平井内閣府特命担当大臣閣議後記者会見要旨 平成31年4月19日

(平成31年4月19日(金) 9:22~9:43  於:中央合同庁舎第8号館1階S101記者会見室)

1.発言要旨


 おはようございます。
 まず、昨日の総合科学技術・イノベーション会議について報告します。
 今回は、AI戦略の中で最も重要な柱である、AI時代の教育改革について議論しました。
 会議の中で、安倍総理から、私を含む関係大臣に対して、AI時代の教育改革については、未来を担う子供たちの誰もが、デジタル時代の「読み・書き・そろばん」であるAIのリテラシーを身に付けられる環境を提供することが重要であり、外部人材を積極的に活用すること、2025年までに、小・中学校では4校に一人以上、高校では1校に一人以上のICT人材を配置し、毎年100万人規模の子供たちが十分なAI教育を受けることができる体制を整えること、2022年の情報科目の高校での必修化に併せ、「情報1」を大学共通テスト科目に取り入れるとともに、一学年50万人の大学生全てが、AIを学べる環境整備を進めること、入試やカリキュラムに、積極的にAI科目を導入する大学を、運営費交付金や私学助成金を活用したインセンティブ措置によって、支援する制度を整えること、AIと専門分野とのダブルメジャーを可能とする制度改正を進めること、ワールドクラスのAIトップ人材の育成から、基礎的なAIリテラシー教育まで、しっかりとした数値目標を掲げ、政策を総動員して、具体的な改革に取り組み、この教育改革を柱としたAI戦略を早急に策定すること、との指示がありました。
 また、次期科学技術基本計画の策定に向けた議論を開始します。総合科学技術・イノベーション会議に対して、総理から諮問がなされたことを受けて、新たに基本計画専門調査会を設置し、調査・検討を行うこととしました。
 総理の指示を踏まえ、今後も、ノーベル賞を受賞するようなトップクラスの研究者が次々と生まれるような国を目指し、様々な視点からしっかりと検討をしていきたいと思います。
 次に、IT政策担当大臣として報告します。
 政府としては、ライフイベントに伴う手続の簡素化等に取り組んでいます。既に、子育てや介護のワンストップサービスを開始していますが、これに加えて、昨日のCIO連絡会議において、引越しや死亡・相続、社会保険・税手続のワンストップ化を進めるロードマップを決定しました。
 今後、まずは、今年度から引越しと死亡・相続手続のワンストップサービスを順次開始します。また、来年度から社会保険・税手続などの民間企業が行う手続のオンライン・ワンストップ化を実施します。さらに、2021年度以降には、クラウドを活用した新たな手続手法を導入して、さらなる利便性向上を図る計画としています。
 こうした取組によってワンストップサービスを実現し、引越しに伴う民間の手続を同じ情報を何度も書かずにまとめて行う(ワンスオンリー)など国民の負担を減らすことで、少子高齢化などの社会課題を抱える我が国において産業の生産性向上を図るとともに、一人ひとりがデジタルの恩恵を実感できる社会を構築していこうと考えております。
 もう一つは、知的財産戦略担当大臣として、この度、「経営デザインシート」のデザインを刷新することによる、シートの利便性向上及び構想人材の育成のため、学生を対象として、同シートの雛形を「描きたくなる」ようなデザインに改める「リデザインコンペティション」を開催することにしました。本日から公募します。
 「経営デザインシート」は、企業などが、デザイン思考に基づいて、自らの強みを生かしつつ、将来のビジネスモデルを構想し、新たな価値をデザインするための思考補助ツールです。
 社内外との対話ツールとしても活用でき、産官学金労言の対話を促し、各プレーヤーが自らの得意とするところを持ち寄って、新たな価値を生み出すオープンイノベーションの促進に有用なものであります。
 昨年5月に公表された「経営デザインシート」は、既に、各省庁からの協力も得ながら、諸方面において活用されつつありますが、ユーザーから「デザインしたくなるデザインになっていない」と、いまいちだと言われましたので、今回、若者によるリデザインコンペティションを通じて、良いものに変えていきたいというふうに思います。
 優秀作品については、官邸のホームページに掲載するとともに、知的財産戦略推進事務局による「経営デザインシート」の普及事業に活用する予定です。今、はやりのデザイン思考というやつをもう我々も率先してやっていこうということでございます。
 私からは以上です。

