平井内閣府特命担当大臣記者会見要旨 令和元年9月11日

(令和元年9月11日(水) 12:12~12:50  於:中央合同庁舎第8号館1階S101記者会見室)

1.発言要旨


 今日が最後の記者会見ということになりますが、皆様方には、いろいろと大変お世話になりました。ありがとうございました。
 この任期を、在任期間を振り返ってということで、少し冒頭お話をさせていただきたいと思います。
 昨年、10月2日に国務大臣を拝命して、約11か月の間、IT政策、科学技術政策、宇宙政策、知的財産戦略、クールジャパン戦略、健康医療戦略を主に担当する大臣として、全力で駆け抜けたというふうに思います。本当に、この間、お世話になった全ての皆さんに心から感謝を申し上げたいと思います。ありがとうございました。
 私は、これまで自民党で、IT戦略特命委員会の委員長として、政策提言「デジタルニッポン」をほぼ毎年取りまとめて、政府に提言してきました。国務大臣を拝命して、今まで党で提案してきたことを、政府の立場で一気に実行に移そうということで、早々に立ち上げましたのが、「Pitch to the Minister懇談会“HIRAI Pitch”」です。これは、徹底した現場の取組とか、バイアスのかかっていない情報・意見を、多方面から直接ヒアリングして、創造すべき未来社会からバックキャスト的に政策を考えていく取組みが必要だというふうに思っていて、実はこれはIT戦略特命委員会ではずっとやっていたことです。
 これまで、「HIRAI Pitch」は、大臣室で67回、地方にて11回、海外でもパリで開催をさせていただきました。集計しているものだけでも168機関、実はこれより2、30は多いと思いますが、ヒアリングをいたしました。これは、私自身が情報を得るということと同時に、各部局がフラットに情報を共有できる、その後、議論をする、そして、実行に移すという意味で、非常に役に立ったと思います。
 その中で出てきた政策が、「スタートアップ・エコシステム拠点形成戦略」、これは大臣がかわっても、予算もついておりますし、年明けの攻防も含めて、スタートすると思います。
 世界に伍するスタートアップ・エコシステムの構築というのは、絶対に私は令和の時代は必要だと思っているので、このような情報共有のプラットフォームを今まで有機的に活用してきたので、また、その現場の中で、そういう私がやってきたようなことを是非やってもらいたいなというふうに思います。
 そして、科学技術・イノベーション政策についても、「世界で最もイノベーションに適した国」の実現という大きな方向性に沿って、まず、令和元年度予算において、科学技術基本計画に掲げる科学技術関連予算の目標達成に向けて、前年度から約10%増となる約4兆2,000億円を確保しました。
 また、昨年12月には、「科学技術・イノベーション創出の活性化に関する法律」の改正によって、大学や研究開発法人の経営能力強化等を図りました。これは具体的に理研をはじめ、もう動き出しています。
 そして、新しい取組として、破壊的イノベーションの創出に向けたムーンショット型研究開発制度について、そのスタートをすることができました。私自身もアメリカ、欧州訪問で、米国やEUの協力を得るということで、その合意をいただきまして、目標設定は12月の国際シンポジウム後になりますが、ビジョナリー会議で示した目指すべき未来像と25の目標例は、いずれも壮大かつチャレンジングなものであって、世界に誇れる独創的な研究成果の発掘に繋がることを期待しています。
 また、6月には「統合イノベーション戦略2019」を策定して、その具体化に向けて取り組んでまいりました。
 例えば、スマートシティについては、共通のアーキテクチャの設計・導入を進めるとともに、関係省庁や自治体、企業、研究機関の連携を図る「スマートシティ官民連携プラットフォーム」を設置するなど、関係者が一体となって取り組む体制を構築することができました。
 また、AI、バイオテクノロジー、量子技術についても、戦略を策定するという役割がありましたので、「AI戦略」、「バイオ戦略」を策定し、量子技術に関しても、これから年内に向けて進むというふうに思います。また、戦略に先立ちまして、「人間中心のAI社会原則」等々を主導させていただいて、国際ルールづくりにも取り組みました。
