竹本内閣府特命担当大臣就任記者会見要旨 令和元年9月12日

(令和元年9月12日(木) 18:03~18:23  於:中央合同庁舎第8号館1階S101記者会見室)

1.発言要旨


 御紹介いただきました、情報通信(IT)政策、科学技術政策、知的財産戦略、クールジャパン戦略、宇宙政策を担当します国務大臣の竹本直一でございます。よろしくお願いします。
 先程の職員挨拶で申し上げましたように、内閣官房、内閣府、合わせて1,000人を超す職員が既にこちらにおられるということは、私は役所の出身でありますので、随分変わったという感じがあります。つまり、議院内閣制の政府が大統領的な業務の執行をやるようになってきた。結果として、物事に対する取組が早い。これは確かに間違いなく言えるわけであります。
 世の中、どんどん変わっていっておりますので、それに対し、きっちりと対応できるという意味では、今の安倍政権の体制は非常に良いのではないかと思っております。
 さて、その中で、国務大臣として内閣府の五つのお仕事を私に任せていただいたわけでございますが、要は、この役所は知識集団であり、そこが国家戦略の基本を決めることによって、各省庁に分担させ、そして成果を上げていくと、こういう仕組みになっております。私は、時代がこのように変わってきておりますので、正に良い体制だと思っています。
 さて、その中で情報通信のことでございますけども、ITを担当させていただくわけでございますが、ITというのは言うまでもなく、今まで大変苦労したことが、ほとんど瞬時にしてITにつながるというような、非常に日常活動を楽にするところがあります。ただ、問題は、それについていける人と、デジタルディバイドじゃありませんが、ついていけない人がいると。だから、ついていけない人をどうしてついていけるように持っていくかということが、やはり大きい課題であろうというふうに思いますが、諸外国で、例えば中国なんかはほとんどカードで全部決済をする。現金はほとんど見られない。ここまで変わってきております。
 我が国は、タクシーにしろ、あるいはコンビニにしろ、大分カードを使えるようになってはきましたけれども、まだサインをとるところ、とらないところ、いろいろまばらでありまして、まだ途上国かなという感じがいたします。ですから、効率を考えれば、ITを使った社会の効率化ということを、きっちり国としても詰めた方がいいのではないかというふうに思っております。
 第2番目に、科学技術の点でございますが、私は今までリニア新幹線、東京と大阪を1時間で結ぶ夢のプロジェクトでありますが、これの特別委員長を5年やっております。また、科学技術・イノベーション特別委員会の委員長も経験いたしました。日本の良さというか、日本が外国から見られて、リスペクトを受けるようなことになるためには、イノベーションをどんどん進めて、日本ならではの新しい試みをどんどん成功させていくことが大事だろうと思っております。
 それだけに、きっちりと戦略を組んで、この分野をこのように伸ばすという方向を、大きい立場で指示していくのが、この内閣府の仕事かと思っておりまして、世界の動きをよく見ながら、どのあたりに我が国の立ち位置を、時間との関係の中において位置づけるのかというような感じであります。そういったことをきっちりやっていきたい。
 その中に、もう一つはやはり健康問題があります。日本は男性が81、女性が約87歳というような、非常な長寿国ではありますけれども、そのことが世界から尊敬を集める一つの理由になっております。というのは、今、外国人観光客が年間4,000万人近く来ておりますが、例えば札幌の北大の医学部には、ロシアの医療ツーリズムの人でいっぱいであります。東京の国立医療センターというのがあるのですが、この間、僕は人間ドックに入ったんですけど、40人ぐらい、患者じゃないですね。私1人が日本人、ほかは全部中国人でした。それほど日本の医療技術は世界からリスペクトされている。これも日本に対して、日本の魅力を高める一つの方法かと思いますが、この健康・医療戦略をどのように今後も展開していくかという、これは大きい問題だと思っております。
 もちろん、厚生労働省が我が国の予算の半分近くを使いながら、日々そういったことに対応してくれているんですけれども、大きい意味での方向付けをやはり健康戦略として立てていかなきゃならない。それが我々の仕事かと思っております。
 それからクールジャパン、要するに、日本の魅力をどのように作っていくか。和食文化もありました、いろいろなものありますけれども、それを世界にどのように訴えていくかということだと思います。
 今、外国に関係して多いのは、日本という国に初めて来て、うわ、こんな素晴らしいところが世の中にあったのかと、こう思っている人が非常に多いんです。というのは、70年以上平和であり、一切の戦争をしておりませんから、犠牲者はいない。経済的には、3本の指に入る大成長をしている。福祉は随分充実している、教育も立派なものがまあまあある。こんなことを考えますと、こんな国があるんなら、こちらへ住みたいと思う人がどんどん出てくるだろうと。
 今、外国人労働者を人手不足で呼んでおりますが、そうではなくて、十分な能力も資産もある方が、これから日本に移り住みたいと思うような人がもっと増えてくると、こういう状態こそ、日本を魅力たらしめる一つの道かなと私は考えているわけであります。
 最後は宇宙政策でありますが、中国がものすごく宇宙技術を発達させて、世界をドミネートするのではないかというような感じがあります。アメリカもしっかりやっておりますが、両者の拮抗の中で比較して日本はどうかというと、ちょっとまだ後れをとっているのではないかと。金もかかることでありますから、そう簡単にはできませんけれども、こういった国家戦略をきちっと組み立て、そして世界にそれなりに存在感を見せつけていくことが、我が国を世界から見て魅力たらしめ、そして世界の平和を含むいろいろな分野に貢献できる一つの道であろうと思っている次第であります。
 私は、もちろんこの国会議員となって24年経つんですけれども、初めて国務大臣という職に就いたわけでございますが、安倍政権が、この一つの集大成として今やろうとしていることに、その一員として加われることには非常に誇りを持っております。しっかりと頑張り抜きたいと思っておりますので、どうぞよろしくお願い申し上げます。

