるというふうにお考えでしょうか。
(答)今後の議論によりますけれど、やはり科学技術の振興及び宇宙を含めた科学技術関係の研究開発というのは、国の金で全部やるのではなくて、やはり民間を引き入れることによって、例えば宇宙開発がビジネスに乗るのなら、民間も乗ってきます。そういう仕組みを導入することによって、民間資金をどんどん導入していくと。それはやはり大事だろうと思っております。
(問)もちろん民間をどういうふうに引き出していくかということは前提であると思うんですけれども、その前に政府予算をいわゆる目標値としてやるのか、それともダイレクトな考え方としては官民合わせてとか、第5期でも入れていましたけれども、それを全面に出すような方向で大臣はやったほうがオールジャパンになるというふうにお考えなのか。その辺はどういうふうに。
(答)私は両方だと思っています。政府予算も一定の目標を掲げて、1%とかいう議論がありますが、それを掲げたとおりに、それが原因となって、触媒となって、民間資本がどんどん投下されて、民間による科学研究が大いに進むという状態をつくることが一番理想だと思っています。
(問)ということは、両輪を入れていくのが良いだろうというように大臣はお考えというふうな。
(答)私はそう考えています。いろいろと先生方のご議論があると思いますが、変化はあるかもしれません。基本的にはそうだと思います。
(問)大臣、お疲れさまです。
 宇宙政策に関してお伺いしたいんですが、大臣がされていた宇宙政策で一番力を入れたところ、そして、もしやり残したことがあったら教えてください。また、一番印象的だった宇宙関連のイベントがありましたら、教えてください。
(答)宇宙に若い人も含め関係者が関心を持っていただくようにという思いの中で、宇宙懇談会を5回開催いたしました。いろいろな意見が出て非常に面白かったですが、後ほどまた見ていただければ良いと思います、報告書が出ますので。
 やった仕事で一番力を入れたのは、環境大臣の小泉さんと一緒に宇宙デブリの開発について力を入れました。現にベンチャーが150、60億円のお金を使って宇宙のデブリをとって回収するそういうプロジェクトを立ち上げておりまして、近いうちにそれが宇宙へ飛び立つわけでありますけれど、それがビジネスになる環境をやはり日本としてもつくらなければいけない。望むらくは、宇宙にはごみがいっぱいですから、それを自己責任において回収するという義務を課すような国際的な条約か何かを日本の提案でつくれば良いのではないかという議論もしております。
 しかし、そういう提案をするためには我が国がそれの分野において実績を積んでおかないと発言力がないものですから、私はJAXAとも話をしておりますけれど、しっかりと開発をしていただくと日本の宇宙の未来は明るいと思っておりますし、特にアルテミス計画でアメリカと協力して2024年に月面へ行くという計画でございますけれど、それとも相まって日本の技術、今まで運搬の技術とかいろいろ日本が得意とするものがございますが、それにこのデブリの回収という技術も加わってきて、日本が技術面において宇宙大国の1つになれるのではないかと思っております。
(問)先ほど、大臣がデジタル庁のことに言及されたので、そのことで伺いたいんですけれども、組織としてどのようなものになるのかということについて伺いたいと思います。
 今の内閣府のIT担当がどうなるのか、あるいは総務省や経産省がどういうふうに関係してくるのかということについて現時点でわかっていることについて教えていただけますでしょうか。
(答)デジタル庁について、その構想について私のところで相談を受けているわけではありません。今回総裁候補になられた2人の方がデジタル庁の発言をされていると、その大もとは大体分かっていますけれど。ただ、政府としては各省間のLANの統一を既に着手しました。自治体のシステムの標準化も5年後を目途に実行します。そこまでやっているんです。
 それ以上に何をやる必要があるのかということなのですが、考えてみますと、やはり、予算の統一要求、統一の執行と、そういうことができるのかどうか、そんなことも考え方の1つにあるのではないか。何故ならばデジタルを早く完璧に社会全体に広めることがやはり国際競争の中において必要ですから、デジタル庁は大賛成ですけれど、その中身が問題なので、私は今申し上げた、現在やったこと以上に何をやるかといえば、予算の統一要求、統一執行と、例えばそんなことがあるのではないかなと思います。
 今は政府CIOがありまして、各省に副CIOがいて、そことの総合連絡、強制力が無いのです、言ってみれば。ですから、そこへ強制力を持たせれば1つの考え方かと思いますが、あくまでもアイデアの段階です。
(問)あともう1つ、今日は最後ということなので直接関係ないことなんですけれども、大臣が以前自民党の府連の会長をされているときに、大阪都構想の住民投票があったかと思うんですが、今年の11月に改めて都構想に関する住民投票が計画されておるところです。
 それに関して今、大臣としてどのように考えていらっしゃるでしょうか。
(答)都構想は、当時安倍総理だったのですけれど、賛成か反対か、いろんな議論があると思って、私は官邸をお尋ねして安倍総理にこの問題をどう扱えば良いですかと聞きに行ったんです。
 すると安倍総理はそれは大阪で決めて下さいと、国としては関与しませんと。こういうことであったものですから、大阪に帰りまして全議員、地方議員も国会議員も集めてどうするのかと語りましたところ、全員が都構想反対と言うから、分かった、では反対でいこうということで住民投票で反対の立場で選挙になったわけです。
 その選挙に我々は勝っているわけです。ですから、それが大阪市民の意思ですから、住民投票ですから、それが済んで、まだ5年しか経っていないのにまた投票をやるというので、私は少し早すぎるのではないかと思っています。
 例えば、one decade、10年ぐらい後にもう一度大阪市民の意見を聞くということがあっても良いのではないかと思っておりますのと、中身について十分周知徹底されておられないのではないかとも思います。
 前のときは橋下、当時の大阪市長は49回住民説明会をやりました。ほとんど自分でやったようです。聞きましたが、大したものだなと思っていたのですけれど、今回は8回だけやるということでありますが、中身はほぼ同じなのです。
 だから同じものを5年前に結論が出たやつを何で5年後にやらなければいけないのかな。例えばone decade、10年ぐらいしてやっても良いのではないかと。ましてや、5年後に大阪万博を控えておりますから、そういう建前論で争うよりも、10年後に住民投票をするぐらいの感じの方が本当は良いのではないのかと思っております。
 府も市も仲良くやって、そしてこの国際イベントを成功させることは大事ですから、私はそう思う。個人的には考えています。
(問)時期尚早、少し早いということか。
(答)時期は5年前にやったのに何でまたするのかという感じは皆持っていると思います。

(以上)