2.質疑応答

(問)昨日のCSTI本会議に関連して、まずAI関連の人材育成なんですけど、いろいろ改革のメニューが載っていて、人材の規模も載っているんですけども、政府としてどのぐらい投資するのかというのが見えないので、そこら辺については大臣、どのようにお考えでしょうか。
(答)これは、政府、民間、官民全体で投資しなきゃいけない分野だというふうに考えておりまして、今、夏までにAI戦略を私の方でまとめますが、当然それは所要の予算規模の確保が必要なので、同時進行で最大限努力をするということですね。幾らとちょっと今は言えないですね。
(問)あともう一つ、第6期の議論がこれからスタートしますけども、大臣としてここら辺を重点、ここら辺をポイントに置きたいなと、そこら辺のお考えはどうでしょうか。
(答)ポイントというのは、昨日、上山先生の話にあったんですけど、要するに国家価値をデジタル・トランスフォーメーションの力によって最大化すると。そのために基礎研究とか人的資源とか、もうありとあらゆることに取り組もうと。つまり次の2021年度以降というのは、いろいろな環境も変わる中で、さりとて基礎研究をやっていなきゃ勝負にならないし、そして、ビジネスのトランスフォーメーションも起こさなきゃいけないし、要は国家の価値を最大限に高めるために研究シーズとか人的資源とかデータとか全てのものを使おうと、最大限に利活用していこうという方向だと思います。
(問)第6期の検討キックオフということなんですけども、引き続きちょっと確認をさせて、時期尚早かなと思うんですけれども、いろいろと有識者ペーパーを読んでいますと、やはり経済成長につながるようなイノベーションということがあるんですけども、第5期で政府の投資目標26兆円というのが入りまして、第1期からずっと来ていると思うんですけども、大臣は具体的な数値目標、逆に言えば分かりやすい部分ではあるんですが、いろんな数値目標の中で投資目標というのがずっと続いて書き込まれてきたんですけれども、その件について第6期に関してのご所感を頂ければというふうに思います。
(答)第5期からGDPの1%という言い方をしているんですよね。それまでは幾らという……
(問)絶対金額ですよね。
(答)だったんだけど、つまりGDPの1%ということになると、増えたり減ったりする可能性もあるんですよね。
 一方で、GDP600兆円を目指すということですから、やっぱりGDP1%というのを一つの目標にするべきではないかな、と今の段階で私は思います。
(問)有識者ペーパーには「超える」と書いてあるので、当然、目標の絶対金額としては上がる方向で、もちろん1%で。
(答)GDPがものすごく増えるという可能性もありますよね。そうなればいいなと思うんですけど。
(問)そうすると、数値目標として書き込むとすれば、やはりGDPが無難なのかなというふうな、今の段階でというふうなお考えということで。
(答)今5期の方で、GDP1%というのでヒーヒー言っているわけですよね。そういう状況の中で、数字だけ気合いが入っても、かえってリアリティがなくなっても困るので、現状の5期のGDP1%を目指してまずは全力でやりたいと。その上で、21年から25年というと、世の中相当変わっていると思うんですよ、このデジタル・トランスフォーメーションとか。そして、この6期の目標の中でいくと、日本の抱えるいろいろな社会課題みたいなものが、現状より更に顕在化すると思うんです。そういうものを乗り越えていってGDPを増やすというのは結構大変だと思うんですよね。
 Society5.0というのも、5期では何となくぼやっと、こんなサイバーフィジカルというような感じだったと思うんですよね。デジタルと実世界の融合みたいなイメージだったと思うんですが、その具体的な社会像というものが、一般の国民の方にも何となく分かる時代だと思うんですよね。そうなると、それが良いものでないと、結局、GDP600兆円というのは全然目指せるような雰囲気もなくなってしまうので、まずはどういう計画を作るかというところがまず一番重要で、お金は後からついてくると、私自身はそのように今は思っているんです。
(問)だから、相当お金は投資しなければいけないという前提はあるということですよね。
(答)そこはそうですよね。当然そうです。