2.質疑応答

(問)科学技術政策のことについてお聞きしたいんですけども、科学技術政策は、大臣、いろいろな課題が現在あるかと思うんですけど、日本の研究力の低下だとか、国際的な存在感の問題だとか。大臣としては、今の現状の課題をどのように認識されているのか、それについて、どういうふうにこれから取り組んでいきたいのか、そこら辺について教えてください。
(答)日本人がノーベル賞をとった数は全部入れて26なんですね。科学技術以外のものも一部入っておりますが、それで26。ところが、この間調べたら、カリフォルニア大学バークレーという大学がありますが、ここが今まで出したノーベル賞受賞者が106です。一つの大学で、ハーバードは幾らか知りませんが、百三、四十あるんじゃないかと誰か言っておりました。ですから、全然ノーベル賞の数が違うんですね。もちろん韓国は一つあるかないか、中国もそんな感じでしょう。そういった近隣の国に比べれば日本はいいけれども、アメリカと比べれば全然落ちるということでありますから、それは何かというと、基礎的な研究能力が劣っていると言わざるを得ないのではないか。では、どうすればそれは伸ばすことができるかということでありますけれども、私は、一朝一夕には変わりませんけれども、俗っぽく言うと、やはり、研究予算を付ける付け方を少し変えていかないといけないんだと、抜本的に変えていかなきゃいけないんじゃないかと。
 今のやり方は、例えば文科予算で何かの研究をする人が、文科省の係長の承認を取らないと実施できない。今年は取れたけど、来年は取れないかもしれない、こういう不安な中で研究者は研究しているんです、これが現実です。
 ところが比較すると、例えばMITの場合なんか、ちょっと年次は古いですけど、僕が調べたときは、年間450億円ぐらいの金がペンタゴンから来ていると。何でも軍に役立つもの研究してくださいと、自由に研究材料を見つけ、全部任されている、大学に。こういうことでございますから、それは自由にできると思うんです。だから、研究者が安心して計画的に長期にわたって研究できるような体制をやはり我が国においても作らなきゃいけない。
 いろいろな仕組みを作ってやってはいただいているんですけれども、何と言ってもなかなかスピードといい、自由な発想で任せられる分野が非常に少ないということも一つの原因かと思っております。
 日本は世界第3位の経済大国になってきましたので、そういった体制をとることが不可能ではないと思いますので、一朝一夕にはできませんが、やはり工夫を、改善していくべきだろうと思っております。
(問)宇宙政策のことでお考えというか方針みたいなところをお聞きしたいんですけども、おっしゃったように、やっぱり予算の問題もあるけれども、その戦略というのを大事に考えないといけないと。
 ちょうどその戦略に当たるというか、宇宙基本計画の工程表じゃなくて計画そのものの見直しというのが今年度予定されていると思いますけど、どういったところに力点を置いて議論がなされていくべきというふうにお考えでしょうか。
(答)まだ引き継いだばかりで詳細はそう分かっているわけではないんですけれども、まず、国際的な競争潮流の中で、日本の存在感をきちっと示していかなきゃならないと思います。そこで、それを支える通信とか位置情報の提供とか、あるいは国民生活の向上、こういったことをきちっと整備していく必要があります。
 昨今の宇宙安全保障環境の変化とか、民間宇宙活動の拡大、国際宇宙探査や宇宙科学分野の動向を見ておりますと、今年6月の宇宙開発戦略本部において、総理から、宇宙基本計画の改定について申したとおり指示をいただいておりますので、今後、具体的に詰めていくことが大事だと思います。
 要は、競争相手がいての話なんで、よく諸外国の情勢もキャッチしながら、どこを強化していくと日本らしさが出るかとか、より有利になるかとかということはやはり戦略として考えていくべきだと思っております。
(問)IT分野について、現状をどのように捉えているかをお伺いしたいと思います。
 先程、決済の面もありましたけれども、やはり何で日本がこうやって広がっていっていないのか、現状をどのように考えていらっしゃるか、そこをお願いします。
(答)例えばIT化を進めるというと、例えばデジタルガバメントもやっておりますけれども、私、直接関係しているのは例えば印鑑をデジタルで全部処理できないかという話がありまして、ここが今、印鑑を業としている人たちにとっては、それは死活問題だからちょっと待ってくれと、こういう話になっているんですが、このように理屈では分かるけれども、すぐ対応できない分野が結構あります。