 また、宇宙政策については、今まで遠い存在だった「宇宙」が、デジタル化により「データ」を介して国民生活と密接不可分なものとなった現状の中で、今後ますます、「宇宙」を取り巻くデータ等々のデジタル化が更に進展して、世界のゲームチェンジを起こしていくと考えています。
 宇宙開発戦略本部においては、関係閣僚と連携して宇宙基本計画工程表の改定を行いました。
 また、政府の宇宙開発利用関係予算について、令和元年度予算及び平成30年度補正予算の合計額が約3,600億円となりまして、平成21年度の集計開始以来最大規模になりました。
 また、準天頂衛星システム「みちびき」が、昨年11月に4機体制のサービスを開始し、センチメートル級の世界最高精度の測位は、様々な利用分野で今後間違いなく、イノベーションを起こしていくと思います。
 また、小惑星探査機「はやぶさ2」は、世界初の難しいチャレンジに次々と成功して、日本中の人々に夢と希望を与えていますが、来年末の地球への帰還は私も大変楽しみです。
 また、米国が提案する国際協力による、月探査計画については、5月に米国のペース国家宇宙会議事務局長と議論をさせていただきました。その中で、日米間の連携について確認することができたのは大変意義のあることだと思っています。
 また、民間による宇宙ビジネス拡大に向けては、宇宙ベンチャー支援の様々な施策を推進しました。特に、私が主宰しておりました宇宙ビジネスのアイデアコンテストである「S-Booster」、多くの素晴らしいアイデアの事業化を支援をしています。
 また、「スペースデブリに関する関係府省等タスクフォース」においてスペースデブリ対策の今後の取組の方向性をとりまとめて、G20大阪サミットでも日本の取組をアピールしました。
 次に、健康・医療戦略については、来年度から次の戦略がスタートすることになります。このため、医療分野の研究開発を基礎から実用化まで一貫して支援する「統合プロジェクト」の見直しをはじめ、次期の方向性を検討して、6月に推進本部で報告しました。
 また同月には、「共生」と「予防」を車の両輪として取り組む「認知症施策推進大綱」を取りまとめました。
 これらの取組によって、安倍政権の成長戦略の柱でもある健康長寿社会の実現に向け、さらに具体的な道筋をつけられたと考えます。
 知的財産戦略の推進に関しては、私自身も有識者会議に積極的に参加をさせていただきまして、知的財産推進計画2019を決定しました。その中で、新しいものをつくり、創造されたものを尊重する力を育む知財創造教育に取り組みました。
 クールジャパンについては、音楽の海外発信を推進するため、経済産業省と連携し、音楽のメタデータの外国語化を支援することにしました。これから、英語によるメタデータというのは、あらゆる分野で非常に重要になってくると思います。まず、検索に引っかからなければ話にならないし、メタデータをちゃんとやっていないと、日本のYoutubeの再生回数が海外に比べて低いのは、そこらのこともあることは間違いありません。そういうことを標準的な仕様にするべきだと思います。
 そのほかに、外国人の目線が足りないということで、クールジャパンの目的が共有されていないといった問題点があることから、さらに取組を強化するため、「EUREKA!懇談会」や「Create Japan WG」等において外国人有識者の意見も伺いながら、9月3日に「クールジャパン戦略」を決定しました。
 そこでは、世界の共感を得ることを通じて、日本への愛情を有する日本ファンを増やすことで日本のソフトパワーを強化することをクールジャパンの目的として位置づけました。これまで、コンテンツ、食、ファッション、観光など分野ごとの取組が進められてきましたが、今回の戦略では分野や地域を越えた連携を強めるための中核的な民間組織を支援するなどの施策を定めたところであります。
 今後、クールジャパン戦略担当大臣のもとで、強力に推進されることを期待しますが、クールジャパン戦略の基本は日本の国家としてのソフトパワーをいかに強化、それを維持していくかということが根底になければならないと思います。
 その意味では、今回の戦略は、一回原点に戻ってそういうことを確認しながら、時代に合わせた戦略にできたというふうに思います。
 また、IT政策に関しては、「社会全体のデジタル化」を実現するために、様々な政策に取り組みました。
