茂木内閣府特命担当大臣記者会見要旨 平成30年12月28日

(平成30年12月28日(金) 10:46~11:06  於:中央合同庁舎第8号館1階S108会見室)

1.発言要旨

 今年最後の会見になると思います。1年間いろいろお世話になりました。
 2点、私の方からまず御報告を申し上げます。
 まず1点、本日閣議後に幼児教育・高等教育無償化の制度の具体化に関する関係閣僚会議を開催し、「幼児教育・高等教育無償化の制度の具体化に向けた方針」を了承いたしました。
 その主な内容としては、幼児教育の無償化については、2019年10月からの実施に向け、対象者・対象範囲等を具体的に明らかにするとともに、認可外保育施設等における質の確保・向上に向けた取組を行うこととし、高等教育の無償化については、2020年4月からの実施に向け、授業料減免・給付型奨学金の支援額を定め、支援対象者や大学等の要件を具体的に明らかにしております。
 会議において総理から、幼児教育と高等教育の無償化は、我が国の社会保障を全世代型に転換するための重要な第一歩であり、来年10月からの消費税率引上げ分の使い道を変更し、増収分を活用して実現していくことにより、国民の皆さんに還元していく。速やかに法案作業を進めるとともに、地方自治体等において、円滑な施行ができるよう取り組んでもらいたいとの御発言・指示がありました。
 今後は、本日関係閣僚で合意した方針に基づいて、来年の通常国会への法案提出作業を進めていくことになります。
 もう1点、TPPの関連でありますが、TPP11協定が明後日、12月30日午前0時に発効いたします。
TPP11は、世界的に保護主義が台頭する中で、日本がリーダーシップを発揮して、自由で公正な21世紀型の新しいルールを確立するとともに、人口5億人、GDP10兆ドル、貿易総額5兆ドルという巨大な「一つの経済圏」を作り出していくものであります。我が国にとっても、また、アジア・太平洋地域の将来にとっても画期的な成果であると考えております。
 これに関連して、第1回のTPP委員会について、11か国の閣僚級で来年1月19日土曜日午後に東京で開催することを決定いたしました。場所、詳細な時間は今、調整中であります。
 協定の運用方針であったり、新規加盟国・地域に関する方針などの議論をする予定であります。私が議長を務め、日程の事情が許せば、安倍総理にも御出席を頂き、御挨拶いただきたいと思っております。
 発効後、速やかに第1回TPP委員会を閣僚級で開催することによりまして、11か国の結束を改めて確認するとともに、世界に向けて自由貿易体制の重要性について強いメッセージを発信したいと考えております。今後も日本として議論をリードしていきたいと考えております。
 私からは以上です。

