平井内閣府特命担当大臣閣議後記者会見要旨 平成31年3月29日

(平成31年3月29日(金) 10:03~10:29  於:中央合同庁舎第8号館1階S101記者会見室)

1.発言要旨


 おはようございます。
 今日は、まず私の方からは4点、皆様方にご報告があります。
 まず、一つ目は、IT政策担当、科学技術政策担当、宇宙政策担当、知的財産・クールジャパン戦略担当、健康医療戦略担当としてご報告させていただきます。
 お手元に資料を配付しておりますとおり、「Beyond Limits. Unlock Our Potential.~世界に伍するスタートアップ・エコシステムの拠点形成戦略~」として、今後のスタートアップ施策に関する戦略の中間取りまとめを本日策定し、統合イノベーション戦略推進会議に報告させていただきました。
 この取りまとめには、創造する未来からバックキャスト的に新たなイノベーションを起こしていくための産学官関係者との懇談会「HIRAI Pitch」で意見交換させていただいた内容が反映されています。HIRAI Pitchは、本日現在で、大臣室で33回、地方で7回開催しておりまして、AI・IoT、バイオ、量子、宇宙などの分野で果敢に挑戦を続けているスタートアップ、ベンチャーキャピタル、研究者等、計87名の皆様にお越しいただき、そこで私が直接お伺いした現場の取組や課題を踏まえて、今回の方向性を取りまとめさせていただきました。
 具体的な戦略の内容ですが、まず、スタートアップ・エコシステムの拠点都市の形成、シリコンバレー、深圳は言うに及ばず、ニューヨーク、パリ、ロンドン、リスボン、テルアビブ等、世界の都市にスタートアップやその支援者の大半が集中して成長している現状に鑑み、地方自治体と連携し、都市計画の観点から拠点形成を推進いたします。 これが戦略1です。
 次に、スタートアップにチャレンジする人を増やすべく、起業家教育の強化を図ります。大学のプログラム強化や外部人材の活用、小中学校からのアントレプレナーシップ教育を推進します。これが戦略の2番目です。
 また、スタートアップの立ち上げを促進するためにはアクセラレーターや政府系金融機関等によるGap Fundの役割が重要であることから、アクセラレーターの育成やGap Fundの拡充等を図ります。ここは戦略の3と4に書いてあります。
 加えて、政府自らスタートアップの顧客となり、同時に与信を行うため、公共調達へのスタートアップの参入促進を図ります。これが戦略5です。
 さらに、タテワリ、またよく言われるサイロを打破すべく、スタートアップに関わる多様な人材のネットワーク化やオープンイノベーションを推進して、ロールモデルの表彰やイベントの強化などでチャレンジする気運を醸成しようと考えています。これが戦略の6番目ですね。
 最後に、人材の流動化を促進する施策を検討することで、優秀な人材のスタートアップへの流入を促そうと考えています。これが戦略7です。
 このような取組によって世界と伍する強いスタートアップ・エコシステムを構築できると考えています。
 今後、この取りまとめに記載した各項目を中核に、更に関係省庁と密に連携して、政府全体でスタートアップ・エコシステムの拠点形成の推進に関する統合的な戦略を取りまとめ、統合イノベーション戦略に反映するつもりであります。
 中間取りまとめの詳細については、この後、事務局から説明をさせていただきます。
 次に、第4回統合イノベーション戦略推進会議を開催しました。
 まず、AIについては、人間中心のAI社会原則等について説明して、了承を頂きました。
 また、スマートシティについても、府省連携したスマートシティ関連事業の推進に関する基本方針等について説明して、了承を頂きました。
 これを受けて、私からは、担当大臣として、府省のスマートシティに係る取組を強固に統合・連携させていくこととともに、本年6月に開催予定のG20デジタル経済・貿易大臣会合に向け、議長国として有益な発信ができるよう総務・経済産業両大臣と連携し、進めていくことを述べました。
 創業については、スタートアップ・エコシステムの拠点形成に向け、Beyond Limits. Unlock Our Potentialとして7つの戦略を説明し、了承を頂きました。
 ムーンショットについては、本日午後開催予定のビジョナリー会議の設置について了承を頂きました。