 5月に、デジタル手続法案が成立し、紙からデジタルに転換することにより、デジタルを前提とした新たな社会基盤を構築するものであります。
 政府情報システムの在り方を見直して、統一的に管理していく必要があるということで、6月のデジタル・ガバメント閣僚会議の決定に基づいて、年間を通じた情報システムのプロジェクト管理を実施することで、これで政府の調達を今までより効率化するということと、政府全体としての最適化が図れるはずです。
 地方自治体のシステムについても、自治体間で共同利用できるものであるということで、「自治体ピッチ~Pitch to Local Governments~」をやりました。これも非常にうまく滑り出したので、自分の自治体だけにとどまらず、そういうものを共有するという方向が打ち出されたのは大きいことだと思います。
 このデジタル化に関して言いますと、今回、私自身がIT担当大臣という名称だったと思いますが、本当は、デジタル化戦略担当大臣に今後は変えていくべきだと、最後に申し上げたいと思います。
 そうでないと、単なるインフォメーションテクノロジーの中に閉じてしまうと、恐らく、今後の取組というものは窮屈になると考えているからであります。
 また、そのほかにシェアリングエコノミー推進議員連盟の会長という立場もあるんですが、シェアリングエコノミーの健全な発展に協力してきました。
 令和の時代が、シェアリングエコノミーにとって飛躍の年になる、サービスの透明性などを図るためにも、モデルガイドラインやシェアワーカーの認定などを議論して、方向性をまとめました。
 これらの取組を集大成した政府の新たなIT戦略である「世界最先端デジタル国家創造宣言・官民データ活用推進基本計画」を閣議決定しました。
 そして、また、「デジタル時代の新たなIT政策大綱」も策定することができました。
 これで、急速に進展するデジタル時代においても、全ての国民がデジタル技術とデータ利活用の恩恵を享受するとともに、安全で安心な暮らしや豊かさを実感できるデジタル社会の実現に向けた、我が国のIT政策の基盤を構築することができるのではないかと考えております。
 そして、最後に、「平成」から「令和」にかわって、一つだけ覚悟しておかなきゃいけないのは、令和という時代は、人口の約60%が50歳を超えるという初めての社会構造になります。
 それは、今までのこの社会の在り方をそのまま継続してしまったのでは、いろいろな問題点が顕在化する可能性が非常に大きいと。そこで、いろいろなイノベーションとか、デジタル化というものが必要だと考えていて、恐らく、令和の時代の非常に重要な、優先度の高い政策にこのデジタライゼーションというのが入ってくると思います。
 そして、それがなければ、令和の英語訳、「Beautiful Harmony」というものをつくることができないし、いろいろな意味での格差が大きくなるような社会になりかねないと思います。
 私は、国務大臣としての仕事は、新たな時代の幕開けに相応しい「次世代の基盤づくり」だというふうに考えておりまして、常々、限られた時間の中で、自分は何ができるかということを逆算しながら取り組んでおりましたので、私としては、ほぼほぼ思っていたことは任期内にある程度できたというふうに思います。
 ただ、全部やり切れたかというと、少し時間が足りなかったですが、方向性を決めることができたのは非常によかったのではないかと思います。
 あとは、どのような立場になろうとも、政策が実現できるように、今後とも頑張っていこうというふうに思っておりますので、どうぞよろしくお願い申し上げます。
 冒頭、私からは以上です。

2.質疑応答

(問)大臣はかなりいろいろなことをやられて、かなりやり切ったとは言いつつも、まだやり残したものもあるんじゃないかなと思うんですけれども、そのやり残したことは何なのか、次の大臣にこういうことを期待したいということについて教えてください。
(答)IT科学技術担当というのは、社会全体のデジタル化が進む中で、非常にミッションが多岐にわたり、なおかつ重要になっていると。そういう認識のもとに、今までの既成概念にとらわれずに、自分の目でちゃんと確認をした上で責任を持って判断をしていただきたいというのが、基本的な考え方です。