2.質疑応答

(問)この1年を振り返られまして、御担当の分野で特に印象に残られたことについて、お伺いさせてください。
 また、大臣として、お一人の政治家として、来年の抱負も併せてお聞かせ願えれば幸いです。よろしくお願いします。
(答)この1年は忙しかったですね。1年間、私の担当する分野では、幼児教育、そして高等教育の無償化を一気に進め、それに、成長戦略でも人工知能、ビッグデータ、車の自動走行など、第4次産業革命が、すごいスピードで進んでおります。この社会実装を大きく前進させる重点プログラムを決定し、正に今それが動き出しているところであります。
 さらに、経済財政運営でも、新たな経済見通しを踏まえたPB黒字化の目標の再設定に踏み切ったところであります。
 一方、通商面でもTPPについては、我が国が一貫して議論を主導し、今年3月、南米のチリで署名式を行い、正に12月30日に発効することになったわけであります。日本のリーダーシップと調整力については、参加国の共通の認識であったと思っております。
 また、9月には私が日米通商交渉の担当大臣として、「日米物品貿易協定」の交渉を開始することで合意をいたしました。
 忙しい1年でありましたが、内政・外交両面で大きな成果を出せた1年だったと振り返っております。
 そして、来年、まず内政におきましては、10月に消費税率の引上げが予定をされているところであります。それに対する経済に悪影響を及ぼさないような万全の対策を取っていく。その対策の取りまとめとして、これからもしっかりと取り組んでいきたいと思っております。
 更には、全世代型社会保障に向けた改革、既に幼児教育・高等教育の無償化、リカレント教育の充実等から始まっておりますが、今、労働制度の改革であったり、健康維持、そして予防といった分野にも議論が及んでいるところでありまして、そこでもしっかり議論を進めて、夏の取りまとめ、そして実行計画を作るという作業があります。
 そして、年明け以降、第1回のTPP委員会も開かれるわけでありますが、TPPの発効、そして拡大に向けて全力で取り組むとともに、いよいよ日米間でも物品貿易協定の具体的交渉が始まるわけでありまして、国益を懸けてしっかりと交渉に臨んでいきたいと思っております。
(問)今少しお話しになられた日米物品貿易協定の件でお伺いします。
 21日にUSTRが公表した日米貿易協定交渉目的要旨について、火曜日にもお答えを少し頂いたんですけれども、その後もアメリカの姿勢について、日米共同声明で合意したラインでは収まらないのではないかとの一部懸念が国内にあるようです。
 改めて大臣に今後の日米交渉について、USTRと何らかのやり取りがあったのかも含めて確認させてください。よろしくお願いします。
(答)内容については、先日の記者会見で申し上げたように、米国としてTPAの手続を進める上でのもの、一般的なものであると理解をしております。
 その上で、日米交渉については、9月の共同声明に書かれた内容に沿って交渉を進めることとしております。共同声明に明記されております農産品については、過去の経済連携協定の内容が最大限であることなどについては、今後の交渉の前提でありまして、そこが揺らぐことはありません。
 このように、今後の交渉はあくまで共同声明に沿って行われることでありまして、私もライトハイザー通商代表をはじめ、各国のカウンターパートとは適時連絡を取っておりますが、改めてその点もライトハイザー通商代表と確認をいたしております。
(問)第1回のTPP委員会について伺いたいんですけれども、これは11か国の閣僚、皆さん参加ということでしょうか、それとも発効国だけになるのか、参加者を教えてください。
(答)基本的に、この1月の19日という時点でありますと、ベトナムも既に発効まで行っているということでありますて、この委員会については、言い方はともかくとして、11か国全ての閣僚にお呼び掛けをすると。まだ発効してない国をオブザーバーで呼ぶかどうかとか、細かいことは別にしまして、11か国全ての閣僚級にお声掛けをして会議を進めたいと思っております。
(問)改めての話で恐縮なんですけど、来年の景気についてなんですけれども、景気拡大局面は戦後最長を迎えようとしてるというところもあると思うんですが、米中貿易摩擦への不安などから、エコノミストの間で、そろそろ長過ぎた拡大局面も転換点を迎えるんではないかと、後退の懸念も出てきてるんではないかという声が少しずつ増えてるかと思うんですが、来年の景気後退の懸念という、そこのところをどういうふうに今のところ思ってらっしゃるか、見解を伺えればと思います。
(答)今、戦後最大といいますか、過去最大の日本の名目GDP、そして企業収益も過去最高でありますし、更には、今日も雇用関係の数字も発表されておりますが、雇用所得関係大幅に改善をしております。さらに、そういったものを受けて、企業の投資意欲等々も活発であると考えております。