(問)昨日のAI戦略の関係で伺いたいんですけれども、安倍首相が、ICT人材の数についても言われていましたが、小・中学校合わせると約3万校ぐらい、高校が5,000校弱と考えると、つまり単純計算で多分1万人ぐらいそういう人材を確保しなきゃ、教える側の人材確保が必要なんですけども、25年、あと6年後で、そういった大量の人材の確保をどういうふうにしていくべきか、バックアップなどお考えがあればお聞かせください。
(答)「情報」の免許状を持っている教員というのは、数は知れていると思うんですよね。ですから、免許制度の弾力的な活用ということで、博士課程学生・ポスドク人材・エンジニアやデータサイエンティスト等の多様な外部人材の積極的な登用という意味で言うと、これは民間企業も今同じようにすごい勢いで人材を確保しようとしているわけです。そうなると、切り分けるんではなくて、全体としてそういう外部の人材を最適に使えば、学校現場を切り離して考えなければ十分に対応できるというふうに私は思っています。
 ですから、産業界の関係団体に人材協力を積極的に働きかけるというようなこととか、教育委員会等にも当然理解してもらわなきゃいけないし、これはこれからの検討だと思うんですけど、そのIT人材をたくさん持っている会社というのはあるわけです。そういう会社に対して、例えば兼職を企業として認めていただけるように要請をするとか、ITに対する知識というのは過去の延長線上になくなって、要するに、コボル(COBOL)やフォートラン(FORTRAN)を教えたってもう駄目なんですね、今全く。そうなってくると、新しい技術に近いところにいる人たちを教育現場に振り向けるというぐらいやらないと、もう多分間に合わないと思います。そういう意味で、昨日の総理の指示は相当思い切った指示なので、それに対応していきたいと考えています。
(問)今日配布いただいたワンストップサービスなんですけど、これは、これまでも引越し、死亡は今年度から、社会保険や法人設立については新年度からという、いわゆる方針の時期というのは示されていたと思うんですけど、昨日決定して今日配布いただいたのは、それまでの作業工程を詳細に決定されたという、そういうご理解でよろしいんでしょうか。
(答)そうですね。これ、担当大臣としてではないんですけど、スピードが遅くて申し訳ないと思います。本当は、やっぱり便利になるものというのは、もっと早く社会の皆さんに提供しなきゃいけないというふうに思うし、引越しとか、特に本当は今後やらなきゃいけないと思うのは、もう死亡相続手続って多分1週間ぐらい仕事にならないでしょう、親が亡くなったら。そういう経験を持った方は皆さん思うと思うんですが、ここら辺りのところは、やっぱりもっと早くやりたいなというふうに思います。そして、社会保険や税手続というのは、個人もさることながら民間企業の中で、私、一昨日か、サイバーエージェントのバックオフィスを全部見せていただいて、あのサイバーエージェントでさえ、やっぱり紙の部分が相当多いんですよ、正直言って。
 いろいろなところがあるんですが、例えば、地方税は翌年、住民税は来たりしますよね。これも結構大変なんです。要するに、袋を開けて、出して、その社員に配って、また集計してというような。要するに、紙がもし減らせられたら相当部分の生産性は上がるんですが、これは、国が率先してやるだけじゃなくて、民間、また自治体にも協力を頂かなきゃいけないということですけど、こういうのは結局、今度の法律が、要するに、原則をデジタルに変えるということを一応決めるわけですよ。決めた上で、あとは徹底的にそれぞれの手続に関して、官民で協力してやっていくしかないというふうに思うんです。ですから、スピード感が求められる局面に来ているので、これからは大変だと思います。
 いつまでにというのが大抵遅れているんですよね、今の工程表で見ると。僕は、本当は前倒しにしたいぐらいなんですけど、これはなかなかいかない。やっぱり日本は航空母艦みたいなもので、簡単に舵切っても曲がれないんですよ。本当はそういう意味では、みんなで協力して方向転換をして、皆さんに喜んでいただけるようにしなきゃいけないというふうに思うし、今やっていることは、次の世代のための社会インフラを作っているわけですね。
 特に私がイメージしているのは、1998年以降に生まれたZ世代の皆さんが今後社会の中で生きていく中で、彼らは完全にデジタルネイティブなんですよ、考えてみると。そのZ世代の皆さんがどういう社会の中で生きていくかといったときに、この紙の世界に引きずり戻すというわけにはいかないという思いがあるので、工程表というのは、そういう次の社会像をイメージしながら作らなきゃいけないものだというふうに思います。

(以上)