 また、会議の中で、官房長官から私に対して、AI戦略の有識者提案を実施するための政策について早急に調整し、夏までに政府のAI戦略として策定すること。スマートシティについては、各府省連携を更に進めて、事業を推進するとともに、世界のスマートシティとの連携の強化に努めること。スタートアップ・エコシステムの強化に向けた統合的な戦略を早急に取りまとめ、世界に伍するエコシステム拠点形成を推進することについてのご指示がありました。
 諸外国が科学技術・イノベーションを巡り覇権争いを繰り広げています。私としても、大臣就任以来、CSTI、「Pitch to the Minister懇談会“HIRAI Pitch”」を通じ、様々な方々のご意見をお聞きする中で、従来の延長戦上にある個別取組を行っていくのでは不十分と痛感しています。創造する未来社会からのバックキャスト的に技術開発や環境整備を検討し、統合した施策のもとで一体的に、かつスピード感を持って取り組んでまいりたいと思います。
 また、会議の詳細については、後ほど事務局から説明をさせていただきます。これが2番目ですね。
 3番目は、量子イノベーションに関してです。
 昨年12月の「統合イノベーション戦略推進会議」において、官房長官より、量子技術について有識者会議を設置し、早急に検討を開始するようにご指示がありました。これを受けて、本日14時より第1回「量子技術イノベーション」の有識者会議を開催することになりました。
 量子技術は、将来の産業や社会に飛躍的な革新をもたらす基盤技術であり、米国やEUをはじめ諸外国において、国家戦略上の重要技術として位置付け、研究開発等の取組を加速させています。
 こうした中、我が国としても、国の成長・発展や国民の安全・安心の確保に向けて、国全体を俯瞰(ふかん)した「量子技術イノベーション戦略」を策定することが極めて重要と認識しています。
 今後、この有識者会議を中心に、関係本部や省庁が一丸となって、本年12月に同戦略を策定することを目標に精力的に検討を進めてまいりたいと考えています。
 最後に、模倣品・海賊版対策について、知的財産戦略担当の大臣として報告します。
 本日、10時30分から「検証・評価・企画委員会(コンテンツ分野会合)」において、「知的財産推進計画2019」の策定に向けて、模倣品・海賊版対策について意見交換が行われる予定です。
 海賊版による被害を効果的に防ぎ、著作権者等の正当な利益を確保するためには、関係省庁と連携しながら政府全体として様々な対策にしっかりと取り組んでいくことが重要です。
 本日の会議の議論も踏まえながら、「知的財産計画2019」の策定に向けて検討を進めてまいります。詳細は知財事務局までお問合せを頂ければと思います。
 私からは以上です。

2.質疑応答

(問)スタートアップ・エコシステムについてお聞きしたいんですけれども、今後の具体的な、例えば、いろいろな施策が入っているんですけれども、こういう施策も具体的なスケジュールをどういうふうにしていくのか、あと、拠点都市のイメージとしては、どんなふうなことをお考えなんでしょうか。
(答)スケジュールとしては、文部科学省、経済産業省も、それぞれお考えのペーパーも頂いておりますので、ほとんどのところが大体重なるんですけれども、全体としてそれをできるだけ早くまとめたいということを考えています。
 拠点都市に関しては、先程、私、幾つかの都市を、具体名を出させていただきました。今後、具体的なエリアを決めていこうというふうに考えています。
(問)拠点都市自体はいつごろ決めるんですか。
(答)この戦略全体を決めるときに、これは自治体の取組、どのようにするのかということも確認しなければいけないので、どういう形式で手を挙げてもらうか等々を検討するので、まだはっきりとは言えません。
(問)例えば、国家戦略特区との連携とかは考えられて。
(答)国家戦略特区はちょっと違う法律体系で、あれはどちらかというと、スーパーシティとか、スマートシティとかに近いと思うんですが、これは要するに持続的なイノベーションを起こしていく拠点都市をつくるという意味では、重なる部分もありますが、必ずしもそれが一体になるというものではありません。
(問)改めてになりますが、このエコシステム、つまり拠点を形成する必要が今後の施策に必要だというところのマネジメントの思いというか、狙いというのを改めて。