 総合的に日本の経済のファンダメンタルズはしっかりしていると、このことは変わっていないと考えております。一方で国際経済を見てみますと、通商摩擦に象徴されるような海外経済の不安定要因といったものが増しているということは確かでありまして、こういった海外経済の不安定要因であったりとか、金融資本市場の変動の影響はよく注視をしていきたいと考えております。
(問)先程お話ありましたTPP委員会なんですけれども、11か国の閣僚級の方が集まるということで、発効の記念式典みたいなものは開催する予定はありますでしょうか。
(答)第1回のTPP委員会に合わせて、呼び方はともかくとして、何らかの形のそういったセレモニーは行いたいなと思っているところであります。
 このセレモニーでありますが、もちろん出席してもらっている各国からの閣僚、更にはこれまでTPPを進めるに当たって、様々な形で御尽力いただいた政治関係の皆さん、与党の政治家等々、更には経済界の皆さんにもお集まりをいただいて、何らかのセレモニーというのは同じ日に行いたいと思っております。
(問)ありがとうございます。
 そうなりますと、TPP委員会は1日だけの開催ということでよろしいんでしょうか。
(答)基本的にはそう考えております。それで、恐らく1日で十分、少なくとも今後当面の問題については議論ができるであろうという想定であります。さらにまた、新規加盟について、正式な申請等がありましたら、速やかにそれぞれのコミッティであったりとか、そういったものも開けるような準備も整えておきたいと思っております。
(問)ありがとうございます。
 そして、先程もお話がありました日本が通商問題で振り返ってということで、リーダーシップを発揮して、チリで署名式を行ったというお話がありましたけれども、アメリカが抜けて、一時漂流するかと思われていたTPP11が、日本が主導してまとめるということ、多国間の協定では初めてだったと思います。また、最終局面でダナンでも一部混乱があったと思いますけれども、大臣のタフな交渉力によって妥結に至ったとも聞き及んでおります。凍結項目の調整など、様々、大臣御自身も御苦労あったかと思うんですけれども、再交渉を振り返っての印象深いエピソードですとか、発効を迎えるに当たっての率直な思いを教えていただけますでしょうか。
(答)TPP11については、確かに昨年の1月23日、米国が離脱表明して以降、一時TPPが漂流してしまうんではないかという懸念が広がりましたが、我が国が一貫して議論を主導し、更には粘り強く交渉を進めた。ダナンの会議におきましても、大筋合意したと思ったものが一旦崩れると、もう1日かけて、5時間以上にわたって閣僚協議によって、改めて大筋合意を確認すると。それを踏まえ、昨年の年末、今の時期にはベトナムに行っておりました。年明け早々は、メキシコでグアハルド大臣との調整を行いました。そういった結果、3月の8日にはチリで署名式を行うことができたわけであります。
 署名式に先立って閣僚会合が開かれたわけでありますが、TPP11の交渉において、我が国が果たした主導的役割に対して、全ての参加国の閣僚から、謝意が表明されたということでありまして、日本のこれまでの努力といいますか、リーダーシップというのが評価されたんだと思っておりますし、更には署名式の後の閣僚会合の閣僚声明も代表して私が発表するということになったわけであります。
 これだけ大型の経済連携協定を我が国が文字どおり主導して取りまとめたのは、これまででも初めてのことではないかと思っております。
 TPP12の交渉のときは、フロマン代表がかなり中心的な役割を担ってきたわけでありますが、米国の場合は、米国の主張を通すという形で主導的な役割を担ってきた。それに対して自分といいますか、日本は、むしろ多国間の調整に汗をかいてきたと。その際、誰かが独り勝ちするんではなくて、バランスに気を配ってきました。最後はそういった日本の調整力、これを各国が信頼してくれるようになったんではないかなと思っております。
 様々な調整は今ありましたように、凍結項目の話もありますし、その他細部にわたる調整もあったわけであります。日程的な調整もいろいろありました。様々な調整を進めるに当たって、梅本首席、そして澁谷統括官、更には若手のスタッフまで、いいチームに支えられた。これは本当に大きかったと思っておりますし、自分としていいチームに恵まれたと思っているところであります。
 我が国はTPP11の交渉を経て、これまでの自由貿易体制の一参加国という立場から、21世紀型の新たな共通ルールづくりのリード役、全体の調整役としての役割を果たすように変わってきたんだと思っております。日本としてこれからも自由貿易の旗手として、自由で公正なルールに基づく経済秩序づくりを主導していく。また、自分もその中でしっかりした役割を果たしていきたいと思っております。

(以上)