竹本内閣府特命担当大臣記者会見要旨 令和2年7月7日

(令和2年7月7日(火) 11:07~11:21  於:中央合同庁舎第8号館1階S108記者会見室)

1.発言要旨


 昨日まで名古屋、大阪、福岡、3カ所を訪問してまいりました。
 まず先週、最初に行ったのは福岡ですけれど、福岡では小学校の校舎跡地に160人ぐらいベンチャーが集まっておりまして、高島福岡市長の案内でいろいろベンチャーの人たちと意見を交わしました。非常に元気があるし、地域の特性を活かしているということ、それから福岡は意外と国際都市で、半島にも近いということもあって、その辺との交流も相当あるようで、ベンチャーとして創業していきたいという気迫はもの凄く伝わってきました。ただ問題は、ベンチャーを立ち上げるときに資金の問題があります。したがってアクセラレーターとか、ベンチャーキャピタルとの繋がりをどうするのかというのが一番大きい問題なのだろうという思いで見ておりました。もう一つは、九州大学が新しいキャンパスをつくられて、非常に素晴らしい環境の下に久保総長がいろいろな研究を指導しておられまして、素晴らしい実態を見てまいりました。その中の一つが佐々木教授、これは副学長ですけれど、産学連携に取り組んでおられる先生であります。この方が水素の研究をしておられまして、次世代のエネルギーとして水素を使うためにはどうすればいいかという研究をしておられるんですが、その現場も見せていただきました。ということで、地場の小さいベンチャーとそれからある程度確立された大学の研究施設、それとの間にそれなりの連携があるような感じがいたしました。
 その後、名古屋へ行ったんですけれど、名古屋は名古屋大学が中心となって、相当ベンチャーとの連携もばっちりやっておられるという感じでありまして、中には400億円を超す資金を集めることに成功したベンチャーもいるということでありまして、その方にもお会いしましたけれど、しっかりと歯車がかみ合っているという感じがいたしました。ここではノーベル賞を貰われた天野教授にもお会いしました。天野さんはノーベル賞をもう一つ貰うというような噂があるんだという話を別の人から聞いたような画期的な研究をなさっている。空気とレアメタルとの組み合わせの中で新しい素材をつくられて、それがエネルギーの効率を3倍ぐらいに上げるというのか、100のエネルギー源を30でつくれるような素材だという御説明を受けました。それは自動運転にも使えるし、これからのIT社会、5Gの時代には大きく活用できるだろうという話でございました。ですから、名古屋はベンチャーと学会、アカデミアと産業界の組み合わせが割合現実化しているという感じがいたしました。
 昨日、大阪へ行きまして、大阪では大阪駅の上にあるグランフロントという非常に素晴らしい施設なのですが、これはJRと大阪市とURが一緒になってつくったものでありまして、私は設計段階で2回ぐらい訪問しているんですけれど、出来上って行ったのは初めてでした。本当に素晴らしい施設でありまして、旧国鉄の操車場跡地を使ってつくったものでありまして、そこにベンチャーの方が何十人か来ておられまして、関経連の会長の松本さん、それから商工会議所の会頭の尾崎さんも同席していただきました。知事の吉村さんも同席、その上でいろいろな議論をいたしました。非常に大阪らしく、発想豊かというか、おもしろく活発な、いろいろな分野でベンチャーをやっておられるわけですが、他方、大阪大学がいろいろワクチンの研究等をはじめ科学技術が進んでおりますので、それとの整合の中でいろいろ研究をなさっている。そういった人たちとこういった人たちとの間にどういう繋がりがあるのかないのか、これからの大きい課題だろうと思っております。具体的にベンチャーとして大きく成長したもの、それはまだないのかという感じでありますが、これからそういうものができてくるという話でありました。要は、私はそこでも申し上げたんですけれど、大阪は地方だと私は思わないけれど、地方だとして、東京との距離感だけではだめで、これからは世界を相手に資金集め等をしなければいけないのではないかという話をしました。それについては、既に不動産関係では世界を相手に資金集めをしている成功例があるということでございました。
 以上、三つ見てまいりましたけれど、それぞれベンチャーをやる人の心意気は凄いものがありますが、それを我々が将来エコシステムを指定する中で、いろいろな助成制度をつけてどのように飛び立たせられるかということがやはり大きい問題だろうと思っております。そしてもう1点は、先ほど言いましたように、やはり世界を相手にやらなければいけない。そのためにSBIR制度等を使いながら育てていかなければいけないと思っております。それが出張の報告であります。
 それからもう1点は、昨日ですけれど、「宇宙利用の現在と未来に関する懇談会」を開催いたしました。御案内をしていると思いますが、宇宙利用の現在と未来をおさらいいたしまして、これからどういう社会が展開されていくのかということでございます。宇宙というと大体特定の人がやっているという感じで、日々の我々の生活に直接余り関係がないと普通の人は思っている。私もかつてはそんな思いでありましたけれど、考えてみますと、例えばGPSをはじめとして、我々の日常生活にもの凄く関係があります。また、月の資源を地上へ持って帰って使うといったことも含めて、いろいろ宇宙とは深い関係ができつつあるわけであります。したがって、宇宙産業の発達も含めまして宇宙分野をどのように成長させていくかということは大きい課題だと思っております。現在宇宙関係予算は3,600億円ぐらいですが、EUが約1兆円、アメリカが5兆円です。アメリカの15分の1ですけれど、去年の暮にアルテミス計画について日本に協力を要請され、協力を約束しておりまして、今のままの財政規模ではなかなか追いつかない。だからせめて1兆円ぐらいに宇宙予算を拡大していくことによって、宇宙先進国としての足場を固め、仲間入りをできるようにしなければいけないと思っております。特にこのコロナを経験しまして、アフターコロナがどんな社会になるのかと考えております。ニュー・ノーマルという言葉が流行っていますけれど、必ずしもエキサイティングな社会でないかもしれません。国内産業を見ましても、住宅も頭打ちですし、自動車だってほぼ同じような状況です。しかし宇宙というのは、日本の技術を活かして相当大きい未来が開かれるのではないかと思います。ですから、この懇談会を通じまして、人々の意識を、宇宙がanother worldではなくてour worldだと思っていただくような、すなわち生活の一部だと思っていただくような、そういう啓蒙を含めました開発をしていく必要があるだろうと思っており、各界の人に来ていただきまして、非常に熱心な議論を昨日していただきました。何回か開催予定ですが、今申し上げたような、宇宙が我々の現実の社会に関連し、夢ではないという状況に持っていきたいと思っております。
 もう1点ございます。実は今日午後1時半からだったと思いますが、虎ノ門ヒルズビジネスタワーを訪問いたしまして、そこで東京におけるスタートアップの現状について生の声を聞きたいと思っております。ぶら下がり取材も受けますので、どうぞお越しいただければと思います。