(答)地方でも平井ピッチを受けたり、東京、大阪、名古屋、福岡でもいろいろお話を聞きましたが、情報共有というのがやっぱり部分的であるということがもう明らかでした。ですから、集積するというのは、その中での情報共有を目指しているんだと思うんですが、これからはやっぱり分野を超えた情報共有、そして人材の連携というものがないと、イノベーションは起きないと考えましたので、できるだけそこにいろいろな分野の方々が集まった上で、そのイノベーションが持続可能な形で生まれるようにしたいと。
 それと、このイノベーションというのは、デジタルの世界で主に進んでいるように見えるんですが、最後は人と人とが直接会って話をし、そしてまちの文化とともに育っていくみたいなところが、やっぱり拠点都市にはあるんですね。そういう意味では、このクールジャパンとも連携をするという部分もあると考えていて、ですから、特に若い人たちを中心に、イノベーションを起こす気運をまち自体が受け止めるというようなことをやっていただけるところが拠点になっていくと。そして、その拠点というのは、産官学だけでなくて、以前からお話しているように、金労言ですね。金融機関、労働界、マスコミ。こういう方々も入った上で、地域がそういう方向に向かうということが重要だと思います。
 ですから、拠点都市になる地域は、都市としてもそれなりの覚悟を持って、そういうことを続けていくという意味で、政策の順位も上げていただかなきゃいけないんだと思うんです。そういう意味で、拠点都市を整備して、日本をリードしてもらいたいと、そんなふうに思います。
(問)今の質問に続きということになると思うんですけれども、具体的に例えば、拠点となる都市というのは、一つというイメージがあるのか、それともいろんな分野ごとに分かれて、それぞれ特徴を持ったベンチャーが立ち上がるとか、そういうのはどういうふうにお考えなんでしょうか。
(答)一つというわけには、もういかないと思います。ですから、二つ以上というふうに思いますが、そんなにたくさんもできないだろうと。
 今、それぞれおやりになっている各地域、はっきりいえば、47都道府県ある意味で、ベンチャー支援というものをやろうと今している状況の中で、先頭を切ってやってもらえるところを数か所拠点にしたいと考えてます。
(問)続いてなんですけども、持続的にベンチャーが起きてくるということを促進する戦略だというふうに理解しているんですが、大臣の思いとしては、どれぐらいのベンチャーが立ち上がっていけばいいかなというのは、何かバックキャスト的に。
(答)いろんな拠点都市を見ていると、やはりユニコーン企業が相当数出てますよね。中国、アメリカだけじゃなくて、例えば、コロンビアとか、スペインとか、そういうところからも。日本は1社ぐらいしかないわけですが、何十社とユニコーンが出てくるというようなことになればいいなと考えています。
(問)最後なんですけれども、もちろん、日本の特徴というか、ベンチャーが立ち上がるのが少ないというこの問題点として指摘されていると思うんですが、逆にいえば、大企業が社内ベンチャーをつくって、結構いいものを立ち上げていたりするという現実もあると思うんですけども、その辺との兼ね合いとしては、大臣はどういうふうにお考えですか。
(答)それはそれで当然やってもらいたいというふうに思うんですが、大企業から出てきた社内ベンチャーという手は、今そんなに大成功というか、世界を制するようなものはまだ出てきていないし、これから人材の流動化というところは、ベンチャーに期限付で移籍してもらうとかいうようなこととか、何となく一事業部でやるというんではなくて、ある程度のリスクをとって、それぞれのベンチャーに行ってもらうとか、そういうことも考えていかなきゃいけないというふうに思ってます。
 それと、日本のベンチャー、確かにテック系、そしてインターネット系、ディープテック系、シェアリングエコノミー系とかいろいろあるんですけど、世界を視野にと、最初からというのが余りないんですね。残念ながら、ずっとピッチで話を聞いていて、最初からグローバルマーケットで自分たちが出ていこうと。そういうところは、そういうことの実現した経験のあるアクセラレーターとか、そういう方々を日本に招聘して協力をお願いするということも、当然、考えなきゃいけないし、やはり経験者が少ないというところがあって、出口が単純に日本国内のIPOということだけでは、本当のユニコーン企業にはならずにいると思うんです。そこら辺りのところをもうちょっと夢をでっかく描いていただけるような支援をしたいというふうに考えます。
