茂木内閣府特命担当大臣記者会見要旨 平成31年3月20日

(平成31年3月20日(水) 18:25~18:40  於:中央合同庁舎8号館1階S101・103会見室)

1.発言要旨

まず、「月例経済報告等に関する関係閣僚会議」の概要から報告を致します。
 景気の現状についての総括判断は、「景気はこのところ輸出や生産の一部に弱さもみられるが、緩やかに回復している」として、景気は「緩やかに回復している」との基調判断を維持しつつ、「このところ輸出や生産の一部に弱さもみられる」と下方修正の文言を追加しております。
 先行きについては、当面、一部に弱さが残るものの、雇用・所得環境の改善が続くなかで、各種政策の効果もあって、緩やかな回復が続くことが期待されます。ただし、通商問題の動向が世界経済に与える影響や、中国経済の先行き、海外経済の動向と政策に関する不確実性、金融資本市場の変動の影響に留意をする必要があります。
 次に、今回の景気認識に関する判断要因について、私の方から主なポイントを説明を致しました。
 お手元に資料もあると思いますが、まず、慎重な表現を付け加えた理由でありますが、配付資料の3ページ目、左上の図にありますように、情報関連財を中心に中国向けの輸出が弱含み、左下の図、我が国の輸出はこのところアジア向けを中心に弱含んでいます。こうした輸出の鈍化を背景に、右上の図にあるように、生産は製造業全体としてはおおむね横ばいとなっておりますが、一部の業種の生産活動に弱さがみられます。ただし、輸出がGDPに占める割合は18%、また同程度の輸入もあるため、純輸出が占める割合はほぼゼロ%となっておりまして、右下の図の黒い折線グラフにあるように、日本経済全体としては、内需を中心に緩やかな回復が続いております。
 この内需を中心とした緩やかな回復は、4ページの図でも確認をされます。左側の図で示したように、内需の柱であります個人消費と設備投資、この2つでGDPの7割を占めるわけでありますが、これは増加傾向が続いており、内需は堅調を保っています。この背景には、右上の図にあるように、雇用・所得環境の改善が続くとともに、右下の図、企業収益は振れがみられるものの高い水準にあること、こうした個人消費や設備投資を支えるファンダメンタルズがしっかりしていることがあります。
 なお、配布資料の7ページ目に、アメリカ経済の説明がありますが、中国経済の先行きと海外経済の動向については注視をする必要があるものの、世界経済全体の4分の1を占めるアメリカ経済は現在も極めて堅調であります。この点、世界経済全体がリスクに直面していた2016年当時とは異なっております。
 次に、「未来投資会議」につきまして引き続き説明をさせていただきます。
 本日は、全世代型社会保障改革の大きな柱であります、病気の予防や介護予防についての保険者のインセンティブ強化等について議論を行いました。
 総理から冒頭、これらの課題は約20年前に総理が自民党の社会部会長に就任して以来考えてきたもので、今回必ず実現をしたいとの決意が示されました。
 これまでの公的保険は、病気になった方に対する治療費、そして要介護になった方への介護サービス費を中心に支出を行ってきたところであります。他方、人生100年時代を迎えて、病気予防や介護予防の役割が増加をしておりまして、これは健康寿命の延伸、個人のクオリティ・オブ・ライフ(QOL)の向上、高齢者の活躍促進といった多面的な意義があります。
 総理からは、このためには個人の努力に加えて、地方自治体や健康保険組合といった保険者の予防への取組が重要である。具体的には、まず病気の予防について、国民健康保険における「保険者努力支援制度」の抜本的強化と配分のめりはりの強化である。この際、民間サービスの活用も大切である。これによって健診等の受診率の向上や生活習慣病の重症化予防を図る、との発言があったところであります。
次に、介護予防については、総理から、「介護インセンティブ交付金」の抜本強化を図る高齢者の「集いの場サロン」の整備や高齢者の就労促進を図る。こういった御発言があったところであります。
 最後に総理から、本年は全世代型社会保障元年である。根本厚生労働大臣においては、私や世耕大臣と協力して、今年の夏に取りまとめる成長戦略の実行計に向けて、病気・介護予防についての保険者インセンティブの強化策の具体的な検討を進めるようにと、こういった御指示があったところであります。
 私からは以上です。

