茂木内閣府特命担当大臣記者会見要旨 令和元年5月24日

(令和元年5月24日(金) 17:33~17:45  於:中央合同庁舎第8号館1階S108会見室)

1.発言要旨

 それでは、月例経済報告の前に、日米の貿易交渉についてですが、明日25日の19時から、大臣室で、ライトハイザー通商代表との協議を行うことになりました。
 米国時間で先週の21日には、事務レベル協議を行い、閣僚協議に向けた論点整理等を行ってきましたが、交渉の主要部分を閣僚レベルで議論して、方向付けをすることが必要であり、ライトハイザー通商代表とは明日も率直で生産的な議論をしていきたいと思っております。
 それでは、「月例経済報告等に関する関係閣僚会議」の概要について御報告を致します。
 景気の現状についての総括判断は、「景気は、輸出や生産の弱さが続いているものの、緩やかに回復している」としております。「緩やかに回復している」との基調判断は変えておりませんが、中国経済の減速などから、輸出の弱さが続き、製造業の生産活動も弱含んでいることから、前段の表現を下方修正をしております。
 先行きについては、当面、弱さが残るものの、雇用・所得環境の改善が続くなかで、各種政策の効果もあって、緩やかな回復が続くことが期待されます。ただし、通商問題の動向が世界経済に与える影響に「一層注意をする」とともに、中国経済の先行き、海外経済の動向と政策に関する不確実性、金融資本市場の変動の影響に留意する必要があります。
 次に、今月のポイントとして、私から3点申し上げました。
 1点目は、今週公表されましたGDPの速報値であります。既に、月曜日の記者会見で発表をしておりますので、内容は省略をさせていただきたいと思います。
 次に、景気の現状についての少し詳細な経済分析として、需要面と供給面に分けて説明を致しました。
 まず、需要面でありますが、資料4ページ、左側の縦長のグラフで構成比を示しておりますが、現在、中国経済減速等の影響を受けて、弱さが続いている輸出、これがGDPに占める割合は18%であります。
 また、輸出の弱さを受けて、先送りが見られる機械投資、これはGDPの7%となります。ただし、設備投資全体では、緩やかな増加傾向が続いております。その上で、GDPの6割近くを占める個人消費、これは一番右側の図にあるように、持ち直しの動きが続いており、直近では、新車販売やゴールデンウイークの旅行者数などが、大きく増加をしております。
 次に、資料の5ページ目になりますが、今度は供給面、つまり生産活動の面から見た動向であります。
 左側、縦長のグラフに産業別のGDP構成比を示しております。日本の生産活動全体に占める製造業のシェアは2割となっており、ここが中国経済の減速、さらには輸出の鈍化を受けて弱い動きとなっています。
 一方で、生産全体の8割を占める非製造業は真ん中の下の図のように、堅調であり、特に情報通信業、運輸・郵便業、職業紹介・労働者派遣業などのサービス業で堅調な動きが続いております。
 このように、需要、供給両面から見ても、日本経済、そしてその大半を占める内需を支えるファンダメンタルズがしっかりしていることが裏付けられるところであります。
 私から以上です。

2.質疑応答

(問)まず、月例からですけれども、景気全体の判断が2か月ぶりの下方修正となりました。
 先行きについても、大型連休明けに米中摩擦が再燃する中で、通商問題の動向が世界経済に与える影響に「一層注意」するという表現で警戒感を強めておられますが、とりわけどういうところに注意していかれるかをお聞かせください。
(答)米中摩擦は、ここに来ていつ頃どういう形で収束するのか、貿易問題だけではなくて、技術の主導権争い、さらには国有企業、国家運営にも関わる問題にもなってきて、不透明感が高まっているのは事実だと思います。
 ただ、米中双方によります追加関税のエスカレーションは、米中両国のみならず、世界経済全体にとっても決して望ましいことではなく、米中間での協議の進展を期待しており、協議の見通しや世界経済への影響は一層の注意が必要だと、このように考えているところであります。
 また、米中間の貿易取引の減少を通じたマクロの影響だけではなく、グローバルなサプライチェーンを通じた各企業への影響も見ていく必要があると考えております。
 例えばスマホが典型例になると思いますが、中国からアメリカに輸出している製品の主要部品を日本企業が供給している事例、あるいは日本企業が中国に生産拠点を設けて、そこからアメリカに輸出をしている、デジカメであったりとかコピー機、こういった事例もあるところであります。
 ここにつきましても、ここのところも様々な拠点を移す動きもありまして、こうしたグローバルなサプライチェーンを通じた影響についても、日本企業の対応であったりとか、その経営への影響をきめ細かく注視をしていきたいと考えております。そんな意味から、「一層注意」という表現を入れております。
(問)まず、月例経済報告の下方修正を受けて、消費増税を10月に行うという予定に変わりはないか。また、戦後最長の景気回復が続いているという認識を先月まで示していらっしゃいますが、この認識に変更がないかの2点を教えてください。
(答)前者はありません。
 後者についてですが、景気の山谷の判断については、専門家による事後的な検証を経て正式に決定されるものでありますが、政府として現時点で景気回復が途切れたとは考えておりません。
(問)今回、先日の景気動向指数が6年2か月ぶりの悪化ということになったのですが、一方で、本日の月例経済報告の方は回復という言葉を残されました。
 一般的に国民の皆さんから見ると、大分表現が大きく乖離しているように思われると思うんですけれども、今回どうして「回復」という言葉を残されたのか、もう一度教えていただいてもいいでしょうか。
(答)一言で申し上げると、経済の中のどの部分を見るかということでありまして、決して齟齬があるとは思っておりません。
 まず、景気動向指数が低下した主な要因は、鉱工業生産指数や投資財出荷指数など、製造業の生産、出荷を表す指標が低下したことによるものであり、現在、中国経済の減速などから、輸出の伸びが鈍化して、製造業を中心とした生産活動に弱さがみられる状況が指数に表れたものと考えております。
 その上で、若しくはその一方で、政府としての景気判断は、景気動向指数だけではなく、先程詳しく説明をさせていただきましたGDP成長率を需要面から見る、供給面から見る、他にも様々な経済指標の動向であったり、さらにはその背景にある経済環境であったりとか、企業の景況感、こういったものを総合して月例経済報告において景気の基調を判断しております。
 冒頭、私の方からグラフの説明も含めて申し上げましたとおり、需要、供給、両面から見ても日本経済、そして、その大宗を占めております内需を支えるファンダメンタルズはしっかりしていると、緩やかに回復しているとの景気の基調は変わっていないと考えており、景気動向指数で一部の指標で見たものと、全体の経済を見たものは当然、姿としてどこを見るかによって違ってくると考えております。
(問)日米の件なんですけれども、先程、主要部分を閣僚で議論して方向性を決めるというお話でしたが、これは今回で第2回交渉となるのでしょうか。また、27日、首脳間で話し合うことの調整も行われるんでしょうか。お願いいたします。
(答)4月も2日間にわたってやりましたけど、それを1回と数えるかとか、2回と数えるかとか、そういうことをしているわけでもありませんし、また、電話で話したのを数えるかとか、そういうわけではありません。いずれにしても明日協議をしますし、当然その主要な部分については、閣僚間で議論をするということでありますし、また、その結果等につきましては、首脳であったりとか、日米経済対話を主管しております麻生副総理にも報告することになると思います。

(以上)