竹本内閣府特命担当大臣記者会見要旨 令和2年7月17日

(令和2年7月17日(金) 11:13~11:28  於:中央合同庁舎第8号館1階S108記者会見室)

1.発言要旨


 2つありまして、1つは新しい「IT戦略」の閣議決定でございます。本日の閣議で今年度の「IT戦略」を決定いたしました。新しい「IT戦略」はニューノーマルな社会において、安全で安心して暮らせ、豊かさを実感できる社会の実現に向けて重点的に取り組むべき施策を取りまとめたものであります。具体的に何をするのかということでございますが、デジタル化、あらゆる分野においてデジタル化を進めることです。それから、IT総合戦略本部を先日15日に開いたのですが、総理からは数点指示されております。1つは国の情報システムは原則として一括してシステム基盤を調達し、各省はその基盤を利用してシステム整備をする方式へ今後3年間で移行すること、それから、地方自治体の情報システムについては、共通的なサービスを提供できるような仕組みを今後5年間で実現することなどを指示されております。つまり、中央省庁は3年間、地方自治体は5年間できちんとデジタル化の構築をやろうということであります。こういった総理の指示も踏まえまして、ITを活用した感染症対策に関する取り組みを推進すると同時に、先般私の懇談会で中間の論点整理というのを出しておりますが、その御提言を基に行政のデジタル化、それから政府のネットワーク環境の整備、要するに各省のLANを統一するということでありますが、そういったことをすることによってデジタル強靭化社会を構築していきたいということでございます。
 それからもう1つ、これも重要なことなのですけれど、総合科学技術・イノベーション会議が開催されましたということと、「統合イノベーション戦略2020」の閣議決定が行われたということの報告でございます。まず昨日ですけれど、第50回総合科学技術・イノベーション会議、CSTI本会議が開催されまして、「統合イノベーション戦略2020」について諮問、答申がなされて、これを受けて本日の閣議で閣議決定を行ったということでございます。中身についてですけれど、会議の中では、安倍総理から私と関係大臣に対しまして、博士を目指す全ての学生に対する奨学金などの支援策を抜本的に強化するとともに、若手研究者を安定的に支援していくための世界に伍する規模のファンドの創設など、新たな仕組みづくりを速やかに進めること、これまでにない実践的な起業家教育を徹底すること、大胆な政策を一丸となって実行に移すこと、こういう趣旨のお話がありました。そして、現在コロナで我々は非常に苦しんでいるわけですけれど、これを解決するのはやはり科学技術だと考えております。そのためには、科学技術がリスペクトされる社会でないといけないということでございまして、アカデミアの科学技術の成果に対して、産業界も適切な評価を与える社会にしないと駄目だということでございます。この間、うちの方で調査をしましたら、その評価の額はアメリカと比べたら22分の1でございました。これでは優秀な科学者が日本に留まるという保証はどこにもないということでございまして、きちんと産業界も、そういうしっかりとした目で、世界標準で見ていただきたいと、こういう強い思いを持っております。そういう最中、やはり若い人の待遇を良くし、そして業績を上げればそれなりの表彰というか報酬があるという、そういう環境にしないと優秀な人が集まってこないということでございますので、そのために今回、科学技術大臣賞というのを設けます。これで、志があり、そして実績のある方に対しては、相当の研究費等を政府がお金を調達することによって、夢のある社会をつくっていきたいという、そういう思いでございます。具体的にどうするかといいますと、科学技術大臣賞を貰うことに決まった方については、既に各省でいろいろな助成制度があります、例えば文科省においては創発的研究支援事業という、皆さんがよく御存じのものがありますが、1年間700万円で最高で10年間、要は7,000万円貰える制度があります。また経産省では、民間企業と一緒に研究する場合において、1件当たり3,000万円の交付、それを5年間続ける、最高1億5,000万円、こういう制度があります。さらに、留学する方には留学の支援をする制度もあります。このような制度をケース、ケースによって使い分けて、こういう優遇支援制度をつけていきたいということでございます。そういうことで金額も大きいものですから、必ずや科学研究者の大きい励みになると思っております。それから、科学技術を応援するためにファンドをつくるという話を先ほどしましたけれど、いわゆる10兆円とか言われているものですが、我々としてはアメリカの大学では全部合わせて65兆円のファンドを持っております。それと比べると10兆円ぐらい欲しいという希望でございます。その運用益によって毎年数千億円のお金を出して、それを研究者の支援に充てる。凄いことをすると思われる方がおられるかもしれませんが、この際もう徹底してブレイクスルーしないと日本が科学技術国になりきれないと思って、非常に危機感も持ちながら、しかもこのコロナというある意味では、暗い世相に対して明るい末の見通しを与えるという意味でも絶対にやり抜きたいと思っておりますので、御理解を応援をいただきたいと思います。