2.質疑応答

(問)先週の金曜日に大臣が科学技術予算の集計結果を発表されたかと思うんですけれども、あれで見ると、随分、当初予算も含めて増えているように見えるんですが、なかなか研究現場は潤っているわけではなく、むしろ以前に比べて疲弊しているような状況になっています。大臣もぽろっとおっしゃいましたけれども、膨らませたような、見た目だけ増やした予算になっているわけですけれども、こういう見た目だけの予算じゃなくて、実質的な科学技術予算を増やすためにこれからどのように取り組んでいくのか、そこら辺について教えてください。
(答)一連の予算で230兆円です。それで真水が66兆円と言っておられますけれど、おっしゃる御質問はその真水を増やすということだろうと思いますが、私は当然そこも含めて増やしていかなければいけないと思っております。ただ、全部国で、あるいは公共でやるものとは限らず、むしろ民間からの参画を大いに呼びかけて、それで例えば宇宙関係予算を伸ばしていく必要があるだろうと思っております。
(問)そうすると、宇宙以外のいわゆる例えば大学の研究予算だとか、そういうふうなものについてはどのように増やしていくお考えでしょうか。
(答)同じ思いです。非常に重要なことです。その中でやはりアカデミアの研究開発について、我々は例えば創発的な研究体制の整備だとか大臣表彰制度とかいろいろなことをして応援をいたしますけれど、出来上った成果品に対しては、やはり産業界も適切な評価を与えてくれなければ困る。特許の評価がアメリカの20分の1というようなことでは、とても世界に冠たる科学技術をリスペクトする社会とは言えないと思います。私はそれを上げることが、アメリカ並みにしていくことが大きい仕事だと思っています。

(以上)