 そういう意味で、単に利害を調整するというようなやり方では、この状況では全く無意義なので、そういう意味では、新しい時代をつくるという気概を持って頑張っていただきたいし、戦略等々が今、全部見直されている、そして方向性もある、そして、そういうものがちゃんと実現できるように、最後まで基本的な政策を変えずに強力に推進していただきたいというのが、私の希望です。
(問)大臣自身、やり残したことというのがあれば。
(答)世の中というか、政治家の仕事というのは、どういう役職に就いても、時間が限られているので、それをやり残したと思うか、やり切ったと思うかは、これも気持ちの持ち方次第です。
 そういう意味で、私自身はもうやり切ったというふうに思わせていただきたいと思います。
(問)方向性はしっかりと、任期中、決められたと思います。そこで、やはりこれからアクセルを踏んで実行していく段階に入ったと思うんですけども、そういった段階の中で、どういうふうに進めていってほしいという、どうそれを引き継いでいきたいかという、どういう思いがありますか。
(答)アクセルは、政府だけが踏むわけではなくて、政権与党も踏まなきゃいけないというふうに思っていますので、私自身、まだ党の役職等は分かりませんが、どの立場になっても、党が全面的に政府を支援して、政策推進を間違いなく評価できるように、そういうような環境をつくるために全力を尽くしたいと思います。
 やらなきゃいけないことは、イノベーションを起こすとかいろいろあるんですが、これいろいろなときに言ってたんですが、デジタル化というのを、日本語で言うとデジタル化ですけど、英語では間違いなく2種類あって、デジタイズという言葉の名詞、デジタイゼーション。これはアナログのものをデジタルに転換するというようなことです。デジタライゼーションという言葉で使われている文脈は、そこから新しい価値をつくり、ビジネスモデルを根本的に見直すというところが非常に大きいところです。
 ですから、デジタイゼーションというものの典型的な例は、テレビの放送がアナログからデジタルに変わったこと。それをデジタライゼーションとして見れば、最近出てるHuluとかNetflixとか、いろいろなサブスクリプションモデルが社会の中で認知されて、国民がそこに自分の時間を使っていると、この状態のことです。
 ですから、我々は、政府もこれからデジタライゼーションというものを意識しながら、デジタル化することは目的ではなくて、圧倒的に便利な社会をつくれるかどうか、そこが勝負だと思います。そういうふうに進められるように、是非、与党も政府も頑張っていかなきゃいけないのではないかと、そのように思います。
(問)今の話を踏まえてですけれども、先程IT担当ではなく、デジタル化担当にしたほうがいいというお話がありましたけども、そこの思いというものをもう少しお伺いしたいんですが。
(答)デジタル化担当というのは、ITの略称というのは、インフォメーション・テクノロジーなんです。もはや、インターネットというのは社会基盤として、インフラになってます。ですから、インターネットというのは、英語ではもう頭文字が小文字に変わったりすると。一般名詞。つまり、全てそういうものを使うことが、インターネットを使うことが前提の社会の中で、単に今までのようにインフォメーション・テクノロジーを使って何かをするということでは、もうその段階ははるか昔に終わってしまったと。
 これは、さっき言ったデジタイゼーションじゃなくて、デジタライゼーション担当の大臣として、広く、これはイノベーションの分野も全部そうです。情報共有の分野もそう。そして地方創生もそうだと思うんですが、そういうふうに間口を広げて、グローバル化とデジタル化が不可逆で今後進んでいく中で、どういう政策をつくるかというふうに整理しないと、ITを使って便利にするという、ただその発想では、多分、社会全体のデジタル化ということが実現できないと思います。
 そういう意味では、広い視野を持って、それぞれを深掘りしていくと。間口と奥行きを同時に広げなきゃいけない担当だというふうに思います。
(問)最後に、今日のロケットの打ち上げについてお伺いしたいんですけども、H2Bロケットの打ち上げ前に、発射台のほうで火災が起きまして、延期になりました。打ち上げが、今日、中止にされたんですが、これについてどういうふうに受け止めていらっしゃいますか。その影響についてどのように思われますか。
(答)現在、調査中というふうに聞いていますので、それを見守りたいというふうに思います。