(問)同じく、エコシステムの関係で伺いたいんですけれども、拠点都市について、最初選ばれるところはある程度、人、情報が集まったり、先導する立場というと大きな主要都市、東京とかだと思うんですけれども、その拠点都市として選ばれたところの成果をどうやってその後、地方都市やほかの地方に波及させるかということについては、大臣はどのようにお考えでしょうか。
(答)拠点都市でできたものが、地方都市でどういうふうになるのかというのを、ちょっと今すぐに私もイメージできないんですが、日本経済に対しての大きなインパクトを持ってもらうという意味で、日本国全体に波及するように頑張ってもらいたいというふうに思います。
(問)全然、話変わるんですけど、宇宙デブリ対策についてなんですが、先日インドがミサイルで衛星破壊実験に成功したということが発表したんですが、まず、これに関する大臣の受け止めをお願いします。
(答)これは27日、モディ首相が人工衛星をミサイルで追撃する実験に成功したというふうな発表があったと思うんですが、まずは、この衛星破壊実験によってスペースデブリ問題を発生させないようにしてもらいたいというふうに、まずは思います。というのも、宇宙空間の安定的な利用を確保するということを、目下我々は目標にしていることだからです。
 そして、インド側はこの実験はデブリを発生させないことを確保するために低軌道で行って、いかなるデブリも数週間のうちに崩壊し、地球に落下すると公表していますが、これが事実なのかどうなのかは、これはきっちりとこっちで注視させていただきたいというふうに思っています。
 ですから、このデブリの問題を全然なしに、こういうことを勝手にやられるのもいかがなものかというふうに思っています。
(問)多分今までやってきたデブリ対策というのは、今あるデブリをどうしていこうか、減らしていこうかという対策が主だったと思うんですけど、一方で、こういうふうにデブリを大量に発生させるような国が出てくるというと、今まで日本がやってきたデブリ対策を見直さなければいけないところもあるかと思うんですが、今までやってきた対策について、何か見直す余地ってあるのでしょうか。
(答)デブリ対策、デブリを除去する技術というのは、今は一生懸命日本がリーダーシップを取るべく対応しているんですが、まだ来年度以降、実証実験に向けた取り組みを行っていく段階。
 ただ、そのデブリを発生させないような、要するに、衛星の上げ方や出たとしてもそのデブリをちゃんと特定して追い掛けられるというようなことなどを、今後は呼び掛けていくということです。このような、要するに準備ができていない段階で突然これを破壊するということになった場合、それが幾ら低軌道、そして自国の衛星だったとしても、そのデブリ対策は非常に難しいというふうに思います。
 ですから、国際社会に対して、そういう日本の考え方をこれからも主張していきたいと思います。
(問)Gap Fundについてお伺いしたいんですけれども、シリコンバレーはちょっと九大のC&Cに比べて投資効果が本当にくっきりしているのかというのは、アメリカでもかなりネガティブな反応もあるわけです。それで、どのぐらいのサイズが適正、日本にとって運用でき得るのか。
 現状として2,000億円いかない金額を、必ずしもうまいこと運用できていないというか、だから、金額だけ膨らませても結局、運用できる人がどれだけいるのかという次の問題になると思うんですけれど、なので、金額とその体制をどうつくっていくのか。
(答)これ、既存のGap Fundというイメージではなくて、ギャップを埋めるための、要するに、支援策を考えていこうということです。
 ですから、NEDOさんがやっているSTSとか、要するに、金額の大きさじゃなくて、そのときに必要なものをちゃんと調達できるようにするためには、ギャップというのはスタートアップの最初の時点、そして、また後半に近くなってもあるので、その時々にちゃんとできる体制をこちらで考えていこうと、そういうことです。
(問)そのサイズがどのぐらいか。
(答)ですから、そのサイズとか、ファンドありきではないので、サイズ等々については、今考えているわけではありません。

(以上)