2.質疑応答

(問)今日、総合イノベーション戦略が閣議決定されたということで改めて大臣から所感をお伺いしたいんですが。
(答)イノベーションがないと世の中が良くなっていかないというのは事実でございますので、それを政府が全面的に支援するという決意と、その具体的な施策を政府として認めていただいたという、これは非常にありがたいことだと思っております。これにより、日本が私がよく言う科学技術が本当にリスペクトされる社会にすれば、日本の高い技術力、頭脳の力をもってすれば、十分未来は開けるであろうと思っております。
(問)あともう1つ、先ほどファンドの話が出てきたんですけれども、10兆円規模のファンドをいつぐらいまでにつくりたいと、大臣としては思っているんでしょうか。
(答)これは予算要求との絡みですから、骨太は今日決定する予定で、その後1カ月後ぐらいに予算、もう少し後ですか、予算の締め切りまでにいろいろな議論があろうかと思います。
(問)2020に関してなんですが、AI、バイオ、量子技術について、マテリアルも政府戦略を策定しなさいということが盛り込まれました。改めてマテリアル戦略に関しての意味合い、戦略位置づけと意味合いと、今後のスケジュールがわかれば教えていただければというふうに思います。
(答)マテリアルの分野は我が国の科学技術・イノベーションを支える重要な基盤技術でして、吉野さんのリチウムイオン電池もそうですし、それから2014年には天野さん、赤﨑さん、中村修二さん等の青色発光ダイオードもございました。
 世界の科学技術の競争の中で、マテリアルにおいて日本は非常に優位性を持っていると私は思っておりますし、これからもその優位性は続かなければいけないと思っておりまして、しっかりとそれを支援したいと思っております。
 そこで、政府としては統合イノベーション戦略推進会議の下にタスクフォースをつくりまして、マテリアル革新力を強化するための政府戦略の検討を開始したいと思っております。そこで、本年度内で結論を出していきたいということでございます。
 私も先般、名古屋に行ってノーベル賞学者の天野先生に会ってきましたけれど、すごい研究をしておられまして、もう1つノーベル賞を貰うのではないかという噂にはなっていました。
 そういうことでマテリアルは科学技術の分野で日本が世界にその存在感を示せる大きい重要な分野だと思っておりますので、政府としてしっかりと支援をしていきたい、そのためにタスクフォースをつくりたいということでございます。
(問)もう1件なんですが、若手表彰支援の件なんですけれども、これは、まず、大臣の賞を取った人が各省の支援を貰うのか、どちらなんですか。優先的に貰えるということですか。
(答)そう。ファストトラックです。いろいろな制度を持っておりますが、科学技術担当大臣でこういう大臣表彰をするときに、これを第一に、この支援措置をつける。
 例えば経産省のやっておられる1年3,000万円、各5年間のものをつける。こういう決定を、もちろん強制的にやるわけではなくて、担当省庁である経産省ともよく相談をしながら、それをつけることによって御褒美としたいということであります。
(問)ということは、各省の支援策を優先して得られる特別枠を大臣賞で担保するという。
(答)そういうことです。
(問)何人ぐらいで、いつから。
(答)1人だけというわけにはいかないでしょうから、3人ぐらいは選ばなければいけないと思っておりますけれど、これから各省と相談です。
(問)今年実現できそうですか。
(答)半年ぐらいかけて。
(問)半年ぐらいかけて、半年後ということは今年度中に。
(答)年末か年始ぐらいにと思っています。
(問)第1回という形を。
(答)はい。
(問)関連して、これは1回限りではないということですか、この賞というのは。
(答)そうです、これは継続してやります。
(問)継続というのは、1年に1回と。
(答)1年に1回。
(問)背景には若手研究者のなり手が不足しているという、なる人が少ないというんですか、そういう背景もあると思うんですが、この賞にどういう効果を大臣としては期待をされていますか。
(答)ノーベル賞の賞金が1億円です。吉野さんは3人で貰ったので1人3,000万円です、あまり大した額ではないと言えば言えるんですけれど、そういうものと比較しても大きい額ですので、それに挑戦しようという研究者が当然たくさん出てくるであろうと思います。
 やはり、研究者の待遇が非常に悪いということと、ドクターをとっても企業が採用しないという日本の現状、これを何としてでも変えていきたいと思っております。もちろん、我々の方から産業界に対してドクターの方をもっと採用してくださいというお願いは産業界に対してしております。そういうことをする中で、大学でドクターまで勉強して、そして産業界で力を発揮していただく、結果として日本の科学技術力が大きく上がってくる。そのためにはやはり待遇を良くし、かつ、何か良いターゲット、目標がないといけない。その目標の1つがこれだと私は考えております。
(問)この表彰の若手というのは年齢制限を設けてやったりするイメージでよろしいんでしょうか。
(答)抽象的に言っているだけなのですが、我々が研究者の分析をするときに40歳を一つの分岐点にしておりまして、40歳を越した研究者が何人いるかとか、その前の人が何人いるかということをしておりますので、40歳以下が若手ということになるのだろうと思います。
(問)あと、あくまでも既存の支援策を優先的に受けることができるという理解でよろしいんですか。
(答)そうです。
(問)関連してなんですが、この文科省、経産省にそれぞれ支援策があると思うんですが、1人の研究者がAとかBとか、2つとか受ける、複数受けることというのはあり得るんですか。1人、表彰された人が「トビタテ!」だけだったり、「創発的」だけだったりするのでしょうか。
(答)1つでなければいけないということはあえて言っておりませんので、2つ重ねて、例えば留学の費用を貰って、他も受けるということもあり得ると思っています。

(以上)