 それから先程申し上げましたように、受け入れる側、活用する場合もデジタルディバイドで対応できない人たちもいます。
 ですから、そこは丁寧に、できるだけデジタルガバメントに対応できるような、そういう知恵を絞りながら、ソフトにきちっとやっていく必要があると思っております。
 強引にやってしまうと、それが非常な軋轢になり、拒否反応を示す元となるし、社会の一体感が保てないと思います。
(問)先程の職員挨拶で、「IT政策担当、科学技術政策担当では、日本の将来に関わることをやっていかなきゃいけないので」ということをおっしゃっていました。
 そこの思いについて、もう少し具体的に詳しくお伺いしてよろしいでしょうか。
(答)全くそのとおりだと思っております。日本は言うまでもなく資源のない国であります。しかも、小さい国に1億の人口を抱えて、これほどまで成長をどうしてできるのかと、諸外国のリーダーは不思議に思っているんです。
 それを我々はやってきているわけです。70年間の平和と経済的繁栄、それから、資本主義国家ではありますけれども、社会主義国家ではないかと思われるほど福祉政策が充実する中で、長寿世界一、二位ぐらいになっていると思いますが、そういったことも実現していると。
 だから、そのノウハウこそ諸外国が一番学びたいことであるのではないかと私は思うわけであります。日本の国としての生き方、これこそ世界に対して誇れるものになるのではないか。
 2025年に大阪万博を開催いたしますが、未来社会の展示会が大阪万博なんです。未来社会はこんなふうにすれば、こんな社会になりますよということを見せたいと思っております。
 テーマとして、あっと驚くようなものを展示したいと思っているんですが、なかなか出てこない。出てこないんですが、このイノベーションの世界もそうでありまして、破壊的なイノベーションが出てきて初めて社会ががらっと変わってくると、このようになる。その先頭を走るのが日本もその一員であろうと思いますので、そこは自覚して国家戦略としてどうしていく必要があるのではないかと思います。
(問)大臣、「日本の印章制度・文化を守る議員連盟」、通称、「ハンコ議連」の会長を務めていらっしゃったと思うんですけども、これは今も会長を務めていらっしゃるのでしょうか。
(答)やっております。
(問)今後、そのIT担当大臣として、行政手続のデジタル化を推進していくことになりますけども、ある意味、そのベクトルというのは反対方向だと思うんですが、それについては御自身の中でどのように整合性をもって消化されていらっしゃいますでしょうか。
(答)一方に、その印鑑という日本古来の文化があり、他方に、デジタルガバメントを究極の目的とするデジタルの社会がある。それを対立するものとして捉えるのではなくて、それを全体の流れの中でどう調和させていくかというような視点で、工夫はいろいろできるのであろうと思っております。
 私がなぜこの会長になったか。実は頼まれてなったんですが、実は印鑑の製作技術を持った人たちは山梨県に非常に多い。山梨県の国会議員から頼まれた。なぜ私が頼まれるのかといったら、24年国会議員をやっていますから、古いということもあるんですが、私の地元にどうも問屋なんだと思うんですが、その材料の集散地になっていまして、それで言ってみれば大きい意味での業者ですから、そこで私になってくれと頼まれましてなっております。
 そこで私は自分の責任を果たすため考えたのは、両者を対立軸で見るのではなくて、同じ壺の中の同族というか、そういう中で共に栄えるためにはどうすればいいかということを、知恵を絞っていきたいと思っている次第です。
(問)さっきの印鑑のことなんですけど、共に栄えるってなかなかイメージ湧かないんですけど、どっちかトレードオフの関係のように思うんですが、これ、利害対立必ずしていくんじゃないでしょうか。
(答)一見そういう感じなんですけど、例えば、印鑑の印章をデジタルで印字をしておいて、それを送れば相手が印鑑を押したと同じ効果を持つというようなことも一つ考えられるのではないかと、一つの知恵として出てきております。それはすぐやるということではありませんけれども。
 そうすると、印鑑を作る方は、印鑑を作る仕事はまだあるわけです。それでできますし、ですから、今だと毎回はんこを押して使わなければいけないけれども、デジタルの世界になったら一回それを印字しておけば、それで相手にその印鑑を使った効果を認識してもらうことができると、こういうようなものも一つの考え方かというような議論が出ております。

(以上)