2.質疑応答

(問)月例経済報告の方で伺いたいんですけれども、1月の月例経済報告の発表の際に、今の景気拡大が戦後最長になった可能性が高いとの御認識を示されていたかと思いますが、今回も緩やかな回復というところは維持されているので、その御認識にお変わりないということでよろしいんでしょうか。
(答)日本経済の現状については、先程詳しく御説明申し上げたところでありますが、日本経済全体としては、内需を中心に緩やかな回復が続いております。特に個人消費や設備投資という内需の柱、先程申し上げたように、この二つでGDPの7割を占めるわけでありますが、これらの増加基調は続いておりまして、「景気が緩やかに回復している」という基調は変わっていないと考えております。
 景気の山・谷の判定につきましては、専門家によります事後的な検証を経て正式に決定されるものでありますが、現時点で景気回復は途切れたとは考えておらず、昨年12月に戦後最長に並び、そして本年1月に戦後最長を更新した可能性があると、こういう認識は変わっておりません。
(問)先程の月例経済報告の方で、海外の動向のところで、現在も極めて堅調なので、2016年とは異なっているというふうにおっしゃられました。2016年というのは、消費税を二度目の延期をした年だと思うんですけれども、そのときの総理の御説明ですと、世界の経済のリスクを認識して危機を回避しなくてはいけないと。なので、その内需を腰折れさせかねない消費税は延期するというお話でした。ということを考えると、今の茂木大臣の御説明は、現在の海外の経済は堅調であるし、内需も堅調なので、現時点ではその消費税を延期するような腰折れさせるような要因はないという解釈でよろしいかどうかを教えてください。
(答)まず、先程も若干申し上げましたが、2016年当時の日本経済、これは景気は回復基調にあったものの、それまで世界経済の成長をリードしてきたアジアの新興国や資源国経済の減速、さらには、その先進国経済への影響、南米が悪くなることによってアメリカも悪くなる、こういったことも含めて世界経済が様々なリスクに直面し、我が国の内需も腰折れしかねない状況でありました。
 そのような中で、2016年6月には、G7サミットにおいて、こうしたリスクに対する認識が国際的に共有をされ、我が国としても経済再生、デフレ脱却に万全を期す観点から、経済対策の策定とともに、消費税率引上げの延期を判断したところであります。
 他方、現在の日本経済、先程申し上げたように、個人消費や設備投資など、内需はしっかりとしておりまして、内需が腰折れする状況にはないと考えております。
 また、世界経済につきましても、その4分の1を占める米国経済についても、堅調な成長が続いているところであります。成長率2.6%ということですから、米国の潜在成長率2%を上回るという状況であります。もちろん、中国経済の先行きや通商問題の動向など、海外経済のリスクには十分注意をしつつ、経済運営に万全を期していきたい。その上で、消費税率の10%への引上げは財政の健全化のみならず、社会保障の充実、安定化、教育無償化を始めとする人づくり革命の実現に不可欠なものでありまして、法律で定められているとおり、今年の10月に現行の8%から10%に引き上げる予定であります。
(問)すみません、もう1点なんですけれど、先行きのところで、各種政策の効果もあって緩やかな回復が続くことが期待されるというふうにありますけれども、これは今年度の2次補正含めて、かなり財政出動もされていると思うんですけれども、そういった効果がきちんと出てくるというふうに、具体的にどういうところできちんと出てくるというふうに見ていらっしゃるでしょうか。
(答)今回の2次補正、そして来年度の予算は今、参議院で大詰めの審議が進んでおりますが、この成立、そして着実な執行と、この効果が出てくるという形でありまして、この中には例えば教育無償化のための予算も含まれておりますし、防災・減災、国土強靱化のための3か年緊急対策と、集中的に実施するものが補正、そして本予算の中にも含まれているところであります。
 さらには、10月に消費税率の引上げを行うわけでありますが、その際に軽減税率の導入、さらには教育無償化と、こういった恒久的な措置によりまして、経済への影響が2兆円程度に抑制をされる。それに対して、今回はあらゆる施策を導入するということで、予算、税を含めて2.3兆円の対策を取るということになっております。こういった効果が全体としては現れるということであります。
(問)月例経済なんですけれども、景気動向指数の方では1月分で下方への局面変化と下方修正されました。
 今回は月例経済の方では景気回復基調を維持しましたけれども、この違いが分からない国民の方もいらっしゃると思うので、改めてで恐縮なんですが、景気動向指数と月例経済報告の判断の違いについて、御説明いただけますでしょうか。
(答)景気動向指数につきましては、前回丁寧に説明をさせていただいたと思います。これは機械的に数字を当てはめるということで、様々な、本来であったら取り除いていい要因も入ってしまった形で、その数字を機械的に当てはめたものであります。
 それに対しまして、今回の判断は先程申し上げたように、個人消費であったりとか、設備投資と、様々な経済指標、さらにはその経済指標の動きの背景にあります要因であったり、また、企業の景況感等を総合的に勘案して、今回の表現になっているということであります。
(問)この先の中国経済の動向について伺いたいんですけれども、海外リスクでアメリカでは堅調に続いていて、中国などの海外リスクの動向を注視したいというふうにおっしゃっておりますけれども、具体的に今後も引き続きリスクは続くという見方なのか、もう少しリスクは軽減されるという見方なのか、見通しを教えてください。
(答)中国につきましては、資料の方にも付けてあると思いますが、経済の成長率、見通しにつきまして、6.5%であったものを6~6.5%と、引き下げたわけであります。
 そういった中で先日の全人代におきまして、恐らくマーケットの予想を超える規模、2兆元ですから日本円にしまして33兆円ぐらいの対策を打っているところでありまして、この効果がどのタイミングでどう発現していくのかといったことも含めて動向は注視したいと思っております。

(以上)