 H2Bロケットは、8号機ということで、今まで全て順調に、失敗しないということで、社会的にも世界的にも注目されているものですが、今回は発射台ということで、発射環境が整わなかったというような、私は理解をしています。ですから、発射台とはいえ、ちゃんと環境不備の点をこれから解明していただいて、できるだけ早く打ち上げが決定できたらいいのではないかと思います。
(問)結構、社会的に注目されていまして、信頼性もすごい高いロケットとは、いろいろな方が言われてますが、世界的な評判についてはどのようにお考えでしょうか。
(答)日本というのは、アメリカ、ロシア、フランスとほぼ同時期に衛星というものを持つ、宇宙の老舗ですよね。特にH2Bロケットというのは、補給機「こうのとり」をはじめ、またいろいろな国の衛星も載せ、今まで非常に手堅い仕事を続けてきたというふうに思います。
 その意味で、日本のロケット技術というものは、海外からもその信頼性というものは認められているというふうに考えています。
(問)先程、大臣、令和の時代の我が国は人口減に直面して、その中にデジタルトランスフォーメーションとか、デジタル化を進めなきゃいけないとか、そういう話があったんですけど、一方で、在任中にいろいろ海外に行かれて、世界で起きてることをいろいろご覧になったり、あるいはいろいろな方と対話されたりして、お感じになったことも多いんじゃないかと思うんですけど、その観点で見たときに、今、世界がデジタル化とかイノベーションとか、ものすごい競争というか、ある意味、アメリカと中国が非常に激しい対立を繰り広げたりしている中で、日本のデジタル化とかイノベーションに対する取組というのは、それは政府の取組というふうにとってもいいんですけど、十分だというふうにお感じになってるのか、相当まずいんじゃないかという危機感をお持ちなのか、その辺り最後にお伺いしたいなと思います。
(答)さっきお話ししたのは、大体これから20年の間に、令和という時代は50歳以上の人口が概ね6割、65歳以上が概ね4割で安定してしまうんですよ。ですから、そういう社会を皆さんも迎えるということを前提で、いろいろなものを考えると。
 実は、海外に行くと、ここのところの日本の人口モデルがものすごく彼らにとっては、注目している点で、必ず言われるのは、日本はそれを何とかするでしょうと。それに力を貸したいと。
 ですから、それは皆さん、ヨーロッパの国も、日本のあと10年後に全部続いているわけで、世界の平均寿命はもう70歳を超えるというような状況の中で、日本がその先頭を走っているので、日本はいわば、ある意味一つの実証実験の場みたいに考えておられると思います。
 なので、そこは日本の力だけでやるのではなくて、海外の皆さんも一緒になって、イノベーションを起こそうと。そういうお話し合いは、アメリカに行ってもEUに行っても、どこに行ってもそうだと。日本には全力的に協力したいと。それがこの12月のビジョナリーの国際会議の中で、そういう方々が日本に来日されます。
 反省点という意味では何かというと、デジタルトランスフォーメーションをちょっと甘く見たなと。こんなに世の中が、激しく大きく変わるというふうに、平成の時代、思っていなかった。それが日本の低成長にも繋がったんではないかというふうに思います。
 ただ、日本というのは、非常に幸せな国、安定している国、人口も1億2,000万人以上あるし、それなりの経済力もあるし、そういう意味で、まだいろいろな問題が本当の意味で顕在化していなかったから救われたというふうに思っています。
 ただ、これから先はそうはいかないし、これから人口が減っても強い経済を求めるのであれば、相当なことに取り組んでいかなきゃいけないというふうに思うし、若い方々の潜在能力を解放して、いろいろな企業をつくってもらって、スタートアップにこだわったのはそこなんですね。恐らくソニーや日立やホンダや、そういうのができたころ以上に、これから日本から新しい企業が生まれてくるという土壌を早くつくりたいと思ったからです。旧態依然たるビジネスモデルでは、社会全体がデジタル化する中では太刀打ちできないと思いました。
 次の世代に期待をするという意味で、教育の問題も相当、今回踏み込んで、いろいろな提言も出させていただいてますが、日本の若い子たちが非常に優秀だということも、ピッチをしながら分かっていましたし、デジタルネイティブの皆さんが思い切って力を発揮できるような社会にしておかないと、それは我々先を行く者の責任だと思います。そういう若い人たちの潜在能力は世界に引けを取っているわけではないので、彼らの能力を発揮しやすい、能力を高めやすい社会づくりというのが、私は非常に重要だと思います。
(問)今、日本の研究力が、世界的に見て相対的に低下しているというふうに言われておりますけれども、必ずしもこれまで政府の取組としてうまくいってこなかった部分だと。それを踏まえて、内閣府として、司令塔として、今後、どういった役割が求められているかということについて、大臣のお考えを伺えますでしょうか。
(答)研究力の低下というのを論文数で見るのか、引用数で見るのか、そしてまたそれを使った特許で見るのか、それを事業化したもので見るのか、いろいろな視点があると思うんです。ただ、ITに関して言えば、日本は相当な数を世界的に出しているんですね。ただ、それを世界マーケットに当てはめてビジネスにするという力は、少し弱かったというふうに思います。
 大学の若手研究者のいろいろな問題が既に指摘されている中で、新しいパッケージをつくるということですが、そういう中で研究開発がいかに重要かと、また、基礎研究がいかに重要かということを、十分にこれから国民の皆さんも納得していただける時代になっているんだろうというふうに思います。
 そういう意味で、全体の予算を増やせるように、そしてこの間から言ってる創発型の予算みたいなものもありますよね。ムーンショットと両輪としてそういうものを進めていくための理論づくり。そしてあとはそういう使った予算のトレーサビリティ、成果をちゃんと見られるようなシステムづくり、その辺りが内閣府の非常に重要な仕事だと思います。
(問)多岐にわたる分野だと思うんですけれども、仕事をやってきた中で、特に印象に残っているもの、全部になるかもしれないんですが、印象に残っているものを一つ二つ挙げるとすると、どの仕事が印象に残ってるでしょうか。
(答)いろいろなことをやらせていただいたんですけれども、特に、これだけ短い間に第一線で働いている若い方々の話を本気で聞くと、また議論するという経験は、初めてでした。これだけ詰めてピッチをやったというのはなかなかなかったというふうに思っていて、そこでは本当に私自身、勉強になったし、刺激も受けたし、日本の未来は明るいと、本当に思いました。
 ですから、日本は素晴らしい人材もいるし、まだ皆さんに知られてないような素晴らしい研究者もいるし、こういう人たちがいるということを、私自身、このピッチを続けてやるまで気がついていなかったと思います。まだまだそれは、世間はまだそこまで気がついていないんだろうというふうに思いますが、彼らの能力を本当に解放することができたら日本の未来は明るいと、本当に確信してます。
 ですから、彼らのやる気が出るように、挑戦するスピリットがちゃんと持てるような環境。少々の失敗に恐れない、くじけない、そういう若い人たちを応援していきたいというふうに思いました。
 ですから、これはもう目先の利益を求めるだけではなくて、もっと大きな志を持った方々がたくさんいるし、ベンチャーの中には、ソーシャルベンチャーみたいなものも実は日本はたくさんいいのがあるんです。ああいうものは正に令和の時代、地方自治体、地方のエリアにおいて、「Beautiful Harmony」をつくっていく担い手になるなと思っているので、二つ応援しなきゃいけないと思っています。世界に伍して頑張るグループと、それぞれ日本の地域の中で頑張る、これは両方必要で、両方素晴らしいシーズがあるので、それを国として応援できたらいいなと、そのように思います。
 また、地方大学の中にも素晴らしい研究のシーズはあるので、そういうものを今度、新しい法律も研究してますが、ビジネス化していく視点でもう少し支援できるような取組、出島と言ってしまうと何か誤解を招きそうなんですが、もっと動きやすいような組織ができるように、大学改革の中でそういうことも検討していただければと、そんなふうに思います。
 そういうことで、日本の未来は明るくなる可能性が大きいと、私自身は感じたと。そういう確信を持てたのは、この11か月、よかったと思います。
 よろしいでしょうか。
 それでは、皆さん、長い間お世話になりましてありがとうございます。またいつかどこかで。
 失礼いたします。

(以上)